交通事故などで脊柱に損傷を負うと、「荷重機能障害」という障害が生じる可能性があります。荷重機能障害は、体重を支えたり、姿勢を維持したりする機能が低下した状態です。
しかし、後遺障害認定において「荷重機能障害」という名称での認定例はほぼ存在しないのが現状です。なぜ荷重機能障害は後遺障害に認められにくいのでしょうか?
本記事では、荷重機能障害の定義や具体例を解説して、後遺障害認定の基準やポイントについて詳しく説明します。
最終更新日: 2025/3/9
Table of Contents
荷重機能障害とは
荷重機能障害は脊柱機能障害の1つ
荷重機能障害とは、脊柱(背骨)が体重を支える能力が低下して、コルセットなどの硬性補装具が無ければ体を支えられない状態です。
荷重機能障害は、脊柱の機能障害の一種であり、背骨の変形や損傷、筋力の低下などが原因で生じます。
荷重機能障害の具体例
具体的には、脊椎の圧迫骨折や破裂骨折、脱臼などにより、硬性補装具(フレームコルセット)が無ければ体を支えられない状態です。
荷重機能障害の実際
しかし、交通事故で脊柱に損傷を受けた際の後遺障害認定審査においては、荷重機能障害単独での認定事例はほぼ存在しません。
実際の後遺障害認定では、荷重機能障害ではなく、脊柱の変形障害や運動障害として評価されるケースが一般的です。
脊柱の荷重機能障害
等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に荷重機能障害を残すもの |
年間1000事案の取り扱いがある弊社においても、圧迫骨折で脊柱の荷重機能障害に認定された事案の経験はほとんど存在しません。
その理由は、ほとんどの事案は脊柱の変形障害で処理されるためと思われます。
実臨床で、脊柱の荷重機能障害に認定される可能性がありそうな事案は、圧迫骨折後の偽関節ではないでしょうか。
若年者では少ないですが、高齢者では圧迫骨折後に椎体の前方が偽関節になる症例は珍しくありません。
このような症例では頑固な腰背部痛が残るため、コルセットを常用せざるを得ない症例を散見します。
6級5号:脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの
頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級2号:脊柱に荷重機能障害を残すもの
頚部または腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
荷重機能障害の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
荷重機能障害の認定例はほぼ存在しない
脊柱の荷重機能障害が後遺障害に認定されるには、①骨折や軟部組織損傷による器質的所見 ②常に硬性補装具が必要 という2つの条件を満たす必要があります。
最近の医学の進歩のおかげで、②常に硬性補装具が必要な状態の患者さんは、ほぼ居なくなりました。
このため、これまで 1万例近い事案に関わってきた弊社においても、脊柱の荷重機能障害の認定例は存在しません。
脊柱機能障害では荷重機能障害の無視が現実的
胸椎や腰椎の圧迫骨折や破裂骨折の後遺障害認定で、最も多いのは脊柱の変形障害です。
昔であれば、脊柱の荷重機能障害として認定されたであろう事案のほとんどが、現在では変形障害として認定されています。
脊柱の荷重機能障害は6級と8級という上位等級なので、被害者がコルセットを装着していれば後遺障害に該当すると考えがちです。
しかし実務的には、圧迫骨折などの脊椎の骨折では、荷重機能障害の存在は無視して、変形障害や運動障害での行為障害認定を目指すべきでしょう。
圧迫骨折の後遺障害認定で、お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
<参考>
圧迫骨折の後遺症が後遺障害認定されるポイント|交通事故の医療鑑定
脊柱変形障害や運動障害で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング
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等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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まとめ
荷重機能障害とは、背骨(脊柱)が体を支える力が弱くなって、装具なしでは体を支えられない状態です。
原因として、背骨の骨折や変形、筋力の低下などが考えられます。しかし、交通事故などで後遺障害として認定される事案はほとんどありません。
現在では、荷重機能障害ではなく、脊柱の「変形障害」や「運動障害」として扱われることが一般的です。
圧迫骨折の後遺障害認定で、お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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