大切な家族や身近な人が医療現場で命を落とす――それが「医療事故による死亡」です。
信頼していた医療機関で突然の死を迎えたとき、残されたご家族は深い悲しみとともに、「これは避けられなかったのか」「誰かに責任があるのではないか」と疑問や怒りを抱えることも少なくありません。
しかし、医療事故と認められるためには明確な基準があり、法的な責任を追及するには専門的な知識と慎重な対応が必要です。
本記事では、医療事故によって死亡した場合に、どのように損害賠償を請求できるのか、法律相談や訴訟の進め方など、遺族が知っておくべき情報をわかりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/6/19
Table of Contents
医療事故による死亡事例の解説
「医療事故」と「医療過誤」の違い
「医療事故」とは、医療現場で発生したすべての事故であり、過失の有無や被害者が患者か医療従事者かを問いません。
一方、「医療過誤」は医療従事者の過失によって患者に被害が生じた状態で、医療事故の一部に含まれます。
どのようなケースが医療事故死に該当するか
医療事故死とは、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡」であり、医療機関の管理者が予期しなかった場合に制度上の「医療事故」として扱われます。
過失の有無は問わず、合併症や治療の副作用による予想外の死亡も含まれます。
医療事故死が発生した際の医療機関の責任範囲と義務
医療事故調査制度の対象となる死亡事例が発生したら、医療機関は速やかに院内調査を実施して、その結果を医療事故調査・支援センターへ報告して、遺族へ説明する義務があります。
法的責任は、民事(損害賠償)、刑事(業務上過失致死傷罪等)、行政(免許停止等)に分かれます。
医療事故死が疑われる場合の初動対応と流れ
証拠保全(診療録・検査データ等)の重要性
医療事故が疑われる際、事故直後の状況をそのまま記録・保存することが極めて重要です。証拠の欠落は、後の調査や訴訟に大きな影響を与えます。
体内に残されたカテーテル、モニター記録、使用薬剤、検体や臓器など、事例に関係するあらゆるデータを医療機関および関係機関により保全しなければなりません。
医療機関への質問・要望の伝え方
医療事故が疑われるときは、対応を担う窓口(医事担当窓口など)を通じ、具体的かつ丁寧に情報提供・回答を求めることが重要です。
書面や面談で「診療記録を開示してほしい」「調査を支援センターに相談したい」など、明確かつ冷静な意思表示を心がけましょう。
混乱したり感情的にならず、事実の確認に徹する姿勢が、医療機関との信頼構築の鍵となります。
必要に応じた弁護士・協力医の選び方
医療過誤の疑いがある場合、医療調査を実施するために、法律・医学双方に精通した専門家が必要です。
まずは医療過誤に強い弁護士に相談して、協力医(カルテ分析や因果関係の判断を担う医師)の紹介を依頼するのが一般的です。
協力医は経験、専門性だけでなく、医師意見書の作成実績や信頼性も重視して、論文執筆のある専門医なども検討しましょう。
<参考>
医療過誤訴訟の難しさと証明責任
医療過誤訴訟は、高度な医学知識が不可欠な難関です。患者側には「過失」「損害」「因果関係」の立証責任があり、協力医や専門文献の収集が求められます。
さらに、病院側は豊富な専門家ネットワークを持ち対抗してくるため、医療訴訟の実績がある弁護士や協力医の支援は必須です。
裁判官にも分かりやすい説明が求められ、協力医が作成する医師意見書の有無が、鍵となるケースが多いです。
<参考>
医療事故による死亡時の損害賠償請求
医療過誤で損害賠償請求ができる3要件
医療過誤を理由に請求するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 医師や病院に過失(債務不履行・不法行為)がある
- その過失が死亡などの損害を直接生じさせた因果関係がある
- 損害を金銭的に評価できる(治療費・逸失利益・慰謝料等)
<参考>
医療過誤の3要件とは?損害賠償請求の流れも解説|医療訴訟・医師意見書
損害賠償請求の流れ(示談・調停・訴訟)
損害賠償請求は、まず医療機関との示談交渉から始まります。合意に至らなければ、家庭裁判所や医療ADRによる調停へ進み、さらに解決しない場合は裁判所に訴訟を提起します。
訴訟では判決で賠償金額が確定するケースもありますが、多く事案は和解で終了します。
裁判で問われるポイント(過失・因果関係・損害額)
裁判では、医師の診療が「標準的な注意義務を果たしていたか」で過失を判断して、適切な診療なら死亡回避可能だったかで因果関係を検証します。
さらに損害額は、治療費・逸失利益・葬儀費用・死亡慰謝料などを「赤い本」基準に沿って算出します。
メディカルコンサルティングができること
医療ミスなのかについての医療調査
医療訴訟の多くは、単に治療結果が悪いだけで医療ミスではありません。単に治療結果が悪いだけでは、医療訴訟で勝てる確率は著しく低いです。
勝訴できる可能性の無い不毛な医療訴訟を防ぐためには、第三者による、医療ミスかどうかについての医療調査の実施が望ましいです。
弊社では、ほぼすべての科の事案で医療ミスか否かの医療調査(意見書作成可否調査)が可能です。詳細は、以下のコラム記事をご確認ください。
<参考>
医療事故における医療調査の基本内容とは?費用も解説|医師意見書
医療調査できる診療科一覧
弊社では、以下のようにほぼ全科の医療調査を実施できます。
- 整形外科
- 脳神経外科
- 耳鼻咽喉科
- 眼科
- 消化器外科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科
- 産婦人科
- 泌尿器科
- 脳神経内科
- 循環器内科
- 消化器内科
- 呼吸器内科
- 腎臓内科
- 血液内科
- 小児科
- 放射線科
- 精神科
- 皮膚科
- 形成外科
- ⻭科
- 麻酔科
- 救急科
- 感染症科
- ペイン科
- 病理
医療訴訟で使用する医師意見書
意見書作成可否調査で医療ミスであることが判明した場合、各科の専門医による顕名の医師意見書を作成することが可能です。
医療ミスの可能性がある事案で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
<参考>
医療訴訟の医師意見書|160名の各科専門医による圧倒的実績
医師意見書の作成にかかる費用
医療調査(意見書作成可否調査)
医療訴訟用の医師意見書を作成できるのかを判断するために、医療調査(意見書作成可否調査)を必須とさせていただいています。
意見書作成可否調査では、各科の専門医が、診療録や画像検査などの膨大な資料を精査いたします。
概要 | 価格 |
基本料 | 140,000円 |
動画の長い事案 | 170,000円 |
追加質問 | 45,000円 / 回 |
※ すべて税抜き価格
※ 意見書作成には医療調査(意見書作成可否調査)が必須です
※ 意見書作成には別途で意見書作成費用がかかります
※ 意見書作成に至らなくても医療調査の返金は致しません
医師意見書
医療調査(意見書作成可否調査)の結果、医療ミスが判明して、医師意見書を作成する際には、別途で医師意見書作成費用がかかります。
概要 | 価格 |
一般の科 | 400,000円~ |
精神科 | 450,000円~ |
心臓血管外科 | 500,000円~ |
施設(老健、グループホームなど) | 350,000円~ |
弊社が医療訴訟で医師意見書を作成した実例
弊社には全国の法律事務所から医療訴訟の相談が寄せられます。これまで下記のような科の医師意見書を作成してきました。
- 脳神経外科
- 脳神経内科(神経内科)
- 整形外科
- 一般内科
- 消化器外科
- 消化器内科
- 呼吸器外科
- 心臓血管外科(成人)
- 心臓血管外科(小児)
- 循環器内科
- 産科
- 婦人科
- 泌尿器科
- 精神科
- 歯科
一方、眼科や美容整形外科の相談は多いものの、医療過誤と認められるケースは少なく、弊社においても医師意見書の作成実績は限られています。
医療事故による死亡でよくある質問
医療事故で死亡した場合の賠償金はいくらですか?
死亡した場合、慰謝料は「一家の支柱:2,800万円、母親・配偶者:2,500万円、その他:2,000~2,500万円」が一般的な目安です。
これに加え逸失利益や葬儀費用、付添費用などが含まれます。全体では、数千万円~数億円と幅広くなります。事案ごとの具体的な事情により、賠償額は大きく変動します。
三大医療事故とは何ですか?
「三大医療事故」とは、医療安全分野で特に重視される重大事故のうち、特に頻度や影響が高い以下の3種類です。
- 患者取り違え
- 誤薬・誤注射
- 異物遺残
予期せぬ死亡や深刻な障害につながる可能性が高く、特別な対策や調査が求められます。
医療事故による死亡者数は?
日本における医療事故調査制度への死亡報告件数は、年間300~400件程度で推移しています。
ただし、これは報告義務のある医療機関からの件数であり、実際の発生数はこれより多い可能性があります。
医療事故で一番多いのは?
報告件数そのものでは「転倒・転落事故」が最も多い傾向にあります。一方、死亡事故の多くは、手術・分娩・薬剤投与などに起因する事例が多いです。
まとめ
医療事故とは、医療現場で起こるすべての事故であり、過失の有無にかかわらず扱われます。中でも医療過誤は、医療者のミスで患者に被害が出た事案です。
医療事故で死亡したら、医療機関は調査を行い、結果を報告・説明する義務があります。遺族は証拠を保全し、冷静に情報開示を求め、必要に応じて専門弁護士や協力医に相談することが重要です。
損害賠償には過失・因果関係・損害額の立証が必要で、訴訟には専門的な支援が不可欠です。
医療事故による死亡事案の医療訴訟で、お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
尚、個人の方は、必ず弁護士を通じてご相談ください。個人の方からの直接のお問い合わせは、固くお断りしております。
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