交通事故で発生する後遺症のひとつに橈骨神経麻痺があります。上腕骨骨幹部骨折、上腕骨顆上骨折、モンテジア骨折(Monteggia骨折)などに合併する神経麻痺です。
外傷性の橈骨神経麻痺では後遺症を残すことがあります。本記事は、橈骨神経麻痺の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
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橈骨神経麻痺とは
橈骨神経は、手首や手の指を伸ばす(背屈)筋肉を支配する神経です。このため、橈骨神経麻痺を発症すると、手首や手の指を伸ばせなくなります。
橈骨神経が傷害されやすい部位は、
- 上腕
- 前腕
の2か所です。橈骨神経の傷害部位によって、麻痺の程度が異なります。
橈骨神経麻痺の症状
上腕で橈骨神経が傷害された場合
上腕骨骨幹部骨折や上腕骨顆上骨折で、橈骨神経麻痺を合併すると、下垂手(drop hand)と呼ばれる症状を呈します。
- 手首や手の指を伸ばせない(背屈できない)
- 母指~中指の背側、手の甲、前腕の母指側の知覚低下としびれ
前腕で橈骨神経が傷害された場合
モンテジア骨折(Monteggia骨折)で、橈骨神経麻痺を合併すると、下垂指(drop finger)と呼ばれる症状を呈します。
- 手の指を伸ばせない(背屈できない)
橈骨神経は、肘関節よりも末梢では後骨間神経と呼ばれる運動神経を分岐します。モンテジア骨折ではこの神経を傷害して後骨間神経麻痺を合併します。
橈骨神経麻痺の原因
上腕での傷害
上腕骨骨幹部骨折
上腕骨顆上骨折
前腕での傷害
モンテジア骨折
その他の原因
ガングリオンなどの腫瘤や腫瘍も橈骨神経麻痺の原因となります。しかし交通事故に起因する外傷ではないので、ここでは割愛させていただきます。
橈骨神経麻痺の診断
交通事故との因果関係の証明がキモとなるため、橈骨神経麻痺の診断は極めて重要です。
診断するためには、まず橈骨神経麻痺を発症した原因部位を特定することから始めます。交通事故では外傷部位が明白な場合が多いですが、上肢の多発外傷では傷害部位の特定が難しいケースもあります。
身体所見としては、下垂手と知覚障害の確認が重要です。ティネルサイン(Tinel sign)という神経の傷害部を叩くとそこから先に痛みやしびれが放散する身体所見の確認は必須です。
後骨間神経麻痺は手首を伸ばすことが可能で、また知覚障害もありません。このような身体所見と受傷部位を併せて診断することになります。
確定診断には、神経伝導検査や筋電図検査が必要です。単純X線像(レントゲン)検査、MRI検査、CT検査、超音波検査などは補助的な検査に留まります。
橈骨神経麻痺に対する治療
保存療法
骨折や脱臼などの無い外傷では、まずは保存療法が選択されます。ビタミンB12製剤などの内服処方、低周波治療などがあります。必要に応じ装具(cock-up splint)を使用します。
3ヵ月程度保存療法を続けても回復しないものケースでは、手術が必要になることもあります。
手術療法
骨折や脱臼などの外傷では早期に手術が必要です。上腕骨骨幹部骨折、上腕骨顆上骨折、モンテジア骨折などの外傷では、原因傷病に対する手術が行われます。
橈骨神経そのものへの損傷があるケースでは、神経剥離や腱移行手術などの手術が行われるケースもあります。
橈骨神経麻痺で考えられる後遺症
手関節の機能障害
8級6号:上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
手関節がまったく動かなくなる、もしくは関節可動域が健側の10%以下になるものです。
10級10号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。
指の機能障害
7級7号
1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8級4号
1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
9級13号
1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
10級7号
1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
12級10号
1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
13級6号
1手のこ指の用を廃したもの
神経障害
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
橈骨神経麻痺による症状を、画像検査や神経伝導速度検査で他覚的所見に証明できる事案が該当します。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
神経伝導速度検査で橈骨神経麻痺の所見を認めないものの、治療経過から神経症状の存在が推認される事案が該当します。
【弁護士必見】橈骨神経麻痺の後遺障害認定ポイント
橈骨神経麻痺で最も問題になるのは、橈骨神経麻痺があるにもかかわらず、神経伝導検査で有意所見が出ないケースです。
神経麻痺が存在しているのに、神経伝導検査で検出されないとは、にわかに信じ難いかもしれません。しかし実臨床ではこのようなケースを散見します。
橈骨神経麻痺ではなく腓骨神経麻痺の事案ですが、明らかな腓骨神経麻痺が存在するにもかかわらず、神経伝導検査で有意所見が無いため非該当になった事案の相談がありました。
不信に思って別の医療機関で神経伝導検査を再度施行したところ、有意所見を得た事案を経験したこともあります。
神経伝導検査で有意所見が出ない理由はいくつか考えられます。ご興味のある方は下記を参照してください。
<参考>
【医師が解説】神経伝導速度検査は万能ではない|交通事故
橈骨神経麻痺の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング
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等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
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弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
交通事故による橈骨神経麻痺の後遺症でお悩みの被害者の方へ
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まとめ
交通事故において、上腕骨骨幹部骨折、上腕骨顆上骨折、モンテジア骨折などで発症することがあります。
橈骨神経麻痺の原因となる外傷は多岐に渡り、また客観的な検査所見を得ることが難しいケースもあります。橈骨神経麻痺でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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