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頚椎捻挫、むちうち、外傷性頚部症候群の違い|交通事故の後遺障害

交通事故で発生する最も多い外傷は、頚椎捻挫(むちうち)でしょう。頚椎捻挫は交通事故外傷の代表格ですが、昔からいくつかの呼称があります。

 

本記事は、頚椎捻挫、むちうち、外傷性頚部症候群の違いを理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日: 2024/5/13

 

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頚椎捻挫、むちうち、外傷性頚部症候群の違い

 

頚椎捻挫、むちうち、外傷性頚部症候群に違いは無く、同じ病態に対する傷病名です。これらの3つの傷病名の概要は以下のごとくです。

 

 

頚椎捻挫

医師の中にも、頚椎捻挫(cervical sprain)という傷病名を使う人が多く、感覚的には正式な傷病名に近いです。

 

旧字体の頸椎捻挫が使用されるケースも多いです。しかし、日本整形外科学会での正式名称は、後述するように外傷性頚部症候群です。

 

 

むちうち

日本で自動車が普及した時期には、運転席や助手席にヘッドレストがありませんでした。このため、追突事故が発生すると、首から頭が「鞭打つ」ようにしなって受傷しました。

 

当時の受傷機序の名残から、現在でも「むちうち」という傷病名が使われています。「むち打ち」「ムチウチ」「むち打ち症」「むち打ち損傷」などと記載されるケースも多いです。

 

ただし、むちうちという傷病名を整形外科医が使用することはほとんどありません。したがって、診断書に「むちうち」と記載されることは稀です。

 

 

<参考>
むちうち症とは?よくある症状や治療期間の目安

 

 

外傷性頚部症候群

日本整形外科学会が認定している正式な医学病名は、外傷性頚部症候群(whiplash associated disorders; WAD)です。

 

整形外科医が作成する診断書には、外傷性頚部症候群と記載されることが多いです。しかし、一般的に浸透している傷病名とは言い難いです。

 

 

脳脊髄液減少症や低髄液圧症候群

ごく一部の人は、脳脊髄液減少症や低髄液圧症候群を、頚椎捻挫(むちうち)と同じ意味で使用するケースがあります。

 

しかし、外傷性の脳脊髄液減少症や低髄液圧症候群が本当に実在する病態なのか否かは、現在でも結論が出ていない状況です。

 

 

<参考>
【医師が解説】脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の後遺症|交通事故

 

 

neck pain

 

 

日経グループでは「頸椎捻挫」「むち打ち」

 

余談ですが、私が連載を担当している日経メディカルでは、頚椎捻挫ではなく「頸椎捻挫」、むちうちではなく「むち打ち」が使用されています。

 

社内ルールで、頚椎は「頸椎」に統一されていることが原因です。日経グループが使用しているため、「頸椎捻挫」「むち打ち」を使用している例も多いようです。

 

 

<参考>

 

 

 

nikkei medical

 

 

頚椎捻挫の後遺症で非該当を回避する工夫

 

頚椎捻挫で非該当とならないための回避策を考えてみたいと思います。まず重要なことは、初めて受診したときに、きちんと自分の自覚している症状を主治医に伝えることです。

 

痛みやしびれというのは、外から見えないですから、痛いこと、しびれていることを言葉にして主治医に伝えましょう。診療録(カルテ)に記載された内容が、その後の後遺障害認定にはとても重要になります。通院している間も、痛みが改善せずに持続しているのであれば、そのことをきちんと伝えましょう。

 

ちなみに、後遺障害認定のためには、痛みが常時持続していることが認定要件になります。痛い日がある、天気が悪いと痛いなど、痛みが時々発生する状態は、後遺障害として認定されにくくなります。

 

ご存じのように自賠責認定基準はブラックボックスですが、主治医の協力を得ることは等級認定のために欠かせない条件です。

 

もちろん協力的な主治医であれば万事OKというわけではありません。しかし非協力的な主治医では入口の段階でつまずいてしまいます。被害者の立場では主治医選びは重要なポイントとなるのです。

 

それでは協力的な医師はどこに居る可能性が高いのでしょうか。あくまで私見ですが、以下に該当する医師は協力的である可能性が高いです。

 

 

開業医

開業医が協力的な理由は、患者さんの通院が自院の利益につながるからです。一方、病院の勤務医にとっては外来業務の負担が増加するだけなので、頻回の通院は忌避される傾向にあります。

 

重要なこととして、整形外科開業医のクリニック通院することです。整形外科以外の医師は、頚椎捻挫の診察時に、12級認定のためには必須ともいえる深部腱反射を評価していないことがあります。

 

また整形外科医師以外の医師(外科医師)は、頚椎MRIの読影が苦手な方も多く、椎間板ヘルニアや変性などの所見を見落とす可能性も高くなります。

 

「整形外科」と標榜しているクリニックがベストです。「外科」や「外科・整形外科」と標榜しているクリニックは、院長が外科医であることが多いため、交通事故後の通院には若干不向きと言えるでしょう。

 

 

年齢が比較的若い医師(おおむね50歳代以下)

年齢が若いこともポイントのひとつです。最近ではずいぶん少なくなりましたが、一部の高齢医師は「診てやっている」意識の強い人が存在します。このような医師にあたると通院自体が大変です。

 

また高齢医師の中には自説にこだわりの強すぎる人を散見します。治療や後遺障害診断書の記載内容に対する偏った方針は、非該当の原因となりやすいです。

 

 

物理療法が可能なクリニック

物理療法が可能なクリニックであることは、非常に重要なポイントです。最近では物理療法の保険点数が下がったため、都市部を中心に併設していないクリニックが増加しています。

 

週に何度も主治医と顔を合わすことに抵抗感のある人は多いと思われますが、物理療法があれば気軽に通院することが可能です。このため物理療法があることを確認しておくことは必須と考えるべきでしょう。

 

 

<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】むちうち後遺症が首の痛みだけで後遺障害認定される?

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

【弁護士必見】頚椎捻挫の後遺障害認定ポイント

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号と比較すると、はるかに認定基準は厳しくなります。痛みが持続しているだけでは不十分で、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という条件が必要になります。

 

具体的には頚椎MRI検査で神経の圧迫があることです。弊社の経験では、多くの事案で新鮮外傷を疑う椎間板の高信号変化がありました。

 

さらにその圧迫されている神経と実際の症状(知覚障害の範囲、深部腱反射の異常、スパーリング徴候などの誘発テストが陽性など)の一致が必須条件です。

 

弁護士では、専門的な判断が難しいため、脊椎脊髄外科指導医/専門医や整形外科専門医の評価が必須となります。弊社では等級スクリーニングというサービスを提供しているのでご気軽にお問い合わせください。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

14級9号は、救済等級としての位置づけでもあり、比較的広い範囲の患者さんが認定される可能性があります。

 

受傷から一定の期間(約半年が目安になります)通院していて、その間の通院回数が一定の基準を超えていれば認定の可能性が高まります。それ以外にも交通事故の規模や画像所見(頚椎のレントゲンやMRI)も参考にします。

 

一番重要なことは、受傷直後から後遺障害診断書作成にいたるまで、症状に一貫性があることと、持続性があることです。

 

異議申立てでは、症状の一貫性も含めた総合的な主張が必須です。弊社ではすべての対策を網羅した医師意見書サービスを提供しています。

 

 

<参考>
【日経メディカル】意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?
【医師意見書】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申立

 

 

年間1000事案におよぶ圧倒的な取り扱い事案数に裏打ちされた医師意見書サービスを是非お試しください。事案のご相談はこちらからお願いいたします。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

【12級13号】頚椎捻挫の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:46歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

 

交通事故後に頚部痛と右頚部から母指にかけて放散する痛みが持続していました。痛みのため、1年以上通院、治療を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。

 

 

弊社の取り組み

診療録を詳細に確認すると、受傷直後から頚椎椎間板ヘルニアに特徴的な「スパーリング徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。

 

MRIで、C5/6レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの上肢痛(右母指にかけての放散痛)は椎間板ヘルニアが圧迫しているC6神経根の知覚領域と完全に一致していました。

 

脊椎脊髄外科指導医が診療録を確認して、初回申請時に見落とされていた身体所見を記載した医師意見書を作成しました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。

 

 

CS-MRI C5-6

 

 

【14級9号】頚椎捻挫の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:60歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)

 

交通事故後に頚部痛と両手のしびれを自覚されていました。受傷から半年間通院されましたが、頚部痛と両手のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。

 

 

弊社の取り組み

MRIを脊椎脊髄外科専門医が読影したところ、頚椎後縦靭帯骨化症が存在していることが明らかになりました。診療録を確認すると、受傷当日から頚部痛と両手がしびれると記載されていました。

 

身体所見、画像所見および診療経過について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。

 

 

CS-MRI axial image

 

 

まとめ

 

頚椎捻挫、むちうち、外傷性頚部症候群に違いは無く、同じ病態に対する傷病名です。正式な医学病名は外傷性頚部症候群ですが、医師の中にも頚椎捻挫という傷病名を使う人が多いです。

 

日本で自動車が普及した時期には、運転席や助手席にヘッドレストが無かったため、追突されると首から頭が「鞭打つ」ようにしなって受傷しました。

 

当時の受傷機序の名残から、現在でも「むちうち」という傷病名が使われています。ただし、むちうちという傷病名を整形外科医が使用することはほとんどありません。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

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