交通事故後、手に力が入らなくなった、物がうまく握れない…。そんな「握力低下」の症状に悩まされていませんか?
このような症状は、事故による一時的なものと思われがちです。しかし、神経や骨、関節に深刻な損傷があると、後遺障害に認定される可能性があります。
後遺障害の認定を受けることで、適切な補償を受けることができ、今後の生活や治療にも大きな支援となります。
本記事では「交通事故による握力低下」が後遺障害に認定される基準やポイント、考えられる原因について分かりやすく解説しています。
交通事故後の症状に不安を抱える方や、後遺障害申請を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
最終更新日: 2025/4/11
Table of Contents
交通事故による握力低下は後遺障害に認定される?
交通事故による握力低下は、後遺障害に認定される可能性があります。後遺障害として認定されるかどうかは、症状の程度や医学的な証拠の有無に拠ります。
神経、骨、関節の異常所見が画像検査で明確に示されて、日常生活や労働に支障をきたすと、後遺障害12級13号や14級9号に認定される可能性があります。
交通事故による握力低下の原因
むちうち(頚椎捻挫)
むちうちは、交通事故の衝撃で首が鞭のようにしなることで発生します。医学的には、頚椎捻挫や外傷性頚部症候群と呼ばれています。
特に神経根が圧迫される神経根症状型では、手や指のしびれや握力低下を引き起こす可能性があります。
<参考>
むちうち後遺症が首の痛みだけで後遺障害認定される?|交通事故の医療鑑定
頚椎椎間板ヘルニア
交通事故の強い衝撃によって、頚椎の椎間板が損傷して内部の髄核が飛び出したために、神経が圧迫された状態です。
頚椎椎間板ヘルニアにより、手や指のしびれ、痛み、握力低下などの症状が現れる可能性があります。
<参考>
頚椎椎間板ヘルニアの後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
橈骨遠位端骨折
手首にある橈骨が骨折すると、手指の可動域制限や変形障害が生じて、結果として握力低下を引き起こす可能性があります。
<参考>
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
TFCC損傷
手首の小さな軟部組織である三角線維軟骨複合体(TFCC)が損傷すると、手首の安定性が失われて、痛みや可動域制限、握力低下を引き起こす可能性があります。
TFCC損傷は、手首の過度な回旋や外傷によって生じるケースが多いです。診断にはMRI検査が必要です。
<参考>
TFCC損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
握力低下で考えられる後遺障害等級
神経障害
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
交通事故の衝撃により神経が損傷されると、手や指のしびれ、痛み、そして握力低下といった神経症状が現れる可能性があります。
これらの症状が医学的に証明されて、日常生活や労働能力に支障をきたしていると、後遺障害12級13号や14級9号に認定される可能性があります。
握力低下が神経障害に認定されるためには、MRI検査などの画像検査で、神経が圧迫されている所見が重要です。
<参考>
むちうち後遺障害12級、14級のポイント|交通事故の医療鑑定
手関節の機能障害
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号:一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
手関節が強直(癒着して動かなくなること)した、もしくは関節が完全弛緩性麻痺になった状態です。
10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。
交通事故による手関節の骨折や靭帯損傷が原因で、手首の可動域が制限されたり、変形が生じて、握力低下が引き起こされる可能性があります。
手関節の機能障害が残存して、日常生活や労働に支障をきたすと、後遺障害等級として10級10号、12級6号が認定される可能性があります。8級6号に関しては、理論上あり得ますが、実臨床ではほとんど存在しません。
交通事故後の握力低下の後遺障害認定ポイント
むちうちや頚椎椎間板ヘルニアが握力低下の原因のケース
むちうちや頚椎椎間板ヘルニアが握力低下の原因になっているケースは、決して珍しくありません。しかし、握力低下の原因を客観的に証明するハードルは高いのが現実です。
むちうちが後遺障害に認定されるポイントは、以下のコラム記事に詳述しています。興味のある方は参照いただければ幸いです。
<参考>
橈骨遠位端骨折(手首骨折)が握力低下の原因のケース
手首の骨折では、手関節の可動域制限や痛みだけではなく、握力低下も高率に併発します。
橈骨遠位端骨折が後遺障害に認定されるポイントは、以下のコラム記事に詳述しています。興味のある方は参照いただければ幸いです。
<参考>
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
TFCC損傷が握力低下の原因のケース
手首の小指側にある三角線維軟骨複合体(TFCC)の損傷でも、痛みや可動域制限だけではなく、握力低下を併発する可能性があります。
TFCC損傷が後遺障害に認定されるポイントは、こちらのコラム記事に詳述しています。興味のある方は参照いただければ幸いです。
交通事故で残った握力低下は、後遺障害に認定されない事案が珍しくありません。そして、異議申立てでは、症状の一貫性も含めた総合的な主張が必須です
弊社では、個々の事案を精査したうえで、すべての対策を網羅した医師意見書サービスを提供しています。
握力低下の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
<参考>
交通事故後の握力低下の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故後の握力低下が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故後の握力低下の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
交通事故後の握力低下で請求できる損害賠償金
交通事故後の握力低下が後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
むちうちなどの後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害慰謝料の相場は?
むちうちなどによる後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級によって異なります。例えば、12級13号の場合、慰謝料の相場は約290万円、14級9号の場合は約110万円です。
等級が高いほど慰謝料の金額も高くなります。また、弁護士基準を用いることで、より高額な慰謝料を受け取ることができる場合もあります。
後遺障害逸失利益とは
むちうちで握力低下などの後遺症が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
後遺障害逸失利益の相場は?
むちうちによる後遺障害逸失利益の相場は、後遺障害等級や被害者の年収によって異なります。一般的には、年収または平均賃金の5%から14%を数年から最大10年分として計算されます。
例えば、12級13号の場合、労働能力喪失率は14%、14級9号の場合は5%とされています。
交通事故による握力低下の後遺障害でよくある質問
交通事故による握力低下の治療は?
交通事故後の握力低下の治療は、原因となる損傷の種類や程度によって異なります。軽度の場合、投薬やリハビリテーションなどの保存療法が選択されることが一般的です。
しかし、神経の圧迫が顕著な場合、手術が必要となるケースもあります。適切な治療を受けるためには、早期に医療機関を受診し、詳細な検査を行い、医師の指示に従うことが重要です。
握力低下は画像検査で異常が出る?
握力低下の原因が神経の圧迫や骨折後の関節面の不整による場合、MRI検査やCT検査などの画像検査で異常が確認できるケースがあります。
しかし、すべてのケースで画像検査に異常が現れるわけではありません。特に神経症状が主な原因の場合、画像検査で明確な異常が見つからないこともあります。
まとめ
交通事故で握力が低下すると、後遺障害に認される可能性があります。むちうち、頚椎椎間板ヘルニア、橈骨遠位端骨折、TFCC損傷などが原因です。
握力低下の存在を医学的に証明できると、後遺障害として認定されて、仕事ができなくなった補償をしてもらえる可能性があります。
交通事故後の握力低下の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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