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【医師が解説】腰椎捻挫はどんな痛み?ぎっくり腰との違い|交通事故

腰痛は、有病率が高いことで有名です。厚生省国民生活基礎調査によると、日本の腰痛患者数は約1,000 万人で、国民の愁訴の中で第1位です。

 

急激に発症した腰痛は、腰椎捻挫やぎっくり腰と呼ばれています。本記事は、腰椎捻挫やぎっくり腰のポイントを、分かりやすく解説しています。

 

 

最終更新日:2024/4/20

 

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Table of Contents

腰椎捻挫とは

 

交通事故などでの腰に大きな外力が加わると、腰の骨の周囲に炎症をおこして、腰痛を発症します。このように大きな外力が加わって急激に発症した腰痛を腰椎捻挫と言います。

 

 

腰椎捻挫はどんな痛み?

腰痛

交通事故で発症した腰椎捻挫では、腰全体の重い痛みを感じるケースが多いです。痛みの原因は、椎間板・椎間関節・筋膜などの炎症だと言われています。

 

 

下肢の痛みやしびれ(坐骨神経痛)

腰椎捻挫では、腰痛に加えて下肢(足)の痛みやしびれを引き起こす場合があります。これらの症状を、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)と呼びます。

 

坐骨神経は、幾つもの神経が集まった束のようなものです。腰の骨から出て、足の先まで電線のように下肢の内部を走行しています。

 

そのため、腰やおしりから太ももの後ろ側、ふくらはぎにかけて広範囲にしびれや痛みを生じます。

 

 

<参考>
【整形外科医師が解説】坐骨神経痛でやってはいけないこと|交通事故
【医師が解説】坐骨神経痛を早く治す方法|交通事故

 

 

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ぎっくり腰とは

 

ぎっくり腰とは、急激に起こった強い腰の痛みを指す俗称であり、傷病名ではありません。交通事故で受傷した腰椎捻挫とは異なり、中腰で物を持ち上げようとした時や、腰を捻じる動作をした時に発症することが多いです。

 

一方、朝起きて洗面しているときに発症したり、何もしていないのに腰痛を発症することも少なくありません。

 

 

ぎっくり腰はどんな痛み?

ぎっくり腰の腰痛

安静時にはあまり痛みませんが、少しでも身体を動かすと腰に激痛が走ります。咳やくしゃみをするだけで、腰に痛みが来ます。

 

 

ぎっくり腰では坐骨神経痛は無い

交通事故の腰椎捻挫と異なり、ぎっくり腰では下肢(足)の痛みやしびれなどの坐骨神経痛はみられないケースが多いです。

 

 

腰椎捻挫とぎっくり腰の違い

 

腰椎捻挫とぎっくり腰は似たような病態ではあるものの、以下のように微妙な違いがあります。

 

  • 腰椎捻挫は大きな力が加わって発症するケースが多いが、ぎっくり腰は原因が無くても発症する
  • 腰椎捻挫は腰痛だけでなく坐骨神経痛も合併しやすいが、ぎっくり腰は腰痛のみが多い
  • ぎっくり腰は1~2週間程度で治るが、腰椎捻挫は1~3ヵ月かかるケースが多い

 

 

腰椎捻挫やぎっくり腰の画像診断

レントゲン検査

腰椎捻挫やぎっくり腰で、腰の痛みが続いている場合、医師はまずレントゲン検査を行います。

 

一般的には、腰椎捻挫では外傷性所見に乏しく、加齢による骨棘形成や椎間板腔の狭小化などを認めるに留まります。若年者では、まったく異常所見を認めないケースも少なくありません。

 

一方、高齢者のぎっくり腰では、胸椎や腰椎の圧迫骨折が原因であるケース(いわゆる、いつの間にか骨折)も散見されるので注意が必要です。

 

 

<参考>
【日経メディカル】「いつの間にか骨折」悪化と判断され慰謝料が減額?!

 

 

 

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MRI検査

MRI検査では、レントゲン検査の異常部位以外にも、椎間板変性やヘルニアを認めるケースが多いです。また、高齢者のぎっくり腰では、胸椎や腰椎の圧迫骨折を認めることも珍しくありません。

 

一方、若年者では、レントゲン検査と同様に、まったく異常所見を認めないケースも少なくありません。

 

 

画像検査で異常所見の無い事案も珍しくない

交通事故の腰椎捻挫の診断に、レントゲン検査やMRI検査の異常所見は必須ではありません。腰椎の画像検査で異常所見が無くても、交通事故の直後から腰痛が持続しているのであれば、腰椎捻挫と診断されます。

 

 

腰部脊柱管狭窄症や腰椎分離すべり症が見つかることもある

腰椎捻挫やぎっくり腰で検査すると、腰部脊柱管狭窄症や腰椎分離すべり症が見つかることもあります。もちろん、交通事故などによって、腰部脊柱管狭窄症や腰椎分離症やすべり症を生じたわけではありません。

 

腰椎捻挫では、交通事故前は無症状だった傷病が、事故をきっかけにして症状が出現したと考えるのが妥当でしょう。

 

 

腰椎捻挫とぎっくり腰の治療期間

腰椎捻挫の治療期間は1~3ヵ月が多い

症例によって異なりますが、腰椎捻挫は1~3ヵ月かかるケースが多いです。なかなか治らない場合には4~6ヶ月にも及ぶこともあります。

 

 

ぎっくり腰の治療期間は1~2週間が多い

腰椎捻挫と比較して、ぎっくり腰は1~2週間程度と比較的短期間で治るケースが多いです。一方、ぎっくり腰の原因が胸椎や腰椎の圧迫骨折である場合には、3ヵ月程度かかります。

 

 

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腰椎捻挫の症状がなかなか治らない理由

 

通常、ぎっくり腰は1~2週間程度で治りますが、腰椎捻挫は1~3ヵ月かかるケースが多いです。腰椎捻挫の症状がなかなか治らない理由として、以下が考えられます。

 

  • 既往症として変形性腰椎症や椎間板ヘルニアがある
  • もともと腰は負担がかかる部位

 

 

既往症として変形性腰椎症や椎間板ヘルニアがある

交通事故前から無症状の変形性腰椎症や椎間板ヘルニアがあると、事故をきっかけにして痛みなどの症状が顕在化しやすいです。

 

もともと腰痛などの素因を抱えていたわけですから、一度発症した症状はなかなか治らなくなります。

 

 

もともと腰は負担がかかる部位

人間は2本足で歩きます。全体重が腰にかかるため、4本足の動物と比べて腰への負担が大きいです。

 

腰は常に負荷がかかる部位なので、一度発症した症状はなかなか治らなくなります。

 

 

腰椎捻挫やぎっくり腰に対する治療

通常の治療は保存療法が基本

腰椎捻挫やぎっくり腰に対して手術が行われることはありません。発症直後は安静にすることが治療の基本になります。

 

コルセットが処方される場合や、痛みを和らげるために消炎鎮痛剤の湿布や塗り薬、内服薬が処方されることも多いです。痛みが収まってきたら徐々に活動性を高めていきます。

 

 

なかなか治らない腰椎捻挫の治療

ロキソニンなどの消炎鎮痛剤だけでは治療効果が無い場合、プレガバリンやミロガバリンという神経に直接作用する薬を処方するケースもあります。

 

 

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腰椎捻挫で考えられる後遺症

14級9号:局部に神経症状を残すもの

局部とは、腰部を指します。神経症状とは、腰椎捻挫に由来する症状を指します。腰痛に留まらず、お尻の痛み、下肢のしびれや痛みなども含まれます。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。後遺障害診断書には、症状の常時性が必要で、天気が悪いときに痛いなどの症状では認定されません。

 

また、交通事故と本人の感じる後遺症状に因果関係が認められることが条件となるため、車体の損傷が少ない交通事故は非該当とされることが多いです。

 

また、情報は公開されていないものの、毎月の通院頻度が少ない場合や症状固定までの通院期間が短い場合も非該当となります。詳細な基準が公表されていない背景には、不正受給を排除する目的があるとされています。

 

 

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

局部とは、腰部を指します。神経症状とは、腰椎捻挫に由来する症状を指します。腰痛にかぎらず、お尻の痛み、下肢のしびれや痛みなども含まれます。

 

14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」というフレーズです。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが必須条件になります。

 

異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。

 

神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRIを撮らないと評価ができないため、腰椎捻挫治療の過程で腰のレントゲンしか撮影されていない場合は、障害の存在を医学的に証明することが困難なケースが多いです。

 

そのため、症状が続いているのであれば、主治医と相談して、治療経過中に一度は腰椎MRI検査を検討することが推奨されます。

 

神経症状に関しても14級9号では、自覚症状(患者さんの訴え)としての痛みで良いのですが、12級13号では、より条件が厳しくなります。

 

自覚症状だけでは不十分で、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常などの客観的な症状が必要とされます。しびれ(知覚障害)の範囲も、損傷された神経の分布に一致している必要があります。

 

腰椎捻挫で行われる頻度は非常に低いですが、筋電図や神経伝導検査といった特殊な検査の異常値も客観的な所見に含まれます。

 

 

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【12級13号】腰椎捻挫の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:46歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

 

交通事故後に腰痛と右下肢に放散する痛みが持続していました。痛みのため、半年以上通院を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。

 

 

弊社の取り組み

弊社に相談があり、診療録を詳細に確認すると、受傷直後から腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な「ラセーグ徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。

 

MRIで、L4/5レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの右下肢痛は椎間板ヘルニアが圧迫しているL5神経根の知覚領域と一致していました。

 

脊椎外科専門医が診療録を確認したところ、初回申請時に見落とされていたため、これらの所見を丁寧に医師意見書に記載しました。

 

初回申請時には、腰椎MRI画像で確認できる椎間板ヘルニアの所見が軽視されていたため、読影所見の補足も行いました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。

 

 

 

 

【14級9号】腰椎捻挫の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:39歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)

 

交通事故後に腰痛を自覚されていました。受傷から8ヵ月通院されましたが、頑固な腰痛は改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。

 

 

弊社の取り組み

画像を脊椎外科専門医が詳細に読影したところ、事故の後から、L4/5椎間板高の減少(椎間板がすり減って、高さが低くなる現象)が進行していることが明らかになりました。

 

これらの所見について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。

 

 

 

 

【弁護士必見】腰椎捻挫の後遺障害認定ポイント

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号と比較すると、はるかに認定基準は厳しくなります。痛みが持続しているだけでは不十分で、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という条件が必要になります。

 

具体的には腰のMRIで神経の圧迫があること。さらにその圧迫されている神経と実際の症状(知覚障害の範囲、深部腱反射の異常、ラセーグ徴候などの誘発テストが陽性であることなど)が一致していることが必須条件になります。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

14級9号は、救済等級としての位置づけでもあり、比較的広い範囲の患者さんが認定される可能性があります。

 

受傷から一定の期間(約半年が目安になります)通院されていて、その間の通院回数が一定の基準を超えていれば認定の可能性が高まります。

 

それ以外にも交通事故の規模や画像所見(腰椎のレントゲンやMRI)も参考にします。一番重要なことは、受傷直後から後遺障害診断書作成にいたるまで、症状に一貫性があることと、持続性があることです。

 

整骨院に通院しているだけでは不十分で、交通事故の直後から、後遺障害診断書作成に至るまで、定期的に病院やクリニックに通院していることが必須条件となります。

 

 

<参考>
【医師が解説】腰椎捻挫の後遺症が非該当になったらHIZの有無を確認

 

 

弁護士だけでは専門的な判断を行うことは難しいため、整形外科専門医との綿密な協議が必要になります。腰椎捻挫でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

<参考>
日経メディカル|意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?

 

 

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まとめ

 

腰椎捻挫とぎっくり腰は似たような病態ですが、以下のように微妙な違いがあります。

 

  • 腰椎捻挫は大きな力が加わって発症するケースが多いが、ぎっくり腰は原因が無くても発症する
  • 腰椎捻挫は腰痛だけでなく坐骨神経痛も合併しやすいが、ぎっくり腰は腰痛のみが多い
  • ぎっくり腰は1~2週間程度で治るが、腰椎捻挫は1~3ヵ月かかるケースが多い

 

 

腰椎捻挫の症状がなかなか治らないケースでは、後遺障害の12級13号もしくは14級9号に認定される可能性があります。

 

 

 

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