「医者も人間だから、間違いはある」と聞いたことがあるかもしれません。
しかし、誤診によって病状が悪化したり、命にかかわるような結果になったりするケースも実際に存在します。
特に、自分や家族が誤診にあったと感じたとき、「なぜそんなことが起きるのか」「どう対応すべきか」と不安になるのは当然のことです。
本記事では、医者が誤診をしてしまう背景や誤診が起こった際の相談先や損害賠償請求の手続きまで、幅広く解説しています。
まずは、「なぜ医者の誤診が多いと感じられるのか」から見ていきましょう。
最終更新日: 2025/6/21
Table of Contents
医者の誤診が多いと感じる理由
誤診の定義と医療現場での実態
「誤診」は医師の診断が実際の病態と異なることです。医学的には、客観的な診断と実際の所見が一致しないものを誤診と定義しています。
解剖結果では、生前診断の約10〜30%が一致しない(診断不一致)という報告がありますが、近年は10〜20%台に低下傾向です。
医療ミスと誤診の違いについて
「医療ミス」は不注意や手順違反により患者に害が及ぶ行為で、医療事故の一部とされています。
一方「誤診」は診断が誤っていた事実であり、必ずしも注意義務違反(過失)を含みません。つまり、誤診=ミスではない点が重要です。
なぜ誤診が「多い」と感じるのか?患者側の視点と医療者側の視点
患者は診断の不確実性や説明不足により、「誤診は多い」と感じがちです。
一方、医療者側は臨床と病理解剖の差、診断プロセスの限界を理解しており、誤診を完全には避けられないものと認識しています。
また、期待される医療水準とのギャップが、誤診の印象を助長しています。
誤診が起きやすいケースとその原因
よくある誤診の事例紹介
癌診断の分野では、「良性と判断された腫瘍が実は悪性」「画像検査で癌を見落とす」「術後に癌ではなかったと判明する」などさまざまなパターンがあります。
画像や病理診断の限界により、早期発見が遅れるケースが報告されており、ステージⅣで見つかった事例や不必要な手術が行われた例もあります。
診断エラーが発生する主な要因
「診断エラー学」によれば、診断ミスの背景には知識不足よりも認知バイアス、複雑な診断プロセス、システム要因が関与しています。
先入観による見落としやヒューリスティックな判断、省略的コミュニケーション、検査不足などが重なり、正確な診断を阻む構造的な問題が存在します。
医療現場でのコミュニケーション不足が招く誤診
米国の報告では、医療事故の7割近くがコミュニケーションエラーに起因するとされています。日本でもコミュニケーション不足が重大な要因と考えられています。
誤診に気づいたときにやるべきこと
まずは冷静に事実確認と記録を取る重要性
誤診に気づいたら、まず診療・検査・治療・説明内容を「いつ・誰に・どこで・何を」時系列で整理して、メモや文書、録音で正確に記録を残すことが先決です。
これにより、後で証拠として利用でき、医療機関や弁護士への相談にも説得力が増します。
病院の相談窓口や第三者機関への相談方法
病院の受付・医療安全管理部門にまず相談して、それでも解決しない場合は、医療安全支援センターや消費生活センターに相談しましょう。
これらの機関は中立的な立場で相談に応じますが、責任認定や交渉代理はできないため、医師の過失追及には専門弁護士の相談が必要です。
セカンドオピニオンの活用と転院のポイント
セカンドオピニオンは別の医師に診断や治療方針を聞く制度で、誤診の見逃し防止につながります。
紹介状なしでも受診可ですが、治療経過や検査データが共有されず、診断精度が下がる可能性もあります。円滑な転院には、主治医への相談と紹介状取得が重要です。
医療過誤・誤診で損害賠償請求を検討する際の流れ
医療過誤と認定されるための3要件
医療過誤として損害賠償を請求するためには、以下の3要件を満たす必要があります。
- 病院・医師による不法行為(医療ミス含む)
- その行為が患者に損害をもたらし(因果関係)
- その損害が金銭的評価可能である
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
診療記録や検査結果の入手・証拠保全の方法
カルテ等は「開示請求」で患者本人または代理人の弁護士が病院から写し取得できます(コピー代要)。
証拠保全が必要な場合は「裁判所への申し立て」で記録を保全してもらう選択肢もあり、迅速に行うことが後の手続きに有利です。
医療調査・医師意見書の役割
医療調査は、収集したカルテや看護記録そして検査結果を協力医が精査して、医療過誤に該当するかを精査します。
医療調査の結果、医療過誤である可能性が高ければ、医師意見書を依頼するケースが多いです。
医師意見書は、専門医が当時の診療が標準的水準に則っていたかを判断する重要書類です。
争点整理時には信頼性の担保が求められるため、争点整理後に医師意見書の提出が望ましいとされています。
<参考>
弁護士への相談と専門家の選び方
医療過誤対応には、高い専門性と医療訴訟経験を持つ弁護士を選びます。
医学知識、カルテ解読力、協力医とのネットワーク、実績、費用体系などを総合判断する必要があります。
「医療過誤に強い」かつ実績ある専門家を重視することが成功への鍵でしょう。
医者が誤診やミスを認めない場合の対応策
医師・病院側が責任を認めない場合の対処法
医師や病院が誤診を否定する場合、まずは事実と記録を冷静に整理して、カルテ・検査結果を開示請求します。
その上で、医療調査を弁護士に依頼して、協力医の意見を得たうえで、過失や因果関係の有無を客観的に評価します。
訴訟や調停、医療ADR(裁判外紛争解決手続き)の活用
示談交渉が決裂した場合、調停や医療ADR(裁判外紛争解決手続)が有効です。
医療ADRは、弁護士・医師を含む仲裁体制で、信頼できる判断と対話による解決が可能です。
調停は裁判所主導で話を促進して、費用・期間も抑えられる方法です。
和解・判決までの流れと注意点
示談交渉後、調停・医療ADR、それでも合意に至らない場合は裁判へ進むのが一般的な流れです。
和解は裁判所が提示する提案を基に合意形成され、判決に法的拘束力があります。
ただし、医療訴訟は時間がかかり、証拠集めや専門意見が必要で、長期化やコスト増大の可能性もあります。
損害賠償請求で知っておきたいポイント
請求できる損害賠償の項目と金額の目安
医療過誤による請求対象には、治療費、入院費、通院費、介護費、逸失利益(将来の収入減)、精神的損害への慰謝料があります。
金額は損害の内容と重症度で変動します。例えば、死亡慰謝料は2,000万〜2,800万円、後遺障害慰謝料は等級によって110万〜2,800万円程度が目安です。
医療訴訟のリスクとメリット・デメリット
医療訴訟の患者側勝訴率は近年18〜22%程度と低い水準です。また、証拠収集・専門医意見書・長期化・高い費用やストレスといったリスクがあります。
一方、医療訴訟で勝訴すれば、公的な判決や慰謝料・逸失利益の獲得が可能です。
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
医者の誤診でよくある質問
医者が誤診するのはなぜ?
診断には不確実性がつきものです。専門医でも正答率は95〜98%が限度とされ、どんなに経験豊富な医師でも一定の誤診は避けられません。
さらに認知バイアスや情報不足、検査の限界などが背景にあり、「ミスが起きてもおかしくない」状況が現実です。
医者は何科が一番きついですか?
「一番きつい科は?」というアンケートでは「どの科も同じ」が24.4%で最多です。
ただし、産婦人科・外科・救急科などは、24時間体制や緊急対応、高い緊張感から「診療難易度が高い科」に挙げられやすい傾向があります。
医者が誤診する確率は?
厚労省や日本医師会の報告では、医療事故全体に占める診断エラーは14.1〜15.2%、死亡事故では18〜19%に達します。
診断の不一致率(誤診率)は、剖検データなどから10〜20%前後と報告されています。
医者の誤診の責任は?
誤診が医療過誤に該当すると、以下の3つの法的責任が問題になります。
- 民事責任(損害賠償請求)
- 刑事責任(業務上過失致死傷罪)
- 行政責任(医師免許停止・取消)
医療機関や医師個人、場合によっては医療機器メーカーなども対象となる可能性があります。
まとめ
医師の誤診とは、実際の病状と異なる診断を下すことで、医療ミスとは異なり過失がなくても起こり得ます。
患者は説明不足や診断の不確実性から誤診が多いと感じやすく、医師側も誤診を完全に防ぐのは難しいと認識しています。
誤診は認知バイアスや情報伝達の不備など複数の要因で起こり、特に癌の早期発見で問題となるケースが多いです。
誤診が疑われる場合は、診療記録の保存やセカンドオピニオンの活用、弁護士や医療調査機関への相談が重要です。
損害賠償を請求するには、医療ミスが証明される必要があり、診療録や医師意見書が鍵となります。
訴訟は勝率が低く長期化しやすいため、医療調査を通じて訴訟の妥当性を見極めることが重要です。
医師の誤診による医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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