交通事故で顔や頭などにケガが残った状態を、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)と言います。
外貌醜状が残ると、交通事故がなければ得られたはずの収入を「逸失利益」として請求できます。
一方、外貌醜状は体の機能には直接影響しないため、収入に影響があるかどうかが争いになるケースがあります。
本記事は、外貌醜状の逸失利益が認められる条件を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2024/9/17
Table of Contents
外貌醜状とは
外貌とは、頭、顔、首など、腕や脚以外でよく見える露出部を指します。醜状とは、傷跡や火傷跡などが目立って残っている状態です。
外貌醜状とは、顔や首などの目立つ部分に傷が残っている状態で、交通事故によるものでは後遺障害に認定される可能性があります。
外貌醜状が残った場合の損害額の目安
後遺障害に認定された際に支払われる慰謝料や逸失利益は、等級によって異なります。
裁判で認められる基準(弁護士基準)や、逸失利益の計算に使われる労働能力喪失率は下の表の通りです。
等級 | 後遺障害慰謝料 | 労働能力喪失率 |
7級 | 1000万円 | 56% |
9級 | 690万円 | 35% |
12級 | 290万円 | 14% |
外貌醜状と逸失利益の問題点
外貌醜状が逸失利益に与える影響
外貌醜状が後遺障害に認定されると、慰謝料や逸失利益の損害賠償請求を行います。
顔に目立つ傷が残ると、特に人と接する仕事では精神的な負担や収入減少の影響があることがあります。
このため、外貌醜状の後遺障害認定等級が高いほど、損害賠償額も高くなります。
外貌醜状は等級表どおりの労働能力喪失率になりにくい
後遺障害に認定されると、基本的に自賠責保険の等級表に基づいて労働能力喪失率を算出します。
しかし、外貌醜状では身体機能が損なわれないので、必ずしも等級表通りに逸失利益が計算されるわけではありません。
収入が低下していないなどの理由で、労働能力喪失率が大幅に低く見積もられるケースが珍しくありません。
また、外貌醜状が仕事に影響しないと判断されて、逸失利益がまったく認められないケースまであります。
外貌醜状の逸失利益は職業差や男女差が無くなる傾向
昔は、外貌醜状による逸失利益は、ホステスやモデルなど外見が大事な仕事をしている女性にしか認められないケースが多かったです。
しかし、今では社会の変化により、職業・年齢・性別に関係なく、外貌醜状が職業選びに影響する場合には、逸失利益が認められるケースが増えました。
特に、女性や将来働く可能性のある主婦には、逸失利益が認められやすくなっています。
男性も、大きな醜状痕がある場合には、職業や年齢によって認められるケースが増えてきました。
逸失利益の代わりに慰謝料が増額されるケースも
外貌醜状は、逸失利益が認められにくいです。しかし、外貌醜状が原因となって人間関係に悪影響を与えたり、仕事のやる気や効率が下がることがあります。
そのような状況では、逸失利益を認める代わりに、後遺障害慰謝料が増額されるケースが増えてきています。
<参考>
【日経メディカル】「美形」は外貌醜状の後遺障害認定で有利?
【弁護士必見】外貌醜状の逸失利益が認められるポイント
転職や減収が無いケース
交通事故後に職場や収入に変化が無くても逸失利益が認められるかは、傷の目立ち具合や対人関係、昇進への影響などを総合的に判断します。
特に、見た目が重要な仕事や、対人スキルが必要な職業に従事していれば、労働能力への影響が考慮されて逸失利益が認められやすくなります。
専業主婦(主夫)のケース
専業主婦(主夫)は、平均賃金を基に逸失利益を計算します。しかし、外貌醜状が家事に直接影響を与えないケースは、逸失利益が認められにくいです。
具体的な就職予定があれば考慮される可能性があります。しかし、就職希望が漠然としていると、逸失利益は認められない可能性が高いです。
就職予定があったケース
交通事故当時に就職していなくても、将来働く予定があれば、逸失利益が考慮されます。
特に外貌が重要な職業や対人関係が重視される職種に就く可能性がある場合は、逸失利益が認められる可能性があります。
被害者が若年(未成年)のケース
被害者が18歳未満の場合、就職していなくても、原則として平均賃金を基に逸失利益が計算されます。
しかし、被害者が小学生以下のケースでは、後遺障害が将来の職業選択にどう影響するかが不確定なため、逸失利益が認められるか否かは不確定です。
このため、現時点での外貌醜状の影響を類推して、逸失利益の存在を主張せざるを得ません。
外貌醜状の後遺障害認定や逸失利益で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故による外貌醜状の後遺障害認定や逸失利益を主張するために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
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等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
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画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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外貌醜状の後遺障害等級と認定基準
外貌醜状では、顔面や首などの露出部の醜状痕、耳介や鼻の欠損、そして顔面神経麻痺による口のゆがみで後遺障害に認定される可能性があります。
最も一般的な外貌醜状は、顔面や首などの露出部の醜状痕です。後遺障害の等級は以下の表のとおりです。
等級 | 認定基準 |
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
7級12号(外貌の著しい醜状)
- 頭部: 手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
- 顔面部:鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥凹
- 頚部:手のひら大以上の瘢痕
9級16号(外貌の相当程度の醜状)
- 顔面部:5cm以上の線状痕
12級14号(外貌の単なる醜状)
- 頭部: 鶏卵大面以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
- 顔面部:10円銅貨大以上の瘢痕、または3cm以上の線状痕
- 頚部:鶏卵大面以上の瘢痕
醜状障害の認定基準
醜状障害は、以下の要素から決定されます。
- 醜状の部位
- 醜状の面積(長さ)
- 醜状の種類
後遺障害の鶏卵大とは
醜状の面積の基準となっている鶏卵大の定義は曖昧です。鶏卵のLサイズは約6㎝×4cmです。
しかし、これまでの認定事例から判断すると、認定基準の運用は6㎝×4cmよりも若干小さいサイズと思われます。
眉毛や頭髪で隠れる部分は醜状障害にならない
外貌醜状は、他者に認識される(人目につく)程度以上であるものとされています。このため、眉毛や頭髪で隠れる部分は、醜状障害としては取り扱われません。
<参考>
【医師が解説】外貌醜状や醜状障害の後遺障害認定ポイント|医療鑑定
【医師が解説】交通事故の顔の傷跡と後遺障害|外貌醜状
耳介、鼻の欠損、顔面神経麻痺の後遺障害等級と認定基準
等級 | 認定基準 |
7級12号 | ・耳介の1/2以上を欠損したもの ・鼻の大部分を欠損したもの |
12級14号 | ・耳介の一部を欠損したもの ・鼻の一部を欠損したもの |
12級14号 | 顔面神経麻痺による口唇周囲のゆがみ |
7級12号(耳介、鼻の欠損)
耳介の1/2以上、鼻の大部分以上を欠損した場合には「外貌の著しい醜状」として7級12号に相当します
12級14号(耳介、鼻の欠損)
耳介や鼻の一部を欠損した場合には「外貌の単なる醜状」として12級14号に相当します
12級14号(顔面神経麻痺)
顔面神経麻痺による口唇周囲のゆがみは、外貌の醜状として12級14号に相当します。顔面神経麻痺の評価のひとつに柳原法があります。
<参考>
【医師が解説】顔面神経麻痺は後遺障害認定される?|医療鑑定
まとめ
外貌醜状とは、顔や首などの目立つ部分に傷が残っている状態で、交通事故で後遺障害に認定される可能性があります。
後遺障害等級は傷の大きさや位置で決まり、7級は目立つ傷、9級は一定の大きさの線状痕、12級は比較的小さな傷が基準です。
外貌醜状は収入減少や精神的負担を伴うため、仕事や人間関係に影響が出ると逸失利益や慰謝料が認められることがあります。
しかし、外貌醜状では身体機能が障害されないため、逸失利益は認められにくい傾向にあります。
外貌醜状の後遺障害認定や逸失利益でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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