交通事故で発生する「むちうち」では、首の痛み、頭痛、手の痛み・しびれなどの症状が有名です。しかし、それ以外にも眩暈(めまい)や耳鳴りが出現することもあります。
本記事は、むちうちの後遺症であるめまいが、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
Table of Contents
めまいとは
めまいの種類
浮動性(動揺性)めまい
むちうちを受傷すると、フワフワと浮いているような感覚が続くケースがあります。このような状態は、浮動性めまいと呼ばれています。
浮動性めまいは、自律神経失調症の症状のひとつであるケースが多いです。まずは整形外科の主治医に相談してみましょう。
回転性めまい
自分は動いていないのに、天井や壁がぐるぐる回る状態を回転性めまいといいます。回転性めまいは、耳自体に原因があることが多いです。回転性めまいでは、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫が後遺症認定されるポイント|交通事故
めまいが交通事故で発症する原因
脳が由来のケース
脳出血
脳挫傷
外傷性くも膜下出血
三半規管が由来のケース
頭蓋底骨折
側頭骨骨折
内耳損傷
自律神経失調症(むちうち)
むちうちが原因のケース
むちうちでは、めまい、耳鳴り、目のかすみなどの自律神経失調症の症状が発症する可能性もあります。自律神経の一種である交換神経は頚椎の前方に存在します。
交通事故で頚椎の周囲に炎症が発生すると、交感神経が刺激されて耳の機能をつかさどる部分の血流が低下するといわれています。その結果、めまいや耳鳴りを発症するのです。
このように、むちうちに自律神経失調症が合併した状態は、バレリュー症候群(Barré-Liéou syndrome)と呼ばれています。
<参考>
【医師が解説】耳鳴り・難聴が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】バレリュー症候群の後遺障害認定ポイント|交通事故
むちうちの「めまい」はストレスで発症する?
前述の原因以外にも、めまいはストレス、寝不足、疲労などでも発症すると言われています。めまいの原因となる三半規管は、ストレスに弱いです。
交通事故によるストレスや、首の痛みなどによるストレスに対して、過敏に反応してめまいを発症するケースもあります。
めまいとMRI検査
めまいの検査として、温度眼振検査(カロリック検査)などの機能検査があります。
自賠責認定基準においてもこれらの検査結果で判定されますが、実臨床では頭部MRI検査が施行されることもあります。
MRI検査を施行する理由は、急性のめまいか慢性のめまいかによって異なります。
急性のめまいの場合には、脳の血管の病気(脳幹梗塞、小脳出血など)がないかをMRI検査で確認します。
一方、慢性的にダラダラ続くむちうちに合併しためまいの場合は、脳腫瘍(例えば前庭神経や聴神経、小脳腫瘍など)が潜んでいると困るので、MRI検査を実施します。
これらの出血や腫瘍が無ければ、眼振や神経症状(手足のしびれ 頭痛など)があっても、MRI検査では異常がないという状態です。
つまり、頭部MRI検査でわかることは、前庭神経腫瘍、脳梗塞、脳出血の有無だけだということです。
三半規管や耳石器などの前庭器はサイズが小さすぎるため、現状の性能のMRIでは異常を感知できません(一部の大学での研究レベルでは報告例もあるようです)。
めまいの原因として最も多いとされる前庭器障害では、頭部MRI検査では異常なしという結果になります。
このため、画像検査ではなく、温度眼振検査(カロリック検査)などの機能検査を行い、めまいの診断をつけることになります。
めまいの治し方
めまいをすぐに治す方法
めまいをすぐに治す方法として、以下の2つが挙げられます。
- 安静と水分摂取
- 目や耳から入る刺激を避ける
安静と水分摂取
めまいが起こっている状態で立っていると転倒する可能性があります。まずは座るか横になりましょう。めまいの原因として脱水もあり得ます。適量の水分を補給してください。
目や耳から入る刺激を避ける
しばらくしても、めまいが収まらないようなら、部屋を暗くするなどして、目や耳から入る刺激をできるだけ避けてください。
治らない場合には医療機関を受診
前述の2つの方法で、めまいが治らない時には必ず医療機関を受診しましょう。めまいの原因が脳に由来するケースでは、命にかかわる可能性もあります。
むちうちで後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
むちうちの「めまい」で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
【むちうち】めまいで考えられる後遺障害
12級13号
通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14級9号
めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められらないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの
【すべての傷病】めまいで考えられる後遺障害
3級3号
生命の維持に必要な身のまわりの処理の動作は可能であるが、高度の失調または平衡機能障害のために労務に服することができないもの
5級2号
著しい失調または平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの
7級4号
中等度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの
9級10号
通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12級13号
通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14級9号
めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められらないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの
【弁護士必見】めまいの後遺障害認定ポイント
12級13号
むちうちで発生するめまいは、自律神経失調症によって三半規管に異常をきたすケースが考えられます。12級13号が認定されるためには、温度眼振検査(カロリックテスト)の有意所見が必要です。
むちうちの症状としてのめまいでは、整形外科にしか通院していないケースが多いです。しかし、めまいで12級13号の等級認定を目指すのであれば、耳鼻咽喉科受診は必須といえます。
14級9号
14級9号では、温度眼振検査(カロリックテスト)の有意所見は必須ではありません。しかし、後遺障害等級が認定されるためには、神経障害(むちうち)での自賠責認定基準を満たす必要があります。
しかし、14級9号が認定されるための通院頻度等を鑑みると、めまい単独で14級9号の自賠責認定基準を満たすことは困難と思われます。
したがって、後頚部痛などと同時にめまいが認定されることはあっても、めまい単独で後遺障害等級認定されることは難しいと思われます。
<参考>
【医師が解説】めまい(平衡機能障害)の後遺障害認定ポイント|交通事故
軽微な追突事故でめまいを併発するのか?
めまいは、耳鼻科領域の傷病で後遺障害の争点になることが多いです。前述のように、めまいの原因として、①脳起因 ②三半規管起因の2つが挙げられます。
①②とも、温度眼振検査で有意所見があると思われがちですが、意外なことに①脳起因のめまいでは、温度眼振検査(カロリックテスト)で有意所見がでない症例の方が多いです。
それでは、どのようにして脳起因のめまいの存在を証明するかというと、脳起因のめまいの原因は小脳や脳幹の異常によるものであることがポイントです。
つまり、外傷であれば脳出血なので、CTやMRIで何らかの所見を認めれば説明できる可能性があります。一方、PETが有意との説もありますが、PETは生体内のブドウ糖代謝を見るものであり、悪性腫瘍や脳代謝の精査が目的です。
したがって、一般的にはめまいの原因究明のためにPETを施行することはなく、MRIや CTで事足ります。
②三半規管起因のめまいでは、当然のごとく温度眼振検査で有意所見が必須ですが、温度眼振検査で有意所見があっても、ストレートに12級や9級とならないのがポイントです。
自賠責認定基準では、14級の事案は数字上は有意所見であっても、軽微な外傷等で実臨床の観点から事故との因果関係を否定された結果であることが多いです。
このように事故規模がボトルネックになることが多いです。実臨床では軽微な追突事故であっても、耳石が動いてしまって、めまいが発生することは時々あるようです。
むちうちの「めまい」の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、むちうちの「めまい」の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
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等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
むちうち「めまい」の後遺症でお悩みの被害者の方へ
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まとめ
むちうちで発生するめまいでは、12級13号の等級認定は極めてハードルが高いです。温度眼振検査(カロリックテスト)の有意所見は必要最低条件ですが、それだけで後遺障害認定されることはありません。
一方、14級9号では、むちうちの自賠責認定基準に準じているため、めまい単独では自賠責認定基準を満たすことは困難です。このため、後頚部痛などのむちうち症状との合わせ技での後遺障害認定となります。
むちうちのめまいでお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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