上腕骨骨折は、受傷部位によっていくつかの種類に分けられ、それぞれ異なる特徴や治療法があります。
本記事では、上腕骨骨折の主な種類を詳しく解説するとともに、それぞれの症状や治療方法、後遺症についても紹介します。
最終更新日: 2025/4/1
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上腕骨骨折は大きく3種類に分類される
上腕骨の骨折は、受傷部位によって大きく3種類に分類されます。以下に、それぞれの骨折の特徴について解説します。
上腕骨近位端骨折
上腕骨近位端骨折は、肩関節に近い上腕骨の上部で発生する骨折です。若年層ではスポーツや交通事故などの強い外力で受傷します。
一方、高齢者では転倒などの軽微な外力で生じることが多く、骨粗鬆症が影響しているケースが多いです。
上腕骨近位端骨折は全骨折の約4~5%を占め、高齢者の四肢骨折の中では3番目に多いとされています。
また、上腕骨近位端骨折の80%は、ずれ(転位)の少ない非転位型で、残り20%が転位型骨折に分類されます。
上腕骨骨幹部骨折
上腕骨骨幹部骨折は、上腕骨の中央部分で発生する骨折です。若年者は高エネルギー外傷ですが、高齢者では軽微な外力でも発生することがあります。
骨折の形態により、単純骨折(Type A)、楔状骨折(Type B)、複雑骨折(Type C)に分類されます。
単純骨折は骨が2つに分かれる比較的単純な骨折で、楔状骨折は第三の骨片が存在する骨折です。複雑骨折は多数の骨片に分かれる重度の骨折です。
上腕骨遠位端骨折
上腕骨遠位端骨折は、肘関節に近い上腕骨の下部で発生する骨折です。上腕骨遠位端骨折は、骨折線の位置や関節への影響によって、以下のように分類されます。
1. 上腕骨顆上骨折
上腕骨顆上骨折は、肘関節のすぐ上で発生する骨折で、特に子供に多く見られます。転倒して手をついた際や、鉄棒やうんていからの転落時に肘が反ることで受傷します。上腕骨顆上骨折の症状としては、肘の激しい痛みと腫れ、動かせない状態が特徴です。
2. 上腕骨顆部骨折
上腕骨顆部骨折は、骨折線が肘の関節面におよび、さまざまな程度の粉砕が見られる骨折です。関節内の複雑な骨折なので、治療が難しいケースがあります。
3. 上腕骨外顆骨折
上腕骨外顆骨折は、上腕骨の外側部分で発生する小児に多い骨折です。肘関節の外側を中心に痛みや腫れが生じます。
4. 上腕骨内側上顆骨折
上腕骨内側上顆骨折は、上腕骨の内側部分で発生する骨折です。上腕骨内側上顆骨折も小児に多く、剥離骨折の一形態です。肘関節の内側を中心に、痛みや腫れが生じます。
5. 上腕骨通顆骨折
上腕骨通顆骨折は、関節内のより遠位部(関節軟骨部)で発生する横骨折です。この骨折は高齢者に多く、治療が難しいことが特徴です。
上腕骨骨折について知ろう
上腕骨骨折の原因と症状
上腕骨骨折の原因として、転倒時に腕を伸ばした状態で手をついて、肩や肘に強い力が加わり、骨折を引き起こすケースが多いです。
上腕骨骨折の症状は、骨折部位や重症度により症状は異なりますが、一般的なものとして、骨折部位に強い痛みと腫れが生じます。
また、骨折により腕の形が変わることがあり、肩や肘の動きが制限されて、腕を動かすことが困難になります。
一方、手や指のしびれ、冷感、色調の変化などが見られる場合には、神経や血管の損傷合併が疑われます。
画像診断方法
上腕骨骨折の診断には、主に以下の画像診断が用いられます。
X線(レントゲン)検査
骨折の有無や部位、転位の程度を確認する基本的な検査です。
CT検査
複雑な骨折や関節内骨折では、詳細な骨のずれ(転位)の状態を把握するために行われます。
超音波検査や造影検査
血管損傷が疑われる場合に実施されて、血流の状態を評価します。
上腕骨骨折の種類別の治療方法
1. 上腕骨近位端骨折(肩に近い部分の骨折)
保存的治療
骨折のずれが少ない場合、三角巾やスリングを用いて固定して、早期からリハビリを開始します。
手術的治療
骨折のずれが大きい場合、金属プレートやスクリューで固定する手術が行われます。
2. 上腕骨骨幹部骨折(上腕の中央部分の骨折)
保存的治療
初期は三角巾や胸部固定バンドで固定して、後に装具を用いて肩や肘の運動を行いながら治療を進めます。
手術的治療
骨折のずれが大きい場合や、神経・血管損傷を伴う場合には、金属プレートや髄内釘を用いた手術が検討されます。
3. 上腕骨遠位端骨折(肘に近い部分の骨折)
上腕骨顆上骨折
骨折のずれ(転位)が少ない場合はギプスやシーネで固定して、ずれが大きい場合は手術が行われます。
上腕骨顆部骨折
関節内の複雑な骨折であり、手術による整復と内固定が必要となります。
上腕骨外顆骨折・内側上顆骨折
骨折のずれ(転位)の程度に応じて、保存的治療または手術的治療が選択されます。
上腕骨骨折の後遺症と後遺障害等級
上腕骨骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
- 肩や肘が十分に動かない
- 肩や肘を動かすと痛い
- 肩や肘に力が入らない
- 骨がつかない(偽関節)
- 壊死する(上腕骨頭無腐性壊死)
交通事故で受傷した上腕骨骨折では、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。詳細は以下にまとめているので、参照していただければ幸いです。
上腕骨骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
上腕骨骨折では、それぞれの受傷部位によって、後遺障害認定のポイントが異なります。詳細は以下で簡単にまとめているので、参照していただければ幸いです。
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<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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上腕骨骨折で請求できる損害賠償金
上腕骨骨折で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
上腕骨骨折の種類でよくある質問
上腕骨外科頚骨折と上腕骨近位端骨折の違いは?
上腕骨近位端骨折は、肩関節に近い上腕骨の上部で発生する骨折の総称です。
この部位の骨折は、折れる場所によって外科頚骨折、大結節骨折、解剖頚骨折などと呼ばれます。
その中でも、上腕骨外科頚骨折は、近位端の「外科頚」と呼ばれる部位で発生する骨折であり、高齢者に多く見られます。
したがって、上腕骨外科頚骨折は上腕骨近位端骨折の一種であり、両者は包含関係にあります。
上腕骨解剖頚骨折と上腕骨近位端骨折の違いは?
上腕骨解剖頚骨折は、上腕骨の近位端にある「解剖頚」と呼ばれる部位で発生する骨折です。
解剖頚は関節内に位置しており、骨折すると骨癒合が起こりにくく、機能障害を起こしやすいとされています。
一方、上腕骨近位端骨折は、肩関節近くの部分で発生する骨折の総称であり、解剖頚骨折もその一部に含まれます。
したがって、解剖頚骨折は近位端骨折の一種であり、両者は包含関係にあります。
解剖頚と外科頚の違いは?
上腕骨の近位端には「解剖頚」と「外科頚」という2つの部位があります。解剖頚は、上腕骨頭と大結節・小結節の間に位置し、関節内に存在します。
一方、外科頚は、結節部のすぐ下、骨幹部との移行部に位置しており、関節外にあります。
解剖頚での骨折は関節内骨折となり、骨癒合が起こりにくく、機能障害を起こしやすいとされています。
一方、外科頚での骨折は、骨癒合が良好な部位とされています。このように、解剖頚と外科頚では、受傷部位や骨折時の影響が異なります。
まとめ
上腕骨の骨折は、発生する部位によって「近位端骨折」「骨幹部骨折」「遠位端骨折」の3種類に分けられます。
上腕骨近位端骨折は肩に近い部分の骨折で、高齢者では転倒によって起こりやすいのが特徴です。
上腕骨骨幹部骨折は腕の中央で起こり、単純骨折や複雑骨折などに分類されます。
上腕骨遠位端骨折は肘に近い部分の骨折で、特に子供に多く、転倒時に発生しやすいです。
治療法は骨折の種類や重症度によって異なり、固定による保存療法や手術が行われます。
交通事故で受傷した上腕骨骨折の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
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