手首を骨折すると、最初の強い痛みだけでなく、回復の過程でも違和感や鈍い痛みが続くことがあります。
「いつになったら痛みが引くのか?」と不安を感じる方も多いでしょう。また、痛みが長引くと、何か問題があるのではないかと心配になることもあります。
本記事では、手首骨折後の痛みの一般的な経過や回復の目安、痛みが続く理由、そして症状を和らげるための対処法について詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/3/3
Table of Contents
手首骨折後の痛みの一般的な経過
手首骨折とは?
手首骨折は、手首の骨が外部からの強い力によって折れた状態を指します。最も一般的なのは橈骨遠位端骨折で、転倒などで手をついた際に発生します。
症状としては、激しい痛み、腫れ、変形などが現れて、日常生活に支障をきたすケースが多いです。治療法は骨折の程度によって異なり、ギプス固定や手術が行われます。
骨折直後の痛みとその対処法
骨折直後は、激しい痛みを伴います。この時期の対処法としては、まず患部を安静に保ち、氷で冷やすことが重要です。
また、医師の指示に従い、鎮痛剤を服用することで痛みを和らげることができます。
回復期における痛みの変化
回復期に入ると、痛みは徐々に軽減していきますが、リハビリテーションを行う際には、再び痛みを感じることがあります。
リハビリテーションは、手首の機能回復のために重要ですが、無理をせず、痛みを感じたら医師や担当の作業療法士に伝えることが大切です。
痛みが続く期間の目安
痛みが完全に消えるまでの期間は個人差がありますが、一般的には2~3ヶ月程度です。骨が完全に癒合するまでにはさらに時間がかかることがあります。
手首骨折の痛みが長引く理由
骨折の種類による回復の違い
手首の骨折には、橈骨遠位端骨折(コレス骨折・スミス骨折)などがあります。骨折の種類や重症度により、回復期間や痛みの持続期間が異なります。
複雑な骨折や関節内骨折を併発していると、手首の痛みが長引き、関節可動域などの機能面の回復が遅れるケースが多いです。
痛みが続く手首骨折の特徴
痛みが長引く手首骨折の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 骨折部の変形や不安定性が残っている
- 骨折周囲の軟部組織損傷が重度
- 関節内に骨折線が及んでいる
- CRPSを合併している
特に骨折部が不安定性が残っていると、動かすたびに痛みが生じます。また、腫れがうまくコントロールできないと炎症が長引き、痛みが続くケースもあります。
痛みが続く場合の検査方法
痛みが続く場合は、まずレントゲン検査で骨の癒合状態を確認します。関節内骨折では、CT検査で関節面の不整の程度を精査するケースもあります。
TFCC損傷が疑われるケースでは、必要に応じてMRI検査を行って軟部組織の状態を詳しく調べます。
手首骨折後の痛みへの対処法
手首骨折後の痛みを適切に管理することは、回復を促進して、日常生活への早期復帰に重要です。
以下に、痛みを和らげるための薬物療法、サポーターや装具の使用方法、そして痛みを軽減する姿勢と動作について解説します。
痛みを和らげるための薬物療法
手首骨折後の痛みには、鎮痛剤の使用が一般的です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みと炎症を抑える効果があります。
ただし、長期使用は副作用のリスクがあるため、医師の指示に従い適切に使用することが重要です。
また、痛みが強い場合や慢性的な痛みには、医師が他の鎮痛薬や神経ブロックなどの治療法を検討するケースもあります。
サポーターや装具の使用方法
サポーターや装具は、手首の安定性を高め、痛みの軽減に役立ちます。手首用サポーターは、固定力や素材、デザインが多様で、自身の症状や活動レベルに合わせて選ぶことが重要です。
例えば、スポーツ時の手首のねじれを抑制したいケースや、日常生活での慢性的な手首の痛みに対応する製品が存在します。
装着時は、適切なフィット感を保ちつつ、過度な締め付けを避けるよう注意しましょう。また、サポーターの使用は医師や理学療法士の指導のもと行うことが望ましいです。
痛みを軽減する姿勢と動作
手首の痛みを軽減するためには、適切な姿勢と動作が重要です。手首に過度な負担をかけないよう、持ち上げ動作や押す動作の際には、肘や肩など他の関節を活用して、手首の負担を分散させる工夫が必要です。
また、リハビリテーションの一環として、手首の柔軟性と筋力を高めるエクササイズを取り入れることで、痛みの軽減と機能回復が期待できます。
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害
交通事故で手首骨折(橈骨遠位端骨折)を受傷すると、自賠責保険から後遺障害に認定される可能性があります。
橈骨遠位端骨折は、上肢の外傷で後遺症を残しやすい代表的な傷病です。ここでは橈骨遠位端骨折で施行するべき検査を考えてみましょう。
そのためには、橈骨遠位端骨折ではどのような障害を残す可能性があるのかを知る必要があります。
手関節の機能障害
手関節の機能障害(可動域制限)は、橈骨遠位端関節面の不整が原因となる事案が多いです。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の1/2以下に制限されているものをいいます。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の3/4以下に制限されているものをいいます。
手関節の神経障害
手関節の神経障害(痛み)は、以下が原因となるケースが多いです。
- 橈骨遠位端関節面の不整
- TFCC損傷
- 尺骨茎状突起の偽関節
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
この場合の神経症状とは痛みのことです。画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できるものをいいます。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
画像所見等で客観的に痛みの存在を証明できないものの、受傷時の態様や治療経過から痛みの存在が説明つくものをいいます。
長管骨の変形障害
12級8号:長管骨に変形を残すもの
手関節では、主に尺骨茎状突起に偽関節を残したものをいいます。稀に橈骨茎状突起に偽関節を残すものもあります。
手首骨折の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
手首骨折(橈骨遠位端骨折)による障害の原因となる部位は、以下の3つに大別されます。
- 橈骨遠位端
- 尺骨茎状突起
- TFCC
橈骨遠位端の障害
橈骨遠位端骨折で痛みが残るケースでは、関節のズレ(関節面不整)の有無の確認が重要です。
これを確認するには、CT検査(3方向:矢状断・前額断・冠状断)やレントゲン検査(両側2方向)が必要です。特に矢状断CTでは、関節のズレがはっきりと見えることが多いです。
CTやMRIが重要と思われがちですが、レントゲン検査の方が、骨折後の関節症を客観的に証明しやすいこともあります。そのため、全体を確認できるレントゲン検査を軽視してはいけません。
なお、橈骨遠位端骨折が原因となっている痛みを調べるケースでは、MRI検査はあまり有効ではありません。
<参考>
尺骨茎状突起の障害
尺骨茎状突起の骨折は、TFCC(手関節三角線維軟骨複合体)損傷を伴うことが多いため、一緒に考えます。基本的な検査はレントゲン検査です。
レントゲンで偽関節(骨が正しくくっついていない状態)が確認できれば、追加の検査は不要です。
ただし、レントゲンだけでは判断が難しい場合、CT検査で詳しく調べることがあります。
TFCCの障害
TFCC損傷を診断するには、MRI検査が必須です。特に、交通事故などで因果関係が問題になる場合、急性期(発症から間もない時期)に撮影することが望ましいです。
しかし、橈骨遠位端骨折の治療中にTFCCの精査を行うのは難しい場合があります。なぜなら、手術(掌側プレート固定)を行うと、MRIの撮影が困難になるためです。
そのため、ギプスなどの保存治療を受けた場合に、MRI検査が実施されるケースが多いです。TFCCは非常に小さな組織のため、3テスラの高解像度MRIが推奨されます。
手首骨折の後遺障害認定でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
<参考>
【12級13号】手首骨折の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:42歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
歩行中に自動車に衝突されて橈骨遠位端骨折を受傷しました。初回申請で非該当でしたが、手首の痛みが強く日常生活への影響が大きいため、弊社に相談がありました。
弊社の取り組み
手首の痛みを精査する目的で、3テスラのMRIを再施行しました。MRIでは、TFCC損傷の所見がありました。
手の外科専門医(整形外科専門医)による意見書を作成しました。自賠責保険は手関節のTFCC損傷の存在をみとめ、12級13号を認定しました。
手首骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、手首骨折が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
手首骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者家族の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
手首骨折の後遺障害認定で損害賠償金を請求できる
手首骨折(橈骨遠位端骨折)で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
手首骨折の後遺障害慰謝料とは
手首骨折(橈骨遠位端骨折)で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
手首骨折の後遺障害逸失利益とは
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
手首骨折の痛みでよくある質問
骨折してから痛みがなくなるまでどのくらいかかりますか?
手首の骨折後、痛みの程度や持続期間は、骨折の種類や治療法、個人の回復力によって異なります。
一般的に、ギプス固定や手術などの初期治療後、数週間から数ヶ月にわたり痛みが続くことがあります。
特に、ギプス固定中は関節の動きが制限されるため、筋力低下や関節の硬さが生じて、痛みを感じることがあります。
ギプス除去後は、リハビリテーションを行い、関節の柔軟性や筋力を回復させることで、痛みの軽減が期待できます。
ただし、高齢者や骨粗鬆症のある方は、回復に時間がかかる場合があります。
手首骨折は全治何ヶ月ですか?
手首の骨折の全治期間は、骨折の程度や治療法、患者の年齢や健康状態によって異なります。
一般的には、軽度の骨折であれば、ギプス固定を約4~6週間行い、その後リハビリテーションを経て、2~3ヶ月で日常生活に復帰できることが多いです。
一方、重度の骨折や手術が必要な場合は、ギプス固定や手術後の固定期間が長くなり、リハビリテーションも含めて、全治までに3~6ヶ月以上かかることがあります。
まとめ
手首の骨折は、転倒などで手をついた際に発生して、強い痛みや腫れを伴います。治療法にはギプス固定や手術があり、回復には2~3ヶ月かかることが一般的です。
骨折後の痛みは徐々に軽減しますが、リハビリ時に再び痛みを感じることもあります。痛みが長引く場合、骨折の種類や軟部組織の損傷が関係している可能性があります。
対処法としては、鎮痛剤の使用、サポーターの活用、正しい姿勢や動作の工夫が有効です。
手首骨折の後遺障害認定でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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