高次脳機能障害は、症状が分かりにくいことが珍しくありません。高次脳機能障害の存在を知らないと、家族でさえも見逃してしまうケースがあります。
そして、高齢者の高次脳機能障害では、認知症やせん妄と見分けがつかないこともあります。認知症やせん妄では、自賠責保険の後遺障害に認定されません。
本記事は、高次脳機能障害、認知症、せん妄の違いを知ることで、高次脳機能障害が後遺障害認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/8/1
Table of Contents
高次脳機能障害、認知症、せん妄の違い
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害の原因
交通事故などの外傷や脳卒中(脳梗塞や脳出血)などの病気で脳組織が損傷して、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能が障害された状態です。
<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害が後遺症認定されるポイント|交通事故
高次脳機能障害の4大症状
高次脳機能障害では以下の4大症状をきたしやすいです。
- 記憶障害
- 注意障害
- 遂行機能障害
- 社会的行動障害
<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害の4大症状は?|交通事故
高次脳機能障害と認知症の違い
認知症とは、加齢や脳血管障害などが原因となって脳組織の機能が低下して、日常生活に支障をきたすようになった状態です。認知症の原因として以下が挙げられます。
- アルツハイマー型認知症
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
認知症の症状は、高次脳機能障害と似ています。このため、症状だけでは高次脳機能障害と認知症の見分けがつかないケースもあります。
高次脳機能障害と認知症の違いは、認知症の症状は進行していくことです。少しずつ症状が悪化する場合には、高次脳機能障害ではなく認知症を強く疑います。
一方、高次脳機能障害は受傷時に最も症状が強く、少しずつ改善していくケースが多いです。このように高次脳機能障害は症状が不変もしくは改善、認知症は悪化していくという特徴があります。
<参考>
【医師が解説】交通事故後に認知症を発症するのは珍しくない!
高次脳機能障害とせん妄の違い
せん妄とは、脳血流や脳代謝が低下して意識が錯乱した状態です。せん妄の原因として、薬剤の副作用、脱水、尿路感染症、睡眠不足などが挙げられます。
せん妄は急激に発症することが多く、夕方から夜間にかけて症状が悪化する傾向にあります。数時間から数日間続くことが多いですが、原因が改善すると症状が軽快するケースが多いです。
高次脳機能障害とせん妄の違いは、高次脳機能障害の症状はあまり変わりませんが、せん妄は原因が無くなれば症状が急激に改善していく点です。
<参考>
【遺言能力鑑定】せん妄と認知症の違いは意思能力に影響する?
【弁護士必見】高齢者の高次脳機能障害の注意点
高齢者は高次脳機能障害と認知症を併発しやすい
交通事故で頭部外傷を受傷すると、高次脳機能障害をきたす可能性があります。そして高齢者では、高次脳機能障害に認知症を併発しやすいという若年者と異なる特徴があります。
その理由は、高次脳機能障害のために活動性が落ちると、認知症が発症する原因となるからです。
<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害が後遺症認定されるポイント|交通事故
症状が悪化する高次脳機能障害は争いになりやすい
高齢者の高次脳機能障害で、経時的に症状が悪化するケースは争いになりやすいです。その理由は、経時的な認知機能の低下が、交通事故による高次脳機能障害ではなく、加齢による認知症である可能性があるからです。
被害者家族の立場では、交通事故によって認知機能が悪化していくのは当然と思いがちです。しかし医学的には、高次脳機能障害は受傷時から改善することはあっても悪化することはありません。
交通事故よる高次脳機能障害を否定された場合には、加齢や既往症の影響ではなく、交通事故による外傷が原因であることを主張する必要があります。
交通事故による頭部外傷で高次脳機能障害を受傷したことを証明するためには、医師による臨床経過や画像所見の精査が必要です。
<参考>
【日経メディカル】鑑別が難しい高齢者の高次脳機能障害と認知症
まとめ
高齢者の高次脳機能障害では、認知症やせん妄と見分けがつかないことがあります。高次脳機能障害と認知症の違いは、高次脳機能障害は症状が不変もしくは改善であることに対して、認知症は悪化していく点です。
高齢者では、高次脳機能障害に認知症を併発しやすいです。このため、高齢者の高次脳機能障害で経時的に症状が悪化するケースは争いになりやすいです。
高次脳機能障害に認知症を併発したために、後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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