交通事故や労災事故によって上腕骨を骨折すると、治療が長期に及んだり、可動域制限や痛み・しびれなどの後遺症が残ることがあります。
後遺症に対して後遺障害認定を受けたり、保険会社との示談交渉を進める際に、重要な役割を果たすのが「医師意見書」です。
医師意見書には、後遺症の医学的評価や骨折との因果関係、後遺障害認定基準に該当するかなどが記載されます。
しかし、実際にどのような内容が書かれるのか、取得方法や費用はどうなのか、またどのような場面で役立つのかはあまり知られていません。
本記事では、上腕骨骨折の医師意見書に記載される内容や診断書との違い、活用法、さらに取得の流れまでを詳しく解説していきます。
最終更新日: 2025/10/12
Table of Contents
上腕骨骨折の基礎と医師意見書の概要
上腕骨骨折の症状と特徴
上腕骨骨折は、肩から肘までの上腕骨が外力で骨折した状態です。交通事故などの外傷によるものが多いです。
肩や肘を動かしにくい、痛みで力が入らない、骨がつかない(偽関節)などの重い後遺症が残る可能性もあります。
<参考>
上腕骨近位端骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
医師意見書とは何か
医師意見書は、後遺症の医学的解説、骨折と後遺症の因果関係、後遺障害認定基準に該当するかなどを、専門的な見地から記す文書です。
診断書と比べて、より詳細な医学的意見や予後、治療経過、後遺障害への見解を示すため、異議申し立てや訴訟などで重視されます。
上腕骨骨折に関する医師意見書の主要記載内容
上腕骨骨折の医師意見書には、以下のような項目が記載されるケースが多いです。
- 傷病名
- 受傷状況
- 画像検査の結果
- 治療内容
- 肩や肘の可動域
- 症状
- 骨癒合や変形の有無
- 後遺症と骨折の因果関係
- 日常生活の支障状況
また、上腕骨骨折で残った後遺症が、後遺障害認定基準を満たすことを、医学的な根拠に基づいて解説します。
医師意見書と診断書の違い
診断書は、診断名や治療見込みを簡潔に記載します。一方、医師意見書は後遺症について、争点に合わせて医学的に解説します。
そのため、異議申し立て、保険会社との示談交渉、そして訴訟の証拠として、医師意見書が重要となります。
上腕骨骨折で医師意見書が評価される背景
上腕骨骨折による後遺症の医学的ポイントを解説
上腕骨骨折の後遺症には、肩や肘の可動域制限、神経障害(しびれや痛み)、骨の変形、偽関節(骨が完全につかない)などがあります。
特に、可動域制限や神経症状は後遺症になるケースが多く、後遺障害認定では医師意見書による医学的解説がポイントになります。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
上腕骨骨折の後遺障害認定基準に適合することを解説
後遺障害認定では、関節の可動域制限や痛み(神経症状)が、後遺障害認定基準に合致するかがポイントになります。
医師意見書では、可動域制限や痛みの原因を医学的に提示することで、認定基準を満たすことを解説します。
異議申し立てや訴訟での証拠価値
医師意見書は、異議申し立てや訴訟において、後遺障害認定の妥当性を医学的根拠から示す重要な証拠書類となります。
専門医が作成した医師意見書によって、当方の主張に、医学的な裏付けを補強できます。
上腕骨骨折の医師意見書を活用する戦略は?
異議申し立てで後遺障害認定の根拠を補強する
異議申し立てに際に、医師意見書で後遺障害認定基準との適合性を主張することで、審査側への説得力を高めることができます。
保険交渉を有利に進めるための活用法
医師意見書によって、後遺症の重症度や骨折との因果関係を明確にできれば、示談交渉を有利に進めやすくなります。
医師意見書によって医学的に裏付けられた主張は、保険会社との示談交渉における当方の主張の補強材料になります。
裁判や調停での医学的証拠としての利用
医師意見書は、裁判や調停において、後遺症の有無や程度を専門医の立場から説明する文書です。
非医療者である裁判官に対して、分かりやすく医学的根拠を解説することで、当方に有利な心象が開示される可能性を期待できます。
上腕骨骨折の医師意見書取得マニュアル
医師意見書の取得ステップと流れ
上腕骨骨折の医師意見書の取得は、まず相談書、診断書、画像検査、診療報酬明細などの必要資料を準備して、医療鑑定会社に依頼します。
見積金額の了承後、医師意見書の骨子案(検討項目)が提案されます。骨子案に問題が無ければ、約4週間で初稿(医師意見書案)が提出されます。
医師意見書案に問題が無ければ、費用を支払います。入金確認後に医師意見書の原本が発送される流れが一般的です。
上腕骨骨折の医師意見書作成に必要な資料
上腕骨骨折の異議申し立てで使用する医師意見書の作成には、以下のような書類や資料が必要です。
- 相談書(依頼時にお渡しします)
- 画像検査
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 診療報酬明細(レセプト)
- 損害確認報告書 / 事故現場実況見分調書 / 車の損傷写真 など
- 後遺障害等級結果連絡書
- 診療録(カルテ)
症状や治療経過、日常生活の支障程度が分かる資料が多いほど、医師意見書の信頼性が高まります。
医師意見書の費用はどれぐらい?
概要 | 価格 |
整形外科 | 23万円 |
脳神経外科、脳神経内科 | 29万円 |
耳鼻科、眼科、歯科など | 29万円 |
精神科 | 31万円 |
訴訟加算(整形外科) | 4万円 |
訴訟加算(その他の科) | 1万円 |
多部位加算(3部位以上) | 3万円/数 |
特急対応加算 | 2万円 |
難事案加算 | 6万円~ |
反論意見書 | -5万円 |
医師意見書の作成に必要な料金は、基本料金をベースとして以下の要素で変動します。
- 診療科目
- 訴訟事案
- 顧問契約の有無
- 弁護士特約の有無
- 納品時期
整形外科領域における一般的な事案では、20万円台の料金負担で各領域の専門医による医師意見書の作成が可能です。
弊社の医師意見書作成にかかる、加算や割引などの詳細は、こちらをご確認ください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
医師意見書の取得に要する期間は?
上腕骨骨折の医師意見書を取得するまでの期間は依頼内容によります。一般的には4週間ほどで初稿(医師意見書案)が納品されます。
医師意見書案への修正依頼に、専門医が対応するのにかかる期間は、1~2週間のケースが多いです。
上腕骨骨折が後遺障害に認定されるポイント【弁護士必見】
上腕骨骨折が、適切な後遺障害等級に認定されるには、以下のような後遺障害認定基準をすべて満たす必要があります。
- 事故と症状に整合性がある
- 後遺症と各種検査が一致している
- 事故後から症状固定まで症状が続いている
- 常に後遺症が存在している
シンプルに見えますが、すべてをクリアしている事案は少ないです。また、これら以外にも、たくさんの後遺障害認定基準が存在します。
医師意見書の価値は、後遺障害認定基準に足りていない要素を補強して、後遺障害の蓋然性を主張する点にあります。
この目的を達成するためには、医師意見書を受任する医療鑑定会社が、後遺障害認定基準を知り尽くしている必要があります。
上腕骨骨折が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
上腕骨近位端骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
上腕骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士向けサービス
弊社では、交通事故で受傷した、上腕骨骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者向けサポート
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
上腕骨骨折の医師意見書でよくある質問
上腕骨骨折の後遺障害等級が「非該当」になった主な理由は?
医学的根拠が不十分な場合や、画像検査などで客観的所見がなく症状を裏付けられない場合は、非該当と判断されやすいです。
異議申し立て時にはどのような資料を追加すべきか?
異議申し立ての際には、新規の資料(画像検査、診断書、診療録、医師意見書、画像鑑定報告書など)が必要です。
現在の資料では満たせていない後遺障害認定基準を補強する資料を提出することがポイントです。
上腕骨骨折の痛みやしびれなどの神経症状はどのように扱われるか?
上腕骨骨折の痛みやしびれなどの神経症状は、明確な所見があれば12級、明確とまで言えなくても所見があれば14級認定の可能性があります。
骨癒合や骨変形の有無は認定にどう影響するか?
骨癒合不全(偽関節)や骨変形が明らかであれば、後遺障害12級8号以上が認められやすいです。
偽関節や骨変形を画像検査などで客観的に証明することが、後遺障害認定のカギとなります。
手術内容(プレート、髄内釘、スクリューなど)は意見書に記載すべきか?
手術内容は、後遺症の有無を判断する上で重要です。プレートや髄内釘などの内固定材料の種類も意見書に記載するべきです。
日常生活への支障やリハビリ状況は意見書にどう反映されるか?
食事や着替え、入浴など日常生活動作への支障や、リハビリ状況を記載すると、後遺症の重さをより明確に伝えることができます。
診療録や画像検査結果が十分でない場合、どのように補足すべきか?
診療録や画像検査結果が十分でない場合、補助的資料として医師意見書を添えることも有用です。
まとめ
上腕骨骨折は、肩から肘までの骨が折れるけがで、交通事故などで多く発生します。
治療後も肩や肘の動かしにくさ、しびれや痛み、骨の変形や偽関節といった後遺症が残ることがあります。
後遺症が残ると医師意見書が重要になります。医師意見書は後遺症と事故との因果関係や認定基準との適合性を医学的に解説します。
医師意見書は、異議申し立てや訴訟、保険会社との示談交渉で強い証拠となるため、上腕骨骨折では特に重視されます。
上腕骨骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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