交通事故で大腿骨を骨折して、つらいリハビリや治療を乗り越えたにもかかわらず、後遺障害の等級認定が「非該当」または「想定よりも低い等級」と判断されることがあります。
納得のいかない結果に直面したとき、多くの方が「本当にこのままでいいのだろうか」と悩みます。そんなときに検討したいのが「異議申し立て」です。
本記事では、大腿骨骨折における後遺障害認定の基本から、異議申し立ての具体的な流れ、成功のためのポイントまでを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/7/30
Table of Contents
大腿骨骨折で非該当になる理由
大腿骨骨折の後遺障害認定基準
大腿骨骨折の後遺障害認定基準では、骨折が股関節や膝関節の可動域や痛みにどれだけ影響をもたらしたかが主なポイントです。
1. 神経障害(痛みやしびれ)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
大腿骨骨折の神経障害(痛みやしびれ)では、股関節や膝関節の画像検査などで、明確な異常が医学的に証明されると、12級13号に認定される可能性があります。
12級13号が認定されなくても、痛みやしびれなどの症状が医学的に説明可能であれば、14級9号に認定される可能性があります。
2. 機能障害(股関節や膝関節を動かしにくい)
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
股関節や膝関節の可動域制限が、健側の4分の3以下なら12級7号、1/2以下なら10級11号、10%以下(ほぼ動かない)は8級7号に認定される可能性があります。
変形障害(偽関節や変形癒合など、骨の形態異常が画像で確認できるもの)
12級8号:長管骨に変形を残すもの
- 長管骨(大腿骨または脛骨)の骨幹部または骨端部に変形癒合や偽関節が残ったもの
大腿骨骨折では、手術を施行しても偽関節になる可能性があります。また、ロッキングプレートを用いた手術では、部分的にしか骨癒合しないケースも散見されます。
短縮障害(下肢が短くなった)
等級 | 認定基準 |
8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
いずれも下肢の長さはSMDで計測します。SMD(Spina Malleollar Distance:棘果長)は、下肢の長さの計測法のひとつです。骨盤にある上前腸骨棘から足関節の内果(内くるぶし)までの距離をメジャーを用いて計測します。
尚、可能であれば、誤差防止のために長尺レントゲン撮影による計測が望ましいです。
非該当と判断されやすいケース
後遺障害で非該当になりやすいのは、骨癒合が良好で股関節や膝関節の関節面に転位(ずれ)を認めないケースが挙げられます。
大腿骨骨折の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
大腿骨骨折で後遺障害等級が非該当・不満の場合は、異議申立書を作成して、前回の認定に不足していた要素を補うために、診断書や画像、医師意見書などを提出します。
前回の認定理由を分析して、非該当や想定した等級よりも低くなった理由を把握します。そして、その理由を覆す医学的な証拠を、論理的に記載することが重要です。
異議申し立ての申請先
異議申立書類の提出先は、初回申請が「事前認定」なら加害者側任意保険会社、「被害者請求」なら加害者側自賠責保険会社です。
窓口となる保険会社を通じて損害保険料率算出機構へ進みます。さらに不服があれば、自賠責・共済紛争処理機構への申立や、裁判手続きも選択肢となります。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申立自体は無料ですが、追加検査・診断書発行など医療書類取得に費用がかかるケースがあります。
審査期間は2〜3ヶ月程度が一般的で、初回申請よりもやや長めです。弁護士への依頼は別途費用が発生しますが、専門家に依頼することで認定変更の実現率が高まる傾向にあります。
効果的な異議申し立てのための準備
異議申立の成功には、前回の非該当・低い等級となった理由を正確に把握して、不足していた医証や新しい画像、医師の意見をそろえて再提出することが重要です。
単なる不満ではなく客観的証拠で後遺障害基準を満たすことを説明しましょう。尚、新たな医証の提出が無ければ、後遺障害等級が変更される可能性はありません。
大腿骨骨折の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
非該当の原因を分析
大腿骨骨折で異議申し立てをする際は、なぜ「非該当」となったのかを知るために、医学的根拠や審査側の判断材料を徹底分析することが必須です。
一般的な非該当理由は、後遺障害診断書の記載内容の不備や、画像検査において有意所見が無いなどが挙げられます。
後遺障害の審査では、症状が日常生活に与える影響や継続性、治療の一貫性も重視されます。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
大腿骨骨折の後遺障害認定条件をクリア
認定条件を満たすためには、股関節や膝関節の可動域制限や神経症状(痛み)の存在を、画像検査などで客観的に示す必要があります。
「機能障害」は、画像検査で明白な原因を特定できる必要があります。「神経障害」も画像所見があれば有利です。
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立てを成功させるためには、初回申請時には提出していなかった新しい医証(画像検査、診断書、医師意見書、画像鑑定など)が不可欠です。
非該当になった原因に応じた、再検査による画像や医師の追加診断書、医師意見書などを新たに用意します。
既存資料のみだと等級変更は難しいため、積極的に新しい証拠を補充して、症状や障害の客観的証明に努めましょう。
<参考>
大腿骨骨折の後遺障害認定ポイント
大腿骨骨折で後遺障害認定されるには、それぞれの後遺障害の認定基準をクリアする必要があります。
大腿骨骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
大腿骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
大腿骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った大腿骨骨折の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
大腿骨骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
大腿骨骨折の異議申し立てでよくある質問
後遺障害が「非該当」や「低い等級」だったのはなぜですか?
大腿骨骨折の後遺障害等級が「非該当」や「低い等級」と判断される主な理由は、後遺症の存在を証明できる医学的証拠が不足しているためです。
後遺障害の審査では、後遺障害診断書、画像検査、経過記録などの「客観的資料」が重視されます。
脚長差が1cm未満ですが、後遺障害等級は認められますか?
下肢の短縮障害による後遺障害等級は、原則「1cm以上」から認められるため、脚長差が1cm未満の場合は等級認定の対象とはなりません。
等級は1cm以上で13級、3cm以上で10級、5cm以上で8級となります。脚長差の測定方法や誤差、証明資料も重要なポイントです。
人工骨頭や人工関節を入れた場合、何級になりますか?
大腿骨骨折後に人工骨頭や人工関節への置換術が行われたら、原則として10級が評価されます。もし可動域が2分の1以下に制限された場合は8級が認定される可能性もあります。
症状固定後に痛みや可動域制限が悪化した場合、異議申し立てで反映されますか?
症状固定後でも痛みや可動域制限の悪化、新たな他覚的所見があれば、異議申し立て時に追加の医証や画像資料をもって再度審査が行われます。
例えば、大腿骨頚部骨折で14級9号が認定された後に、大腿骨骨頭壊死を併発して人工股関節全置換術を施行したケースでは、10級11号に認定される可能性があります。
異議申し立て後も認定されなかった場合は、訴訟を起こせますか?
異議申し立て後も納得のいく等級認定が得られない場合、損害賠償請求として訴訟(裁判)を起こすことが可能です。
保険会社の提示額や認定内容に対して、納得できない場合の最終手段として訴訟が活用されています。
まとめ
大腿骨骨折による後遺障害は、痛みやしびれ、関節の動かしづらさ、骨の変形や脚の短縮などの症状が、どの程度医学的に証明できるかが認定のカギです。
後遺障害が認定されないケースは、症状の一貫性を認めなかったり、画像検査などで異常が確認できないケースです。
異議申し立てを行う際は、前回認定の問題点を分析して、新たな医師の意見書や画像など客観的な証拠を提出することが重要です。
大腿骨骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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