骨折後に発生する拘縮は、多くの人々にとって大きな悩みとなります。骨折後に拘縮する原因やメカニズムを理解することは、リハビリテーションや治療で重要です。
本記事では、骨折後に拘縮が発生する原因やメカニズムについて詳しく解説して、リハビリテーションや治療法についての情報を提供しています。
また、骨折後の拘縮が治らなかった際に、後遺障害として認定される可能性についても触れています。
最終更新日: 2024/12/12
Table of Contents
骨折と拘縮の基礎知識
骨折後の拘縮とは何か
骨折後の拘縮は、関節を直接構成する組織以外の関節包、筋、皮膚などの軟部組織が萎縮や収縮し、関節面以外で癒着を起こすことで関節可動域が制限された状態を指します。
これにより、関節の動きが制限され、痛みを伴うことがあります。拘縮は単に関節が固まるだけでなく、筋力の低下や循環不良による浮腫なども引き起こす可能性があります。
骨折後に拘縮が発生する原因
骨折後に拘縮が発生する主な原因は、長期間の不動や固定による関節周囲の組織の硬化と短縮です。具体的には以下の要因が挙げられます。
- 筋肉や腱、靭帯の影響
- 皮膚などの関節周囲の軟部組織の癒着
- 軟骨や関節包など関節性の問題
- 長期間のギプス固定や安静による筋肉や関節周囲の軟部組織の硬化
- 骨折部位の変形や関節包の癒着
- 痛みに対する配慮不足から起こる筋スパズムや滑膜炎
また、年齢や性別も拘縮の発生に影響を与え、高齢者や男性は拘縮をきたしやすい傾向があります。
骨折部位別の拘縮リスク
肩の骨折
肩の骨折、特に上腕骨近位端骨折は、凍結肩(フローズンショルダー)や拘縮肩のリスクが高くなります。
骨折後、長期間肩を動かさないでいると、関節周囲の軟部組織が癒着し、滑走不全が起こる可能性があります。
また、筋腱や関節包の伸張性が低下することで、肩関節の可動域制限をきたす恐れがあります。
<参考>
上腕骨近位端骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
肘の骨折
肘の骨折後の拘縮は、特に小児の上腕骨顆上骨折で発生しやすいとされています。
長期間の固定や不適切な治療により、関節包の拘縮や周囲軟部組織の癒着が起こり、肘の屈曲・伸展に制限が生じる可能性があります。
<参考>
肘関節骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
手首の骨折
手首の骨折、特に橈骨遠位端骨折は、手関節や手指が拘縮するリスクがあります。
術後1週間までは手関節の腫脹による循環障害や神経の圧迫が影響し、1週間後以降は腫脹による線維化のため拘縮しやすいです。
<参考>
手首骨折(橈骨遠位端骨折)の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故
手指の骨折
手指の骨折後の拘縮は、長期間の固定や不適切な治療により発生するリスクがあります。特に、指の関節内骨折や複雑骨折では拘縮のリスクが高くなります。
早期からの適切な関節可動域訓練と、腫脹管理が重要です。また、隣接する指の拘縮予防にも注意が必要です。
<参考>
手や指の骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
骨折後の拘縮の予防法
骨折後の拘縮予防には、鎮痛剤処方、局所安静、クーリングなどで腫脹や浮腫の軽減を図りながら、早期から積極的な関節可動域練習を実施します。
骨折後の拘縮の治療法
骨折後の拘縮の治療には、物理療法や運動療法が中心となります。温熱療法や電気療法を用いて血流を促進し、疼痛を軽減します。
また、ストレッチや強化運動を行うことで、筋肉のバランスを保ちながら関節の可動域を広げます。早期のリハビリテーションが重要です。
骨折後の拘縮が治らない時の後遺障害等級
上肢の関節の機能障害
上肢の関節の機能障害(可動域制限)は、関節面の不整が原因となる事案が多いです。
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号:一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
肩関節・肘関節・手関節のうち1つについて、次のいずれかに該当するもの
- 関節が強直したもの。但し、肩関節にあっては、肩甲上腕関節が癒合し骨性強直していることがエックス線写真等により確認できるものを含む
- 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態(他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%以下になったもの)にあるもの
- 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の1/2以下に制限されているものをいいます。
12級6号:一上肢の三大関節の一関節の機能に障害を残すもの
手関節の可動域が、健側の可動域の3/4以下に制限されているものをいいます。
下肢の関節の機能障害
等級 | 認定基準 |
8級7号 | 下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級7号:下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
下記のいずれかの条件を満たすと、8級7号に該当することになります。
- 関節が強直したもの
- 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
- 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
下記のいずれかの条件を満たすと、10級11号に該当することになります。
- 関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているもの
- 人工関節・人工骨頭をそう入置換したもの
12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。
骨折後の拘縮が後遺障害に認定されるポイント
関節面の不整が重要
関節近傍の骨折後に可動域の制限や痛みが残る主な原因の1つは、関節面が不整であることです。
後遺障害として認定されるためには、関節面の不整を客観的に証明することが重要です。そのためには、CT検査とレントゲン検査が必要です。
CT検査では矢状断、前額断、冠状断の3方向での再構成像が用いられます。特に矢状断が重要で、関節面の不整を詳しく確認することができます。
レントゲン検査も欠かせません。一般的にはCTやMRI検査が重要だと考えられがちですが、実際にはレントゲン検査の方が外傷性関節症の証拠として有効なケースが多いです。
<参考>
関節裂隙が狭くなる所見も重要
関節面に不整が残っていると、症状固定時に外傷性変形性関節症の所見が現れることがあります。
具体的には、関節裂隙が狭くなる所見です。この所見は微細なので、整形外科専門医でなければ見逃してしまう可能性があります。
また、レントゲン検査を経時的に比較したり、健側と比較することも有効です。骨折の画像所見でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
骨折後の拘縮の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
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等級スクリーニング
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等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
骨折後の拘縮の後遺障害認定でお悩みの被害者家族の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
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もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
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弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
骨折後の拘縮が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
骨折後の拘縮が後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
骨折後の拘縮の後遺障害慰謝料とは
骨折で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
骨折後の拘縮の後遺障害逸失利益とは
骨折の後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。骨折の後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
骨折後の拘縮でよくある質問
拘縮は治るのか?
拘縮は治療可能ですが、治療の難易度は拘縮の種類や進行度によります。強直や慢性期の拘縮は治療が難しくなることがあります。早期のリハビリテーションが重要です。
拘縮はどれくらいで起きる?
拘縮は、長期間の不動や固定によって数週間から数ヶ月で発生するケースが多いです。特に寝たきりの状態やギプス固定が続くと、関節周囲の組織が硬化しやすくなります。
骨折固定時の筋の萎縮は回復しますか?
骨折固定時の筋の萎縮は、リハビリテーションによって回復が可能です。固定期間中でも、動かせる範囲での運動を行うことが重要です。
まとめ
骨折後の拘縮は、骨折に伴い関節周囲の筋肉や皮膚、関節包が硬くなり、関節の動きが制限される状態を指します。原因は長期固定や軟部組織の癒着、痛みによる筋肉の緊張などです。
肩、肘、手首、指の骨折では特にリスクが高く、早期のリハビリや腫れの管理が重要です。治療には運動療法や物理療法が有効です。
後遺障害として認定される場合には、関節面の不整や可動域の制限が確認されることが必要です。
交通事故で受傷した骨折の拘縮が治らないと、後遺障害に認定される可能性があります。拘縮の後遺障害認定でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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