交通事故をきっかけに発症する外傷性てんかんは、発作の頻度や脳波の所見が一定しないため、後遺障害認定で「非該当」や低い等級と判断されやすい傾向があります。
その結果、十分な補償が受けられず悩む方は少なくありません。しかし、異議申し立てを行うことで認定結果を覆して、正当な等級を獲得できる可能性があります。
本記事では、外傷性てんかんの異議申し立てにおける具体的な手順や必要書類、成功につながるポイントを解説して、実践的な対策を紹介します。
最終更新日: 2025/9/17
Table of Contents
外傷性てんかんが非該当になる理由
外傷性てんかんで非該当と判断されやすいケース
外傷による脳損傷が画像所見で認められなかったり、てんかん発作が他の要因によるものと判断されると非該当になりやすいです。
また、事故後の発作記録が不十分であったり、発作の型や頻度が後遺障害認定基準を満たしていないと非該当になります。
Walkerの診断基準を全て満たさない、脳波異常が認められない、医師意見書の信憑性が低いケースも非該当になりやすいです。
外傷性てんかんの後遺障害認定基準
外傷性てんかんの後遺障害認定基準は、発作の型(転倒や意識障害を伴うか)、発作の頻度(1ヶ月に1回以上など)、薬での制御状況、脳波検査結果などが総合的に判断されます。
尚、1ヶ月に2回以上の発作がある場合には、通常高度の高次脳機能障害を伴っています。
したがって、高次脳機能障害で3級以上の認定基準に該当する事案に関しては、高次脳機能障害の認定基準で判断されることになります。
等級 | 認定基準 |
5級2号 | 1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」又は「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」(以下「転倒する発作等」という。)であるもの |
7級4号 | 転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの |
9級10号 | 数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかんの発作がほぼ完全に抑制されているもの |
12級13号 | 発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの |
5級2号
1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」又は「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」(以下「転倒する発作等」という。)であるもの
転倒する発作には、「意識消失が起こり、その後ただちに四肢等が強くつっぱる強直性のけいれんが続き、次第に短時間の収縮と弛緩をくりかえす間代性のけいれんに移行する」強直間代発作や、脱力発作のうち「意識は通常あるものの、筋緊張が消失して倒れてしまうもの」が該当します。
「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」には、意識混濁を呈するとともにうろうろ歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないものが該当します。
7級4号
転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの
9級10号
数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかんの発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級13号
発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの
外傷性てんかんの異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
異議申し立ては、後遺障害等級や非該当判定を受けた後、不服がある場合に行います。
最初に異議申立書を作成して、新たな診断書や追加検査結果、医師意見書、画像鑑定報告書、陳述書等とともに保険会社に提出します。
異議申立書には主張内容やその理由、資料の一覧を明記します。診断書や追加検査などの新規医証があることが重要です。
外傷性てんかんの異議申し立ての申請先
申請先は、主に「任意保険会社」または「自賠責保険会社」となります。まずは保険会社へ書類提出して、そこから損害保険料率算出機構に回送されます。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体の手数料は不要です。ただし、診断書や新たな検査を実施する場合は、数万円程度の費用が発生するケースもあります。
審査期間は2~4ヶ月かかることが多く、事案が複雑だとさらに長期化するケースもあります。
外傷性てんかんの効果的な異議申し立て準備
効果的な異議申し立てには、前回認定結果を客観的に覆す新たな診断書や検査結果、医師意見書などをできる限り多く集めることが肝要です。
また後遺症による生活・就労への具体的影響を示すため、日常生活動作の記録や家族による上申書も有効です。
専門医や法律の専門家と連携して、主観的な訴えだけに頼らず、診断基準や認定要件に基づく主張・資料整備が重要となります。
外傷性てんかんの異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
外傷性てんかんが非該当になる原因を分析
外傷性てんかんで非該当とされる原因として、医証の不足、後遺障害認定基準を満たさない、診断根拠の曖昧さなどが挙げられます。
具体的には、発作の頻度や内容記録が不足、脳波・画像所見・発作動画を提出できていないといったケースが多いです。
過去の申請で何が不足していたために、予想していた後遺障害等級に届かなかったのかを徹底的に分析して、医証の不備をリストアップしましょう。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
外傷性てんかんの後遺障害認定条件をクリア
後遺障害に認定されるには、各等級毎の「発作の型」「発作頻度」「画像所見」などの認定基準をクリアする必要があります。
異議申し立てでは新たな医証が必須
外傷性てんかんの異議申し立ての成功には、後遺障害認定基準を満たすための新たな医証が必要不可欠です。具体的には、追加の画像検査、第三者による医師意見書、画像鑑定報告書などです。
新たな医証がない異議申し立ては、後遺障害認定に結びつきにくいです。足りない検査や診断記録を補う医学的資料を集めることが重要です。
<参考>
外傷性てんかんの後遺障害認定ポイント
外傷性てんかんが後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
外傷性てんかんの後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
外傷性てんかんの後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で発症した外傷性てんかんが、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
外傷性てんかんの後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
外傷性てんかんの異議申し立てでよくある質問
発作が医師の前で起きていない場合でも証明できるのか?
医師が直接発作を目撃していなくても、家族や第三者の証言、発作の動画記録、発作状況の詳細な陳述書などを提出することで証明可能です。
診断は問診・目撃証言・生活記録・発作日誌など多角的に判断されるため、客観記録の整備が重要です。
てんかん波が脳波検査で出なければ認定されないのか?
脳波でてんかん波が検出されなくても、後遺障害に認定される可能性があります。
発作間欠期には脳波異常が出ないケースも多く、発作状況・事故後の経過・画像所見・他の医学的所見との総合判断がなされます。
脳波異常が無いケースでは、てんかん発作の具体的記録や画像検査の所見、医師意見書などが重視されます。
交通事故との因果関係をどう証明すればよいか?
因果関係は「交通事故前に発作歴がない」「受傷が脳損傷を起こす程度である」「発作が外傷後短期間で発生した」「他疾患がない」「脳波や画像所見の一致」などWalker基準に基づいて証明します。事故後の症状経過記録の整備が不可欠です。
抗てんかん薬でコントロールできている場合でも後遺障害になるのか?
抗てんかん薬で発作がほぼ完全に抑制されていても、9級や12級の後遺障害認定がされる可能性があります。
薬物治療が続いている事実や、発作が再発するリスク・社会的制限が伴うなど、生活や労働への影響があれば後遺障害と評価されます。
まとめ
外傷性てんかんは交通事故などの頭部外傷を原因として発症して、発作の頻度や型によって後遺障害等級が決まります。
しかし、脳損傷が画像で確認できなかったり、発作記録が不十分だと非該当とされることもあります。
認定基準は発作の型や頻度、薬の効果、脳波所見などが総合的に判断され、5級から12級までの等級に分類されます。
異議申し立てでは新たな診断書や検査結果、医師意見書を揃えることが成功の鍵です。証拠の補強と因果関係の立証が重要になります。
外傷性てんかんの後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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