捻挫でも病院に行くべきなのでしょうか? 整形外科医として、これまでたくさんの患者さんを診てきた経験では、ごく軽度の捻挫以外は整形外科を受診するべきでしょう。
そして捻挫の原因が交通事故である場合には、ごく軽度の捻挫であっても受傷してからすぐに整形外科に行く方が良いです。
本記事は、現役の整形外科医が、捻挫でも整形外科に行くべき理由について説明しています。
最終更新日: 2024/5/16
Table of Contents
捻挫とは
捻挫は関節だけではなく背骨にも起こる
捻挫は関節だけでなく、背骨でも起こります。関節の捻挫は足首や指などに多いです。一方、背骨の捻挫は、交通事故で受傷することが多く、むちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫が有名です。
<参考>
捻挫とは靱帯、腱、関節軟骨の損傷
関節の捻挫では、足首などを不自然な態勢で捻ったために、靱帯、腱、軟骨などを損傷します。損傷した部分が出血すると、関節の中に血が溜まって腫れます。
一方、頚部や腰部の捻挫では、椎間板や背骨をつないでいる関節や靭帯が損傷すると言われています。
関節捻挫の重症度分類
捻挫は、靱帯の損傷程度によって、以下のような3つに分けられます。
1度靱帯損傷
靱帯が一時的に伸びているだけなので、痛みや腫れは軽い
2度靱帯損傷
靱帯の部分的に切れている状態
3度靱帯損傷
靱帯が完全に切れている状態で、関節に不安定性がある
捻挫の症状は1ヵ月以上続くこともある
大きな外力が加わった部位の関節軟骨、靭帯、腱が傷ついて内出血するため、痛みや腫れが出現します。3度の損傷では、皮膚の下に青黒い出血斑が出現することもあります。
1度の捻挫による痛みや腫れは、1~2週間で症状が軽快する人が多いですが、2度捻挫以上では、1ヵ月以上続くケースもあります。皮下出血斑が消えるまでは、2~3週間かかることが多いです。
捻挫の検査はMRI検査が有用
捻挫した部分の状態に応じて、まずはレントゲン検査で骨折の有無を確認します。骨折が無くて関節の不安定性が強い場合には、MRI検査で精査することもあります。
すべての捻挫でMRI検査を実施するわけではありませんが、膝関節などで靭帯損傷を疑う場合には有用な検査です。
捻挫に対する治療はRICE処置が基本
痛みや腫れが強い場合にはRICE処置を行います。RICE処置とは、Rest(安静)、Icing(冷却)、 Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字から名付けられました。
1度の捻挫なら、包帯で捻じった部分を固定すると1~2週間で治ります。
捻挫でも病院に行くべき3つの理由
特に交通事故で受傷した捻挫を放置してはいけない理由には、以下の3つがあります。
- 本当に捻挫なのかは検査しなければ分からない
- 事故との因果関係を否定される可能性がある
- 後遺症が残っても後遺障害に認定されない
本当に捻挫なのかは検査しなければ分からない
治療が必要な骨折や靭帯損傷が本当に無いのかは、整形外科専門医にしか判断できません。整骨院(接骨院)はもちろんのこと、外科医であっても正確な診断は困難です。
局所の痛みや腫れが軽度であっても、ずれの無い骨折や靭帯損傷が発見されるケースは後を絶ちません。一度は整形外科専門医の診察を受けることを強く推奨します。
交通事故との因果関係を否定される可能性がある
交通事故に遭ってから2週間ほど病院に行かなかった場合には、保険会社から事故と無関係な治療とみなされる可能性があります。
しかし、交通事故から2週間も病院に行っていない事実は変えようがありません。交通事故に遭ったら、すぐに病院に行きましょう。
後遺症が残っても後遺障害に認定されない
捻挫をしっかり治療しても、痛みや腫れなどの後遺症が残る可能性があります。
その場合には、自賠責保険に後遺障害申請しますが、受傷してから3日以内に受診していないと、後遺障害に認定される可能性が著しく低下します。
自賠責保険の後遺障害認定の観点からも、交通事故に遭ったらすぐに医療機関を受診する必要があります。
<参考>
捻挫で病院に行くべき時期
受傷当日が望ましい
捻挫でも病院に行くべき3つの理由で説明したように、捻挫で病院行くべき時期は、受傷当日から3日目までが必須です。診療時間内であれば、受傷当日が望ましいでしょう。
夜間や祝祭日の交通事故では翌日
夜間や祝祭日の交通事故の場合には、軽い症状なら救急外来を受診するほどではありません。しかし、翌日には必ず受診するようにしましょう。
症状が強い場合には救急外来
痛みや腫れなどの症状が強い場合には、夜間や祝祭日の事故であっても救急外来を受診せざるを得ないでしょう。
捻挫の治療は整形外科と整骨院(接骨院)どちらがよい?
整形外科が圧倒的におすすめ
単純比較であれば、整形外科に通院するべきです。医学的にも、自賠責保険の後遺障害認定確率からも、整形外科への通院が圧倒的に有利です。
しかし、整形外科は医療機関なので数が少なく、診療時間が短いです。このため、忙しい人では通院しにくいケースも考えられます。
整形外科が近くに無かったり、診療時間内の通院が難しい場合には、整骨院(接骨院)での施術も選択肢のひとつです。
整骨院(接骨院)でも整形外科通院が必要
整骨院(接骨院)に行く場合には注意点があります。それは整形外科への通院も併用することです。
整骨院(接骨院)のみでは、保険会社から打ち切り対象になりやすいです。また後遺症が残ったとしても、自賠責保険で後遺障害に認定される可能性はゼロです。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
まとめ
捻挫でも病院に行くべきかは悩むところですが、ごく軽度の捻挫以外は病院の整形外科で診察を受けるべきでしょう。
そして捻挫の原因が交通事故である場合には、ごく軽度の捻挫であっても受傷してからすぐに病院に行く方が良いです。
捻挫でも病院に行くべき3つの理由には、以下の3つがあります。
- 本当に捻挫なのかは検査しなければ分からない
- 交通事故との因果関係を否定される可能性がある
- 後遺症が残っても後遺障害に認定されない
捻挫で病院に行くべき時期は、受傷当日が望ましいです。捻挫の治療は整形外科を強く推奨します。
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