交通事故において、鼻骨骨折は比較的頻度の多い顔面のケガです。顔面外傷によるキズや鼻骨骨折による変形は、見た目の問題だけではなく心理的にも大きな苦痛となります。
本記事は、交通事故で受傷した鼻骨骨折が、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
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交通事故の鼻骨骨折とは
鼻骨骨折は、顔面骨折の中で最も頻度の高い骨折です。鼻骨は、鼻の上部分の1/3です。下部分の2/3は軟骨でできています。
鼻骨骨折では、左右の鼻を分けている鼻中隔という壁の骨折を合併することが多いです。鼻中隔の骨折では、鼻詰まり(鼻閉)などの症状が残る可能性が高まります。
交通事故による鼻骨骨折の受傷機転
シートベルト着用が義務化されるまでは、運転者がハンドルに鼻をぶつけて骨折することが多かったです。
現在では、後部座席の人が急停車の際に前方座席に顔面を強打したり、自転車や歩行中に転倒して顔面を強打した受傷することが多いです。
交通事故による鼻骨骨折の症状
鼻骨骨折を受傷すると、以下のような症状を発症する可能性があります。
- 鼻血
- 鼻が詰まる(鼻閉)
- 鼻が潰れて低くなる(鞍鼻変形)
- 斜めに曲がる(斜鼻変形)
鼻骨骨折は何科に行けばよい?
最も推奨される科は、形成外科です。しかし、形成外科はあまり一般的な科ではないため、身の回りに無いケースが多いです。
その場合には耳鼻科を受診することをお勧めします。保存的に治療できない場合には、耳鼻科医師が専門病院を紹介してくれるでしょう。
鼻骨骨折の診断
受傷早期では鼻の腫れが強いため、骨折しているか否かを判断するのが難しいケースがあります。
治療方針を決定するためには、レントゲン検査やCT検査が有用です。CT検査では、鼻中隔のズレ(転位)の程度も判断できます。
鼻骨骨折の治療法
鼻骨骨折の保存療法
受傷してから1週以内であれば整復可能なケースが多いです。麻酔をかけて、鼻骨用の整復鉗子を使って、変形した鼻骨のズレ(転位)を整復します。
鼻骨を整復した後は、鼻の中にガーゼを詰める内固定と、鼻の外にプラスチック製のシーネを当てる外固定を併用します。
鼻骨骨折の手術療法
受傷から4週間以上経過した症例では、変形した鼻骨を削ってズレ(転位)を整復する必要があります。骨移植が必要なケースもあります。
鼻骨骨折のギプスはいつまで?
ズレ(転位)が大きい鼻骨骨折は手術で整復します。手術後は、鼻の外側にギプスを当てます。ギプスは約1週間で外します。
鼻骨骨折は全治何ヶ月?
ズレ(転位)の程度や骨折形態によって異なりますが、鼻骨骨折ではおおむね1.5ヶ月(6週間)で骨癒合するケースが多いです。
鼻骨骨折が曲がったまま?
前述のように、鼻骨骨折が斜めに曲がったまま骨癒合すると、鼻骨が曲がったままになります(斜鼻変形)。
鼻閉などの症状を併発していないかぎり、手術療法の絶対適応ではありません。多分に美容面での治療選択になるので、時間をかけてゆっくり判断しましょう。
鼻骨骨折で考えられる後遺障害
外貌醜状の後遺障害
一般的に「外貌の醜状」とは、他者に認識される(人目につく)程度以上であるものとされています。また、眉毛や頭髪等で隠される部分については、醜状としては取り扱われません。
7級12号(外貌の著しい醜状)
- 頭部: 手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
- 顔面部:鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥凹
- 頚部:手のひら大以上の瘢痕
9級16号(外貌の相当程度の醜状)
- 顔面部:5cm以上の線状痕
12級14号(外貌の醜状)
- 頭部: 鶏卵大面以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
- 顔面部:10円銅貨大以上の瘢痕、または3cm以上の線状痕
- 頚部:鶏卵大面以上の瘢痕
鼻欠損の後遺障害
鼻の欠損障害は、これらの欠損障害として定められている等級と外貌の醜状による等級の比較により、いずれか上位の等級が認定されます。
7級12号
鼻の大部分以上を欠損した場合には、外貌の著しい醜状として7級12号に相当します
12級14号
鼻の一部を欠損した場合には、外貌の醜状として12級14号に相当します
嗅覚脱失・減退の後遺障害
嗅覚の脱失とは、嗅覚を完全に失ってしまったものです。一方、嗅覚の減退は、嗅覚が落ちてしまったものです。嗅覚脱失や限定は、脳挫傷や高次脳機能障害に併発するケースが多いです。
嗅覚障害の程度は、T&Tオルファクトメーターで診断します。T&Tオルファクトメーターは、5種類の匂いが8段階のどの濃度まで分かるかを判定する検査キットです。
12級相当:嗅覚を脱失するもの
T&Tオルファクトメーターの検査結果が、5.6以上のものです。嗅覚脱失のみであれば、アリナミンPテストで代用することも可能です。
14級相当:嗅覚の減退するもの
T&Tオルファクトメーターの検査結果が、2.6以上5.5以下のものです。
鼻づまりの後遺障害
鼻中隔の変形が残った事案では鼻づまりを発症する可能性があります。鼻づまりの後遺障害は、嗅覚の脱失や減退に準じて判定します。
12級相当:嗅覚を脱失するもの、または鼻呼吸困難が存するもの
T&Tオルファクトメーターの検査結果が、5.6以上のものです。
14級相当:嗅覚の減退するもの
T&Tオルファクトメーターの検査結果が、2.6以上5.5以下のものです。
外貌醜状では面接審査がある
自賠責保険では後遺障害認定は書類審査が原則ですが、醜状障害に関しては面接審査が実施されるケースもあります。面接審査の施行要否は、自賠責保険が判断します。
調査員が、実際にキズの長さを計測したり性状を確認します。調査員の主観による判断がなされる場合もあるため、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
【弁護士必見】鼻骨骨折が後遺障害認定されるポイント
外貌醜状のキモである鶏卵大の定義
てのひら大の定義はかなりアバウトですが、鶏卵大の定義は更に曖昧です。鶏卵のLサイズは約6㎝×4cmです。
しかし、これまでの認定事例から判断すると、認定基準の運用は6㎝×4cmよりも若干小さいサイズと思われます。
外貌醜状では創部の画像記録を残しておく
自賠責保険の実務では、初療を担当した急性期病院の医師と、後遺障害診断書を作成する医師が異なるケースが少なくありません。
紹介先の医師には、創が事故によって受傷したものか否かが分かりません。このため、後遺障害診断書への醜状記載を拒否されるケースを散見します。
このような事態を招かないように、受傷後早期から創部の画像記録を残しておくことが推奨されます。
分かりやすい図式資料の添付が重要
醜状障害における等級認定のポイントは、後遺障害診断書において醜状の大きさや程度を分かりやすく示すことです。
2016年に交通事故受傷後の傷痕等に関する所見という醜状障害に特化した書式が新設されています。
この書式には、体表図や頭頸部の模式図が含まれています。しかし、皮膚科や形成外科などの専門科以外の多くの医師は、この書式の存在を知りません。
この書式で提出することがベストですが、体表図や頭頸部の模式図で具体的な障害を図示することで代用可能です。実際の醜状を記録した画像も有効な資料となります。
外貌醜状は労働能力喪失率が争点となるケースが多い
弊社に寄せられる相談で多いのは逸失利益の減額です。保険会社は、醜状障害を負っても身体能力は問題無いので労働能力は喪失しないと主張するケースが多いです。
職種に拠りますが、工場勤務などでは反論が難しいケースもあります。一方、営業職では労働能力喪失による逸失利益を主張することは可能です。
より現実的な解決法は、醜状に併発した痛みやしびれ(神経障害)の存在を主張することでしょう。実臨床では、瘢痕は痛みやしびれを伴うことが多いからです。
事故による鼻骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故による鼻骨骨折の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による鼻骨骨折の後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
鼻骨骨折で認定される可能性のある後遺障害は、鼻の変形による外貌醜状、鼻の欠損、嗅覚脱失・減退、鼻づまりです。これらの中でも頻度が高いのは、圧倒的に外貌醜状に該当するケースです。
鼻骨骨折を含めた顔面外傷は、機能面での障害に加えて心理的な問題も抱えがちです。鼻骨骨折でお困りの場合はこちらからお問い合わせください。
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