交通事故によるケガの治療を続けている最中に、突然、保険会社から「治療費の支払いを打ち切る」と告げられたら、大きな不安を感じるでしょう。
「なぜ打ち切られるのか?」「まだ痛みがあるのに治療を続けられないのか?」「健康保険に切り替えた方がいいのか?」など、さまざまな疑問が浮かぶはずです。
本記事では、治療費打ち切りを言い渡された場合の具体的な対処法を解説して、交渉のポイントや専門家への相談のタイミングについて詳しく説明しています。
また、健康保険への切り替えや、自賠責保険・人身傷害保険の活用方法についても触れて、適切な補償を受けるための知識を提供します。突然の打ち切りに冷静に対応し、適切な治療を継続できるようにしましょう。
最終更新日: 2025/2/2
Table of Contents
交通事故の治療費打ち切りを言われた時の対処法
治療費打ち切りの連絡を無視しない
保険会社からの治療費打ち切りの連絡を無視すると、治療費の支払いが停止され、その後の交渉が難航する可能性があります。
連絡を受けたら、まずは主治医と相談して、治療の継続が必要か確認しましょう。その上で、保険会社に対して治療の必要性を伝えることが重要です。
保険会社に治療費支払い延長を交渉する
主治医が治療の継続を推奨する場合は、その診断内容をもとに、保険会社に治療費支払いの延長を交渉しましょう。交渉の際は、冷静かつ丁寧な対応を心掛けることが大切です。
必要に応じて主治医に診断書を書いてもらう
治療継続の必要性を証明するため、主治医に診断書の作成を依頼するのも一法です。これらの書類は、保険会社との交渉や、後の損害賠償請求において重要な証拠となります。
主治医には、現在の症状や治療の必要性、予想される治療期間などを詳細に記載してもらうと効果的です。
弁護士に相談する
保険会社との交渉が難航する場合や、適切な補償を受けられるか不安な場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することを検討しましょう。
弁護士は専門的な知識と経験を活かして、適切なアドバイスや交渉を行い、被害者の権利を守るサポートをしてくれます。
多くの法律事務所では、初回相談を無料で提供しているため、気軽に相談してみると良いでしょう。
交通事故の治療費支払いを打ち切られたら?
治療費打ち切り後は健康保険に切り替える
保険会社が治療費の支払いを打ち切った場合でも、治療を継続することが重要です。その際、自己負担を軽減するために健康保険の利用を検討しましょう。
交通事故による治療でも健康保険は適用可能ですが、「第三者行為による傷病届」を加入している健康保険組合に提出する必要があります。
ただし、医療機関によっては健康保険の使用に制限がある場合もあるため、事前に確認することが大切です。
人身傷害保険を利用する
ご自身が加入している自動車保険に人身傷害保険が付帯されている場合、治療費の補償を受けられる可能性があります。
人身傷害保険を利用しても等級が下がらないため、翌年以降の保険料に影響を与えません。まずはご自身の保険契約内容を確認し、保険会社に相談してみましょう。
自賠責保険から医療機関へ直接治療費を支払ってもらう
自賠責保険は、交通事故の被害者救済を目的とした強制保険で、治療費や慰謝料などの補償を行います。
被害者は、加害者が加入している自賠責保険に対して、直接請求(被害者請求)を行うことができます。
この手続きを通じて、医療機関への治療費を自賠責保険から直接支払ってもらうことが可能です。
手続きには必要な書類があるため、事前に確認し、適切に準備することが重要です。
保険会社が交通事故の治療費支払いを打ち切りする理由
自賠責保険の支払い額(120万円)を超えそうだから
自賠責保険は、交通事故の被害者救済を目的とした強制保険で、傷害による損害に対して最大120万円まで補償します。
保険会社は、この限度額を超えると自己負担が増えるため、治療費が120万円に近づくと支払いを打ち切ろうとする傾向があります。
しかし、被害者が必要な治療を受ける権利は変わらないため、主治医と相談し、治療の継続を検討することが重要です。
治療費支払い打ち切りのタイミング
保険会社は、一般的な治療期間を基に支払い期間を設定しています。例えば、むちうちでは3ヶ月程度が目安とされ、それを超えると「症状固定」と判断して、治療費の支払いを打ち切る傾向があります。
しかし、症状や回復状況は個人差が大きいため、症状が残っている場合は、主治医の意見を基に治療の継続を検討して、必要に応じて保険会社と交渉することが大切です。
交通事故の治療費打ち切りを言われない対策
過度な通院を避ける
必要以上の頻繁な通院は、保険会社から過剰な治療と見なされ、治療費の打ち切りを招く可能性があります。医師の指示に従い、適切な通院頻度を守ることが重要です。
整骨院の通院を避ける
整骨院での治療は、医師の診断や指示がない場合、保険会社から正当な治療と認められないことがあります。まずは医療機関で診断を受けて、必要に応じて医師の指示のもとで整骨院を利用するようにしましょう。
自己判断で通院を止めない
症状が軽減したと感じても、自己判断で通院を中止することは避けてください。医師の判断なしに治療を中断すると、後遺症が残った場合に適切な補償を受けられない可能性があります。
頻回な転院を避ける
頻繁な転院は、保険会社から不信感を抱かれて、治療費打ち切りの要因となることがあります。やむを得ない理由がない限り、同じ医療機関で治療を継続することが望ましいです。
複数病院を同時受診しない
複数の医療機関を同時に受診すると、治療内容の重複や過剰診療と判断される恐れがあります。主治医を一人に定め、一貫した治療計画のもとで治療を進めることが重要です。
健康保険の使用を承諾する
交通事故の治療でも健康保険を使用することができます。健康保険を利用することで、治療費の自己負担が軽減され、保険会社とのトラブルを回避しやすくなります。
ただし、「第三者行為による傷病届」の提出が必要となるため、手続きを確認しましょう。
むちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫で考えられる後遺障害
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
局部とは、頚部や腰部を指します。神経症状とは、むちうちや腰椎捻挫に由来する症状を指します。頚部痛や腰痛にかぎらず、上肢や下肢のしびれや痛みなども含まれます。
14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」というフレーズです。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが必須条件になります。
異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。
神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRIを撮らないと評価ができないため、腰椎捻挫治療の過程で腰のレントゲンしか撮影されていない場合は、障害の存在を医学的に証明することが困難なケースが多いです。
そのため、症状が続いているのであれば、主治医と相談して、治療経過中に一度は腰椎MRI検査を検討することが推奨されます。
神経症状に関しても14級9号では、自覚症状(患者さんの訴え)としての痛みで良いのですが、12級13号では、より条件が厳しくなります。
自覚症状だけでは不十分で、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常などの客観的な症状が必要とされます。しびれ(知覚障害)の範囲も、損傷された神経の分布に一致している必要があります。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
局部とは、腰部を指します。神経症状とは、むちうちや腰椎捻挫に由来する症状を指します。頚部痛や腰痛に留まらず、お尻の痛み、上肢や下肢のしびれや痛みなども含まれます。
将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。後遺障害診断書には、症状の常時性が必要で、天気が悪いときに痛いなどの症状では認定されません。
また、交通事故と本人の感じる後遺症状に因果関係が認められることが条件となるため、車体の損傷が少ない交通事故は非該当とされることが多いです。
また、情報は公開されていないものの、毎月の通院頻度が少ない場合や症状固定までの通院期間が短い場合も非該当となります。詳細な基準が公表されていない背景には、不正受給を排除する目的があるとされています。
むちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫の後遺障害認定ポイント
むちうちや腰椎捻挫が後遺障害として認定されるには、さまざまな後遺障害認定基準をクリアする必要があります。
漫然と自賠責保険に後遺障害の審査を受けても、ほとんどのケースは非該当になります。
むちうちや腰椎捻挫が後遺障害に認定されるポイントを詳しく知りたい方は、むちうちと腰椎捻挫のコラム記事を参照いただければ幸いです。
<参考>
むちうちや腰椎捻挫の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、むちうちや腰椎捻挫の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
むちうちや腰椎捻挫の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
交通事故の治療費支払い打ち切りでよくある質問
交通事故で通院が終了する判断は?
通院の終了時期は、医師の診断に基づき決定されます。一般的に、症状が完治した場合や、治療を続けても症状の改善が見込めない「症状固定」と判断された場合に、通院を終了します。
自己判断や保険会社の指示で通院を止めるのではなく、必ず主治医と相談して決定することが重要です。
むち打ちで後遺症認定は打ち切りですか?
むち打ち症で後遺症が残る場合、適切な手続きを経て後遺障害等級の認定を受けることが可能です。
治療費の支払いが打ち切られたとしても、症状が固定し、後遺症が残っている場合は、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級認定の申請を行うことが重要です。
まとめ
交通事故で治療費の打ち切りを告げられた場合は、無視せず、主治医と相談し、治療の必要性を保険会社に伝えましょう。
主治医に診断書を作成してもらうと、交渉の助けになります。交渉が難航する場合は弁護士に相談するのも有効です。
治療費打ち切り後も健康保険を利用すれば自己負担を軽減できます。自賠責保険や人身傷害保険の活用も可能です。
むちうちや腰椎捻挫などの後遺症が残る場合は、後遺障害認定を申請して、適切な補償を受けることが重要です。
むちうちや腰椎捻挫の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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