むちうちは、交通事故で受傷する最も多いケガです。一方、交通事故の直後は比較的痛みが軽いため、病院などの医療機関をすぐに受診しない人も少なくありません。
治療しなくても治る人もいますが、後遺症が残る人もいます。後遺症が残れば後遺障害審査を申請しますが、通院回数が少ないと症状が軽いとみなされて認定されません。
むちうちの後遺症が残ってから慌てるのではなく、治療中から後遺症が残る可能性も考えて準備することが大切でしょう。
むちうちは、後遺障害認定されにくいことで有名です。本記事は、むちうちが後遺障害認定されにくい理由と、非該当になった際の対処法を解説しています。
最終更新日: 2024/10/4
Table of Contents
むちうちの後遺障害が認定されない8つの理由
むちうちの後遺症が、後遺障害に認定されない理由には、以下のような8つの理由が考えられます。
- 事故規模が小さい
- 通院頻度が低い
- 整骨院メインである
- 症状固定までの期間が短い
- 症状に一貫性が無い
- 常時痛ではない
- 画像所見や身体所見に乏しい
- 後遺障害診断書の記載内容が不十分
事故規模が小さい
むちうちが後遺障害認定されない理由として、交通事故の規模が小さいことが挙げられます。
その理由は、首にかかる衝撃が小さければ、むちうち症状は残りにくいと考えられているからです。
特に後遺障害が認定されにくいのは、自動車の躯体構造に損傷が及ばないケースです。
通院頻度が低い
むちうちの後遺症が後遺障害に認定されるためには、病院などの医療機関に通院する頻度も重要です。
概ね、月に10回以上、かつ症状固定までの通院日数が合計60日以上無ければ、後遺障害に認定されにくいです。
通院頻度が低いと認定されにくい理由は、そんなに通院しなくても問題無い程度の症状しか無かったとみなされるからです。
整骨院メインである
通院頻度が多いと言っても、整骨院(接骨院)に通っている場合は注意する必要があります。
自賠責保険は、整骨院への通院を整形外科などの医療機関と同等には見ていないからです。
このため、整骨院メインで整形外科にはあまり通院していない場合には、後遺障害に認定されない確率が高まります。
<参考>
【日経メディカル】交通事故で接骨院通院が勧められない3つの理由
【医師が解説】整骨院に行かない方がいいのか|交通事故の後遺障害
【医師が解説】整骨院の通院頻度は?むちうち後遺障害認定|交通事故
症状固定までの期間が短い
むちうちの後遺症が後遺障害に認定されるためには、受傷から症状固定までの期間が6ヵ月以上必要です。
弊社の経験では、数日足りないだけなら後遺障害認定への影響はさほど大きくありません。しかし、2週間以上足りない場合は、ほとんど認定されません。
ただし、手足の切断や遷延性意識障害(植物状態)については、6ヵ月経っていなくても後遺障害に認定されます。
<参考>
【遷延性意識障害(植物状態)】医師意見書の有効性|交通事故
症状に一貫性が無い
交通事故に遭った時には腰が痛かったが、事故から1ヵ月してから首も痛くなってきたケースでは、後遺障害に認定されません。
弊社の経験では、おおむね受傷後1週間以内に発症した症状だけが、後遺障害の対象となります。
常時痛ではない
「夕方になると痛む」「雨の日に痛い」「ときどき痛い」など、症状が持続していないケースでは、後遺障害に認定されません。
自賠責保険は、むちうちの後遺症に関しては「常時痛」しか後遺障害に認定しないので注意が必要です。
一方、関節内骨折などの器質的所見のある事案では、運動時だけ痛いケースでも後遺障害に認定されます。
画像所見や身体所見に乏しい
レントゲンやMRIなどの画像検査や、身体の状態に明確な異常が見られないケースも後遺障害に認定されにくいです。
自賠責保険は、診断書や検査結果などの書類だけで審査されます。このため、画像所見や身体所見に乏しいケースは後遺障害に認定されにくいです。
<参考>
【医師が解説】骨折が後遺障害認定されない理由と対処法|医療鑑定
後遺障害診断書の記載内容が不十分
後遺障害診断書の内容が不十分だと、後遺障害に認定されにくいです。後遺障害診断書はとても重要な書類なので、記載内容には細心の注意が必要です。
弊社はこれまで数千に及ぶ後遺障害診断書を見てきましたが、完璧な後遺障害診断書はほとんどありませんでした。
致命的な記載がなければ、後遺障害認定が妨げられるわけではありません。しかし、ケガの種類によって後遺障害診断書で強調するべきポイントが違います。
また、専門医でなければ診断書に書かれた医学的内容の正確さを判断できないため、主治医に診断書の修正をお願いしても受け入れてもらえないことが多いです。
<参考>
【医師が解説】医師が診断書を書いてくれない理由と対処法|交通事故
弊社では、医学的・後遺障害認定基準の観点から、後遺障害診断書の記載内容を精査しています。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
むちうちが後遺障害認定されるポイント
後遺障害認定基準を満たしているか確認する
弊社が取り組んだ数千例の事案を分析した結果、前述したように、後遺障害に認定されない理由として以下が挙げられます。
- 事故規模が小さい
- 通院頻度が低い
- 整骨院メインである
- 症状固定までの期間が短い
- 症状に一貫性が無い
- 常時痛ではない
- 画像所見や身体所見に乏しい
- 後遺障害診断書の記載内容が不十分
むちうちが後遺障害に認定されるためには、非該当理由や、想定していた等級が認定されなかった理由を詳しく調べることがポイントです。
上記の項目の中では、症状固定までの期間や通院頻度は分かりやすいですが、医学的内容は判断が難しいです。
また、主治医に相談しても、後遺障害認定基準を理解している医師はほとんど存在しないため、効果的ではないケースが多いです。
後遺障害に認定されるには新たな医証が必要
自賠責保険への異議申立ては何度でも可能です。しかし、対策を立てなければ、何度繰り返しても後遺障害に認定されません。
弊社の経験では、むちうちが後遺障害に認定されるには「新しい医証」が必要です。新しい医証の具体例は、以下のようなものです。
- 新しい画像検査
- 新しい各種検査結果
- 主治医の新しい診断書
- 主治医への医療照会書
- 別の医師の意見書
- 専門家による画像鑑定報告書
これらの医証や書類で、むちうちの後遺障害認定に不足している要素を補うことが重要です。
むちうちで後遺障害に認定された事例の紹介
【12級13号】むちうちの後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:46歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と右頚部から母指にかけて放散する痛みが持続していました。痛みのため、1年以上通院、治療を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。
弊社の取り組み
診療録を詳細に確認すると、受傷直後から頚椎椎間板ヘルニアに特徴的な「スパーリング徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。
MRIで、C5/6レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの上肢痛(右母指にかけての放散痛)は椎間板ヘルニアが圧迫しているC6神経根の知覚領域と完全に一致していました。
脊椎脊髄外科指導医が診療録を確認して、初回申請時に見落とされていた身体所見を記載した医師意見書を作成しました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。
【14級9号】むちうちの後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:60歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と両手のしびれを自覚されていました。受傷から半年間通院されましたが、頚部痛と両手のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。
弊社の取り組み
MRIを脊椎脊髄外科専門医が読影したところ、頚椎後縦靭帯骨化症が存在していることが明らかになりました。診療録を確認すると、受傷当日から頚部痛と両手がしびれると記載されていました。
身体所見、画像所見および診療経過について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
むちうちの後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、むちうちで後遺障害に認定されなかった事案の異議申立てを成功させるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
むちうちの後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
むちうちは後遺障害認定が難しいことで知られています。後遺障害に認定されない理由として、通院頻度が低い、整骨院中心の治療、症状に一貫性がないことなどが挙げられます。
後遺障害に認定されるには、新規の画像検査、診断書、医師意見書などの「新しい医証」が必要です。
異議申立ては何度でもできますが、新しい医証がなければ認定されにくいため、足りない要素を補うことが重要です。
むちうちの後遺障害認定でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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