交通事故後に難聴を発症したにもかかわらず、後遺障害の等級認定で「非該当」や低い等級と判断されてしまうケースは少なくありません。
適切な補償を受けるためには、異議申し立てを通じて医学的根拠を示して、不服を正しく主張することが重要です。
しかし実際には、どのような資料が必要か、どの検査結果が重視されるのか、手続きの流れや注意点が分からず不安を抱える方が多いでしょう。
本記事では、難聴の異議申し立てをテーマに、非該当となる理由や手続きの進め方、成功のポイントまで徹底解説しています。
最終更新日: 2025/9/11
Table of Contents
難聴が非該当になる理由
難聴で非該当と判断されやすいケース
交通事故後に発症した難聴であっても、後遺障害認定で非該当と判断されるケースは多数存在します。
両耳の平均純音聴力レベルが40db未満では後遺障害認定基準を満たさず、治療で聴力が改善したり、加齢や慢性疾患によるものは非該当になります。
事故の規模が小さかったり、かなり時間が経ってから難聴を発症したなど、因果関係の立証が困難なケースも非該当になりやすいです。
また、聴力検査は複数回にわたり実施されるため、一時的な聴力低下のみでは後遺障害に認定されません。
難聴の後遺障害認定基準(両耳)
難聴の後遺障害認定は、純音聴力検査と語音聴力検査で判断されます。等級は両耳・片耳別に設定され、両耳では平均聴力レベルが90dB以上で4級、80dB以上で6級など細かく規定されています。
検査は複数回行い、その平均値で決定されます。耳鳴りや耳漏など付随症状も認定ポイントとなるケースがあります。
等級 | 認定基準 |
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの |
6級3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
6級4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
7級2号 | 両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
7級3号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
9級7号 | 両耳の聴力が、1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
9級8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
10級5号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
11級5号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
4級3号:両耳の聴力を全く失ったもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの
6級3号:両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの
6級4号:1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
7級2号:両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 両耳の平均純音聴力レベル70dB以上のもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
7級3号:1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 一耳の平均純音聴力レベル90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
9級7号:両耳の聴力が、1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 両耳の平均純音聴力レベル60dB以上のもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
9級8号:1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
10級5号:両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上で,かつ最高明瞭度が70%以下のもの
11級5号:両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの
難聴の後遺障害認定基準(一耳)
片耳についても距離と音量で判定され、例えば1m以上離れて小声が聞こえない場合は14級相当です。
等級 | 認定基準 |
9級9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの |
10級6号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
11級6号 | 1耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
14級3号 | 1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
9級9号:1耳の聴力を全く失ったもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
10級6号:1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満のもの
11級6号:1耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満のもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
14級3号:1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 一耳の平均純音聴力レベルが40dB以上70dB未満のもの
難聴の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
異議申し立ては、保険会社経由で損害保険料率算出機構に異議申立書を提出して、再審査を求める手続きです。
必要書類は、異議申立書、新たな診断書や検査結果、カルテ、診療明細書、医師意見書、画像鑑定報告書などです。
医学的根拠を証明する追加医証を添付することが重要で、資料が不十分な場合は後遺障害に認定されにくくなります。
難聴の異議申し立ての申請先
申請先は、事前認定の場合は加害者側の任意保険会社、被害者請求の場合は自賠責保険会社が窓口です。
異議申し立て資料は、保険会社を経由して損害保険料率算出機構へ送られて審査されます。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体の手数料は無料ですが、診断書取得や郵送、追加検査費などで1~5万円程度の実費がかかるケースがあります。
審査期間は通常2~4ヶ月ほどで、事案によりさらに時間がかかる場合もあるため、余裕を持った準備が必要です。
難聴の効果的な異議申し立て準備
異議申し立てを効果的に行うためには、後遺障害認定基準を満たすために、新たな診断書や聴覚検査、画像検査などの客観的証拠を充実させることが不可欠です。
単なる不満を述べるのではなく、医学的根拠とともに、なぜ妥当な認定ではないのか明確に論証することが重要です。不足していた資料や症状の経過・治療歴を整理して、医学的観点から丁寧に主張しましょう。
難聴の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
難聴が非該当になる原因を分析
難聴の非該当判断は、聴力レベルが認定基準値に達していなかったり、難聴の存在を証明できる医学的根拠が不足しているケースに多く見られます。
また交通事故と難聴の因果関係が不明瞭、検査結果に一貫性がない、測定回数や間隔が適切でないといった形式面の不備も原因となります。
難聴の症状の重さだけでなく、立証方法の不足も非該当の要因となります。非該当になった原因を精査することが、異議申し立て成功のポイントです。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
難聴の後遺障害認定条件をクリア
難聴の後遺障害認定基準を満たすためには、複数回(最低3回、間隔を空ける)聴力検査を実施して、その平均値が等級基準に合致することが必要です。
例えば両耳平均純音聴力が40dB以上なら11級、50dB以上なら10級など詳細に規定されています。さらに、語音聴力検査のデータも重視され、定められた方法での記載・証明が求められます。
<検査>
異議申し立てでは新たな医証が必須
難聴の異議申し立ての成功には、難聴の後遺障害認定基準を満たすための、新たな医証が必要不可欠です。
具体的には、追加の聴覚検査や画像検査、耳鼻咽喉科専門医による医師意見書、画像鑑定報告書などです。
新たな医証がない異議申し立ては、後遺障害認定に結びつきにくいです。足りない検査や診断記録を補う医学的資料を集めることが重要です。
<参考>
難聴の後遺障害認定ポイント
難聴が後遺障害に認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
難聴の後遺障害認定ポイントは?交通事故との因果関係証明法も解説
難聴の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で発症した難聴が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
難聴の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
難聴の異議申し立てでよくある質問
どんな場合に難聴の異議申し立てをすべきですか?
審査結果が非該当や低い等級で納得できない場合は異議申し立てを検討するべきです。
特に、検査方法や記録の不備、診断書の記載内容に必要事項が抜けているケースでは有効です。
難聴の異議申し立てでは、どのような検査結果が重視されますか?
耳鼻科医師によって実施される純音聴力検査や語音明瞭度検査などの客観的データが重視されます。
特に、検査回数やその間隔が基準通りに行われているか、検査値が等級基準を満たしているかが審査上重要です。
非該当理由に応じて、追加の聴力検査や画像検査、耳鼻科専門医による医師意見書も説得力を高める医証になります。
耳鼻科医に再検査を依頼する必要はありますか?
前回の診断や検査で医学的根拠が不十分なケースでは、新たな医証として耳鼻科医師による再検査は有効です。
症状の推移や治療経過をより詳しく評価することで、異議申し立ての根拠を補強することが期待できます。
難聴の異議申し立てでは、日常生活の不自由さも考慮されますか?
後遺障害の審査では、聴力データだけでなく、病歴・就労状況・日常生活への影響についての申立書や医師記載内容も参考にされます。不自由さが具体的に記載されていると、説得力が高まります。
難聴の異議申し立てをすれば等級が必ず上がりますか?
異議申し立ては、必ずしも等級引き上げにつながるとは限りません。後遺障害認定基準を満たす新たな根拠や証拠がなければ、等級変更は難しいです。
まとめ
交通事故後に発症した難聴でも、後遺障害の認定基準を満たさなければ非該当となります。
例えば両耳の平均聴力が40db未満や、加齢・持病によるもの、事故との因果関係が立証しづらいケースでは認定されにくいです。
難聴の後遺障害は純音聴力検査や語音明瞭度検査の複数回のデータで判定され、両耳90dB以上で4級など細かく規定されています。
非該当や低い等級に納得できなければ、耳鼻科での追加検査や医師意見書で医学的根拠を補強して、異議申し立てを行うことが重要です。
難聴の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。