鎖骨骨折は交通事故やスポーツ中の怪我としてよく見られる骨折の1つです。鎖骨骨折は、治療すると元通りになると思われがちですが、実は後遺症が残るケースも少なくありません。
そのため、鎖骨骨折後に「後遺症が残る可能性はどのくらいあるのか」「どのような後遺症が起こり得るのか」を正確に知りたいと思う方も多いでしょう。
本記事では、鎖骨骨折における後遺症の発生確率や種類を詳しく解説しています。さらに、交通事故で受傷した鎖骨骨折が、後遺障害に認定されるポイントについても触れています。
最終更新日: 2025/1/19
Table of Contents
鎖骨骨折の後遺症が残る確率は?
骨折部位と治療法によって後遺症の確率は異なる
鎖骨骨折で後遺症が残る確率は、骨折部位と治療法によって異なります。例えば、鎖骨骨幹部骨折と鎖骨遠位端骨折では、後遺症の発生率が異なります。
また、保存療法と手術療法の選択によっても、後遺症の種類や発生率が変わります。また、喫煙している人は、後遺症が残る確率が大きく上昇します。
鎖骨骨幹部骨折・保存療法の偽関節は6~15%の確率
鎖骨骨幹部骨折に対する保存療法では、ずれ(転位)が小さい場合には、偽関節が発生する確率は6%程度と言われています。
一方、ずれ(転位)が大きい場合には、偽関節が発生する確率が15%程度に上昇すると言われています。
鎖骨遠位端骨折・保存療法の偽関節は28~44%の確率
鎖骨遠位端骨折に対する保存療法では、偽関節が発生する確率が28~44%と高くなります。
保存療法では骨がつかないリスクが高いため、鎖骨遠位端骨折では、骨癒合を得る目的で、手術療法が選択されるケースが多いです。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
手術療法(プレート固定)のしびれは100%近い確率
鎖骨骨折に対する手術療法、特にプレート固定術では、創周囲のしびれが発生する確率が100%に近いとされています。
その理由は、手術の際に、鎖骨を縦断する鎖骨上神経という知覚神経を切断せざるを得ないからです。
ただし、しびれよりも、偽関節による痛みや可動域制限の方が大きな問題になります。このため、ずれ(転位)の大きな鎖骨骨折では、手術療法が推奨されます。
<参考>
鎖骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
鎖骨遠位端骨折・手術療法の可動域制限は36%の確率
鎖骨遠位端骨折に対するフックプレートによる手術療法では、肩関節の可動域制限が発生する確率が36%だったという報告があります。
その理由は、鎖骨遠位端骨折では、手術療法であっても術後早期のリハビリテーションを制限せざるを得ないからです。
<参考>
鎖骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
鎖骨骨折の後遺障害
鎖骨骨折では、神経障害、機能障害、変形障害の3つの後遺障害が認定される可能性があります。
神経障害(痛みやしびれ)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
骨が部分的にしかついていない場合(遷延治癒)では、変形障害(12級5号)ではなく、12級13号が認定されるケースがあります。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
14級9号:局部に神経症状を残すもの
鎖骨骨折の手術を受けた場合、必ずといっていいほど出現するのが鎖骨上神経障害です。手術によって鎖骨上神経が切断されるため、手術痕の足側に感覚障害を起こす症例を多く経験します。
しかし、患者さん本人が自覚されていない場合があり、見逃されやすい障害です。症状がある場合には、「局所に神経症状を残すもの」として第14級9号が認定されるケースが多いです。
機能障害(肩を動かしにくい)
鎖骨骨折における機能障害とは、肩関節の可動域制限です。特に、肩に近い骨折ほど、肩関節の機能障害が出現しやすくなります。
しかし、鎖骨骨折は肩関節と直接関係のない部位の骨折です。そのため、交通事故と機能障害との因果関係が問われるケースを多く経験します。
肩関節の機能障害が残存した場合、以下のような後遺障害等級が認められる可能性があります。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
肩関節が強直またはこれに近い状態にあるものです。これに近い状態とは、自動(自分で動かすこと)で健側(ケガをしていない側)の可動域の10%程度以下に制限された状態です。
<参考>
自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|交通事故の医療鑑定
10級10号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の1/2以下の可動域に制限されているものです。
12級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の3/4以下の可動域に制限されているものです。
<参考>
変形障害(偽関節、鎖骨の出っ張り)
12級5号: 鎖骨に著しい変形を残すもの
鎖骨の変形は手術をすれば改善するため、変形そのもので等級認定されるケースは多くありません。一方、手術を施行しても骨折部が十分に癒合しない症例を散見します。
全く骨癒合していない状態を偽関節、一部分だけしか骨癒合していない状態を遷延治癒と呼びます。いずれも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
保存的治療を選択した場合は、手術症例と比較して偽関節や遷延治癒に至る可能性が少し高くなります。このような症例でも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
また、鎖骨の変形そのものでも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
この場合の「著しい変形」とは衣服を脱いで裸の状態になったとき、明らかに骨が変形していると分かる状態のことを意味します。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
鎖骨骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で受傷した鎖骨骨折になんらかの後遺症が残った際には、自賠責保険から以下のいずれかの後遺障害に認定される可能性があります。
- 神経障害
- 機能障害
- 変形障害
これらの後遺障害は、それぞれ系列が異なるため併合できるケースもあれば、「通常派生する関係」とされて1つの系列しか認定されないケースもあります。
鎖骨骨折の後遺障害認定では、さまざまなポイントやピットフォールがあります。興味のある方は、こちらのコラム記事をご参照ください。
<参考>
【12級13号】鎖骨骨折の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:48歳
- 事前認定:14級9号
- 異議申し立て:神経障害として12級13号が認定
弊社の取り組み
鎖骨骨幹部骨折に対して、プレート固定術が施行されましたが痛みが残りました。
単純X線像(レントゲン検査)では骨癒合しているように見えるため、事前認定では14級9号にとどまりました。
弊社でCT検査を追加施行することを提案したところ、骨幹部に遷延癒合を確認できました。
術後に痺れが残存した鎖骨上神経障害も加味された可能性もありますが、神経障害として12級13号が認定されました。
鎖骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した鎖骨骨折が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
鎖骨骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
鎖骨骨折の後遺障害認定で損害賠償金を請求できる
鎖骨骨折で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
鎖骨骨折の後遺障害慰謝料とは
交通事故で鎖骨骨折の後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
鎖骨骨折の後遺障害逸失利益とは
鎖骨骨折で後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。鎖骨骨折の後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
鎖骨骨折の後遺症でよくある質問
鎖骨骨折の治療法は?
鎖骨骨折の治療法は、骨折の程度や部位によって異なります。一般的には、保存療法と手術療法の2つがあります。
保存療法では、三角巾や固定具を用いて骨の自然治癒を促します。一方、骨のずれが大きい場合や複雑骨折の場合は、手術療法が選択され、プレートやスクリューで骨を固定します。
鎖骨骨折は全治何ヶ月ですか?
ズレ(転位)の程度や骨折形態によって異なりますが、鎖骨骨折ではおおむね3ヵ月で骨癒合するケースが多いです。
ただし、骨が十分な強度を獲得するには半年から1年かかるため、激しいコンタクトスポーツは半年から1年は控えた方が無難です。
鎖骨はどの部分で一番折れやすい?
鎖骨は中央部(骨幹部)が最も折れやすいとされています。これは、鎖骨の中央部が細く、外部からの衝撃を受けやすい構造であるためです。実際、鎖骨骨折の約80%がこの部位で発生しています。
鎖骨骨折の後遺症が残る確率のまとめ
鎖骨骨折の後遺症が残る確率は、骨折の部位や治療法で異なります。例えば、保存療法では、鎖骨骨幹部で偽関節が6~15%、鎖骨遠位端で28~44%の確率で起こります。肩の可動域制限では36%の発症率という報告があります。
一方、手術療法では、程度は軽いものの、鎖骨上神経の損傷により100%近くの症例でしびれが生じます。自賠責保険では、神経障害、機能障害、変形障害が、後遺障害に認定されることがあります。
鎖骨骨折で予想していた後遺障害が認定されず、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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