高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などの影響で脳にダメージを受けた際に生じる障害です。しかし、見た目では分かりにくいため、適切な診断を受けることが重要です。
「もしかして高次脳機能障害かもしれない」と感じている方や、ご家族が診断を検討している方に向けて、本記事では診断方法や具体的なテストについて詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/2/11
Table of Contents
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害の主な症状には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。これらの症状は個人差があり、複数の症状が同時に現れることもあります。
記憶障害では新しい情報を覚えられない、注意障害では一つの作業に集中できない、遂行機能障害では計画や段取りがうまくできない、社会的行動障害では些細なことで怒りやすくなるといった問題が生じます。
高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害の主な原因として、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、頭部外傷、低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎などが挙げられます。
これらの要因により脳に損傷が生じ、認知機能に障害が発生します。特に交通事故や転落などによる頭部外傷は、若年層における高次脳機能障害の主要な原因となっています。
高次脳機能障害の診断基準
高次脳機能障害の診断は、脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後に行われます。
診断基準としては、画像検査による脳の器質的病変の存在、日常生活や社会生活における制約、神経心理学的検査による認知機能の障害の確認などが含まれます。
<参考>
高次脳機能障害の診断基準とは?後遺障害認定基準との違い|交通事故
高次脳機能障害が診断されるまでの流れ
画像検査
画像検査は、脳の器質的病変の有無や部位を確認するために行われます。主にMRI検査(磁気共鳴画像)やCT検査(コンピュータ断層撮影)が用いられ、脳の構造的な異常を詳細に観察できます。
これらの画像検査により、多くの事案で、脳出血や脳梗塞、外傷による損傷など、高次脳機能障害の原因となる病変を特定することが可能です。
神経心理学的検査
神経心理学的検査は、記憶、注意、言語、遂行機能などの認知機能を評価するための検査です。具体的には、ウェクスラー記憶検査(WMS-R)や遂行機能の行動評価法(BADS)などが用いられます。
また、患者の症状に応じて、適切な組み合わせ(評価バッテリー)の神経心理学的検査を実施する必要があります。
<参考>
高次脳機能障害の診断テストと評価バッテリー|交通事故の後遺障害
セルフチェックでできる高次脳機能障害
高次脳機能障害は外見からは分かりにくく、本人や周囲が気づきにくいことがあります。セルフチェックは、早期発見や専門医への相談のきっかけとして有効です。
以下のセルフチェックリストを活用して、日常生活での困難さを確認してみましょう。
1. 記憶障害
約束や予定を忘れることが多い
2. 注意障害
一つの作業に集中できず、ミスが増える
3. 遂行機能障害
物事の段取りや計画が立てられない
4. 社会的行動障害
感情のコントロールが難しく、対人関係でトラブルが増える
これらの項目に心当たりがある場合、専門医への相談を検討してください。セルフチェックはあくまで目安であり、正式な診断は医療機関で行われます。
詳細なチェックリストやセルフチェックシートは、以下のコラム記事を参照してください。
<参考>
高次脳機能障害のセルフチェック法は?|交通事故の後遺障害
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害等級
高次脳機能障害は、意思疎通能力、問題解決能力、作業の持続力や持久力、さらには社会行動能力の低下度合いによって評価されます。この評価結果に基づき、後遺障害等級は1級から14級までに分類されます。
高次脳機能障害が後遺障害に等級認定される要件を、さらに詳細に知りたい方は、以下のコラムにまとめています。ご参照いただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で発症した高次脳機能障害では、画像診断によって後遺症との関連性が確認できると、後遺障害として認定される可能性が高まります。特に局所脳損傷の場合、損傷部位と症状が一致していることが重要な判断基準となります。
高次脳機能障害が認定されると、「神経心理学的検査」「医学的意見」「日常生活状況報告」の結果を総合的に評価して、等級審査が行われます。
近年では、意識障害期間が短い事案でも、全体的な状況を踏まえた総合的な判断が重視される傾向にあります。高次脳機能障害は身体機能障害とあわせて評価されて、就労能力や日常生活への影響度を考慮した上で、後遺障害等級が決定されます。
賠償実務においては、主観的な要素が強い神経心理学的検査が争点となるケースが少なくありません。検査結果が時間の経過とともに悪化することは稀ですが、ガイドラインに基づいて反論が可能なケースもあります。
さらに高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイントを詳しく知りたい方は、以下のコラム記事にまとめています。ご参考にしていただければ幸いです。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
高次脳機能障害の認定基準で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った高次脳機能障害が後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
高次脳機能障害の認定基準でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
高次脳機能障害が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
交通事故によって発症した高次脳機能障害で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料とは
交通事故で高次脳機能障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?
高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって異なります。例えば、9級の場合は約690万円、7級は約1000万円、5級は約1400万円、3級は約1990万円、2級は約2370万円、1級は約2800万円となります。
また、近親者の慰謝料として数百万円程度が加算されることがあります。さらに、1級や2級の場合には将来の介護費として数千万円から1億円を超える額が認められることがあります。
このように、高次脳機能障害の後遺障害慰謝料は等級によって大きく異なり、適切な後遺障害等級を獲得することが重要です。
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益とは
高次脳機能障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
高次脳機能障害の後遺障害逸失利益の相場は?
高次脳機能障害の逸失利益は、後遺障害等級によって異なります。一般的に、後遺障害等級が高いほど逸失利益の金額も高くなります。
例えば、1級の後遺障害の場合、逸失利益は約1億円前後となる可能性があります。一方、9級の場合は約1000万円程度のケースが多いです。
後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年収や年齢、労働能力喪失率などによっても大きく変動します。
高次脳機能障害の診断方法でよくある質問
高次機能障害はMRIでわかりますか?
MRI検査は、脳の構造的な異常を詳細に描出するため、高次脳機能障害の原因となる脳損傷の有無や部位を確認するのに有用です。
しかし、MRI検査で明らかな異常が見られない場合でも、機能的な障害が存在することがあります。
そのため、MRI検査の結果だけでなく、神経心理学的検査や臨床症状の評価を組み合わせて総合的に診断することが重要です。
脳のCTとMRIのどちらがいいですか?
CT検査とMRI検査は、それぞれ異なる特徴を持ちます。CT検査は急性期の出血や骨折の検出に優れていますが、解像度がMRI検査より劣るため、微細な脳損傷の検出には限界があります。
一方、MRI検査は軟部組織のコントラストが高く、微細な脳損傷や脳の構造的変化を詳細に描出できます。高次脳機能障害の診断には、MRI検査がより適しているとされていますが、患者の状態や検査の目的に応じて、医師が適切な検査を選択します。
高次脳機能検査の一覧は?
高次脳機能障害の評価には、さまざまな神経心理学的検査が用いられます。主な検査として以下のものがあります。
- ウェクスラー記憶検査(WMS-R):記憶機能の評価
- 遂行機能の行動評価法(BADS):遂行機能の評価
- 標準注意検査法(CAT):注意機能の評価
- レーブン色彩マトリックス検査:知能の評価
- ウィスコンシンカード分類検査(WCST):概念形成や認知の評価
これらの検査を組み合わせて、患者の認知機能を総合的に評価します。
高次脳機能障害の治療法は?
高次脳機能障害の治療は、主にリハビリテーションを中心とした非薬物療法が行われます。
具体的には、作業療法や言語療法、認知リハビリテーションなどがあり、患者の症状や障害の程度に応じてプログラムが組まれます。
また、家族や周囲の人々の理解と支援も重要で、社会復帰や日常生活の質の向上を目指した支援が行われます。
まとめ
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって記憶や注意、計画力、感情のコントロールが難しくなる障害です。主な原因は脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍などです。
高次脳機能障害の診断方法として、MRI検査やCT検査などの画像検査と、記憶や判断力を測る神経心理学的検査が使われます。
高次脳機能障害のセルフチェックでは、約束を忘れる、集中できない、感情が不安定になるなどの症状を確認できます。
後遺障害の等級は、症状の重さにより1級から14級に分かれており、賠償実務では検査結果が重要な判断基準になります。
交通事故で発症した高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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