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【医師が解説】過剰診療のリスクと整骨院|交通事故

「過剰診療」というフレーズを聞いても他人事に思えてしまいますね。しかし、交通事故で治療中の人にとっては、過剰診療は決して他人事ではありません。

 

あなたも、知らない間に「過剰診療」の被害者になっているかもしれないのです。ただでさえ交通事故に遭って辛い思いをしているのに堪ったものでないですね。

 

本記事は、年間1000例の交通事故事案を取り扱っている医療鑑定医師が、過剰医療は決して他人事ではない理由を説明しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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過剰診療(過剰医療)とは

 

過剰診療とは、医学的にみて合理性が認められないほど不必要な診療のことをいいます。交通事故診療においては、毎日施術に通うようなケースが多いです。

 

 

過剰診療が起こる3つの原因

健康保険による歯止めが効きにくい

交通事故とは関係の無い一般的な医療では、健康保険による歯止めが効くため、過剰診療は発生しにくいです。

 

交通事故診療では、自賠責保険や任意保険会社が治療費を払います。このため、健康保険の歯止めが効きにくいです。

 

 

整骨院の存在

交通事故診療では、医療機関だけではなく整骨院が施術を行うケースが多いです。整骨院にとって交通事故での施術は大きな収入源なので、頻回通院を促す傾向にあります。

 

 

通院頻度は多い方が良いと思い込んでいる被害者の勘違い

過剰診療は、交通事故被害者サイドに問題のあるケースも多いです。通院回数が多いほど、慰謝料が増えると勘違いしている人が後を絶ちません。

 

また、医療機関や整骨院に頻回に行くほど治療効果が上がると信じている人も少なくありません。

 

 

<参考>
【医師が解説】交通事故にあったら毎日通院した方がいいのか?

 

 

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過剰診療で発生する3つの問題

早期に任意一括対応を打ち切られる

毎日通院するなど、明らかに過剰診療を疑わせる治療行動をしていると、保険会社から早期に任意一括対応を打ち切られる可能性が高くなります。

 

 

治療費を自己負担しなければいけない可能性がある

自賠責保険の傷害部分の限度額は120万円です。治療費や施術費が120万円までであれば、保険会社の負担はありません。

 

このため、保険会社に負担が発生する120万円を超えてしまうと、示談交渉の際に慰謝料から超過分を差し引かれる可能性があります。

 

 

訴訟では被害者側に必要性の証明責任がある

示談交渉がまとまらずに裁判になった際には、被害者側に治療の必要性を証明する責任があります。

 

一般的に、むちうち(頚椎捻挫)などで120万円を超えるのは整骨院のケースが多いです。

 

整骨院で実施される施術に、ランダム化比較試験(RCT)などの医学的エビデンスは存在しません。このため、施術の必要性の証明は困難です。

 

 

<参考>
【日経メディカル】治療費の支払い打ち切りの背後に過剰医療も?!

 

 

 

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過剰診療しない方が良い3つの理由

 

慰謝料の観点から、毎日通院などの過剰診療を行わない方が良い理由は以下の3点です。

 

  • 慰謝料は通院頻度に比例しない
  • 医師との関係性が悪化するリスク
  • 示談交渉が難航するリスク

 

 

慰謝料は通院頻度に比例しない

慰謝料の自賠責基準

 

自賠責保険基準における慰謝料の基準は以下のとおりです。

 

  1. (治療期間 or 通院日数×2の少ない方)×4,300円/日
  2. 1ヶ月毎の通院日数の上限は15日

 

この基準を見ると分かりますが、上記②の条件のため1ヶ月間に15日を超えて通院しても、慰謝料増額にはつながりません。

 

慰謝料の観点からは、15日通院しても25日通院しても同じということになります。

 

 

慰謝料の裁判基準

 

慰謝料の相場は、自賠責保険基準と裁判基準で異なります。一般的に、裁判基準の方が高額の慰謝料です。

 

裁判基準の慰謝料は、治療期間が変動要素です。以下の表(金額は軽度むちうちのケース)のように、通院頻度は影響しません。

 

 

 

 

医師との関係性が悪化するリスク

医師は医療倫理に基づき治療を行います。このため、患者さんの要望による毎日の通院は、基本的に受け入れられない可能性が高いです。

 

患者さんが毎日通院することを要望すると、医師の立場では保険金詐取や詐病を想起します。

 

もちろん、交通事故被害者の早く治したいという気持ちは理解できます。しかし、医師は毎日通院しても治療効果を見込めないことを知っています。

 

このため慰謝料増額目的で、医師に毎日通院を要望することは厳として控えましょう。

 

 

示談交渉が難航するリスク

傷害分の慰謝料は、自賠責保険から120万円まで支払われ、それを超える金額は保険会社が支払います。

 

保険会社の立場では、120万円までなら自分の腹は痛まないです。しかし120万円を超えると、自社の支払いが発生してしまいます。

 

このため、毎日通院する等で医療費が膨れ上がっていると、示談交渉が難航する要因となります。

 

 

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過剰診療しても後遺障害の認定率は上がらない

 

むちうちや腰椎捻挫で後遺障害に認定されるためには、通院頻度が多い方が有利であることは間違いありません。

 

しかし、3日に一度以上通院していれば、それ以上通院日数を増やしても、後遺障害に認定される確率は変わりません。

 

むしろ、後遺障害認定の観点からも、過剰診療や詐病を疑われて治療費が早期に打ち切られるリスクがあるためお勧めできません。

 

 

週3日程度の通院がお勧め

 

弊社ではこれまで数千例の交通事故事案に取り組んできましたが、後遺障害認定には週3日程度の通院で十分と判断しています。

 

治療の観点でも、少なくとも毎日通院する必要性は無いと言い切れます。社内の10名以上の整形外科専門医の意見も同じです。

 

これらを総合的に判断すると、週3日程度の通院が治療効果と後遺障害認定の最適解だと考えています。

 

 

まとめ

 

過剰診療とは、医学的にみて合理性が認められないほど不必要な診療のことをいいます。

 

過剰診療が起こる原因として以下の3つが挙げられます。

 

  • 健康保険による歯止めが効きにくい
  • 整骨院の存在
  • 通院頻度は多い方が良いと思い込んでいる被害者の勘違い

 

 

一方、過剰診療で発生する問題として以下の3つが挙げられます。

 

  • 早期に任意一括対応を打ち切られる
  • 治療費を自己負担しなければいけない可能性がある
  • 訴訟では被害者側に必要性の証明責任がある

 

 

整骨院では毎日通院を求められるケースを散見しますが得策ではありません。そのような場合には、弁護士に相談しましょう。

 

 

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