交通事故の後遺症の中でも、高次脳機能障害は外見から分かりにくく、後遺障害の等級認定が難しい障害の一つです。
記憶力や注意力の低下、感情のコントロール障害などがあっても、正しく評価されず悩む方は少なくありません。
高次脳機能障害の等級認定では、自賠責保険が重視する認定基準や医学的証拠を正確に理解することが不可欠です。
本記事では、高次脳機能障害の基本から等級認定の考え方、申請手続き、異議申し立てのポイントまでを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2026/1/5
Table of Contents
高次脳機能障害の概要と障害等級
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害とは、交通事故などで脳に傷を負った結果、記憶力や注意力が低下したり、性格が変わってしまったりする障害のことです。
手足の麻痺とは違い、見た目では分かりにくいのが特徴です。社会復帰が難しくなるケースも多い深刻な後遺障害です。
周囲からは「やる気がない」「変わってしまった」と誤解されやすく、本人や家族が大きなストレスを抱えることも少なくありません。
高次脳機能障害の後遺障害等級
高次脳機能障害では、主に1級、2級、3級、5級、7級、9級が認定の対象となり、軽度な場合は12級や14級になることもあります。
等級は、「意思疎通」「問題解決」「持続力」「社会行動」の4つの能力が、どの程度失われたかによって判断されます。
後遺障害の等級が一つ違うだけで賠償額が大きく変わるため、適切な評価を受けることが非常に重要です。
高次脳機能障害の詳細な後遺障害等級を知りたい方は、以下のコラム記事を参照してください。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定

高次脳機能障害の等級認定は2ステップで考える
高次脳機能障害の等級認定に必須の3条件
高次脳機能障害の等級認定の土台となるのが、「頭部外傷の診断名」「画像による脳損傷の確認」「事故直後の意識障害」の3点です。
特に、MRIやCT検査で、脳挫傷痕や脳萎縮が確認できることは、医学的に高次脳機能障害を証明するために不可欠とされています。
事故直後に意識を失っていたか、その状態がどれくらい続いたかも、脳へのダメージを推測する重要な材料になります。
また、後遺障害診断書では、頭部外傷の傷病名が必須です。これらの3つの条件が揃っていないと、等級認定のハードルは非常に高くなります。
<参考>
高次脳機能障害の認定基準は2ステップが分かりやすい|交通事故の医療鑑定
高次脳機能障害の等級が決まる3つの資料
高次脳機能障害の等級を決めるためには、具体的な症状を証明する客観的な医学的証拠が必要です。具体的には以下の3つの資料です。
- 神経心理学的検査
- 神経系統の障害に関する医学的意見
- 日常生活状況報告書
神経心理学的検査では、知能や記憶力を客観的に測ります。神経系統の障害に関する医学的意見では、医師が詳細に所見を記載します。
そして、日常生活状況報告書において、仕事や生活にどれだけ支障が出ているかを伝えることが、適正な等級が認定されるカギとなります。
高次脳機能障害が等級認定される4つの手順
想定していた等級が認定されなかった原因を精査する
後遺障害申請したけれど「非該当」や低い等級だった場合、まずはその理由を分析しましょう。
「後遺障害等級認定結果のご連絡」に理由が書かれていますが、多くの場合「画像所見がない」「意識障害が軽微」といった点が指摘されます。
あるいは、提出した書類の内容が薄く、症状の深刻さが伝わっていないケースもあります。
まずは、高次脳機能障害の認定基準に、何が不足していたのかを冷静に見極めることが、次のステップへの第一歩です。
認定基準を満たすための医学的証拠を取得する
不足している医学的証拠を集めます。例えば、新たなMRI検査で見逃された微細損傷を探したり、より詳細な神経心理学的検査を受けたりします。
また、脳神経科専門医に依頼して、症状と事故の因果関係を医学的に説明する医師意見書や画像鑑定報告書を作成してもらうことも有効です。
日常生活状況報告書も、家族だけでなく職場の上司や同僚に協力してもらい、具体的なエピソードを追加することで説得力が増します。
<参考>
医証を添付して異議申し立てを行う
後遺障害認定基準を満たしていることを証明する新しい医学的証拠が揃ったら、自賠責認定に対して「異議申し立て」を行います。
これは、「前回の審査結果には誤りがあるので、新しい資料をもとにもう一度審査してください」と求める手続きです。
単に、納得できないと訴えるだけでは結果は変わりません。新しい医証を提出することで初めて、認定結果が覆る可能性が生まれます。
尚、高次脳機能障害が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
高次脳機能障害の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
それでも等級認定されなければ裁判を検討する
自賠責保険への異議申し立てでも結果が変わらない場合は、裁判所での解決を検討します。
自賠責保険の認定基準は形式的で厳格ですが、裁判所はより柔軟に、被害者の実態に合わせて判断してくれる傾向があります。
医師意見書などを提出して症状の深刻さを立証することで、自賠責保険で認められなかった等級が、裁判で認められるケースも少なくありません。
高次脳機能障害が等級認定されるためのサービス
弁護士向けへのサポート
弊社では、交通事故で発症した高次脳機能障害が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者への弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

高次脳機能障害の等級認定でよくある質問
MRIやCTに異常がなくても、高次脳機能障害は認定されますか?
原則として画像所見がないと認定は非常に困難です。しかし、初期のMRIで見つからなくても、症状固定期に脳萎縮が確認されることもあります。
また、画像に異常がなくても、事故状況や激しい意識障害の記録、神経心理学的検査の組み合わせで、認定される可能性はゼロではありません。
軽い意識障害でも高次脳機能障害は認定されるのか
たとえ短時間でも、呼びかけへの反応が鈍かったり、事故前後の記憶が飛んでいたりすれば、脳に衝撃が加わった証拠となり得ます。
救急隊の記録やカルテに「JCS」や「GCS」という指標で意識レベルが記録されていれば、それが重要な証拠になります。
意識障害の程度が軽度であっても、画像所見などと合わせれば、等級認定の可能性はあります。
高次脳機能障害では何級が認定される可能性がありますか?
症状の重さにより幅広く、1級から14級まで認定される可能性があります。常に介護が必要なら1級や2級、働くことができないなら3級です。
そして、簡単な仕事しかできないなら5級や7級、多少のミスはあるが働けるなら9級といった目安です。
さらに軽度な場合は、12級や14級となることもあります。症状がどの程度仕事や生活に影響しているかが、等級を分けるポイントになります。
むちうちや軽い事故でも高次脳機能障害は認定されますか?
単なる、むちうち(頚椎捻挫)だけでは、高次脳機能障害に認定されることはありません。
しかし、頭を強く振られたことで脳の神経が傷つく「びまん性軸索損傷」などが起きている場合は別です。
一方で、脳の損傷が確認できず、自覚症状だけがある場合は、高次脳機能障害としての等級認定は難しいのが現実です。
神経心理学的検査は必ず必要ですか?
ほぼ必須と言えます。記憶力や注意力といった「目に見えない能力」の低下を数値化して証明するには、神経心理学的検査が不可欠です。
これらの検査結果がないと、症状が主観的なものだと判断されて、適切な等級が認定されないリスクが高まります。
医師が「高次脳機能障害」と診断していなくても認定されますか?
診断書に「高次脳機能障害」という記載がなくても、「脳挫傷」や「びまん性軸索損傷」などの診断名があれば、認定される可能性はあります。
ただし、診断名も症状の記載もない状態では認定されません。もし症状があるのに診断名がない場合は、診断書に追記してもらう対応が必要です。
家族の陳述書や日常生活状況報告書は重要ですか?
極めて重要です。診察室での短い時間では、医師は患者の「生活での失敗」や「性格の変化」を完全には把握できません。
家で怒りっぽくなった、約束を忘れる、段取りが悪くなったといった具体的なエピソードは、毎日一緒にいる家族にしか分かりません。
これらを詳細に記した報告書は、検査数値と同じくらい、等級審査において重視される資料です。
症状固定はいつ判断されますか?
一般的には、事故から1年~1年半程度が目安とされています。リハビリを続けてもこれ以上良くも悪くもならなくなった時が「症状固定」です。
早すぎると回復の可能性を指摘されて認定されず、遅すぎると漫然治療とみなされることがあります。
主治医や弁護士と相談しながら、リハビリテーションの効果が頭打ちになった適切なタイミングを見極めることが大切です。
仕事を続けていても高次脳機能障害は認定されますか?
仕事をしているから、直ちに認定されないわけではありません。ただし、事故前と同じように働けていれば、低い等級になる可能性はあります。
単純作業に配置転換されたなどの具体的な労働能力の低下があれば、それを証明することで9級以上の等級が認定されることも十分にあります。
「見た目は普通」でも等級認定されるのか
はい、認定されます。むしろ「見た目は普通なのに中身が変わってしまった」というのが高次脳機能障害の大きな特徴です。
手足が動いても、新しいことが覚えられない、感情が抑えられないといった障害は等級認定の対象です。
外見で判断されないよう、検査結果や報告書で内面の障害をしっかりと可視化して主張することが、高次脳機能障害では重要になります。
まとめ
高次脳機能障害とは、交通事故などで脳が損傷して、記憶力や注意力の低下、性格変化などが生じる見えにくい後遺障害です。
後遺障害等級は、意思疎通や社会行動などの低下度合いから1級~14級に認定され、賠償額に大きく影響します。
等級認定には、頭部外傷の診断名、画像所見、意識障害という3条件に加えて、神経心理学的検査、医師意見書、日常生活状況報告書が重要です。
非該当や予想よりも低い等級の場合でも、医学的証拠を補強して異議申し立てや裁判で見直される可能性があります。
高次脳機能障害の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニング®を承ります。
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