圧迫骨折は高齢者だけではなく、若年の交通事故外傷でも非常に多い外傷です。圧迫骨折では腰痛以外にもさまざまな症状があります。
本記事は、圧迫骨折の症状と、入院しなくてもいい基準を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/11/10
Table of Contents
圧迫骨折とは
圧迫骨折とは、背骨が潰れる骨折です。上の画像のように背骨が台形に潰れるケースが多いです。
骨粗鬆症のために骨がもろくなった高齢者に多いですが、若年者でも交通事故や高所からの転落で受傷する可能性があります。
<参考>
【医師が解説】胸腰椎圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故
圧迫骨折の症状
圧迫骨折は背骨の骨折です。骨折なので当然痛みが出ますが、それ以外にも以下のようなさまざまな症状が出る可能性があります。
- 腰痛や背部痛
- 背中が丸くなる
- 転倒しやすくなる
- 身体が固くなる
- 胸やけなどの消化器症状
腰痛や背部痛
圧迫骨折の症状のうち、最も多いのは腰痛や背部痛です。人間は二本足歩行の生き物なので、もともと腰にかかる負担が大きいです。
このため、腰痛は国民病と言われるほど頻度が高いですが、胸腰椎圧迫骨折を受傷すると腰痛や背部痛の発症率がさらに増加します。
圧迫骨折の痛みが取れない原因として、以下の3つが考えられます。
- 圧迫骨折後の癒合不全
- 廃用性の筋力低下
- 背中が丸くなった(後弯増強)
圧迫骨折後の癒合不全
骨粗鬆症がベースにある人が圧迫骨折を受傷すると、折れた部分がうまく骨癒合しないことがあります。この状態を癒合不全と言います。
背骨が骨癒合しないと、姿勢を変える度に骨折部で骨が動いて痛みの原因となります。
廃用性の筋力低下
治療のため、もしくは痛みを予防するために、コルセットを長く着けていると腰の筋力が低下します。
腰の筋力が低下すると腰痛の原因となります。治療が終了したにもかかわらず、予防的にコルセットを装着していると、逆に腰痛の原因となるので注意しましょう。
背中が丸くなった(後弯増強)
圧迫骨折を受傷すると背中の曲がりが強くなります。背中が丸くなると、それだけ腰骨の他の部分や腰まわりの筋肉に負担がかかります。
このため、圧迫骨折で背中の曲がりが強くなるほど、腰痛が悪化する原因となります。
背中が丸くなる
胸腰椎圧迫骨折で特徴的な後遺症は「背中が丸くなること」です。高齢者は腰の曲がっている人が多いですが、その原因は胸腰椎圧迫骨折です。
転倒しやすくなる
背中が曲がると前かがみになるため、歩き方が悪くなって転倒しやすくなります。
身体が固くなる
圧迫骨折の治療には保存治療と手術治療があります。どちらの治療法を選択しても、身体が固くなりがちです。
保存治療では、脇の下から骨盤までを覆う大きなコルセットを3ヵ月間装着します。3ヵ月もの期間に渡ってコルセットを装着すると、背骨の動きが悪くなって身体が固くなります。
手術治療では、インストゥルメンテーションという金属で、背骨を直接固定するケースが多いです。インストゥルメンテーション手術では、最低でも3椎体ほど固定するので、それだけ背骨の動きが悪くなります。
胸やけなどの消化器症状
圧迫骨折で背中が曲がると、お腹の中(腹腔内)の容積が小さくなります。その結果、胃が圧迫されて、胸やけの原因となる逆流性食道炎を併発しやすくなります。
圧迫骨折は入院しなくていいの?
圧迫骨折は入院しなくていいケースが多い
圧迫骨折は必ずしも入院する必要はありません。痛みを我慢できるのであれば、外来診療で対応することも可能です。
圧迫骨折で入院した方がいい3つのパターン
圧迫骨折で入院した方がいいのは、以下の3つのパターンでしょう。
- 痛みが強くて動けない
- 独り暮らし
- 手術を行う
痛みが強くて動けない
痛みが強くて動けないと、肺炎を併発したち床ずれ(褥瘡)の原因となります。このため、痛みが強くて動けない場合には入院した方がいいと言えます。
独り暮らし
独り暮らしの場合にも入院した方がいいでしょう。圧迫骨折を受傷すると、かなりの痛みが続きます。独り暮らしでは、痛みのために身の回りのことを行うのが難しくなります。
手術を行う
経皮的椎体形成術(Balloon Kypoplasty:BKP)では7~10日間、脊椎固定術では1~3ヵ月の入院が必要です。
圧迫骨折の症状が残ったときの後遺障害
脊柱の変形障害
脊柱の変形障害には、変形程度に応じて以下の3つがあります。
6級5号:脊柱に著しい変形を残すもの
2個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体1個以上の椎体前方高の減少したものです。
この場合の1個の椎体分とは、骨折した椎体の後方椎体高の平均値です。
<参考>
【医師が解説】脊柱の変形障害、運動障害が認定されるコツ|交通事故
8級2号:脊柱に中程度の変形を残すもの
1個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1/2個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体の1/2以上の椎体前方高の減少したものです。
11級7号:脊柱に変形を残すもの
以下の2つのいずれかに該当すれば認定されます。
- 脊椎固定術が行われたもの
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの
脊柱の運動障害
6級5号:脊柱に著しい運動障害を残すもの
脊柱に著しい運動障害を残すものとは、次のいずれかの原因で頚部および胸腰部が強直したものです。
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、それがレントゲン等によって確認できるもの
- 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
<参考>
【医師が解説】胸腰椎圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故
8級2号:脊柱に運動障害を残すもの
脊柱に運動障害を残すものとは、次のいずれかに該当する場合です。
- 頚椎、腰椎それぞれに圧迫骨折等があることが画像上確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
- 頭蓋や上位頚椎間に著しい異常可動性が発生したもの
脊柱の荷重機能障害
6級5号:脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの
頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
8級2号:脊柱に荷重機能障害を残すもの
頚部または腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
- 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
脊髄損傷の後遺障害
脊椎圧迫骨折では、脊髄損傷を合併するケースがあります。脊髄損傷の後遺障害に関しては、下記を参照してください。
<参考>
【医師が解説】脊髄損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故
【8級2号】圧迫骨折の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:35歳
- 初回申請:11級7号
- 異議申立て:8級2号(脊柱に中程度の変形を残すもの)
自動車乗車中にトラックと正面衝突して受傷しました。初回申請では第12胸椎圧迫骨折(青矢印)に対して11級7号が認定されました。
弊社の取り組み
弊社にて画像所見を精査すると、受傷時のMRI検査で第3.4.5胸椎圧迫骨折(赤矢印)も併発していました。CT検査を追加実施して、圧迫骨折を受傷した全ての椎体高を計測しました。異議申し立てしたところ8級2号が認定されました。
【11級7号】圧迫骨折の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:60歳
- 被害者申請:14級9号
- 異議申立て:11級7号(脊柱に変形を残すもの)
バイク乗車中に自動車と衝突して受傷しました。第1腰椎脱臼骨折に対して、脊椎固定術(第12胸椎~第2腰椎)が施行されました。術後1年で脊椎インストゥルメンテーションの抜釘(異物除去術)を施行されました。
被害者請求では、椎体の明らかな変形を認められないことから脊柱の変形障害として評価を行うことは困難という理由で14級9号が認定されました。
弊社の取り組み
弊社にて画像所見を精査すると、CT検査ではL1椎体前方に椎体皮質の不整像が残っており、T12/L1椎間板は外傷により変性して、椎間板高が減少しており局所後弯が残存していました。
医師意見書を添付して異議申し立てしたところ、脊柱に変形を残すものとして11級7号が認定されました。
圧迫骨折の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で受傷した圧迫骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
圧迫骨折の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
圧迫骨折が後遺障害認定されると損害賠償金を請求できる
圧迫骨折が後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料は、後遺症が残った場合に支払われる賠償金です。下の表のように後遺障害等級によって異なります。適正な相場金額での慰謝料を受け取るためには、相手側の保険会社との示談交渉が必要です。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
圧迫骨折の後遺障害慰謝料の相場は?
圧迫骨折の後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級によって異なります。
例えば、変形障害の場合、後遺障害6級5号に認定されると約1,180万円、8級相当で約830万円、11級7号で約420万円の慰謝料が請求できます。
運動障害の場合も同様に、後遺障害6級5号で約1,180万円、8級2号で約830万円の慰謝料が請求可能です。
後遺障害逸失利益とは
後遺障害逸失利益とは、後遺症が原因で労働能力が低下し、将来的に得られるはずだった収入が減少することに対する賠償金です。
例えば、労働能力喪失率が30%と認定され、67歳までの逸失利益が認められるケースがあります。
圧迫骨折の後遺障害逸失利益の相場は?
圧迫骨折の後遺障害逸失利益の相場は、後遺障害等級や労働能力喪失率によって異なります。
例えば、後遺障害6級5号に認定されると、労働能力喪失率が67%とされ、逸失利益が高額になることがあります。
具体的な金額は、個々のケースによって異なるため、弁護士の意見を参考にすることが重要です。
まとめ
圧迫骨折では、以下のようなさまざまな症状が出る可能性があります。
- 腰痛や背部痛
- 背中が丸くなる
- 転倒しやすくなる
- 身体が固くなる
- 胸やけなどの消化器症状
一方、圧迫骨折では入院しなくていいケースが多いです。圧迫骨折で入院した方がいいのは、以下の3つのパターンです。
- 痛みが強くて動けない
- 独り暮らし
- 手術を行う
交通事故で受傷した圧迫骨折の症状でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
尚、患者さんからの医療に関するお問い合わせは固くお断りしています。医療に関しては主治医に、交通事故の後遺障害に関しては弁護士に相談してください。
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