交通事故で起こる首の外傷の一つに、外傷性頚部症候群があります。外傷性頚部症候群は、むちうちや頚椎捻挫とも呼ばれています。外傷性頚部症候群は、後遺障害12級13号や14級9号に認定される可能性があります。
この記事では、外傷性頚部症候群が後遺障害に認定されるポイントを分かりやすく解説しています。また、非該当になった交通事故被害者が、異議申し立てによって後遺障害の認定を受けた事案についても説明しています。
最終更新日: 2024/9/8
Table of Contents
外傷性頚部症候群とは
外傷性頚部症候群の概要
交通事故当日は痛みを感じないこともありますが、翌日以降に痛みが強くなるケースが多いです。
頚椎のレントゲン検査やMRI検査では異常が見つからない場合でも、症状が持続することがあります。数日で治癒する場合もあれば、症状が1年以上続くこともあります。
また、外傷性頚部症候群の症状の程度はさまざまで、軽いケースから日常生活に深刻な影響を与える重い症状まであります。
外傷性頚部症候群と「むちうち」との違い
外傷性頚部症候群は、頚椎捻挫の正式な傷病名です。日本整形外科学会でも外傷性頚部症候群で統一されています。
一方、「むちうち」というのは外傷性頚部症候群の俗称です。なぜ「むちうち」と呼ばれるのかというと、戦後すぐの時期には自動車にヘッドレストがついていなかったからです。
ヘッドレストのない車が追突されると、運転席や助手席に乗っている人の首が鞭のように動き、痛められることがありました。
こうした経緯から、外傷性頚部症候群が「むちうち」と呼ばれるようになりました。ヘッドレストが普及した現代でも、昔の俗称が残っているのです。
外傷性頚部症候群の原因
外傷性頚部症候群の典型例は、停車中に後方や側方から追突されることで起こります。事故の衝撃によって頭蓋骨が前後や左右に大きく揺れ、首がむちのように動くことから「むちうち」と呼ばれています。
交通事故の規模が大きく車体の損傷程度が酷いほど、外傷性頚部症候群の症状が現れる可能性が高くなります。
一方、車体がわずかにへこんだ程度の小さな事故でも、強い症状が持続する場合もあります。事故の大きさと症状の重さが必ずしも一致しないというのが特徴です。
外傷性頚部症候群の症状
外傷性頚部症候群の症状はさまざまです。頚部の痛みや肩こり、上肢のしびれや痛みが比較的よく見られる症状ですが、他にもめまいや頭痛、嘔気、耳鳴り、全身のだるさ、動悸などが現れることがあります。
診察する医師によって、「バレリュー症候群」「自律神経失調症」「頸肩腕症候群」といった傷病名がつけられることもあります。上肢のしびれや痛み、筋力の低下がみられる場合は、頚椎椎間板ヘルニアを併発している可能性があります。
<参考>
【日経メディカル】あなどれない「むち打ち」の後遺症、首にとどまらない驚きの症状とは
【医師が解説】むちうち後遺症が首の痛みだけで後遺障害認定される?
【医師が解説】むちうち症状の伝え方3つのポイント|交通事故
【医師が解説】バレリュー症候群の後遺障害認定ポイント|交通事故
【医師が解説】頸肩腕症候群とは?症状のセルフチェックも|交通事故
外傷性頚部症候群の診断
外傷性頚部症候群の診断にはレントゲン検査が行われますが、異常が見つからないことが多いです。症状と比べて画像所見が少ないのが特徴です。
痛みが長引いたり、神経症状(上肢の痛みやしびれ、麻痺)がある場合は、MRI検査が推奨されます。一般的には、レントゲン検査やMRI検査で骨折や脱臼が見つからない場合に外傷性頚部症候群と診断されます。
頚椎のMRI検査で椎間板ヘルニアが認められる場合は、外傷性頚部症候群よりも頚椎椎間板ヘルニアと診断される方が適切でしょう。
椎間板や神経はレントゲン検査では見えません。頚椎のMRI検査を行うことで、椎間板ヘルニアの有無や神経根や脊髄の圧迫の状態を評価することができます。
外傷性頚部症候群の治療
外傷性頚部症候群の保存療法
外傷性頚部症候群では、交通事故直後(急性期)では安静と消炎鎮痛剤(内服や外用)が一般的に処方されます。
頚部を保護するために、頚椎装具(ソフトカラー)を使うこともあります。事故から1〜2週間後には、物理療法(牽引、温熱、低周波治療など)、セラピストによるリハビリテーションなどが行われます。
<参考>
【医師が解説】むちうちの首コルセットは寝るときも装着?|交通事故
外傷性頚部症候群の手術療法
外傷性頚部症候群に対して手術が行われることは稀ですが、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症、頚椎後縦靭帯骨化症による症状(頚髄症や神経根症)がある場合は、頚椎の手術が必要になることもあります。
具体的には、上肢の激しい痛みが持続する場合や、上肢や下肢の麻痺がある場合が該当します。神経根の症状は上肢の痛みやしびれが主な特徴で、重症化すると筋力低下も伴います。
頚髄症の症状は多岐にわたり、両手の細かい作業ができない巧緻性障害や四肢のしびれ、感覚異常が主な特徴です。
症状が進行すると、歩行障害(痙性や失調によるもの)や直腸膀胱障害(自力で尿が出せない、失禁するなど)が生じることもあります。
交通事故後に頚椎手術が必要とされるケースとして、もともと脊柱管が狭い方が事故後に脊髄や神経根の圧迫症状が現れることがあります。
脊柱管狭窄の原因としては、発育性脊柱管狭窄や頚椎後縦靭帯骨化症が多いです。日本人の頚椎脊柱管は欧米人と比べて狭い傾向があり、無症状の人でも潜在的な脊柱管狭窄を抱えていることがあります。
また、後縦靭帯骨化症はアジア人に多く、脊柱管狭窄症の原因となることがあります。そのため、脊柱管狭窄が基にある場合には、交通事故の外傷によって脊髄や神経根の症状が悪化すると、除圧手術が行われることがあります。
<参考>
頚椎症性脊髄症の交通事故による増悪は後遺障害認定されるのか
【医師が解説】後縦靭帯骨化症(OPLL)と後遺症|交通事故
外傷性頚部症候群では仕事を何日休む?
実は、外傷性頚部症候群では医学的には休業が推奨されていません。整形外科医ではない人が作成したネット記事で「頚椎捻挫後2週間は安静にする」「頚椎捻挫後2週間は仕事を休む」といった内容を見かけることもありますが、医学的には間違いです。
長期間の安静や休業は、社会復帰を遅らせる要因となることがあります。そのため、私たち整形外科医は、可能な範囲で仕事を続けることを推奨しています。
もちろん、症状が重い場合にはある程度の安静や休業が必要です。しかし、数ヶ月にわたる休業は医学的に証明できないケースが多いことを理解しておくべきでしょう。
賠償交渉の現場でも、数ヶ月に及ぶ長期休業は大きな問題となります。医学的な必要性が証明されていないため、訴訟になっても認定されない可能性が高いです。この点にも注意が必要です。
外傷性頚部症候群は全治何ヶ月?
外傷性頚部症候群の完治までの期間は、平均的には2〜3ヶ月です。しかし、長引く場合には4〜6ヶ月にも及ぶこともあります。
症状が6ヶ月以上改善しない場合には、後遺障害に認定される可能性があります。
外傷性頚部症候群の後遺症が数年後に発症する可能性
外傷性頚部症候群の後遺症が後から出ることは無い
日常の診療でよく聞かれる質問の代表的なものは「外傷性頚部症候群の後遺症が数年後に発症することはあるのか?」です。
結論から言うと、もし現在症状が無いのなら、後から後遺症が出る可能性はありません。もし頚部の痛みや手のしびれなどの症状が出た場合でも、それは事故とは関係のない別の原因によって発症したものです。
<参考>
【医師が解説】むちうち症状が出るまでの期間|交通事故の後遺症
交通事故と外傷性頚部症候群後遺症の因果関係の証明は難しい
交通事故から数年後に頚部痛や手のしびれが発症しても、その症状が交通事故と因果関係があると証明することは非常に困難です。
そのため、交通事故から数年後に症状が現れた場合、外傷性頚部症候群の後遺障害として認定される可能性は無いと考えていいでしょう。
骨折では後遺症が数年後に発症する可能性がある
一方、外傷性頚部症候群ではなく脛骨高原骨折などの関節内骨折の場合、事故から数年後に痛みや関節の動きの制限などの症状が現れる可能性があります。
このような場合は、交通事故との因果関係を証明することも比較的容易です。もし症状に悩んでいる場合は、主治医や弁護士に相談することをおすすめします。
外傷性頚部症候群の治療打ち切りを打診されたら?
保険会社から治療打ち切り連絡された時の対応
外傷性頚部症候群の治療を続けていると、いつか必ず保険会社から治療打ち切りの連絡が来ます。
しかし、そのような連絡があったからと言って、首の痛みなどの症状が残っている場合には、軽々しく承諾してはいけません。
まずは保険会社に連絡し、なぜ外傷性頚部症候群の治療が打ち切られるのかを確認しましょう。治療打ち切りの理由を把握した上で、以下のような対策を考えることになります。
主治医に相談する
外傷性頚部症候群の症状が改善して治療効果を感じている場合は、まだ治療が必要です。このような場合は、主治医に相談しましょう。
主治医も外傷性頚部症候群の治療が必要と考えている場合、保険会社の治療打ち切りが延期されることがあります。主治医の意向を伝えると、保険会社は主治医に治療状況を確認するための書類を送付します。
保険会社からの治療状況照会状に対する回答書内で、主治医が外傷性頚部症候群の治療必要性を記載してくれれば、治療打ち切りが延長される可能性が高まります。
弁護士に相談する
治療打ち切りの連絡があった場合、被害者だけでは限界があります。そのような場合は、弁護士に交渉を依頼しましょう。
弊社では、交通事故に精通した弁護士を全国から紹介するサービスを提供しています。弁護士紹介を希望される方は、以下のリンク先からお問い合わせください。
尚、弊社の弁護士紹介サービスはボランティアで行っており、電話での問い合わせは固くお断りしています。
<交通事故被害者の方はこちら>
【弊社ホームページ】弁護士紹介サービス
それでも治療が打ち切りになった際の対処法
外傷性頚部症候群の治療に効果があれば終了してはいけない
主治医が治療必要と回答し、弁護士が交渉に当たっても、保険会社から治療(任意一括対応)を打ち切られることがあります。
しかし、外傷性頚部症候群の症状が改善してきているのであれば治療を終了してはいけません。健康保険を利用して通院を続けましょう。治療費の一部は自己負担となりますが、健康保険を利用することで負担を軽減できます。
保険会社には外傷性頚部症候群の治療費支払い義務がある
保険会社の任意一括対応は法的義務ではありませんが、治療費の支払い義務はあります。任意一括対応が終了した場合は、症状固定後の示談交渉時に治療費の請求を行います。
症状固定時期で争いになったら弁護士に相談を
保険会社は外傷性頚部症候群の治療必要性がなくなったと判断して任意一括対応を終了します。したがって、示談交渉時に症状固定の時期について争いが生じることがあります。
このような場合、被害者個人で対応するのは難しいです。交通事故に精通した弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼することで適切に対応できます。
外傷性頚部症候群の後遺症が後遺障害認定されるまでの流れ
外傷性頚部症候群は、さまざまな症状が現れ、その重症度や持続期間も個人によって異なることが特徴です。
症状の持続期間には大きな個人差があります。事故規模が比較的小さなものでも、症状が半年以上持続する被害者もいます。
ただし、無期限に治療を続けることは難しく、症状固定の時期をどのように設定するかが問題となります。症状固定とは、十分な治療を行っても症状の改善が見込めないと判断される時期です。
外傷性頚部症候群の症状固定時期は、患者さんの症状や医師の考え方によって異なりますが、数週間~数ヶ月、中には1年以上に及ぶこともあります。
症状固定時に後遺症が存在する場合、主治医によって後遺障害診断書が作成されます。この診断書は、交通事故によって生じた後遺症の評価を行い、後遺障害等級に応じた損害賠償金を受けるためのものです。
後遺障害等級が認定されると損害賠償金を受け取ることができます。後遺障害が認定されるためには以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 交通事故が原因で肉体的・精神的な傷害が生じていること
- 医師が将来も回復が見込めないと判断し、症状固定と認めること
- 交通事故と後遺症に因果関係が認められること
- 後遺症の原因が医学的に証明・説明できること
- 後遺症の程度が自賠責保険の後遺障害等級に該当すること
後遺障害等級の認定は自賠責保険によって行われます。もし等級認定結果に異議がある場合は、「異議申立て」をすることも可能です。
ただし、患者さん自身で異議申立てを行うことは難しいため、異議申立てのサポートをしている経験豊富な法律事務所に相談することをおすすめします。
相談する法律事務所は、どこでも良いわけではありません。等級が認定される可能性を上げるためには、交通事故を専門に扱う医師と連携している経験豊富な法律事務所を選ぶべきでしょう。
ただし、経験豊富な法律事務所を選ぶ際には慎重に判断する必要があります。弊社では全国の経験豊富な法律事務所を無料で紹介するサービスを提供していますので、ご利用ください。
外傷性頚部症候群で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
外傷性頚部症候群の後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求することができます。
後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料は、交通事故によって残った後遺障害に対する精神的苦痛の補償金です。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて以下の表のように異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下することによって失われるであろう収入の補償金です。
後遺障害逸失利益は、被害者の年収と年齢に基づいて、後遺障害等級、労働能力喪失率、労働能力喪失期間によって算出されます。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
外傷性頚部症候群後遺症の後遺障害
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
神経症状とは、外傷性頚部症候群によって引き起こされる症状のことを指します。頚部痛だけでなく、肩こりや上肢のしびれ・痛み、めまい、頭痛、嘔気なども含まれます。
12級13号と14級9号の大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できること」です。12級13号の認定には、まずレントゲン検査やMRI検査などの検査で客観的な異常所見が必要です。
異常所見には骨折や脱臼の他、椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎の加齢変化)、椎間板の厚みの減少(加齢による変性)も含まれます。しかし、神経や椎間板はレントゲン検査では見えないため、MRI検査を実施しない限り証明が困難です。
また若い患者さんでは加齢の変化が少なく、MRI検査の異常所見が見られないこともあり、その場合は12級13号の認定が難しいです。
14級9号では、神経症状は患者さんの自覚症状(痛みなど)で後遺障害認定されますが、12級13号ではより厳しい条件があります。自覚症状だけでは不十分で、客観的な症状が必要とされます。
客観的な症状には筋力低下や筋肉の萎縮、深部腱反射の異常などが含まれます。また、しびれ(知覚障害)の範囲も損傷した神経の分布に一致している必要があります。
外傷性頚部症候群の場合は頻度は低いですが、筋電図や神経伝導速度検査などの特殊な検査の異常値も客観的な所見となります。
筋力低下は徒手筋力テスト(MMT)によって評価されます。このテストでは、筋力が正常な状態から完全運動麻痺の状態までの6段階で評価されます。
<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント|交通事故
14級9号:局部に神経症状を残すもの
神経症状とは、外傷性頚部症候群に由来する症状のことを指します。頚部痛だけでなく、上肢のしびれや痛み、めまい、頭痛、嘔気なども含まれます。
後遺症の認定には、将来的にも回復の見込みがないと医師が判断した状態(症状固定)が必要です。
また、症状は常時性でなければならず、一時的な痛みの消失がある場合は認定されません。例えば、「天気が悪いときに痛む」といった状況です。
後遺障害の認定には、交通事故と後遺症の因果関係が認められる必要があります。そのため、車体の損傷が小さく、軽微な交通事故の場合は、後遺症との因果関係が認められないことが多いです。
<参考>
【国土交通省】後遺障害等級表
外傷性頚部症候群後遺症の後遺障害認定確率は約5%
損害保険料率算出機構は、自動車保険の概況という統計資料を公表しています。2021年度(2020年度統計)では、損害調査受付件数が1041737件でした。
このうち、後遺障害に認定された事案は49267件で、後遺障害認定率は約4.7%です。外傷性頚部症候群における後遺障害認定の確率も近い数字と言えます。
<参考>
損害保険料率算出機構「2021年度 自動車保険の概況」
【弁護士必見】外傷性頚部症候群の後遺障害認定ポイント
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
外傷性頚部症候群において、12級13号は厳しい後遺障害認定基準が設けられています。痛みの持続だけでは不十分で、医学的に証明可能な所見の存在が必要です。
具体的には、頚椎のMRI検査で神経の圧迫が確認されることが必要です。弊社の経験では、多くの事例で椎間板の高信号変化という新しい外傷の所見が見られました。
また、圧迫された神経と実際の症状(知覚障害の範囲、深部腱反射の異常、スパーリング徴候などの誘発テストの陽性など)が一致することも必要です。
12級13号の認定には、脊椎脊髄外科指導医/専門医や整形外科専門医の評価が欠かせません。弊社では等級スクリーニングというサービスを提供しているのでご気軽にお問い合わせください。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
14級9号は救済等級として位置づけられ、比較的広い範囲の患者が後遺障害に認定される可能性があります。
一定期間(約半年が目安)の通院回数が一定基準を超える場合、後遺障害認定の可能性が高まります。また、交通事故の規模や画像所見(頚椎のレントゲン検査やMRI検査)も考慮されます。
重要な点は、受傷直後から後遺障害診断書が作成される症状固定時期まで、症状が一貫して持続していることです。
異議申立ての際には、症状の一貫性を含む総合的な主張が必要です。弊社ではすべての対策を網羅した医師意見書サービスを提供しています。
<参考>
【日経メディカル】意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?
年間1000事案におよぶ圧倒的な取り扱い事案数に裏打ちされた医師意見書サービスを是非お試しください。事案のご相談はこちらからお願いいたします。
外傷性頚部症候群後遺症の後遺障害認定に必要な検査
外傷性頚部症候群では、後遺障害等級によって必要とされる検査に若干の違いがあります。
ここでは画像検査以外の後遺障害認定基準を全て満たしているという前提で、各等級が認定されるために必要な検査を説明します。
12級13号では頚椎MRIが必須
12級13号では頚椎のMRI検査が必須です。一方、神経伝導速度検査(NCV)は基本的には必要ありません。
ただし、単に頚椎MRIを撮像するだけでは後遺障害認定されることはありません。椎間板ヘルニアなどの画像所見が必要です。
弊社で12級13号が認定された事案では、多くの例でT2強調画像において椎間板の高信号変化を認めました。
14級9号では単純X線像だけでも可
14級9号では頚椎のレントゲン検査だけでも後遺障害認定可能ですが、頚椎MRI検査の実施が望ましいです。
外傷性頚部症候群の後遺症で非該当を回避する工夫
外傷性頚部症候群の後遺症が非該当にならないための工夫について考えてみましょう。まず重要なのは、初めて受診した際に、自分が感じる症状を主治医に正しく伝えることです。
痛みやしびれは見た目では分かりませんので、痛みやしびれがあることを言葉で主治医に伝えましょう。診療録(カルテ)に記載された内容は後の後遺障害認定に非常に重要です。通院中に痛みが改善せず持続している場合は、それをしっかりと伝えましょう。
なお、後遺障害認定のためには痛みが常時持続していることが必要です。たまに痛みが出る、天候が悪いと痛むなど、時々痛みが生じる状態では後遺障害として認定されにくくなります。
自賠責認定基準はブラックボックスですが、主治医の協力は等級認定に不可欠な条件です。もちろん、協力的な主治医であっても全てがうまくいくわけではありません。しかし、非協力的な主治医では最初の段階から問題が生じます。被害者の立場では主治医の選択は非常に重要なポイントとなります。
どのような医師が協力的である可能性が高いのでしょうか。私見ですが、以下の医師が協力的である可能性が高いです。
開業医
開業医が協力的である理由は、患者の通院が自身のクリニックの利益になるからです。一方、病院の勤務医にとっては外来業務の負担が増えるだけなので、頻繁な通院は避けられる傾向があります。
特に重要なのは、整形外科を専門とする開業医のクリニックに通院することです。整形外科以外の医師は、外傷性頚部症候群の診察において、後遺障害認定に必要な深部腱反射の評価を行っていないことがあります。
また、整形外科医以外の医師(外科医など)の中には、頚椎MRI検査の読影が苦手な方も多く、椎間板ヘルニアや変性などの所見を見逃す可能性が高くなります。
「整形外科」と明記されているクリニックがベストです。「外科」や「外科・整形外科」と明記されているクリニックは、院長が外科医であることが多いため、交通事故後の通院にはあまり適していないと言えます。
年齢が比較的若い医師(おおむね50歳代以下)
年齢が若い医師もポイントの一つです。最近は少なくなってきましたが、一部の高齢の医師は「診てやっている」という意識が強い場合があります。このような医師にかかると、通院自体が大変になります。
また、高齢の医師の中には、自身の意見に固執しすぎる人もいます。偏った方針で治療や後遺障害診断書を記載することは、非該当になる原因となりやすい
物理療法が可能なクリニック
物理療法ができるクリニックであることは、とても重要なポイントです。最近は物理療法の保険点数が下がったため、都市部以外のクリニックでは物理療法を併設していないというケースが増えています。
週に何度も主治医に通うことに抵抗感を持つ人も多いかと思いますが、物理療法があると気軽に通院することができます。ですから、クリニックを選ぶ際には物理療法が行えるかどうかを確認することは必要不可欠です。
<参考>
【日経メディカル】むち打ちの後遺障害が非該当になる理由
【12級13号】外傷性頚部症候群の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:46歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と右頚部から母指にかけて放散する痛みが持続していました。痛みのため、1年以上通院、治療を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。
弊社の取り組み
診療録を詳細に確認すると、受傷直後から頚椎椎間板ヘルニアに特徴的な「スパーリング徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。
MRIで、C5/6レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの上肢痛(右母指にかけての放散痛)は椎間板ヘルニアが圧迫しているC6神経根の知覚領域と完全に一致していました。
脊椎脊髄外科指導医が診療録を確認して、初回申請時に見落とされていた身体所見を記載した医師意見書を作成しました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。
【14級9号】外傷性頚部症候群の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:60歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と両手のしびれを自覚されていました。受傷から半年間通院されましたが、頚部痛と両手のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。
弊社の取り組み
MRIを脊椎脊髄外科専門医が読影したところ、頚椎後縦靭帯骨化症が存在していることが明らかになりました。診療録を確認すると、受傷当日から頚部痛と両手がしびれると記載されていました。
身体所見、画像所見および診療経過について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
外傷性頚部症候群の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、外傷性頚部症候群の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
外傷性頚部症候群の後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
交通事故で発生する首の外傷のひとつに外傷性頚部症候群があります。外傷性頚部症候群に後遺症が残ると、後遺障害12級13号や14級9号に認定される可能性があります。
しかし、外傷性頚部症候群の後遺障害認定確率は非常に低く約5%程度しかありません。このため、外傷性頚部症候群が後遺障害認定されるには、さまざまな工夫やポイントが必要です。
外傷性頚部症候群の後遺症が非該当となった場合、経験豊富で自賠責認定基準に精通した整形外科専門医のサポートが必要です。
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