鎖骨は日常生活で頻繁に使う肩や腕の動きを支える重要な骨であり、転倒や交通事故などで骨折しやすい部位でもあります。
実際に鎖骨を骨折すると、激しい痛みや腕が上がらないといった目に見える症状だけでなく、腫れや皮下出血、皮膚の変形といった外見の変化も見られます。
また、治療法や回復までの期間、場合によっては後遺症や後遺障害等級の認定が問題になることもあります。
本記事では、鎖骨骨折の症状をはじめ、治療法の選択肢、回復の目安、そして後遺障害のポイントまでを分かりやすく解説しています。
鎖骨骨折後の対応に不安を感じている方や、交通事故後の症状に悩む方にとって、正しい知識が回復への第一歩となるはずです。
最終更新日: 2025/6/24
Table of Contents
鎖骨骨折の主な症状と見た目の特徴
鎖骨の痛み
鎖骨を骨折すると、肩や胸の上部に激しい痛みが走ります。腕や肩を動かすたびに痛みが増して、特に持ち上げや衝撃を加えた際は強く感じます。
痛みは骨折部を直接刺激するような種類で、じっとしていてもズキズキとした鈍痛が続くこともあります。整復や固定が遅れると痛みは長引くため、早めの医療受診が重要です。
皮膚の盛り上がり
骨折により鎖骨の位置がずれると、皮膚の下に骨が浮き上がっているように見えることがあります。
特に鎖骨の中央や内側でずれたら、骨折部の変形が目立ちやすく、外見からも骨折を疑うサインとなります。
腫れや皮下出血
骨折部周囲では炎症反応として腫れが生じて、内出血による皮下出血(あざ)が現れる頻度が高いです。
鎖骨は皮膚に近いため、打撲後すぐに青紫や黒ずんだ痕が見られることも少なくありません。
肩の動きの制限
鎖骨の骨折は肩甲骨と胸骨との関係を崩すため、肩や腕の可動範囲が大幅に制限されます。
腕を上げたり前に伸ばす動作が痛みを伴って困難になり、日常の服の脱ぎ着や物を持ち上げる行為に支障が出ます。
鎖骨骨折の程度がきついと、肩全体が下がって見える“肩の下垂”現象も確認されるケースがあります。
鎖骨骨折の一般的な治療法
保存療法と手術療法の比較
鎖骨骨折の中でも、特に中間部の転位が大きいものは、手術(プレート固定)による治癒率や早期回復が、保存療法より優れるとされています。
一方、痛みや機能回復、満足度では、長期的に両者に大きな差はありません。
各治療法のメリット・デメリット
保存療法は、手術無しなのでで体への負担が少なく、感染や麻酔リスクがありません。一方、変形癒合や偽関節、肩機能の回復が遅れる可能性があります。
手術療法は、骨癒合を得やすく早期可動が期待できる一方で、傷跡、神経麻痺、プレート除去などの追加手術リスクがあります。
鎖骨骨折は全治何ヶ月?
鎖骨骨折は全治3ヶ月程度
鎖骨骨折は、受傷から骨が癒合して肩を日常的に動かせるまで、おおむね3ヶ月が目安です。
骨癒合そのものは6〜8週間で進みますが、固定中に衰えた肩周囲の筋力をリハビリテーションで戻す時間が、後半に必要になるためです。
粉砕骨折や高齢者、糖尿病など治癒遅延因子がある場合は、4〜5ヶ月に延びることもあります。
局所安静を守らないと偽関節になる可能性があるため、医師の指示どおりにリハビリテーションを行うことが重要です。
治療期間中の生活の工夫
固定直後の4週間は患側の腕を肩より高く上げない、就寝時は横向きや上半身をやや起こした体位で痛みとずれを防ぐ、という基本ルールが早期癒合の鍵です。
三角巾は4週間の使用を目安にします。バストバンドは1日2回締め直して、6〜8週間は固定を緩めないようにします。
禁煙と高たんぱく・ビタミンDを意識した食事は骨形成を促進します。指先・肘の軽い屈伸や握力ボールで血流を確保して、関節の拘縮を予防しましょう。
衣類は患側を先に通すと負担が少なく、シャワーは固定具の濡れに注意して短時間で済ませると安心です。
鎖骨骨折で考えられる後遺障害
交通事故で鎖骨骨折を受傷すると、神経障害、機能障害、変形障害の3つの後遺障害が認定される可能性があります。
神経障害(痛みやしびれ)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
骨が部分的にしかついていない場合(遷延治癒)では、変形障害(12級5号)ではなく、12級13号が認定されるケースがあります。
<参考>
偽関節・遷延治癒の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
14級9号:局部に神経症状を残すもの
鎖骨骨折の手術を受けた場合、必ずといっていいほど出現するのが鎖骨上神経障害です。手術によって鎖骨上神経が切断されるため、手術痕の足側に感覚障害を起こす症例を多く経験します。
しかし、患者さん本人が自覚されていない場合があり、見逃されやすい障害です。症状がある場合には、「局所に神経症状を残すもの」として第14級9号が認定されるケースが多いです。
機能障害(肩を動かしにくい)
鎖骨骨折における機能障害とは、肩関節の可動域制限です。特に、肩に近い骨折ほど、肩関節の機能障害が出現しやすくなります。
しかし、鎖骨骨折は肩関節と直接関係のない部位の骨折です。そのため、交通事故と機能障害との因果関係が問われるケースを多く経験します。
肩関節の機能障害が残存した場合、以下のような後遺障害等級が認められる可能性があります。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
肩関節が強直またはこれに近い状態にあるものです。これに近い状態とは、自動(自分で動かすこと)で健側(ケガをしていない側)の可動域の10%程度以下に制限された状態です。
<参考>
自動運動と他動運動の違いで後遺障害に差も|交通事故の医療鑑定
10級10号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の1/2以下の可動域に制限されているものです。
12級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
肩関節の関節運動が、健側の3/4以下の可動域に制限されているものです。
<参考>
変形障害(偽関節、鎖骨の出っ張り)
12級5号: 鎖骨に著しい変形を残すもの
鎖骨の変形は手術をすれば改善するため、変形そのもので等級認定されるケースは多くありません。一方、手術を施行しても骨折部が十分に癒合しない症例を散見します。
全く骨癒合していない状態を偽関節、一部分だけしか骨癒合していない状態を遷延治癒と呼びます。いずれも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
保存的治療を選択した場合は、手術症例と比較して偽関節や遷延治癒に至る可能性が少し高くなります。このような症例でも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
また、鎖骨の変形そのものでも「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に認定される可能性があります。
この場合の「著しい変形」とは衣服を脱いで裸の状態になったとき、明らかに骨が変形していると分かる状態のことを意味します。
<参考>
鎖骨骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
交通事故で鎖骨を骨折して、その後に後遺症が残ったら、自賠責保険で以下のような後遺障害に認定される可能性があります。
- 神経障害(持続する痛みやしびれ)
- 機能障害(肩や腕の動きが制限される)
- 変形障害(鎖骨が不自然な形で癒合)
これらは異なる後遺障害の類型に該当しますが、状況によっては複数が別々に認定されるケースもあります。
鎖骨骨折の後遺障害認定には、多くの留意点があります。詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
<参考>
鎖骨骨折の後遺障害認定事例【12級13号】
事案サマリー
- 被害者:48歳
- 事前認定:14級9号
- 異議申し立て:神経障害として12級13号が認定
弊社の取り組み
鎖骨骨幹部骨折に対して、プレート固定術が施行されましたが痛みが残りました。
単純X線像(レントゲン検査)では骨癒合しているように見えるため、事前認定では14級9号にとどまりました。
弊社でCT検査を追加施行することを提案したところ、骨幹部に遷延癒合を確認できました。
術後に痺れが残存した鎖骨上神経障害も加味された可能性もありますが、神経障害として12級13号が認定されました。
鎖骨骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、鎖骨骨折が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
鎖骨骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
鎖骨骨折の症状でよくある質問
鎖骨を骨折するとどこが痛むのか?
鎖骨骨折では、鎖骨の骨折部そのものに強い痛みがあります。受傷直後から痛みのピークは2〜3週間ほど続き、腕を動かすたびに激痛となります。
鎖骨にひびが入った時の症状は?
ひび(不完全骨折)の場合も、強い痛みのほか、軽度の腫れや皮下出血が見られます。
動作によっては痛みが増します。また、骨片がずれていないため外見上変形が乏しく、気付かれにくい点も特徴です。
鎖骨骨折の自然治癒期間は?
保存療法で骨折がずれていない場合、通常は2〜3ヶ月で骨癒合します。一方、転位があると治癒が遅れ、場合によって半年程度かかることがあります。
手術を行ったケースでも、完全な運動復帰には3ヶ月以上かかるのが一般的です。
鎖骨骨折の見た目の特徴は?
鎖骨は皮膚に近いため、骨折すると皮膚の下で骨が盛り上がって見えることが多く、腫れやあざも発生します。
腕を動かすたびに骨の位置がずれやすく、肩の高さの左右差や変形が生じて、外見上も認知しやすいです。
鎖骨骨折の合併症は?
鎖骨骨折では、神経・血管損傷により手のしびれや血流不良が起こるリスクがあります。
また、骨が完全にくっつかず偽関節となったり、ずれた状態で固まる変形癒合になることがあります。
まとめ
鎖骨骨折は肩や胸の上部に強い痛みを伴い、皮膚の盛り上がりや腫れ、あざなど外見でも異常が見られます。
肩や腕の動きが制限され、日常生活にも支障が出ることが多く、治療には3か月前後かかるのが一般的です。
治療には保存療法と手術療法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
また、骨が変形して治癒したり、痛みや運動障害が残ると、後遺障害として自賠責保険の等級認定を受ける可能性もあります。
鎖骨骨折で予想していた後遺障害が認定されず、お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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