交通事故であとから痛みが出ることは、日常診療でも珍しいことではありません。むしろ交通事故翌日の方が、痛みは強い傾向にあります。
しかし、その痛みを医師に伝えないでいると、保険会社の治療や後遺障害認定で不利な立場に追い込まれます。
本記事は、年間1000事案の交通事故事案を取り扱う整形外科専門医が、交通事故であとから痛みが出た場合の対処法と後遺障害ついて説明しています。
最終更新日: 2024/8/28
Table of Contents
交通事故であとから痛みが出たら医療機関を受診する
すぐに整形外科受診を
交通事故に遭った当日はそれほど症状が無くても、翌日以降に痛みが強くなることは珍しくありません。
そのような場合は、できるだけ早期に医療機関(病院もしくは開業医)を受診しましょう。
医療機関への受診が遅れると、後遺症が残っても後遺障害に認定される可能性が大幅に低下します。
<参考>
【医師が解説】むちうちの症状が出るまでの期間|交通事故の後遺症
初診日のあとから痛みが出たら?
交通事故に遭った当日に医療機関を受診しても、翌日には違う部位の痛みや症状が出ることがあります。このような場合には、連日になっても構わないので医療機関を受診することをお勧めします。
その理由は、骨折などが後になって分かるケースが少なくないことと、保険会社や自賠責保険が判断するための客観的資料(診断書や診療明細)に症状が記載されないからです。
交通事故であとから痛みが出る原因
事故当日は精神状態が不安定
交通事故に遭うと誰もが動揺します。手続きや事後対応に忙殺されて自分の身体と向かい合う余裕がありません。
このため、医療機関を受診してもすべての症状を医師に伝え切れないことは少なくありません。
局所の腫れは数時間遅れて発生する
交通事故直後には捻挫や打撲だけではなく骨折であっても、組織の腫れは高度でないことが多いです。しかし時間の経過ととも受傷した部位が腫れてきます。
受傷した部位の痛みは、腫れ(炎症)の強さに比例します。このことも、交通事故であとから痛みが出る原因となります。
むちうち(頚椎捻挫)の症状は首の痛みだけではない!
むちうちの症状は多彩です。頚部痛、肩こりなどの首を中心にした症状がメインですが、以下のような症状があります。
- 首の痛み
- 肩こり
- 上肢のしびれ、痛み、脱力感
- 上肢の脱力感
- 頭痛
- めまい
- 嘔気
- 耳鳴り
- 下肢のしびれ
- 動悸
- 全身倦怠感
首の痛み、肩こり、上肢のしびれや痛み、頭痛などは、むちうちの症状として有名ですが、めまいや耳鳴りなどもむちうちで発症する可能性があります。
交通事故とは直接関係無いと思われる症状であっても、医療機関を受診して医師に相談しましょう。
<参考>
むちうちの症状が出るまでの期間
受傷当日から翌日にかけてが最も多い
むちうちの症状が出るまでの期間は、受傷当日から翌日にかけてが最も多いです。
交通事故のあとから痛くなるのは翌日以降
交通事故のあとから痛くなるのは、数時間~1日経ってからのケースが多いことです。交通事故直後ではないことに注意が必要です。
具体的には、事故当初は首の違和感が少しある程度だったのに、翌日起きると首が動かなくなっていたというパターンです。
このような患者さんを診るのは日常茶飯事です。首の痛みは、当日よりも事故翌日の方が強くなりがちなのには注意が必要です。
ほとんどは交通事故から3日以内に痛くなる
むちうちの症状は、受傷してから3日(72時間)以内に発症するケースが大半です。さすがに受傷してから3日間も無症状なのは考えにくいです。
それ以降に発症した事例では、明らかに交通事故と因果関係があると言えるケースはほとんど経験したことがありません。
受傷してから72時間という数字は、ある有名な医学論文に出てくる期間です。そして実臨床の肌感覚とも、おおむね合致します。
保険会社は、この論文を根拠として遅れて発症したむちうちの症状は、事故とは無関係と主張します。医学的には真っ当な主張なので、反論することは難しいのが現実です。
交通事故で1ヵ月あとから痛くなることはない
むちうちは事故当日にはあまり症状が無く、翌日以降に痛みが強くなる傾向にあります。
このように書くと、事故から1ヶ月してからでも発症する可能性があると思うかもしれません。
しかし実際には、交通事故から1ヶ月してから首の痛みや手足のしびれが出てきた場合は、事故とは無関係の私病です。
もちろん、交通事故から数年経過してから、むちうちの症状が出ることもありません。数年してから発症したものは私病です。
交通事故のあとからの痛みを予防する方法
痛みどめ(消炎鎮痛剤)の服用
私たち整形外科医は経験的に、むちうち患者さんの症状は交通事故翌日に強くなることを知っています。
このため、交通事故当日は首の違和感程度の症状しか無くても、積極的に消炎鎮痛剤を処方するようにしています。
局所の炎症が発生する前に消炎鎮痛剤を服用することで、できるだけ炎症の併発を未然に抑え込むことが治療目的です。
交通事故直後は整骨院に行かない
整骨院で実施される施術は、首回りの軟部組織に大きな負荷をかけます。交通事故に遭って間もない時期に、マッサージなどの施術を受けると炎症が強くなって症状が長引く要因になります。
このため、交通事故に遭ってからしばらくの間は、整骨院に行かない方がよいでしょう。早くむちうちの症状を治したいのであれば、必ず守るべき事項と言えます。
<参考>
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
【弁護士必見】耳鳴りや難聴は因果関係を問われやすい
弊社では年間1000例の交通事故事案に対応していますが、その中でもむちうちで発症した耳鳴りや難聴は、事故との因果関係を問われやすいと感じています。
その理由は、交通事故被害者だけでなく医師も耳鳴りや難聴は交通事故とは関係無いと思いがちだからです。
交通事故から数日して難聴に気付く例も多いですが、ほとんどの事案では交通事故との因果関係を否定されて非該当になっています。
これらの非該当事案の問題点は、受傷早期から症状があったにもかかわらず、その症状を医師に伝えていなかったことに尽きます。
<参考>
【医師が解説】耳鳴り・難聴が後遺症認定されるポイント|交通事故
交通事故のあとから出た症状でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
交通事故のあとから出た痛みの後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故のあとから出た痛みが後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故のあとから出た痛みでお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
交通事故であとから痛みが出たら、すぐに医療機関を受診しましょう。初診日のあとから痛みが出た場合でも、連日になっても構わないので医療機関を受診することをお勧めします。
むちうちの症状が出るまでの期間は、受傷当日から翌日にかけてが最も多いです。しかし、ほとんどのケースは受傷後72時間以内に発症するため、事故から1ヶ月して、むちうち症状が出ることはありません。
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