高次脳機能障害は、事故や病気の直後に明らかになるケースが多いですが、数年経ってから症状が表面化する可能性もあります。
特に、高次脳機能障害が軽度の場合や、周囲の人が変化に気付きにくい環境では、診断が遅れるケースもあります。
本記事では、高次脳機能障害が数年後に気付かれる可能性や、長期的な予後について詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/4/6
Table of Contents
数年後に高次脳機能障害に気付く可能性はある
家族と疎遠な被害者は気付かれにくい
高次脳機能障害の症状は、日常生活の中での微細な変化として現れることが多いです。
弊社の経験でも、特に家族や親しい友人との関係が希薄なケースでは、これらの変化に気付かれにくい傾向があります。
その結果、本人も周囲も異常を認識せず、診断や治療が遅れる可能性があります。
ごく軽度の高次脳機能障害は気付かれにくい
軽度の高次脳機能障害の場合、症状が日常生活に大きな支障をきたさないため、本人や周囲が異常と感じにくいことがあります。
例えば、物忘れや注意力の低下などが「年齢のせい」や「一時的なもの」と見過ごされ、結果として診断が遅れるケースがあります。
小児は高次脳機能障害の評価が難しい
子供の場合、脳の発達過程にあるため、高次脳機能障害の症状が他の発達上の課題や個人差と混同されやすく、評価が難しいとされています。
特に幼児期や学童期の子供では、症状が明確に現れにくく、周囲も気付きにくいため、診断が遅れることがあります。
高次脳機能障害の長期的な予後
予後を左右する要因とは
高次脳機能障害の予後は、以下の要因によって大きく影響されます。
障害の重症度
脳損傷の程度が重いほど、回復が難しくなる傾向があります。
年齢
若年者は脳の可塑性が高く、回復力が強いとされています。
リハビリテーションの開始時期と質
早期かつ適切なリハビリは、機能回復に重要な役割を果たします。
家族や社会的サポート
周囲の理解と支援が、患者のモチベーションや社会復帰に影響を与えます。
発症からの一般的な回復過程
高次脳機能障害の回復過程は個人差がありますが、一般的には以下の段階を経ます。
急性期
発症直後の期間で、医療的な安定化が図られます。
回復期
リハビリテーションが集中的に行われ、機能の回復が期待される時期です。
生活期
社会復帰や日常生活への適応が進められます。
高次脳機能障害の後遺障害等級
交通事故で受傷した高次脳機能障害は、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。
高次脳機能障害では、意思疎通能力、問題解決能力、作業の持続力や持久力、さらには社会行動能力の低下度合いによって評価されます。
この評価結果に基づき、高次脳機能障害の後遺障害等級は、1級から14級までに分類されます。
高次脳機能障害が後遺障害に等級認定される要件を、さらに詳細に知りたい方は、以下のコラムにまとめています。ご参照いただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
数年後に気付いた高次脳機能障害のポイント【弁護士必見】
因果関係の証明は難しい
高次脳機能障害は、交通事故などによる脳損傷が原因で発症しますが、その症状は目に見えにくく、診断が困難なケースがあります。
特に、交通事故から時間が経過してから症状に気付いたケースでは、事故との因果関係を証明することが一層難しくなります。
後遺症の存在に気付いた時点で、可能な限り早期に医療機関を受診する、もしくは主治医に相談することが推奨されます。
高齢者では認知症との鑑別が必要
高齢者の場合、高次脳機能障害の症状が認知症やせん妄と類似しているため、正確な診断が難しいケースがあります。
一方、高次脳機能障害は基本的に進行しないのに対して、認知症は進行性であるという違いがあります。
また、せん妄は数時間から数日ごとに症状が変化する特徴があります。これらの違いを理解して、専門医の診断を受けることが重要です。
<参考>
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント
交通事故で負った高次脳機能障害が、後遺障害認定されるポイントを詳しく知りたい方は、以下のコラム記事にまとめています。ご参考にしていただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
高次脳機能障害の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した高次脳機能障害の後遺症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
高次脳機能障害が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故によって受傷した高次脳機能障害で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料とは
交通事故で外傷性脳損傷によって高次脳機能障害が残った精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?
外傷性脳損傷の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益とは
高次脳機能障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益の相場は?
高次脳機能障害の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
高次脳機能障害の数年後でよくある質問
高次脳機能障害の予後は?
高次脳機能障害の予後は、脳損傷の程度やリハビリテーションの質、開始時期、年齢、社会的サポートなど多くの要因に左右されます。
早期かつ適切なリハビリが行われ、家族や周囲の理解と支援が得られると、機能回復や社会復帰の可能性が高まります。
高次脳機能障害の平均寿命は?
高次脳機能障害者の平均余命は、健常者と比較して短い傾向があります。例えば、20歳で発症した男性の平均余命は約42.6年、女性は約50.2年と報告されています。
頭部外傷で数年後現れる後遺症は?
頭部外傷後、数年経過してから高次脳機能障害の症状に気付く可能性があります。また、外傷性てんかんは、受傷後数年してから発症する可能性もあります。
<参考>
外傷性てんかんの後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
まとめ
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる障害ですが、その症状は目に見えにくいため、気付くまでに時間がかかることがあります。
特に家族と疎遠な場合や、軽度の症状では発見が遅れがちです。子供の場合は、発達の個人差と混同されやすく、高齢者では認知症との区別が必要です。
交通事故で受傷した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。