交通事故でむちうちなどのケガを負った場合、整形外科への通院が2週間空くと後遺障害の認定に影響あるのでしょうか?
本記事は、年間1000例の交通事故事案を取り扱っている医療鑑定医師が、後遺障害が認定される通院頻度について説明しています。
最終更新日: 2024/5/16
Table of Contents
事故の通院を2週間以上空けない
むちうちの後遺障害認定では通院頻度が重要
むちうちや腰椎捻挫などの客観的な異常所見に乏しい外傷では、痛みの存在を証明する手段として、通院頻度が重視されています。
一方、骨折などの明らかに客観的な異常所見のあるケースでは、画像所見で痛みの存在が明らかであるため、通院頻度はさほど重視されていません。
<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫(むちうち)の後遺症認定のポイント|交通事故
【医師が解説】腰椎捻挫の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
むちうちの後遺障害は14級9号目線になる
むちうちや腰椎捻挫の主な症状は、痛みとしびれです。これらの症状は、自賠責保険用語で「神経症状」と言います。
むちうちや腰椎捻挫では、12級13号と14級9号に認定される可能性があります。このうち、12級13号は非常に条件が厳しいため、むちうちや腰椎捻挫で後遺障害に認定される事案のほとんどは14級9号です。
14級9号の定義は、局部に神経症状を残すものです。局部に神経症状を残すものとは、局部=頚部・腰部や四肢に、神経症状=痛みやしびれを残すものという意味です。
自賠責認定基準の解説
14級9号の後遺障害慰謝料は、12級13号と比べて低いものの、後遺障害等級認定の確率は各段に高いです。このため、むちうちの後遺症に悩む人の現実的な救済手段として14級9号は重要です。
しかし14級9号と言えども、決して後遺障害に等級認定されるハードルは低いわけではありません。むしろほとんどの事案は、14級9号にも認定されず非該当になるという重い現実があります。
14級9号の自賠責認定基準は「局部に神経症状を残すもの」です。12級13号の「頑固な」が無いだけでほぼ同じ文言です。
自賠責認定基準をかみ砕いて翻訳すると「画像所見や神経学的所見などの他覚所見によって客観的に証明できないが、事故形態や治療経過などから、症状の存在を医学的に推定できるもの」となります。
むちうち14級9号の具体例
症状
- 左頚部痛
- 左上肢の痛みとしびれ
頚椎MRI
- C5/6の椎間板変性と正中型の椎間板ヘルニアを認める
- 左椎間孔の狭窄は明らかではない
神経学的所見
- スパーリングテスト(Spurling test)陽性
- ジャクソンテスト(Jackson test)陽性
- 左上肢の深部腱反射(腕橈骨筋反射)正常
上記のような事案が14級9号の典型例です。もちろん、14級9号の自賠責認定基準はこれだけではありません。
12級13号のように、どれかひとつの条件でも抜けると等級認定されないというわけではなく、総合点で何点以上であれば14級9号に等級認定しましょう、といったニュアンスです。
交通事故の通院が2週間空くとどうなる?
交通事故の通院が2週間以上空くと、むちうち、腰椎捻挫、打撲では、後遺障害に認定される確率が著しく低くなります。
後遺障害14級9号認定の基準
整形外科だけの事故通院で2週間空くと?
整形外科にしか通院していないのに通院が2週間空くと、むちうち、腰椎捻挫、打撲で後遺障害が認定される可能性は極めて低くなります。
客観的な痛みの証明として、整形外科への通院は6ヵ月で60日がおおよその目安になります。
もちろん、60日以上整形外科に通院したからと言って、自動的に後遺障害14級9号が認定されるわけではありません。
逆に、整形外科への通院日数60日以上は、後遺障害が認定される最低限の条件だと考えましょう。
事故通院が整形外科2週間毎+整骨院週3日は?
一般的に多いのは、混雑している整形外科を避けて、整骨院(接骨院)をメインにして施術を受けているパターンです。
自賠責保険は、整骨院(接骨院)を整形外科と同等には見ておらず、整形外科の治療を補完する代替医療というスタンスです。
このため、整形外科を基本として最低限2週間毎に通院したうえで、整骨院には週3日程度は通う必要があります。
整形外科には月1日程度しか受診しておらず、それ以外は整骨院の施術で済ませているケースは、ほとんど非該当になります。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
【医師が解説】後遺障害14級が認定される通院日数は?|交通事故
事故通院が2週間空くと一括対応打ち切りも
交通事故の通院が2週間空くと、保険会社は症状が軽いと判断して、治療費を早期に打ち切られる可能性が高まります。
忙しくて整形外科に通院する時間を捻出できないケースも多いでしょうが、むちうちや腰椎捻挫などの症状が続いているのであれば、がんばって整形外科に通院するべきでしょう。
一方、毎日通院するのも良くありません。保険会社から詐病を疑われて、任意一括対応を早期に打ち切られたり、示談交渉の際に難航する危険性が高まります。
<参考>
【医師が解説】交通事故にあったら毎日通院した方がいいのか?
【弁護士必見】事故の通院頻度は最低限条件
むちうち、腰椎捻挫、打撲では、通院日数は後遺障害14級9号が認定されるための最低条件に過ぎません。
通院日数をクリアしていることは必須であり、この条件をクリアしていても多くの事案は非該当になります。
通院日数は、約20項目近くある自賠責認定基準の入り口の条件に過ぎません。むちうち、腰椎捻挫、打撲で後遺障害14級9号が認定されるためには、更に高いレベルでの検討と対策が必要なのです。
<参考>
【医師が解説】むちうち(頚椎捻挫)後遺症認定のポイント|交通事故
【医師が解説】腰椎捻挫の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
まとめ
交通事故の通院が2週間以上空くと、むちうち、腰椎捻挫、打撲では、後遺障害に認定される確率が著しく低くなります。
また、交通事故の通院が2週間空くと、保険会社は症状が軽いと判断して、治療費を早期に打ち切られる可能性が高まります。
むちうち、腰椎捻挫、打撲などで後遺障害14級9号に認定されるためには、通院日数は最低限の条件に過ぎません。後遺障害14級認定のためには、更に高いレベルでの検討と対策が必要です。
むちうち、腰椎捻挫、打撲などの後遺障害14級認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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