交通事故に遭って、目やまぶたの後遺症を残すことは珍しくありません。目やまぶたの後遺症は、自賠責保険の後遺障害に認定される可能性があります。
しかし、目の後遺障害は4種類、まぶたの後遺障害は2種類もあり、少し理解しにくいです。
本記事は、目やまぶたの後遺症が、後遺障害に認定される条件を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2024/9/6
Table of Contents
目とまぶたの後遺障害はこれだけある!
眼のケガで認定される後遺障害等級
視力障害
視力の後遺障害は、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズで矯正した視力)で審査されます。視力障害で考えられる後遺障害とその等級は、以下のとおりです。
等級 |
認定基準 |
1級1号 |
両眼が失明 |
2級1号 |
1眼が失明、もう1眼は視力が0.02以下 |
2級2号 |
両眼の視力が0.02以下 |
3級1号 |
1眼が失明、もう1眼は視力が0.06以下 |
4級1号 |
両眼の視力が0.06以下 |
5級1号 |
1眼が失明、もう1眼は視力が0.1以下 |
6級1号 |
両眼の視力が0.1以下 |
7級1号 |
1眼が失明、もう1眼は視力が0.6以下 |
8級1号 |
1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下 |
9級1号 |
両眼の視力が0.6以下 |
9級2号 |
1眼の視力が0.06以下 |
10級1号 |
1眼の視力が0.1以下 |
13級1号 |
1眼の視力が0.6以下 |
<参考>
【医師が解説】交通事故と視力低下の因果関係を証明するポイント
調節機能障害(目のピントが合わない)
眼はカメラのレンズのように、見たい距離に応じて網膜上に焦点を合わせる機能を持っています。この機能を調節機能といいます。
等級 |
認定基準 |
11級1号 |
両眼の眼球に著しい機能調節障害を残すもの |
12級1号 |
1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの |
目の調節機能障害(ピントが合わない)は、アコモドポリレコーダーという調節機能検査装置で検査します。
「著しい調整機能障害を残すもの」は、反対側の眼よりも調整機能が1/2以下に減少したものをいいます。
ただし、人は加齢によって眼の調節機能が減少します。このため、55歳以上では調整機能障害として認定されません。
<参考>
【医師が解説】事故後の目がぼやける症状は後遺症?|医療鑑定
運動障害
注視野が減じたもの
眼球は、6本の眼筋によってスムーズに動きます。眼筋が麻痺すると眼がずれてしまい、注視野が狭くなったり複視が残ります。
等級 |
認定基準 |
11級1号 |
両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
12級1号 |
1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
「眼球に著しい運動障害を残すもの」は、眼球の注視野が1/2以下に減少したものをいいます。
複視
複視とは、1つの物が二重に見える状態です。両眼で見たときに二重に見える「両眼複視」が一般的ですが、片眼で見たときに二重に見える「単眼複視もあります。複視の後遺障害認定では、「両眼複視」が対象となります。
等級 |
認定基準 |
10級2号 |
正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
13級2号 |
正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
<参考>
【医師が解説】複視が後遺障害認定されるポイント|医療鑑定
視野障害
視野とは、片眼で一点を見ている時に見える範囲です。視野が小さくなると後遺障害に認定されます。
等級 |
認定基準 |
9級3号 |
両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの |
13級2号 |
1眼の半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの |
視野の異常は、大きく分けて狭窄、半盲、視野変状の3種類があります。視野狭窄は視野が狭くなることで、半盲症は視野の右半分や左半分が見えなくなる状態です。
視野変状には,視野欠損と暗点があります。視野欠損は視野が不規則に失われているもの、暗点は視野の中に見えない部分があるものです。
まぶたの欠損障害
等級 |
認定基準 |
9級4号 |
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級3号 |
1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
13級4号 |
両目のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの |
14級1号 |
1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの |
「まぶたに著しい欠損を残すもの」は、目を閉じたときに、まぶたで角膜を完全に覆えないものをいいます。
「まぶたの一部に欠損を残すもの」は、目を閉じたときに。まぶたで角膜を完全に覆えるものの、白目が露出している状態です。
まぶたの運動障害
等級 |
認定基準 |
11級2号 |
両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
12級2号 |
1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
「まぶたに著しい運動障害を残すもの」は、以下のいずれかの状態が該当します。
- まぶたを開けた時に、まぶたが完全に瞳孔を覆ってしまうもの
- まぶたを閉じた時に、角膜を完全に覆えないもの
外傷性散瞳
外傷性散瞳とは、目を打った後に瞳孔が広がったままになる状態です。
瞳孔の光に対する調整能力が失われたり弱まったりするため、まぶしさを感じて生活が困難になる後遺症を引き起こします。
<参考>
【医師が解説】外傷性散瞳の後遺障害認定ポイント|医療鑑定
【弁護士必見】目の後遺障害認定ポイント
目の後遺障害認定には眼や頭部の外傷が必須
ヘスチャート、スリット検査、網膜電図、視覚誘発電位検査などで複視や視力低下の存在を証明しても、後遺障害に認定されない事案が少なくありません。
交通事故による目の後遺症が後遺障害に認定されるためには、後遺症の原因となった眼や頭部への外傷の存在が必要です。
具体的には、眼球外傷の存在や、CT検査やMRI検査で、脳挫傷などの頭部外傷を証明する必要があります。
経時的に悪化する視力低下は非該当になりやすい
弊社に相談される事案では、受傷後に徐々に視力が悪化し、交通事故との因果関係が否定されて非該当となるケースが多くあります。
その多くは、加齢や持病による視力低下が原因です。しかし、交通事故による外傷で視力が悪化した事案もあります。
このような事案では、眼科専門医による医師意見書が必要です。視力低下が後遺障害に認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
目の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故による目の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による目の後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
交通事故による目やまぶたの後遺症は、自賠責保険で後遺障害に認定されることがあります。
後遺障害には視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害、まぶたの欠損障害、運動障害などがあり、各条件を満たすと後遺障害に認定されます。
後遺障害認定には、交通事故による外傷の証明が必要です。加齢や持病による視力低下は、後遺障害に認定されないケースがあります。
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