交通事故で脊髄を損傷して、重大な後遺症に悩まされているにもかかわらず、後遺障害の等級が「非該当」あるいは「想定よりも低い」とされた場合、強い不満や疑問を抱くのは当然のことです。
後遺障害等級は、損害賠償額やその後の生活保障に大きく影響する重要な要素であり、納得のいかない結果が出た際には、異議申し立てを検討することが非常に重要です。
しかし、脊髄損傷の認定は専門的で複雑な判断が伴い、異議申し立てを成功させるには、適切な知識と準備が欠かせません。
本記事では、なぜ脊髄損傷が非該当になるのかという原因分析から、異議申し立ての具体的な手順、成功のポイントまでを丁寧に解説しています。
最終更新日: 2025/8/5
Table of Contents
脊髄損傷で非該当になる理由
脊髄損傷の後遺障害認定基準
等級 | 認定基準 |
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
脊髄損傷の後遺障害認定では、麻痺や感覚障害の範囲・程度に加えて、日常生活や労働への影響、さらには介護の必要性の有無も重視されます。
後遺障害認定されるには、MRIやCT検査などの画像所見だけでなく、神経学的検査や診察による客観的な異常所見の存在が必要です。
障害等級は症状の重さにより1級から12級まであります。常時介護が必要な1級の重症例から、日常生活で軽度の支障を伴う12級まで幅広い等級になります。
非該当と判断されやすいケース
脊髄損傷が非該当となるのは、症状の訴えに対して客観的な証拠(画像所見や神経学的検査結果)が乏しいケースです。
特に、脊髄不全損傷で画像所見に異常が無かったり、受傷後しばらくしてから麻痺症状が進行した事案では、非該当になりやすいです。
脊髄損傷の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
異議申し立ての手順は、まず新たな医師の診断書や追加の画像検査などの客観的な資料を用意して、異議申立書にこれらを添えて提出します。
異議申立書の内容には、事故日や自賠責証明番号、異議の趣旨・理由を明記して、根拠となる資料を盛り込むことが重要です。
異議申し立ての申請先
異議申し立て書類の提出先は、初回請求時の方法で異なります。「事前認定」の場合は任意保険会社、「被害者請求」の場合は自賠責保険会社へ提出します。
担当保険会社から自賠責損害調査事務所へ送付されて、そこで再審査されます。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体に費用はかかりませんが、追加診断書や画像検査の発行には実費が必要です。
審査期間は2〜3ヶ月ほどが目安ですが、資料や事案によってはさらに時間がかかることもあります。
効果的な異議申し立てのための準備
効果的な異議申し立てには、前回申請時に不足していた証拠や客観的資料の追加が最重要です。
新たな診断書や画像検査、専門医による詳細な意見書、画像鑑定報告書などを準備して、証拠の充実を図りましょう。
脊髄損傷の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
非該当の原因を分析
脊髄損傷でも非該当になりやすいのは、画像所見に乏しい中心性脊髄損傷などの不全麻痺の事案が挙げられます。
また、受傷直後には無かった麻痺が、経過とともに出現したケースでも、事故との因果関係を否定されて非該当になりがちです。
単なる頚椎捻挫にもかかわらず、両手のしびれが強いために「中心性脊髄損傷」という傷病名が付けられた事案も非該当になりやすいです。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
脊髄損傷の後遺障害の認定条件をクリアする
脊髄損傷で後遺障害認定を受けるには、CTやMRI検査での画像所見だけでなく、神経学的検査・診察で明らかに障害が確認できること、日常生活や労働への具体的支障が証明できることが必須です。
加えて、受傷直後に症状が乏しい事案では、麻痺と交通事故との因果関係を客観的に示す必要があります。
<参考>
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立てで成功するには、初回申請では出せなかった新たな医療証拠(診断書、画像検査、医師意見書、画像鑑定など)の提出が不可欠です。
前回の審査で、後遺障害認定基準に足りなかった要素を、新たな医証で補強するイメージです。症状の具体性や継続性を裏付ける医証を揃えることが認定への近道となります。
尚、新たな医証の添付が無ければ、異議申し立てで認定される可能性は無いことに注意が必要です。
<参考>
脊髄損傷の後遺障害認定ポイント
脊髄損傷で後遺障害認定されるには、それぞれの後遺障害の認定基準をクリアする必要があります。
脊髄損傷の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
脊髄損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
脊髄損傷の異議申し立て成功事例【12級13号】
事案サマリー
- 被害者:70歳代 男性
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの)
弊社の取り組み
受傷直後に両手足のしびれと運動麻痺があり、骨折を伴わない頚髄損傷の状態でした。受傷直後のMRIでも、脊髄の圧迫を認めました。
運動麻痺は2週間ほどで改善して、歩行可能となったことから、重度の障害とは評価されず非該当と判断されました。
診療録を詳細に確認すると、後遺障害診断書作成時にも両手の巧緻性障害(細かい動きが難しい)があり、深部腱反射の異常も認めました。
受傷直後の麻痺の状態、MRIの評価を行い医師意見書を作成したところ、12級13号が認定されました。
骨折を伴わない脊髄損傷(非骨傷性頚髄損傷)については、かかりつけ医がMRIで見落としている可能性があります。異議申立てでは、脊椎脊髄の専門医による画像の確認が重要です。
脊髄損傷の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した脊髄損傷の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
脊髄損傷の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
脊髄損傷の異議申し立てでよくある質問
脊髄損傷なのに等級が低かったのはなぜ?
脊髄損傷でも比較的軽い等級(例:9級や12級)と認定される理由は、麻痺の範囲や程度、日常生活への支障の程度によって評価されるためです。
症状が軽く、介護を必要としない場合や、他覚的所見が乏しい場合には、重い等級(例:1〜5級)の認定は難しくなります。
MRIやCTに異常が映っているのに、非該当になったのはなぜ?
MRIやCTで異常が確認できても、画像上の異常と実際の臨床症状に整合性がみられない場合や、症状が改善している・消失している場合は非該当になる可能性があります。
特に、中心性脊髄損傷では画像所見と自覚症状のアンバランスや、後遺症の医学的な裏付けが不十分なときに非該当になるケースが少なくありません。
完全麻痺がないと高次の等級は取れない?
完全麻痺がなくても、高度あるいは中等度の四肢麻痺や下肢麻痺など、運動機能や日常生活動作能力に著しい障害が残る場合は、重い等級(例:1〜3級)が認定される可能性があります。
一方、麻痺の程度が軽度であれば、認定される等級も低くなる傾向があります。等級は「介護の必要性」や「麻痺の程度」で総合的に判断されます。
異議申し立てで等級が上がる可能性はある?
異議申し立てで等級が上がる可能性はあります。特に新たな証拠(診断書、追加の画像検査、医師意見書など)を提出することで、元の判断が覆り、より高い等級が認定された事例もあります。
異議申し立てではどんな資料を追加すればいい?
異議申し立てでは、新たな診断書、MRIやCTなどの追加検査、医師の詳細な意見書などが有効です。
いずれも、前回審査で低い等級もしくは非該当になった理由に対する、論理的な反証である必要があります。
まとめ
脊髄損傷の後遺障害認定では、麻痺の程度や日常生活・労働への支障、介護の必要性などが総合的に判断されます。
CTやMRIの画像所見に加えて、神経学的検査の客観的な証拠が求められ、等級は1〜12級に分類されます。
非該当となるのは、画像や検査結果に明確な異常がない場合や、事故との因果関係が証明しにくいケースです。
異議申し立てでは、新たな診断書や医師意見書、画像鑑定などの追加資料が重要です。
脊髄損傷の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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