新型コロナウイルスが5類感染症に移行した現在でも、診断をめぐる混乱や誤診のリスクは依然として存在しています。
特に、風邪やインフルエンザ、肺炎などと症状が似ていることから、コロナと他の病気の見分けが難しいケースも少なくありません。
さらに、PCR検査や抗原検査には一定の偽陽性・偽陰性のリスクがあり、これが診断ミスや治療の遅れにつながることもあります。
もし誤診によって症状が悪化したり、不要な隔離や医療的措置を受けたら、医療ミスとして損害賠償を請求できる可能性もあります。
本記事では、コロナの誤診が起きる原因から、実際の損害賠償請求の方法までをわかりやすく解説して、適切な対応のための情報を提供します。
最終更新日: 2025/7/17
Table of Contents
コロナ誤診とその要因
コロナと類似症状の病気
新型コロナウイルス感染症は、発熱、咳、のどの痛み、鼻水、頭痛など、風邪やインフルエンザ、RSウイルス感染症などと非常に似た症状を示します。
特にオミクロン株ではその傾向が強く、症状だけでコロナか他の病気かを見分けるのは困難です。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、咽頭炎、急性気管支炎、肺炎なども同様の症状を呈するため、自己判断は危険であり、医療機関での診断が重要です。
COVID-19診断の難しさ
COVID-19の診断は、症状が多様で非典型的な場合も多く、他の感染症との鑑別が難しい点が特徴です。
発熱や咳などの一般的な症状だけでなく、味覚・嗅覚異常なども現れることがありますが、必ずしも全ての患者に見られるわけではありません。
また、感染初期や軽症例では症状が乏しい場合もあり、診断エラーのリスクが高まります。流行状況や接触歴の有無も考慮しながら、総合的な判断が求められます。
PCR検査の限界と誤診の原因
PCR検査は新型コロナウイルス診断の中心的な手法ですが、100%の正確性はありません。
検体採取のタイミングや手技、検体の種類によって感度が左右され、偽陰性(本当は感染しているのに陰性となる)や偽陽性(感染していないのに陽性となる)が一定の割合で発生します。
特に感染初期やウイルス量が少ないと、偽陰性が生じやすいです。検査機器や試薬の管理ミス、作業手順の誤り、検体の取り違いなども誤診の要因となります。
コロナ誤診の主なケースとは
PCR検査や抗原検査の偽陽性・偽陰性事例
PCR検査や抗原検査では、偽陽性(感染していないのに陽性判定)や偽陰性(感染しているのに陰性判定)が一定の確率で発生します。
例えば、検体採取のタイミングや方法によってウイルスが検出されず偽陰性となることがあります。
また、微量のウイルスや他の要因で偽陽性となる場合もあり、実際に陽性判定後に再検査で陰性と判明した事例や、複数回陰性の後に陽性と診断されたケースも報告されています。
診断ミスによる治療遅延や症状悪化
新型コロナの流行下では、発熱や咳などの症状がコロナと他疾患で重なるため、誤診や診断の遅れが生じやすくなっています。
たとえば、コロナと疑い過ぎて他疾患の治療が遅れたり、逆にコロナを見逃して重症化するケースが報告されています。
誤診による治療遅延は症状の悪化や最悪の場合死亡につながることがあり、医療現場では慎重な鑑別と迅速な対応が求められています。
コロナ誤診が損害賠償請求につながる条件
医師の過失(注意義務違反)とは何か
医師の過失とは、「当時の医療水準に照らして、患者の症状や検査結果から本来疑うべき病気を見逃した」「必要な検査や治療を怠った」など、診療行為が医師の注意義務に違反した場合に認められます。
単なる誤診だけでなく、合理的な判断や適切な医療行為がなされなかったことがポイントとなり、これが認められると医療過誤として法的責任が問われます。
損害との因果関係の立証ポイント
損害賠償請求では、医師の過失と患者に生じた損害(症状悪化や死亡など)との間に「因果関係」があることを患者側が証明する必要があります。
コロナ誤診の場合、感染経路や症状の進行が複雑なため、因果関係の立証は難しいとされます。
診療記録や検査結果などの証拠をもとに、「過失がなければ損害は生じなかった」と合理的に認められる必要があります。
実際の損害賠償請求事例と判決の傾向
コロナ関連の誤診訴訟では、医師や医療機関の過失が明確に認められた場合に損害賠償が命じられた例があります。
たとえば、診断ミスにより治療が遅れ重篤化したケースや、感染対策の不備による院内感染などが争点となりました。
ただし、感染経路や因果関係の立証が困難なため、請求が棄却される事例も多いのが現状です。
慰謝料や治療費、逸失利益などが賠償対象となりますが、判決では「過失」「因果関係」「損害額」の三要素が厳格に審査されます。
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
コロナ誤診で損害賠償を請求する手順
証拠収集のポイント(診療記録・検査結果など)
損害賠償請求を行うには、診療録(カルテ)、検査結果、画像診断データ、看護記録などの医療記録が重要な証拠となります。
これらは医療機関に開示請求を行い、内容を正確に把握することが不可欠です。証拠の収集は、後の交渉や訴訟の成否を左右するため、慎重かつ漏れなく行う必要があります。
弁護士への相談と専門家の活用
医療過誤に詳しい弁護士に相談することで、誤診が法的にどのような過失に該当するか、証拠の整理や請求の見通しを専門的に判断してもらえます。
弁護士は協力医(専門医)などの意見を取り入れて医療調査を実施して、医学的観点からも過失の有無を評価します。
<参考>
示談交渉
証拠が揃ったら、まずは病院側と示談交渉を行います。病院が責任を認める場合、訴訟をせずに賠償金の支払いで和解できるケースが多くあります。
責任を否定する場合でも、交渉の過程で裁判所の助言を受けて和解に至ることも多く、実際に医療事件の半数以上が示談や和解で解決しています。
調停と医療ADR
示談が成立しない場合は、裁判所の調停や医療ADR(裁判外紛争解決手続き)を利用できます。
医療ADRでは、医療分野に詳しい弁護士や医師が仲裁人となり、当事者間の対話を重視した解決を目指します。
証拠が不十分でも柔軟な話し合いが可能で、訴訟よりも費用や時間を抑えられるメリットがあります。
訴訟
調停やADRでも解決しない場合は、訴訟に進みます。訴訟では、医師の過失、損害、因果関係の3要件を証拠に基づき立証する必要があります。
裁判は長期化やコスト増のリスクもありますが、法的拘束力のある判決や和解が得られます。判決では証拠の充実度や協力医による医師意見書が重要な役割を果たします。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
コロナ誤診でよくある質問
コロナPCR検査は正確ですか?
PCR検査は新型コロナウイルスの診断で広く用いられており、特異度(感染していない人を正しく陰性と判定する割合)は99%以上と非常に高い水準です。
一方、感度(感染している人を正しく陽性と判定する割合)は70~80%程度とされ、検体採取のタイミングや方法によっては偽陰性が生じることがあります。
したがって、PCR検査は非常に信頼性が高いものの、100%正確とは言えません。
抗原検査で偽陽性が出る確率は?
抗原検査は短時間で結果が得られる利点がありますが、PCR検査と比べると精度はやや劣ります。大規模調査では、抗原検査の偽陽性率は0.05%程度と報告されています。
つまり、2,000回に1回程度の割合で、実際は感染していないのに陽性と判定されることがあります。検査キットの品質や検体採取の方法によっても偽陽性が発生する可能性があります。
コロナ5類で何日休まないといけない?
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した後は、発症翌日から5日間は外出を控えることが推奨されています。
また、症状が軽快してから24時間は外出を控えるよう求められています。
発症から10日間はウイルス排出の可能性があるため、マスク着用や高齢者との接触を避けるなど、周囲への配慮も重要です。
コロナの誤陰性率は?
PCR検査の誤陰性率(感染しているのに陰性と判定される確率)は、検査を受けるタイミングによって大きく異なります。
暴露翌日は偽陰性率が100%、発症日(暴露後5日目)で約38%、発症から8日目で約20%と報告されています。
その後は再び偽陰性率が上昇します。つまり、感染初期や検体採取が不適切な場合、偽陰性となるリスクが高まります。
まとめ
コロナの誤診には、PCR検査や抗原検査での偽陽性・偽陰性が関係しており、診断ミスによる治療の遅れや重症化の例もあります。
誤診が損害賠償請求につながるには、医師の過失と症状悪化などの因果関係を証明する必要があります。
証拠を集めて弁護士に相談して、示談・調停・訴訟などで解決を目指します。医療調査や医師意見書の活用も重要です。
コロナ誤診の医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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