医療は本来、命や健康を守るためのものですが、現実には思わぬトラブルに直面することもあります。
たとえば、誤診や手術ミス、説明不足などにより心身に深刻な影響を受けるケースも少なくありません。
そうした経験をしたとき、「どこに相談すればいいのか」「損害賠償は請求できるのか」といった疑問や不安を抱える人も多いでしょう。
本記事では、医療トラブルの代表的な事例や原因に加え、相談窓口、法的対応、損害賠償の流れ、さらにはトラブルを未然に防ぐための予防策まで、幅広く解説しています。
最終更新日: 2025/6/22
Table of Contents
医療トラブルの代表的な事例と実態
よくある医療トラブルの具体例
医療トラブルの代表例には、がん検査を怠って発見が遅れる誤診、手術中の器具誤置・操作ミス、術前リスクの不十分説明などがあります。
裁判例では、内視鏡手術で穿孔し死亡、針の体内残留で損害賠償、問診不足による重大疾患見落としなどが確認されています。
医療トラブルはなぜ起こる?背景と頻度
医療機関でのトラブルは、知識や技術のバラツキ、過重労働・体制不備、インフォームドコンセント不足などが原因です。
国内調査では、診療への不安を感じる人が70%超、司法統計では年間約1,000件の医事訴訟が新受件されており、トラブルの発生頻度は軽視できません。
医療トラブル発生時にまずやるべきこと
冷静な事実確認と記録の重要性
医療トラブル発生時はまず「いつ・どこで・誰が・何をしたか」を5W1Hで整理し、感情に流されず客観的事実を記録することが重要です。
中立な視点で相手の話を遮らず傾聴して、ノートや録音などで正確に残すことで、後の対応や証拠として役立ちます。
カルテや検査結果の開示請求方法
カルテ開示は、厚生労働省や個人情報保護法に基づき原則応じる義務があります。
開示は、病院窓口へ書面またはオンラインで請求します。電子・紙カルテのどちらも対応可能なケースが多いです。
拒否された場合は、弁護士を通じて証拠保全を申請するのが効果的です。検査結果や加筆履歴の取得も重要です。
医療トラブルに遭遇した際の相談窓口
病院の相談窓口
病院では、まず院内の受付や患者相談窓口が相談対応の第一歩となります。
不満や疑問を伝えることで、医療安全管理部など専門部署が、状況把握・改善対応に関わることがあります。
ただし、過失の判断や法的交渉には対応しない点に注意が必要です。
医療安全支援センター
医療安全支援センターは、県や自治体設置の中立機関で、患者と医療機関の信頼関係構築を支援します。
医療行為自体の是非・過失判断はできませんが、不安や疑問に助言や情報提供をして、話し合いのサポートを行います。
<参考>
医療安全支援センター総合事業
医療事故情報センター
医療事故情報センターは弁護士が正会員として構成して、医療事故被害者の回復と再発防止を目的としています。
情報収集・分析、全国一斉相談会の開催、被害者支援などを行い、医療の安全性向上にも寄与しています。
<参考>
医療事故情報センター
日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)
日本医療安全調査機構は、医療事故調査制度に基づいて報告を受けて、原因分析と再発防止策を提言します。
医療機関と行政との連携のもと、中立的な立場で制度運用と医療安全の向上に取り組んでいます。
<参考>
日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)
近くの弁護士会
各地域の弁護士会(例:東京弁護士会)では、医療過誤に強い弁護士による法律相談窓口を設置しています。
過失や損害賠償の可能性、訴訟の進め方など専門的なアドバイスを得ることが可能で、法的対処を検討するうえで大きな助けとなります
医療トラブルで追及できる法的責任
損害賠償請求の法的要件(過失・損害・因果関係)
医療過誤で損害賠償を請求するには、「医師や病院に過失がある」「患者に実際の損害(治療費・後遺症・慰謝料など)が発生」「過失と損害の間に因果関係が証明できる」の3要件が必要です。
過失は「標準的医療水準からの逸脱」、因果関係は「過失がなければ損害は生じなかったと統計的に証明できる」ことが求められます。
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
民事・刑事・行政上の責任の違い
医療トラブルにおける責任は、以下の3種類です。
- 民事責任(患者が賠償を求める)
- 刑事責任(国家が業務上過失致死傷罪で処罰)
- 行政責任(厚生労働省による医業停止や免許取消)
患者が主体的に動けるのは主に民事責任で、補償は損害賠償請求が中心です。刑事・行政は国家が判断するため、患者は追及の直接当事者ではありません
医療トラブルでの損害賠償請求の流れ
弁護士に相談
まずは医療過誤に強い弁護士へ相談しましょう。初回相談は無料が一般的です。
相談では時系列や検査資料などを提出して、医療ミスの可能性や見通しを確認します。そこからカルテ開示や医療調査へ進むか判断します。
医療調査を行う
弁護士がカルテ、検査画像、医学文献を収集・精査して、協力医の意見を得て、医療ミスの有無を検証します。
医療調査が示談交渉や訴訟の基盤となり、医師の説明内容を補強する医師意見書作成や争点整理にも直結します。
<参考>
示談交渉
医療調査の結果、過失があると判断されたら、弁護士が医療機関と交渉を行い、示談で金銭的・謝罪的な解決を目指します。
任意の手続ですが、迅速解決と費用節約になるため、示談が選ばれるケースが多いです。
調停と医療ADR
示談が成立しない場合、裁判所裁定の調停や弁護士会主導の医療ADRが選択肢となります。
調停では調停委員や医師も関与して、ADRでは専門医と弁護士が中立立場で解決を図ります。訴訟より前に選ばれる柔軟な手段です。
訴訟
調停や医療ADRで解決できない場合は、訴訟に進みます。裁判所で証拠・証人尋問・鑑定を通じて争点を明確にして、判決が下されます。
和解案が示されるケースも多く、第一審だけで1~2年かかるのが一般的です。
損害賠償請求での注意点
時効は意外と短い
医療過誤による損害賠償請求には、基本的に「損害と加害者を知ってから5年」「事故発生から20年」の二重時効が設けられています。
2020年4月以降の事故では5年が一般的です。ただしカルテ保存期間(5年)を超えると証拠取得が困難になるため、早めの対応が重要です。
解決に長期間を要する
医療トラブルは医学的・法律的複雑性が高く、示談交渉、調停、ADR、訴訟など手続きが多段階で進められるため、数年程度かかるのが一般的です。
記憶や証拠の衰退も時間の経過とともに問題となるため、長期戦を覚悟しつつ粘り強く対応する必要があります。
示談や和解も選択肢に入れる
医療ADR(裁判外紛争解決手続)や病院との示談・和解は訴訟より迅速・柔軟で、専門医や弁護士の立会いのもと非公開で解決できる利点があります。
より温和な解決を望む場合や互いに関係改善を図りたい場合には、これらを優先的に検討することが有効です。
医療過誤訴訟の難しさと証明責任
医療過誤訴訟は、高度な医学知識が不可欠な難関です。患者側には「過失」「損害」「因果関係」の立証責任があり、協力医や専門文献の収集が求められます。
さらに、病院側は豊富な専門家ネットワークを持ち対抗してくるため、医療訴訟の実績がある弁護士や協力医の支援は必須です。
裁判官にも分かりやすい説明が求められ、協力医が作成する医師意見書の有無が、鍵となるケースが多いです。
<参考>
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
医療トラブルでよくある質問
医療における三大インシデントとは?
医療現場では「与薬・点滴に関するインシデント」「転倒・転落に関するインシデント」「誤認(患者取り違え)に関するインシデント」が三大事象とされます。
三大インシデントには明確な全国統一の定義はありませんが、実際の医療安全管理や看護現場では、発生頻度が高く、重大事故につながりやすいものとして重視されています。
医療事故で最も多い事例は?
2022年の医療事故では、全体の32.4%が治療・処置中の事故で最多でした。
次に「療養上の世話」(31.1%)、続くのが薬剤エラー(7.9%)とドレーン・チューブ関連事故(7.7%)でした。
医療過誤の具体例は?
具体的には、誤った患者に検査や処置をした、薬剤過量投与、中心静脈カテーテル忘れ、器具残存、薬剤投与ルート誤り等が頻発しています。
こうしたミスは、ダブルチェック不徹底や確認手順の欠如が要因と言われています。
日本の医療の課題点は?
医療業界全体では、「地域間格差」「経営難」「人手不足」「高齢化対応」「負担増」といった課題が山積しています。
特に、病院経営の脆弱さや、地域医療体制の崩壊が深刻とされています。
まとめ
医療トラブルには、誤診や手術ミス、説明不足などが多く、年間約1,000件の医事訴訟が発生しています。
原因には医療体制の不備や説明不足があり、患者側は記録や証拠を確保することが重要です。
相談先としては病院窓口や医療安全支援センター、弁護士会などがあり、法的責任には民事・刑事・行政が含まれます。
損害賠償請求では過失・損害・因果関係の証明が必要で、訴訟には長期間と専門的支援が求められます。
医療トラブルに関する示談交渉や裁判で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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