交通事故で発生する下腿の外傷のひとつに腓骨骨折があります。腓骨骨折は後遺症を残しやすい外傷です。
本記事は、腓骨骨折の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
Table of Contents
腓骨骨折とは
下腿の骨には脛骨と腓骨とがあります。
内側(足の親指側)にあるのが脛骨で、体重の5/6を支えます。
外側(足の小指側)にあるのが腓骨で、残りの1/6を支えます。
下腿では、脛骨が体重の5/6を支え、腓骨は体重の1/6程度です。このため、腓骨骨折だけであれば、何とか歩行できるケースも多いです。
www.visiblebody.comより引用
腓骨骨折の場所によって、近位端、骨幹部、遠位端と分けられます。
遠位端は足関節の関節内骨折になることが多いです。
<参考>
【医師が解説】足首骨折(足関節脱臼骨折)の後遺症|交通事故
交通事故での腓骨骨折の受傷機序
交通事故では下腿の外側をぶつけたり、足関節を捻ることで腓骨骨折が起こります。足関節は、足関節周囲の靱帯損傷を合併するおそれがあります。
腓骨骨折の症状
骨折なので痛みが一番の症状となります。足関節の靱帯損傷を伴うと、足関節の不安定性が出現する場合もあります。
腓骨骨折の診断
腓骨骨折の診断では、レントゲン検査が基本です。CT検査を撮影すると、より詳細に骨折の形を把握することが出来ます。
骨幹部の骨折はMaisonneuve骨折(メゾヌーブ骨折)、遠位側では足関節脱臼骨折と呼ばれています。足関節の靱帯損傷の評価にはMRIも有用です。
上記のレントゲン検査のように、腓骨骨折では脛骨骨幹部骨折を伴う場合が多いです。
腓骨骨折に対する治療
骨折している場所によって治療法が異なります。腓骨遠位端では、手術療法を選択するケースが多いです。しかし、ズレ(転位)の少ない骨折は保存療法が可能です。
腓骨骨折の保存療法
外果単独の骨折でほとんどズレ(転位)の無い場合は、足関節をギプスで固定して保存的に治療を行います。
また、全身の合併症(内蔵損傷、頭部外傷など)で優先するべき傷病がある場合は、まずそちらの対応をした上で腓骨骨折の治療を行います。
腓骨骨折の手術療法
腓骨近位端の骨折
脛骨の内果骨折も併発している場合、前述のMaisonneuve骨折に注意です。足関節のみのレントゲンでは膝周囲の腓骨骨折を見逃すことが多く経験します。
腓骨骨幹部の骨折
腓骨骨幹部骨折では保存療法が標準ですが、ときどき鋼線やプレートで固定することがあります。
腓骨遠位端の骨折
腓骨遠位端骨折では、プレートを外側や後方から当てることが多いです。8の字の針金で固定するケースもあります。
腓骨骨折で考えられる後遺症
可動域制限による機能障害、変形障害、偽関節による障害などがあります。
機能障害
8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
足関節の可動域制限を残す場合があります。強直あるいは完全弛緩性麻痺かそれに近いものをいいます。
10級10号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
足関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
足関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。
変形障害
7級10号:1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
要件として、「著しい運動障害を残すもの」とは常に硬性補装具を必要とするものを言います。
8級9号:1下肢に偽関節を残すもの
脛骨腓骨骨折に偽関節を残した症例で、常に硬性補装具を必要としないものが該当します。実臨床では、脛骨と腓骨が偽関節に至った症例でもっとも多いのはこのタイプの後遺障害です。
ロッキングプレートや髄内釘のおかげで硬性補装具無しで歩行可能なものの、骨癒合していない症例は稀ではありません。
12級8号:長管骨に変形を残すもの
腓骨の骨幹部のみに癒合不全を残すものはこれに該当します。
短縮障害
脛骨腓骨の骨癒合不全のために短縮の後遺障害が残ることがあります。
8級5号:1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
下肢の短縮の評価は、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側と比較することによって行います。
<参考>
【医師が解説】脚長差(短縮障害)の評価はSMDが妥当?|交通事故
醜状障害
下腿の醜状に関しては、下記に詳しくまとめていますのでご参照ください。
<参考>
【医師が解説】醜状が後遺障害認定されるポイント|交通事故
【弁護士必見】腓骨骨折の後遺障害認定ポイント
腓骨骨幹部骨折の後遺障害認定ポイント
腓骨骨幹部骨折は、脛骨骨折に合併しやすいです。脛骨骨折を併発している場合には脛骨骨折が後遺障害のメインとなるため、腓骨骨折に関してはあまり考慮する必要がありません。
一方、脛骨骨折を併発していない場合は、12級8号もしくは14級9号が目線となります。腓骨骨幹部骨折は偽関節になりやすいです。
このため、レントゲン検査が重要ですが、腓骨の斜骨折では骨癒合しているか否かを判断できないケースが珍しくありません。
そのようなケースでは、CT検査が有用であることが多いです。腓骨は偽関節化してもそれほど痛み残さないことが多いので、見逃しに注意しましょう。
腓骨遠位端骨折の後遺障害認定ポイント
腓骨遠位端骨折は、足関節の関節内骨折です。また、足関節脱臼骨折の一形態であるケースが多いです。
<参考>
【医師が解説】足首骨折(足関節脱臼骨折)の後遺症|交通事故
足関節脱臼骨折は関節内骨折であるため、痛みや可動域制限を残しやすいです。このため、腓骨骨幹部骨折と比較して、腓骨遠位端骨折は後遺障害に認定されやすい傷病名と言えます。
【12級8号】腓骨骨折の後遺障害事例
事案サマリー
- 被害者:50歳代 女性
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級8号(長管骨に変形を残すもの)
原付乗車中に衝突されて転倒して下腿を強打して腓骨骨折を受傷しました。症状固定時に骨癒合していると診断されたため、自賠責保険では非該当となりました。
弊社の取り組み
下腿外側の痛みが続くため、弊社に相談がありました。改めてレントゲン検査を精査したところ、腓骨の遷延癒合もしくは偽関節の可能性を疑いました。
CT検査を再検したところ、腓骨の偽関節を認めました。画像鑑定報告書を添付して異議申し立てしたところ、変形障害として12級8号が認定されました。
本事案のポイントは、レントゲン検査だけでは偽関節が分からなかった点です。臨床的には、腓骨骨幹部骨折は重大な後遺症を残しません。このため、整形外科医は腓骨骨幹部骨折を軽く見がちです。
しかし、自賠責保険では、腓骨骨幹部骨折の偽関節であっても12級8号に認定されます。このような実臨床と自賠責保険のギャップが大きい事案では、画像所見の精査が必要なケースを散見します。
腓骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故による腓骨骨折の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
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等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による腓骨骨折の後遺症でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
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尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
まとめ
脛骨骨折に併発した腓骨骨幹部骨折では、脛骨骨折が後遺障害のメインとなるため腓骨骨折はあまり考慮する必要がありません。
一方、脛骨骨折を併発していない場合には、12級8号もしくは14級9号が目線となります。
腓骨遠位端骨折は足関節の関節内骨折なので、痛みや可動域制限を残しやすいです。このため、腓骨遠位端骨折は後遺障害に認定されやすい傷病と言えます。
腓骨骨折の後遺症による等級認定でお困りの際はこちらからお問い合わせください。
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