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【医師が解説】むちうちは診断書で後遺障害が決まる?!|交通事故

交通事故で残ったむちうちの症状が後遺障害に認定されるためには、後遺障害診断書の内容が極めて大きな影響力を持ちます。

 

医師が作成する後遺障害診断書によって、後遺障害に認定されるかが決まると言っても過言ではありません。

 

本記事は、むちうちの診断書で後遺障害が決まる理由と記載内容のポイントが理解できるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/2/13

 

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むちうちで後遺障害診断書が重要な理由

むちうちの後遺障害は書類審査で決まる

自賠責保険では、むちうちの後遺障害は書類審査のみで決まります。そして診断書は、後遺障害等級決定の判断材料です。

 

 

むちうちの後遺障害審査で使用される資料

むちうちの後遺障害審査で使用される資料は以下の通りです。これらの資料の内容のみで後遺障害の等級が決定されます。

 

  • 事故発生状況報告書
  • 後遺障害診断書
  • 診断書(毎月提出するもの)
  • 診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書
  • 画像資料

 

 

むちうちの後遺障害は後遺障害診断書で判断される

前述の資料の中でも特に重要視されているのは、後遺障害診断書と画像資料です。そして、後遺障害診断書は、記載内容によって、後遺障害の等級の振れ幅が非常に大きいのが特徴です。

 

 

Certificate of residual disability

 

 

むちうちの後遺障害診断書のチェックポイント

 

後遺障害診断書には、たくさんのチェックポイントがあります。私はこれまで数千例におよぶ後遺障害診断書を見てきましたが、完璧な内容の後遺障害診断書は数えるほとしかありませんでした。

 

主に以下の記載漏れが無いかは、後遺障害診断書で最低限注意するべきポイントでしょう。ただし、あくまでも最低限の基準なので、実務では更に細かい点までチェックすることになります。

 

 

後遺障害診断書に傷病名が記載されているか

意外にも傷病名が抜けている事案は少なくありません。首と腰を痛めている場合などでは、どちらかの傷病名が抜けているケースが多いので注意が必要です。

 

 

後遺障害診断書に症状が記載されているか

症状が記載されていない事案も散見されます。記載されている場合であっても、「こり」「張り」などは後遺障害に認定される症状ではありません。むちうちで後遺障害に認定される症状は、痛みやしびれです。

 

 

後遺障害診断書に所見が記載されているか

身体所見や画像所見が記載されていない事案は非常に多いです。スパークリングテスト、ジャクソンテスト、レントゲン検査、MRI検査などの有意所見は、記載されている方が望ましいです。

 

 

後遺障害診断書に障害内容の見通しが記載されているか

ありがちなのは、後遺障害診断書の右下にある障害内容の見通し欄です。ここで、症状が軽快する見込みがあるなどの記載があると、後遺障害に認定される可能性はありません。

 

そもそも、症状固定するべき時期は、症状が増悪も緩解もしなくなった時点です。後遺障害診断書の趣旨から考えて不要な欄にも思えますが、現実はこの欄に記載される内容もチェックされていることに注意が必要でしょう。

 

 

むちうちの後遺障害診断書に記載される検査

スパーリングテスト

スパーリングテストとは

 

スパーリングテスト(Spurling test)とは、頚椎から手に向かって走行している神経の障害を調べる神経学的テストです。

 

頚椎の出口である神経孔が椎間板ヘルニアや骨棘によって狭くなると、神経孔を通る神経が圧迫されて頚部から上肢にかけて放散痛が発生します。

 

 

スパーリングテストのやり方

 

患者さんの頭部を痛みやしびれのある側に傾けて、そのまま後ろに反らせます。この状態で頚部から上肢にかけて放散痛が発生すると陽性です。

 

 

Spurling test

 

図解 四肢と脊椎の診かた から転載

 

 

ジャクソンテスト

ジャクソンテストとは

 

ジャクソンテスト(Jackson test)もスパーリングテストと同様に、頚椎から手に向かって走行している神経の障害を調べる神経学的検査です。

 

頚椎の出口である神経孔が椎間板ヘルニアや骨棘によって狭くなると、神経孔を通る神経が圧迫されて頚部から上肢にかけて放散痛が発生します。

 

 

ジャクソンテストのやり方

 

患者さんの頭部をそのまま後ろに反らせます。この状態で頚部から上肢にかけて放散痛が発生すると陽性です。スパーリングテストとの異なる点は、患側に頭部を傾けない点です。

 

天井を向くだけで頚部から上肢にかけての痛みやしびれが出現するため、スパーリングテストよりもジャクソンテスト陽性の方が重症度が高いと言えます。

 

 

neck pain

 

 

徒手筋力検査

徒手筋力検査は筋力の評価方法で、それぞれの筋肉がどの程度筋力が低下しているかを数字で表します。

 

徒手筋力検査の検査結果は、6段階で表します。正常が5で、筋肉の収縮が全く認められない状態が0です。

 

 

<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント|交通事故

 

 

深部腱反射

深部腱反射とは、ゴムハンマー等で腱を叩いた刺激に反応して起こる不随意かつ瞬間的な筋肉の収縮です。深部腱反射は刺激に対して反射弓を通じて起こる自動的な筋収縮なので、筋肉を動かそうとする自発的な意志は不要です。

 

 

<参考>
【医師が解説】深部腱反射は12級の後遺症認定のポイント|交通事故

 

 

むちうちで後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる

 

むちうちで後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。

 

 

後遺障害慰謝料とは

交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。

 

 

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。

 

後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。

 

 

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。

 

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

むちうちで想定される後遺障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

局部とは、頚椎捻挫においては頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、肩こり、上肢のしびれや痛み、めまいや頭痛、嘔気なども含まれます。

 

14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という箇所です。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが前提になります。

 

異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。

 

神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRIを撮らないと評価ができないため、頚椎捻挫治療の過程で頚椎のレントゲンしか撮影されていない場合は、障害の存在を医学的に証明することが困難なケースが多いです。

 

また若い患者さんでは、加齢の変化が少ないため、MRIの異常所見が存在しないことも多く、その場合も、12級13号は非該当となります。

 

神経症状に関しても14級9号では、自覚症状(患者さんの訴え)としての痛みで良いのですが、12級13号では、より条件が厳しくなります。

 

自覚症状だけでは不十分で、客観的な症状が必要とされます。客観的な症状には、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常(医師が打腱器を使って行う検査)をさします。

 

しびれ(知覚障害)の範囲も、損傷された神経の分布に一致している必要があります。頚椎捻挫で行われる頻度は非常に低いですが、筋電図や神経伝導検査といった特殊な検査の異常値も客観的な所見に含まれます。

 

筋力低下は、医学的には徒手筋力テスト(MMT)で評価され、筋力が正常な5から完全運動麻痺の0までの6段階で記載されます。

 

 

<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント|交通事故

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

局部とは、頚椎捻挫では頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、上肢のしびれや痛み、めまい、頭痛、嘔気なども含まれます。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。

 

症状の常時性(時々痛みがあるのではなく、常に痛みがある)が認定要件です。「天気が悪いときに痛い」といったように症状の消失する時間があると認定されません。

 

また、交通事故と本人の感じる後遺症に因果関係が認められることが条件となるため、あまりに車体の損傷が小さい軽微な交通事故は非該当とされることが多いです。

 

 

neck pain

 

 

【弁護士必見】医師が診断書を書いてくれない場合の対処法

転ばぬ先の杖: おすすめの主治医

ここまで見てきたように、主治医の選び方は後遺障害等級が認定される確率を大きく左右します。

 

あくまでも私個人の見解ですが、下記に該当する医師であれば、交通事故被害者に寄り添った治療をしてくれる可能性が高いと考えます。

 

 

<参考>
【医師が解説】交通事故の後遺症|適正な等級認定を受けるコツ

 

 

医師が後遺障害診断書を書いてくれない場合の対処法

医師法の規定はあるものの、実際問題として医師に後遺障害診断書の記載を断られてしまうと対応が難しいです。

 

次善の策となりますが、手術を受けた医療機関、近隣の他の医療機関、交通事故の受傷時に搬送された医療機関などに打診してみましょう。

 

 

医師に後遺障害診断書の修正や追記を断られた場合の対処法

こちらもありがちなパターンです。後遺障害診断書の修正や追記が、後遺障害等級の審査に及ぼす影響の大きさで対応が変わります。

 

致命的な記載内容でなければ、修正や追記を断られた場合にはそのまま提出せざるを得ません。

 

一方、その記載があるためほぼ確実に非該当になるようであれば、手術を受けた医療機関、近隣の他の医療機関、交通事故の受傷時に搬送された医療機関などに、新たな診断書作成を依頼せざるを得ないでしょう。

 

 

 

nikkei medical

 

 

まとめ

 

むちうちの後遺障害は、書類審査のみで決まります。そして後遺障害診断書は、画像資料と並んで最も重要な等級決定の判断材料です。

 

後遺障害診断書には、たくさんのチェックポイントがあります。これらのチェックポインでひとつでも不備があれば、後遺障害に認定される可能性が大幅に低下します。

 

交通事故の後遺障害でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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