交通事故で受傷した肩鎖関節脱臼の後遺障害で「非該当」や低い等級と判断されて、納得できない思いを抱えている方は少なくありません。
肩の変形や動きの制限が残っているのに適切に評価されないのは、診断書の記載不足や画像所見の乏しさなど、医学的根拠が不十分であるケースが珍しくありません。
こうしたときに取るべき手段が、異議申し立てです。肩鎖関節脱臼の異議申し立てでは、非該当理由や後遺障害認定基準を理解したうえで、適切な資料や医証を整えることが成功のカギとなります。
本記事では、肩鎖関節脱臼の異議申し立て手順から成功事例までをわかりやすく解説して、納得のいく認定を得るための具体的なポイントをご紹介します。
最終更新日: 2025/8/27
Table of Contents
肩鎖関節脱臼が非該当になる理由
肩鎖関節脱臼で非該当と判断されやすいケース
肩鎖関節脱臼は、外見上の変形がなければ後遺障害が認定されにくい障害です。特に、レントゲン検査で亜脱臼が明らかでないと「非該当」になることが多いです。
また、事故規模が軽微であったり、受傷機序が説明できないケースも後遺障害に認定されにくいです。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定基準(機能障害)
肩鎖関節脱臼における機能障害とは、肩関節の可動域制限です。しかし、肩鎖関節脱臼は肩関節と直接関係のない部位です。
また、臨床的にも肩鎖関節脱臼で肩関節の可動域制限を残す症例はほとんど見かけません。このため、自賠責保険で機能障害が認定される可能性は低いと思われます。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号:一上肢の三大関節の一関節の用を廃したもの
肩関節が強直またはこれに近い状態にあるものです。これに近い状態とは、自動(自分で動かすこと)で健側(ケガをしていない側)の可動域の10%程度以下に制限された状態です。肩鎖関節脱臼では考えにくい後遺障害等級です。
<参考>
【医師が解説】自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|交通事故
10級10号:一上肢の三大関節の一関節の機能に著しい障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の1/2以下の可動域に制限されているものです。クラビクルフックプレートを使用した手術療法を選択した場合には、認定される可能性が僅かにあります。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の3/4以下の可動域に制限されているものです。クラビクルフックプレートを使用した手術療法を選択した場合には認定される可能性があります。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定基準(変形障害)
12級5号:鎖骨に著しい変形を残すもの
手術療法である程度骨のずれは改善するものの、完全な整復位を獲得できないケースが多いです。保存療法では受傷時の脱臼が残るため、12級5号の変形障害に該当します。
「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定されるためには、衣服を脱いで裸の状態になったとき、明らかに鎖骨が脱臼していると分かる状態である必要があります。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定基準(神経障害)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
クラビクルフックプレートを使用した手術療法を選択した場合には、認定される可能性が僅かにあります。
14級9号:局部に頑固な神経症状を残すもの
クラビクルフックプレートを使用した手術を受けた場合、必ずといっていいほど出現するのが鎖骨上神経障害です。手術によって鎖骨上神経が切断されるため、手術痕の足側に感覚障害を起こす症例を多く経験します。
しかし、患者さん本人が自覚されていない場合があり、見逃されやすい障害です。症状がある場合には、「局所に神経症状を残すもの」として第14級9号が認定されるケースが多いです。
保存療法を選択した場合であっても、14級9号に認定される可能性はゼロではないと考えます。
肩鎖関節脱臼の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての必要書類
異議申し立てに必要な書類は、異議申立書、新たな診断書、画像検査、診療録、医師意見書、画像鑑定報告書などです。
異議申立書以外に添付するべき医証は、非該当になった原因によって異なります。非該当理由の精査が重要です。
肩鎖関節脱臼の異議申し立ての申請先
異議申し立ての申請先は、初回が事前認定なら加害者側の任意保険会社で、被害者請求なら加害者の自賠責保険会社へ提出します。
提出された資料は、自賠責保険(損害保険料率算出機構)で再度審査されて、結果が被害者に通知されます。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体の手数料は不要ですが、診断書や画像検査、医師意見書など追加資料の作成に費用が発生するケースがあります。
また、弁護士の相談料や医療機関への費用も実費で負担します。審査期間は、概ね2~4ヶ月が目安です。
肩鎖関節脱臼の効果的な異議申し立て準備
異議申し立てを成功させるために重要なのは、初回申請で足りなかった医学的証拠を補強することです。
新たな画像検査(レントゲン検査やCT検査)、診療記録、専門医による医師意見書や画像鑑定報告書を揃えることで、認定成功率を上げられます。
肩鎖関節脱臼の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
肩鎖関節脱臼が非該当になる原因を分析
後遺障害が非該当となる主な原因は、画像所見で肩鎖関節脱臼が認められないケースです。傷病名がついているのに、画像検査で脱臼が無いとは、おかしな気がしますね。
肩鎖関節脱臼はやや特殊な病態で、臥位で撮影すると脱臼が無いように見えるケースがあります。このため、臥位で撮影した画像検査では非該当になる可能性があるのです。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定条件をクリア
後遺障害に認定されるには、立位で撮影したレントゲン検査で、肩鎖関節脱臼が明確に確認できることが条件です。
加えて、患側の肩鎖関節の膨隆が分かるように、左右両方の肩を同時に撮影したマクロ画像も添付しましょう。
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立ての成功には、前回申請時に不足していた新たな医証が必要不可欠です。具体的には、新たな診断書、追加の画像検査、医師意見書、画像鑑定報告書などです。
新たな医証がない異議申し立ては後遺障害認定に結びつきにくいため、足りない検査や診断記録を補う医学的資料を集めることが重要です。
<参考>
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定ポイント
肩鎖関節脱臼の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
肩鎖関節脱臼の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
肩鎖関節脱臼の異議申し立て成功事例【12級5号】
事案サマリー
- 被害者:42歳
- 初回申請:非該当
- 異議申し立て:12級5号
弊社の取り組み
被害者請求で非該当だったため、顧問先の法律事務所様から相談がありました。患側のみでは肩鎖関節脱臼の程度が分かりにくかったため、両肩を含んだマクロ画像を添付して申請したところ、12級5号が認定されました。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した肩鎖関節脱臼の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
肩鎖関節脱臼の異議申し立てでよくある質問
なぜ肩鎖関節脱臼なのに非該当や14級9号にとどまることがあるのですか?
肩鎖関節脱臼でも、画像所見や外見上の明らかな変形が認められなければ「非該当」になります。
また、痛みなどの自覚症状があっても、他覚的所見で肩鎖関節脱臼の程度が小さいと14級9号にとどまります。
どんな場合に「12級」や「10級」が認められるのですか?
肩鎖関節脱臼による鎖骨や肩甲骨の変形が画像で明確なら12級5号、肩や肩鎖関節の可動域制限が健側の半分以下なら10級10号、4分の3以下なら12級6号に認定される可能性があります。
肩鎖関節脱臼で可動域制限があるのに認定されなかったのはなぜですか?
肩鎖関節脱臼では、肩関節の可動域制限が残りにくいです。このため、3度の脱臼であっても、10級10号や12級6号などの関節機能障害に認定される可能性は高くありません。
肩鎖関節脱臼の画像検査はレントゲンだけで十分ですか?
レントゲン検査は肩鎖関節脱臼の判断材料ですが、臥位(寝た状態)で撮影すると整復されてしまい診断できないことがあります。座位や立位での撮影が推奨されます。
<参考>
肩鎖関節脱臼の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
鎖骨の変形や突出があっても等級が認められないことはありますか?
レントゲン検査で肩鎖関節脱臼を認めても、軽度の場合は12級5号に認定されないケースもあります。
まとめ
肩鎖関節脱臼は、外見上の変形がなければ後遺障害に認定されにくく、画像検査で脱臼が確認できないと非該当になります。
特に、臥位でのレントゲン検査では脱臼が映らないこともあるため、立位撮影が推奨されます。
異議申し立てでは、新たな画像検査や画像鑑定報告書など、追加の医学的証拠を揃えることが成功の鍵となります。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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