手首の粉砕骨折は、交通事故や高所からの転落など、強い衝撃によって手首の骨が複雑に砕けてしまう重いケガです。
骨が複数に割れているため、通常の骨折よりも治療や回復に時間がかかる傾向があり、後遺症が残るリスクも高くなります。
医師による適切な診断と治療はもちろん、その後のリハビリや日常生活への復帰に向けたサポートも重要になります。
また、交通事故や労災事故で受傷した重度の粉砕骨折では、後遺障害等級の認定が必要になるケースもあります。
本記事では、手首の粉砕骨折の治療法や全治までの期間、リハビリの内容、そして後遺症や後遺障害について詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/8/15
Table of Contents
手首の粉砕骨折とは?
手首の粉砕骨折の原因
手首の粉砕骨折は、主に転倒や交通事故などの強い外力によって発生します。なかでも高齢者では、骨がもろくなっているため、ちょっとした転倒でも発症することが多いです。
一方、若年層の場合は高所からの落下やスポーツ中の衝突、交通事故が主な原因です。骨が複数に砕けてしまうため、治癒には時間がかかり、後遺症リスクも高くなります。
手首の粉砕骨折の典型的な症状
手首の粉砕骨折においては、激しい痛みと腫れ、変形がすぐに現れるのが一般的です。
骨が粉々に砕けているため、手首の動きが著しく制限されて、場合によっては血管や神経が傷つき、しびれや感覚障害、指先の血行不良が生じることもあります。
また、皮膚の下で骨片が触れたり、骨折部位に異常な可動性が認められることも特徴です。
手首の粉砕骨折の治療
治療法の選択基準
手首の粉砕骨折では、骨折の程度や骨片の位置、患者の年齢や活動性などを総合的に判断して治療法が選ばれます。
関節面のずれが大きい場合や骨片が多い場合は、手術療法が選択されることが多いです。一方、高齢者や骨粗鬆症の患者さんでは、治療法選択に配慮が必要です。
手術療法の種類
手術療法には、骨折部を金属プレートで固定する方法、創外固定、そしてワイヤー・ピンで骨片を整復・固定する方法があります。
特に、近年はロッキングプレート固定が主流で、早期リハビリが可能なことが特徴です。複雑な粉砕骨折や関節面のズレが著しい症例では、手術が推奨されます。
保存療法とその適応条件
保存療法は、患者の全身状態が手術に適さない場合や、高度の認知症のために医師の指示が入らないケースで選択されます。
ギプスやシーネによる固定が基本ですが、保存療法でも定期的な画像検査で経過を確認することが重要です。
手首粉砕骨折のリハビリは?
リハビリは治療の一環として重要で、関節の可動域や筋力の回復を目指します。固定期間終了後、医師の指導のもと、段階的に運動範囲や負荷を増やしていきます。
早期のリハビリ開始により、後遺症や可動域制限を最小限に抑えることが期待されます。
手首粉砕骨折の全治期間
手首粉砕骨折の全治期間は、骨折の重症度や治療方法、患者の年齢・健康状態によって異なります。
一般的には固定期間が3~6週間、骨癒合までに約2~3カ月かかるとされています。
粉砕骨折の場合は骨の回復や関節機能のリハビリにも時間がかかり、日常生活に完全に復帰するまで通常3ヶ月以上かかるケースが多いです。
高齢者や内科的な合併症があるケースでは、さらに長期化する可能性もあります。
手首粉砕骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺症
手首の痛み
手首粉砕骨折の後遺症として、痛みやしびれが残ることは珍しくありません。
重い物を持ったり、スポーツなどで手首に負担がかかった際に痛みが強くなるケースも多いです。
症状が重い場合は安静時にも痛みやしびれが続き、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことがあります。
可動域制限
手首粉砕骨折後は関節の可動域が制限されることがよくあります。これは骨折部位の癒着や関節周囲の筋肉・靱帯の硬化、長期間の固定による影響で起こります。
可動域制限が残ると、着替えや入浴、細かい作業、パソコン操作などの日常動作が困難になることがあります。
リハビリを継続することで改善が期待できますが、完全には元に戻らないケースもあります。
筋力低下
ギプス固定や安静期間が長くなることで筋力低下が生じやすくなります。手首や手の筋肉が弱り、物をうまく掴めなかったり、手に力が入りにくくなることがあります。
筋力低下は、リハビリや自主トレーニングで回復する可能性がありますが、回復までに時間がかかります。
手首粉砕骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害
手関節の機能障害
手関節の機能障害(可動域制限)は、橈骨遠位端関節面の不整が原因となる事案が多いです。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号:一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
手関節が強直(癒着して動かなくなること)した、もしくは関節が完全弛緩性麻痺になった状態です。
10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の1/2以下に制限されているものをいいます。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の3/4以下に制限されているものをいいます。
手関節の神経障害
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
この場合の神経症状とは痛みのことです。画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できるものをいいます。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できないものの、受傷時の態様や治療経過から痛みの存在が説明つくものをいいます。
長管骨の変形障害
12級8号:長管骨に変形を残すもの
手関節では、主に尺骨茎状突起に偽関節を残したものをいいます。稀に橈骨茎状突起に偽関節を残すものもあります。
手首粉砕骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
手首粉砕骨折(橈骨遠位端骨折)が後遺障害に認定されるためには、いくつかのポイントがあります。詳細については、こちらのコラム記事を参照してください。
<参考>
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
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<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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手首の粉砕骨折でよくある質問
手首の粉砕骨折の手術の入院期間は?
一般的に、手首の粉砕骨折で手術を受けた場合の入院期間は1週間前後が目安とされています。
骨の固定や術後の経過観察のため、数日から10日程度の入院が多いですが、患者の合併症や年齢、術後の回復状況によって異なります。
手首骨折を手術しないとどうなる?
骨折部位のズレや骨片が多い粉砕骨折を手術しない場合、骨が正しく癒合せず変形治癒や機能障害を残すリスクが高まります。
特に関節面のずれが残ると、将来的な可動域制限や痛み、変形性関節症の原因となることが多いです。
手首粉砕骨折の仕事復帰はいつから?
仕事復帰の時期は、骨折の重症度や治療法、仕事内容により異なります。
事務職など軽作業は2~3週間で可能な場合もありますが、手を使う仕事や重労働の場合は3カ月以上必要です。
手首粉砕骨折で車の運転はいつから?
安全にハンドル操作やブレーキ操作ができる状態まで回復する必要があります。多くは、術後1~2ヶ月後が目安となりますが、担当医に相談してください。
目安としては、ギプスや固定具が外れてリハビリが進み、日常的な動作が問題なくできるようになってからです。
手首骨折で仕事を休む期間は?
仕事を休む期間は骨折の重症度や仕事内容によって差があります。リハビリの進行や痛みの程度に応じて復職時期を判断します。
軽症・軽作業であれば2週間前後、粉砕骨折や力仕事は2~3カ月の休職が必要となることも多いです。
まとめ
手首の粉砕骨折は、転倒や交通事故などの強い衝撃により手首の骨が複数に砕ける重度の骨折で、激しい痛みや腫れ、変形を伴います。
治療は手術療法が主流で、プレート固定やワイヤーによる整復などが行われます。
全治には3カ月以上かかることが多く、リハビリの遅れや骨の癒合状態によっては後遺症が残る場合もあります。
神経障害や可動域制限、筋力低下が代表的な後遺症で、重度の場合は後遺障害等級が認定されることもあります。
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