交通事故で脳挫傷を負って集中治療を受けたにもかかわらず、後遺障害認定が「非該当」になってしまうケースは少なくありません。
退院後も記憶障害や注意力低下、感情の不安定さなど生活への影響が続いているのに、認定されない結果に納得できない方も多いでしょう。
実は、脳挫傷が後遺障害に認定されるには、画像所見の有無、症状固定時の医証など、複数の医学的・証拠的要素が揃っていないと難しいです。
ただし、非該当になった場合でも、原因を分析して必要な医証を整えれば、異議申し立てによって後遺障害に認定される可能性もあります。
本記事では、脳挫傷が後遺障害認定されないよくある理由と、非該当を覆すための具体的な対処方法を分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/12/7
Table of Contents
脳挫傷の後遺障害が非該当になる6つの理由
症状固定期の画像所見が乏しい
脳挫傷の後遺障害認定では、MRIやCT検査で脳組織の損傷を示す画像所見が必要です。
受傷直後の急性期に、脳挫傷の「派手な」所見があっても、症状固定時の慢性期には消失しているケースがあります。
一方、急性期には存在しない脳室拡大・びまん性脳萎縮などの画像所見が後遺障害認定では重視されるため、症状固定期の画像検査が重要です。
意識障害の記録がない
高次脳機能障害の後遺障害認定では、受傷後の意識障害の有無や程度が極めて重要です。
自賠責保険では、「半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態が6時間以上継続」「健忘または軽度の意識障害が1週間以上続いた」が認定基準です。
軽度な意識障害は、カルテに記載されないこともあり、「意識障害なし」として扱われると非該当になりやすいです。
脳挫傷と後遺症に医学的な整合性がない
後遺障害認定では、脳挫傷による脳損傷部位と、残っている後遺症との間に医学的な整合性が求められます。
例えば、前頭葉の損傷であれば遂行機能障害や社会的行動障害、側頭葉の損傷であれば記憶障害といった関連性が認められる必要があります。
損傷部位と症状の関連性を医学的に説明できないと、非該当とされる可能性があります。

神経心理学的検査が実施されていない
高次脳機能障害の症状を客観的に証明するためには、神経心理学的検査が必要です。
神経心理学的検査は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害などの認知機能の低下を評価するものです。
神経心理学的検査が実施されていない、または結果が不十分な場合、症状の重症度が十分に伝わらず、等級評価が低くなったり非該当になります。
適切な神経心理学的検査の評価バッテリーを組み合わせて、高次脳機能障害の有無や程度を評価することが重要です。
<参考>
高次脳機能障害の診断テストと評価バッテリー|交通事故の後遺障害
治療期間が短い
脳挫傷であっても、後遺障害認定を受けるためには、継続的な治療と適切な通院が必要です。
治療期間が短い場合、「症状が軽微」「まだ回復の可能性がある」と判断されて、非該当になる可能性があります。
高次脳機能障害は、症状固定まで1年程度かかることが多いとされています。症状固定の時期を慎重に判断して、十分な治療を行いましょう。
事故の規模が軽微である
事故の規模が軽微な場合、受けた衝撃も小さいと判断されて、後遺障害の程度は軽いとみなされることがあります。
物損資料や車の損傷写真などから事故の衝撃が小さいと判断されると、脳挫傷との因果関係が疑われて、非該当になるリスクが高まります。
ただし、軽度な衝撃でも重い症状が現れることはあるため、事故規模と症状の関係を丁寧に説明する必要があります。
脳挫傷の後遺障害が非該当になった時の対処法は?
後遺障害が非該当になった原因を調べる
まず、非該当となった理由を分析することが重要です。自賠責保険からの後遺障害等級認定結果には、非該当となった理由が記載されています。
画像所見の不足、意識障害の記録がないこと、神経心理学的検査の未実施など、具体的な原因を特定しましょう。
原因分析は、異議申し立て成功の第一歩です。交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、一般の方が見落としがちな部分まで精査してもらえます。
脳挫傷の認定基準を満たすための医証を集める
非該当の原因を分析したら、後遺障害認定基準を満たすための追加の医学的証拠(医証)を収集します。
具体的には、新たな画像検査(MRI、CT)、神経心理学的検査の実施、医師意見書の作成、日常生活状況報告書の補強などが考えられます。
特に、医師意見書は、診断書や検査結果だけでは伝わりにくい症状の詳細を、専門医の視点から説明する重要な書類です。
新たな医証を添付せずに異議申し立てをしても、後遺障害等級が変更される可能性はほとんど無いことに注意が必要です。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
自賠責保険に異議申し立てする
追加の医証を準備したら、自賠責保険に対して異議申し立てを行います。異議申し立ては無料で、何度でも申請可能です。
審査期間は通常2〜4ヶ月ですが、高次脳機能障害の場合は6ヶ月以上かかることもあります。
なお、損害賠償請求には時効があり、事故日または症状固定日から5年以内に請求を行う必要があります。
異議申し立ての成功率は約10〜15%とされていますが、適切な医証を提出することで成功率は上昇します。
尚、脳挫傷が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
脳挫傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
脳挫傷の後遺障害認定サポートで当社が提供できること
弁護士向け専門サポート
弊社では、交通事故で受傷した脳挫傷の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者への弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

脳挫傷の後遺障害が非該当でよくある質問
脳挫傷なのに後遺障害が非該当になるのはなぜですか?
脳挫傷を受傷しても後遺障害が非該当になる主な原因は、画像所見の不足、意識障害の記録がないこと、神経心理学的検査の未実施などです。
脳挫傷による高次脳機能障害は外見からは分かりにくいため、審査時に症状が十分に伝わっていないと、実態より軽い評価を受けやすいです。
特に、脳挫傷による高次脳機能障害が後遺障害に認定されるには、客観的な医学的証拠の収集が不可欠です。
非該当を覆すために必要な証拠や資料は何ですか?
異議申し立てで脳挫傷の非該当を覆すためには、新たな医学的証拠が必要です。具体的には以下のような資料です。
- 追加のMRI・CT画像検査
- 神経心理学的検査
- 医師意見書
- 画像鑑定報告書
- 日常生活状況報告書
前回申請で、脳挫傷の後遺障害認定基準に足りなかった点を補足する資料を集めることが重要です。
MRIやCTで異常が写らないと非該当になるのですか?
画像所見がないと非該当になりやすいです。しかし、びまん性軸索損傷では、高度の障害が残っているのに画像所見の無いケースもあります。
高次脳機能障害の症状があるのに非該当なのはなぜですか?
高次脳機能障害は本人に自覚がないことが多く、また外見からは分かりにくいため、症状の存在が審査機関に十分伝わらないことがあります。
また、症状があっても、意識障害の記録がない場合や画像所見が乏しい場合は、後遺障害に認定されないことがあります。
医師の診断書や神経心理検査の内容は見直せますか?
はい、見直すことができます。後遺障害診断書の記載内容が不十分な場合は、医師に追記や修正を依頼することができます。
また、必要な神経心理学的検査が未実施であれば、症状固定後でも検査を実施して結果を提出することが可能です。
休職や日常生活の支障は後遺障害認定に影響しますか?
はい、影響します。高次脳機能障害の後遺障害認定では、日常生活や就労への影響が重視されます。
休職の事実や、仕事上のミス・トラブル、家事ができなくなった状況などは、後遺障害の程度を示す重要な証拠になります。
日常生活状況報告書に具体的なエピソードを記載することで、症状の実態を伝えることができます。
<参考>
日常生活状況報告の書き方とポイント|高次脳機能障害の後遺障害
脳挫傷で通院期間が短い(または通院頻度が少ない)場合、異議申し立ては不利になりますか?
通院期間や通院頻度が短いと、「症状が軽微」「回復する可能性がある」と判断されやすく、異議申し立てで不利になる可能性があります。
ただし、症状固定後も自費で通院を継続している場合は、症状の一貫性を示す加点要素になりえます。
通院記録だけでなく、神経心理学的検査や日常生活状況報告書など、他の証拠で補強することが重要です。
<参考>
事故から時間が経っている場合、異議申し立ては不利になりますか?
事故から時間が経過していると、事故との因果関係の立証が難しくなったり、症状が事故以外の要因によるものと疑われるリスクがあります。
損害賠償請求には症状固定日から5年という時効があるため、早めの対応が推奨されます。時効が近い場合は時効更新措置を講じる必要があります。
まとめ
脳挫傷の後遺障害が非該当になるのは、以下のような理由があります。
- 症状固定時の画像検査で所見が乏しい
- 意識障害の記録がなく基準を満たさない
- 神経心理学的検査が行われず高次脳機能障害を証明できない
- 治療期間や通院日数が短い
- 損傷部位と症状に医学的整合性がない
- 事故規模が軽微で因果関係が疑われる
非該当時は理由を分析して、画像検査や検査結果、医師意見書などの医証を集めて、異議申し立てを行うことが重要です。
脳挫傷の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
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