手術は本来、病気やけがを治すために行われる医療行為です。
しかし、残念ながらすべてが成功するとは限らず、医療ミスや判断の誤り、または不可抗力によって患者が命を落とすケースも現実に存在します。
身近な人が手術中や術後に亡くなったとき、「これは避けられたのではないか」「医師の過失があったのではないか」と疑問や不安を抱くのは自然なことです。
本記事では、手術失敗による死亡事例をもとに、その背景や原因、予防策について詳しく解説します。
また、万が一の際にどのような法的対応や損害賠償請求が可能なのか、実際に取れる行動や手続きについてもご紹介します。
最終更新日: 2025/6/17
Table of Contents
手術失敗による死亡―どのようなケースがあるのか
医療現場で起こりうる手術ミスの実例
心臓カテーテル手術中に大動脈を傷つけて心タンポナーデを誘発して、適切な対応が遅れて患者が死亡した事例があります。
また、手術後の出血管理が不十分で心肺停止に陥り、最終的に植物状態となったケースも報告されています。
また、交通事故の大腿骨骨折修復術後に急性動脈閉塞を見落とし、下肢壊死に至った事例なども挙げられています。
あらゆる外科領域で、生命に関わる医療ミスが起こり得る現実が示されています。
医師の説明責任と事故後の対応事例
医師は手術前後に、診療契約(通常は準委任契約)や医師法・医療法に基づき、患者に対して診療内容・リスク・選択肢を明示する法的な『説明義務』を負います。
事故後は、事実関係の迅速な調査と説明が求められ、説明が不十分だと説明義務違反として損害賠償請求の対象となる場合があります。
実際、東京地裁では300万円の慰謝料認定例があります。医師の説明責任は、患者の自己決定権を守る重要な手続きです。
手術失敗の原因を知る―医療過誤とは何か
医療過誤の定義と「過失」の考え方
医療過誤とは、医師や医療従事者が注意義務を怠り、診療基準から逸脱した行為によって患者に損害が生じた場合を指します。
単に治療後に容体が悪化したというだけではなく、過失(医療水準を下回る注意義務違反や判断ミス)が立証される必要があります。
このため、損害賠償請求には「過失・損害・因果関係」の3要件を満たす必要があります。
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
医療ミスと不可抗力の違い
医療事故全体を指す「医療事故」に対して、「医療過誤」はその原因に医療側の過失があるケースに限定されます。
一方、患者の体質や病状など、医療従事者の責任では防げない事情で結果が悪化した場合は「不可抗力」と見なされ、医療過誤には該当しません。
したがって、賠償請求の際には、過失と不可抗力を法的に区別することが重要です
原因究明のためにできること
病院への説明要求やカルテ開示請求
手術失敗など重大な医療事故が疑われる場合、まずは病院に文書で「説明」を求め、詳細な事情聴取を行うことが重要です。
次に、医療記録(カルテ、検査画像、看護記録など)の開示請求が必要となります。
患者家族または代理人(弁護士)による請求が可能で、多くの病院では所定の用紙に記入し請求すれば2〜3週間で写しが提供されます。
もし必要な記録が不足したり改ざんの恐れがある場合は、裁判所の証拠保全手続きを利用して正式な保存・コピーを行うことが推奨されます。
第三者機関(医療事故調査委員会等)の活用
医療事故調査制度(改正医療法施行: 平成27年10月1日)では、重大事故が発生した医療機関が院内調査を行い、報告書を医療事故調査・支援センターに提出します。
その後、第三者機関による分析が実施され、再発防止策が導かれる仕組みです。
責任追及が目的ではなく、安全向上が主眼で、調査内容は匿名化され、全国的な医療安全に寄与する報告や対応も推進されています。
しかし、制度の認知や活用は十分とは言えず、患者や遺族が積極的に制度利用を促す姿勢が求められています。
手術失敗の損害賠償請求の基礎知識
損害賠償請求ができる4つの主な項目
医療過誤の損害賠償請求では、以下の4項目が請求対象になります。
- 治療費・葬儀費用などの積極損害
- 事故による休業期間に応じた休業損害
- 精神的苦痛を補う慰謝料(入通院・後遺障害・死亡に対応)
- 将来得られるはずだった収入分を補償する逸失利益
これらは交通事故の損害算定方式に準じており、弁護士と協働で正確に積算する必要があります。
死亡慰謝料の相場や請求のポイント
医療過誤で死亡した場合の慰謝料相場は、被害者の立場に応じて変動します。
一家の支柱で約2,800万円、配偶者・母親で2,500万円、独身者で2,000~2,500万円程度とされた裁判例があります。
しかし、状況や年齢などの個別事情で上下し得るため、和解や示談の際には裁判基準に基づいた正当な額かを、弁護士に確認することが重要です。
損害賠償請求の流れと注意点
請求までのステップ(証拠収集・専門家相談・交渉・訴訟)
医療過誤の損害賠償請求は、以下の流れです。
- カルテや検査結果の証拠収集・保全
- 医療問題に精通した弁護士への相談
- 専門医による医療調査に基づく戦略立案
- 病院との示談交渉
- 合意が難しければ調停・ADR
- 和解できなければ訴訟
第一歩は証拠を確保して、カルテや看護記録の記載内容や、検査結果の確認から始まります。
医療調査が最も重要なポイント
医療調査は、集めた診療記録を第三者の協力医が分析して、医学的妥当性や過失の有無を判断するプロセスです。
この調査が示談交渉や訴訟の基盤となり、医師の説明内容を補強する医師意見書作成や争点整理にも直結します。
<参考>
医療過誤訴訟の難しさと証明責任
医療過誤訴訟は、高度な医学知識が不可欠な難関です。患者側には「過失」「損害」「因果関係」の立証責任があり、協力医や専門文献の収集が求められます。
さらに、病院側は豊富な専門家ネットワークを持ち対抗してくるため、医療訴訟の実績がある弁護士や協力医の支援は必須です。
裁判官にも分かりやすい説明が求められ、協力医が作成する医師意見書の有無が、鍵となるケースが多いです。
<参考>
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
手術失敗による死亡でよくある質問
医者が手術を失敗したら罪になる?
医師が重大な過失により患者を死傷させたら、『業務上過失致死傷罪』で刑事責任を問われる可能性があります。
警察や検察が捜査を行い、過失の程度が重大であれば、罰金や懲役刑もあり得ます。
術中死とはどういうことですか?
術中死は麻酔事故、急性循環不全、気道トラブルなどの予期せぬ合併症によって手術中に死亡するケースです。
手術後の死亡率は?
米国の大規模研究によると、癌手術を受けた患者のうち約4.8%が手術後1ヶ月以内に死亡したという報告があります。
まとめ
手術の失敗による死亡には、出血の見落としや血管損傷など医療ミスが関与する場合があります。
医師には手術前後にリスク説明の義務があり、事故後の説明が不十分だと損害賠償の対象になることもあります。
医療過誤とは、注意義務違反により損害が生じたケースで、損害賠償には過失・損害・因果関係の3つの証明が必要です。
医療事故が疑われたら、カルテの開示や第三者調査を求めましょう。慰謝料の相場や請求手続きには、弁護士の支援が不可欠です。
手術失敗による死亡事案の医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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