ブログ詳細

fv fv

【医師が解説】抜釘術の時期は交通事故の後遺障害等級に影響を与える

交通事故で骨折してしまい、手術を受けた方は多いことでしょう。骨折の手術では、プレートやスクリューなどの骨を直接固定する金属が体内に残ることが多いです。

 

そしてこれらの金属は、手術してから半年~1年程度で体内から取り出す必要があります。金属を取り出す手術を抜釘術といいます。そして抜釘術は後遺障害等級に影響を与える可能性があるので注意が必要です。

 

本記事は、抜釘術が後遺障害等級に与える影響を理解するヒントとなるように作っています。

 

抜釘術とは

 
四肢骨折の手術治療では、プレートや髄内釘などの金属製の内固定材料を使用することが多いです。これらは人間の身体にとって異物なので、用が済めば体内から取り出すことが望ましいです。

 

このため骨癒合が完成した時点で、すでに不要になった金属製の内固定材料を抜去する「抜釘術」が施行されます。

 

 

tibial plate

 

 

一般の症例で抜釘術を行う時期

 
抜釘術は上肢に関しては術後6ヵ月 ~12ヵ月、下肢に関しては術後12ヵ月以降に施行します。上肢と下肢で抜釘するべき時期が異なる理由は、荷重による骨への負荷のかかり方の違いのためです。

 

歩行時に常に体重の負荷がかかる下肢の骨折では、骨が抜釘しても良い状態になるまで時間がかかるのです。

 

一方、内固定材料を用いた手術を施行すると必ず抜釘術を施行するのかというと、必ずしもそういうわけではありません。

 

その理由は、抜釘しても患者さんに短期的なメリットはあまり無いからです。むしろ、抜釘してからしばらくは再骨折する危険性が高まるため、不利益となることさえあります。

 

訴訟大国の米国では、抜釘による不利益が問題視されているため、よほど大きな問題が無い限りは抜釘術を施行しないと言われています。

 

一方、米国ほど訴訟の多くない日本では、積極的に抜釘術を施行する傾向にあります。しかし高齢者では、デメリットの方が大きいので抜釘しないことが多いです

 

交通事故での抜釘時期

 
交通事故や労災事故において、抜釘術の時期は症状固定時期と関連があります。一般的には抜釘後に症状固定とすることが多いです。

 

このため、下肢の骨折に対して手術を施行した事案では、症状固定まで1年ほど要します。しかし臨床医の立場では、抜釘術を施行するまで症状固定しないことには少し違和感を感じます。

 

何故なら、抜釘術を行うはるか以前に、骨としての機能は平衡状態に達しているからです。

 

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上治癒することがない時期とされています。このため、抜釘術を行う時期よりもかなり前の段階で症状固定と判断してもおかしくありません。

 

それをわざわざ抜釘術を行う時期まで症状固定しないのは、医療機関が医療費請求をする事務手続き上の問題が影響しているのかもしれません。

 

医学には症状固定という概念は存在しません。このため、臨床医は症状固定する時期についてあまり深く考えない傾向にあります。

 

しかし症状固定する時期は、自賠責保険では大きな意味を持ちます。症状固定時期が争いになる理由は、症状固定は医学的概念ではないことが大きな要因でしょう。

 

 

Intramedullary nail

 

 

抜釘すると非該当になることもある

 
そして、抜釘術は後遺障害に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば脊椎の破裂骨折などでは、脊椎インストゥルメンテーション手術を施行するケースが多いです。

 

脊椎インストゥルメンテーション手術では、不安定な脊椎をスクリューやロッドで内固定します。自賠責保険では、脊椎固定術が施行されると自動的に11級7号に認定されます。

 

しかし、脊椎のインストゥルメンテーションを抜釘するとどうなるのでしょうか? もし破裂骨折が完全に整復されている場合には11級7号に認定されず、14級9号や非該当になってしまいます。

 

脊椎に骨折を負うほどの重度の外傷であったにもかかわらず、手術がうまく行き過ぎたがために11級7号に認定されないのでは、被害者の立場ではたまったものではありません。

 

そしてこのような事案は若年者を中心に比較的多くみかけます。その理由は、若年者ではインストゥルメンテーションを抜釘することが多いからです。

 

最近は脊椎でも低侵襲手術が主流です。このため経皮的にインストゥルメンテーションを設置することが多いです。このような手術では脊椎後方に骨移植は行いません。

 

このため抜釘すると、脊椎固定が解除されるのです。身体の機能面から考えると、脊椎を固定しないに越したことはありません。臨床的には、脊椎後方に骨移植しないことには何の問題もないのです。

 

しかし後遺障害等級の観点から考えると、脊椎固定が解消されてしまうことは大きな問題を引き起こしてしまいます。そして主治医はこのような問題が発生することをまず知らないと考えるべきでしょう。

 

脊椎の手術後に抜釘するべきか否か、また抜釘するとすればいつ抜釘するべきなのかを、よく考えて治療方針を決定したいものですね。

 

 

 

nikkei medical

 

 

まとめ

 
後遺障害の認定では、抜釘術を行う時期が後遺障害等級に大きな影響を与える可能性があります。

 

そしてほとんどの医師は抜釘術を行う時期が後遺障害等級の認定に影響を与える可能性があることを知りません。

 

特に、脊椎の手術後の抜釘時期に関しては注意が必要でしょう。

 

関連ページ

 

関連記事

ランキング