手関節周囲の外傷の代表例として橈骨遠位端骨折があります。このうち、手関節内に骨折線が及んでいるものには、バートン骨折やショーファー骨折があります。
バートン骨折やショーファー骨折は後遺症を残しやすい骨折です。本記事は、バートン骨折やショーファー骨折が後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/7
Table of Contents
バートン骨折やショーファー骨折は手首の関節内骨折
手のひらをついて転倒すると、手首の骨折が発生することがあります。手首の骨折の中でも最も一般的なのが橈骨遠位端骨折です。
橈骨遠位端骨折は、関節外骨折と、手関節内に骨折線が及んでいる関節内骨折に分けられます。バートン骨折やショーファー骨折は、関節内骨折の一種です。
<参考>
【医師が解説】関節内骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故
バートン骨折(Barton fracture)とは
バートン骨折には、掌側バートン骨折(Volar Barton fracture)と背側バートン骨折(Dorsal Barton fracture)があります。
掌側バートン骨折は、背側バートン骨折と比べて転位しやすく整復位の保持が難しいため、手術療法が必要な症例が多いです。
掌側バートン骨折(Volar Barton fracture)
掌側バートン骨折は、橈骨の遠位端の掌側に骨折が発生します。手首の掌側方向への力が加わって受傷します。
背側バートン骨折(Dorsal Barton fracture)
背側バートン骨折は、橈骨の遠位端の背側に骨折が発生します。背側バートン骨折は、手首の背側方向への力が加わって受傷します。
ショーファー骨折(Chauffer fracture)とは
ショーファー骨折とは橈骨遠位端骨折の一種で、橈骨茎状突起に斜めに骨折線が走った骨折型です。橈骨茎状突起が舟状骨に圧迫されて骨折します。
ショーファー骨折は関節内骨折であるだけでなく、高エネルギー外傷を示唆するもので、TFCC損傷などの靱帯損傷を高率に合併します。
<参考>
【医師が解説】TFCC損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故
バートン骨折やショーファー骨折の受傷機序
歩いている時に転んで手を床についたり、自転車やバイクに乗っているときに転倒して受傷するケースが多いです。
ショーファー骨折では、ハンドルを握った状態で強い衝撃が加わることで受傷するケースもあります。
バートン骨折やショーファー骨折の症状
バートン骨折やショーファー骨折が起きると、手首が変形して強い痛みが生じます。具体的には、以下の症状が現れます。
- 強い痛み
- 手首の腫れ
- 手首の変形
- 握力の低下
- しびれ
バートン骨折やショーファー骨折の症状は、通常の橈骨遠位端骨折と差はありません。しかし、掌側バートン骨折では、転位した掌側骨片に正中神経が圧迫されて、手指のしびれが高度なケースもあります。
バートン骨折やショーファー骨折の診断
レントゲン検査(単純X線像)
バートン骨折やショーファー骨折などの橈骨遠位端骨折の診断では、レントゲン検査が第一選択です。レントゲン検査を中心にして診断や治療を行います。
CT検査
関節面が粉砕しているタイプのバートン骨折やショーファー骨折ではCT検査が必須です。手術前には術前計画で使用します。
MRI検査
レントゲン検査やCT検査と比べると、MRI検査の必要性は高くありません。ショーファー骨折にTFCC損傷を合併しているケースでは、MRI検査が必要です。
バートン骨折やショーファー骨折の治療
保存療法
バートン骨折やショーファー骨折は関節内骨折なので、通常は手術療法の適応になります。しかし、転位のほとんど無い症例では、ギプス固定やシーネ固定を行います。
手術療法
手術の術式
バートン骨折やショーファー骨折の手術では、ロッキングプレートによる骨接合術が行われます。
ロッキングプレートの進歩は著しく、早くから手首の関節を動かすリハビリテーショを行います。
手術費用
健康保険が3割負担のケースでは、入院にかかる期間と費用の概算は以下のようになります。
- 期間:4~10日
- 費用:16~25万円
上記の期間や金額はあくまでも目安です。個々の症例によって期間や金額が変わるのでご了承ください。
バートン骨折やショーファー骨折は全治何ヶ月?
ズレ(転位)の程度や骨折形態によって異なりますが、バートン骨折やショーファー骨折ではおおむね3ヵ月で骨癒合するケースが多いです。
ただし、骨が十分な強度を獲得するには半年から1年かかるため、激しいコンタクトスポーツは半年から1年は控えた方が無難です。
一方、ジョギングなどの骨折部に負荷のかからないスポーツは、受傷後3ヵ月程度で問題ないケースが多いです。
骨癒合の時期は、骨折型によってさまざまです。上記で挙げた期間はあくまでも目安に過ぎません。主治医の指示に従いましょう。
バートン骨折やショーファー骨折の後遺障害
手関節の関節内骨折であるバートン骨折やショーファー骨折は、上肢の外傷でも後遺症を残しやすい傷病です。
手関節の機能障害
手関節の機能障害(可動域制限)は、橈骨遠位端関節面の不整が原因となる事案が多いです。
10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の1/2以下に制限されているものをいいます。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の3/4以下に制限されているものをいいます。
手関節の神経障害
橈骨遠位端関節面の不整は、手関節の神経障害(痛み)の原因となります。
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
この場合の神経症状とは痛みのことです。画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できるものをいいます。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できないものの、受傷時の態様や治療経過から痛みの存在が説明つくものをいいます。
【弁護士必見】バートン骨折やショーファー骨折の後遺障害認定ポイント
後遺症が残りやすいのに非該当の事案が多い
バートン骨折やショーファー骨折などの関節内骨折は、痛みや関節可動域制限が残りやすいです。しかし、意外なほど後遺障害に認定されない事案が多いです。
これらの事案を確認すると、たしかに骨癒合しています。しかし、関節面の不整が残っていたり、外傷性変形性関節症を併発しているケースが珍しくありません。
<参考>
【医師が解説】手首骨折(橈骨遠位端骨折)が後遺症認定されるヒント
後遺障害認定に必須の2つの検査
しかし、後遺障害認定の審査では、関節面の不整や外傷性変形性関節症の画像所見が見落とされている事案が多いです。
異議申し立てすれば後遺障害に認定される可能性がありますが、以下の画像検査は必須です。
- 健側のレントゲン検査2方向
- 抜釘術後のCT検査
レントゲン検査読影のポイント
症状固定時に後遺症が残った際には、健側の画像所見と比較することが、後遺障害認定の大きな決め手をなるケースが多いです。健側の2方向が撮影されていないケースは、意外なほど多いので注意が必要です。
CT検査やMRI検査の方が重要だと認識している方が多いですが、これは大きな間違いです。レントゲン検査では、全体を俯瞰して後遺障害の原因となる所見を精査できるからです。
私の感覚では、CT検査よりもレントゲン検査の方が、外傷性関節症の存在を客観的に証明できる決め手になることが多い印象を抱いています。
ちなみに橈骨遠位端に起因する疼痛の原因検索に関しては、MRI検査はあまり意味がありません。
CT検査読影のポイント
バートン骨折やショーファー骨折などの橈骨遠位端に起因する障害では、関節面不整の有無が障害を客観的に証明できるか否かの分かれ目となります。
これを証明するためには、CT(3方向での再構成像)が必要です。CT検査の3方向とは、矢状断、前額断、冠状断です。特に矢状断が重要で、関節面の不整像が描出されることが多いです。
<参考>
【日経メディカル】ひどい骨折後に後遺障害が認定されなかった意外なワケ
バートン骨折とショーファー骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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バートン骨折とショーファー骨折のまとめ
バートン骨折やショーファー骨折は、橈骨遠位端の関節内骨折の一種です。バートン骨折には、橈骨遠位端の掌側に発生する掌側バートン骨折と、橈骨遠位端の背側に発生する背側バートン骨折があります。
ショーファー骨折は橈骨遠位端骨折の一種で、橈骨茎状突起に斜めに骨折線が走った骨折型です。ショーファー骨折には、TFCC損傷などの靱帯損傷を高率に合併します。
手関節の関節内骨折であるバートン骨折やショーファー骨折は、上肢の外傷でも後遺症を残しやすい外傷です。バートン骨折やショーファー骨折でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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