交通事故で多く発生する下肢の骨折として、足首骨折(足関節脱臼骨折)があります。足首骨折は、痛みや関節可動域制限など、さまざまな後遺症を残しやすい外傷です。
本記事は、足首骨折(足関節脱臼骨折)による後遺症が、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/8
Table of Contents
- 1 足首骨折(足関節脱臼骨折)とは
- 2 足首骨折(足関節脱臼骨折)の症状
- 3 足首骨折(足関節脱臼骨折)の治療
- 4 足首骨折(足関節脱臼骨折)は全治何ヶ月?
- 5 足首骨折(足関節脱臼骨折)の腫れはいつまで続く?
- 6 足首骨折が「ずれてくっつく」とどうなる?
- 7 足首骨折(足関節脱臼骨折)の運転はいつから?
- 8 足首骨折(足関節脱臼骨折)の運動はいつから?
- 9 足首骨折(足関節脱臼骨折)の診断
- 10 足首骨折で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
- 11 足首骨折(足関節脱臼骨折)の後遺障害
- 12 【弁護士必見】足首骨折の後遺障害認定ポイント
- 13 【12級7号】足首骨折の後遺障害認定事例
- 14 足首骨折の後遺障害認定で弊社ができること
- 15 足首骨折後遺症のまとめ
- 16 関連ページ
- 17 資料・サンプルを無料ダウンロード
足首骨折(足関節脱臼骨折)とは
足関節とは
足関節とは、一般的に「くるぶし」や「足首」と呼ばれる部分の関節です。下肢の中では股関節、膝関節とならぶ3大関節です。
起立・歩行動作だけではなく、しゃがみ込み動作や正座など、日常のさまざまな動作で重要な役割を果たす関節です。
足関節は、腓骨(外果)と脛骨(内果と天蓋)から構成されます。足関節脱臼骨折では、この構造が破綻して可動域制限や痛みの原因となります。
また、足関節脱臼骨折では、骨折と同時に靭帯損傷を受傷するケースが多いことも特徴の一つです。
交通事故での足首骨折(足関節脱臼骨折)の受傷機序
自賠責保険では、足首骨折の受傷機序が、後遺障害に認定されるか否かのポイントになるケースがあります。
交通事故では、バイクや自転車乗車中の事故が多いです。歩行中の事故では「足を強くひねる」ことによって受傷するケースが多いです。
また、自動車運転中の衝突によって、ペダルや床からの強い衝撃を受けて受傷するケースも散見されます。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の症状
受傷直後の代表的な症状としては、痛み、腫脹、皮下出血、骨折部の変形などが挙げられます。
「痛みで足首を動かしにくい」「痛くて足をつけない」などの訴えで来院される方がほとんどです。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の治療
足首骨折(足関節脱臼骨折)の保存療法
骨折部の転位(ズレ)がほとんど無い場合には、ギプスや装具などの外固定を用いて、保存療法が行われます。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の手術療法
転位を伴う骨折や、早期復帰を目指す場合には、チタン製のプレートやスクリューを用いて骨折部を強固に固定する手術が行われます。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の手術費用
健康保険が3割負担のケースでは、入院にかかる期間と費用の概算は以下のようになります。
期間:4~30日
費用:16~50万円
上記の期間や金額はあくまでも目安です。個々の症例によって期間や金額が変わるのでご了承ください。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の入院期間
医療機関によって入院期間は4~30日程度と千差万別です。入院期間を左右するのは、術後の免荷期間をどこで過ごすのかによります。
術後のリハビリテーションでは、3週間ほど免荷した後に1/3部分荷重、1/2部分荷重、2/3部分荷重、全荷重と段階的に体重をかける量を増やしていきます。
例えば4日間の入院では、自宅で免荷を継続する必要があります。一方、1ヶ月程度入院する場合には、ある程度体重をかけてもよい状態で退院します。
尚、入院期間はあくまでも目安です。個々の症例によって期間が変わるのでご了承ください。
足首骨折(足関節脱臼骨折)をプレート固定すると痛い?
手術療法では、腓骨(外果、外くるぶし)の骨折はチタン製のプレートで固定する場合が多いです。
術後の腫れがひくと皮膚のすぐ下にプレートを触ることができます。見た目には痛そうですが、実際にはプレートそのものの痛みはさほどありません。
足関節脱臼骨折の術後にも痛みが続く原因として、手術では治すことのできない足関節の軟骨損傷の存在があります。
足関節脱臼骨折は足関節を強く捻じって受傷しますが、その際に関節軟骨を損傷します。軟骨損傷は永続するため、手術療法といえども多少の痛みが残るケースは少なくありません。
足首骨折(足関節脱臼骨折)は全治何ヶ月?
ズレ(転位)の程度や骨折形態によって異なりますが、足関節脱臼骨折ではおおむね3ヵ月で骨癒合するケースが多いです。
ただし、骨が十分な強度を獲得するには半年から1年かかるため、激しいコンタクトスポーツは半年から1年は控えた方が無難です。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の腫れはいつまで続く?
ズレ(転位)の程度、骨折形態、治療方法によって異なりますが、足関節脱臼骨折の腫れはおおむね6ヵ月~1年程度続くケースが多いです。
足首や膝のような下肢の外傷ではなかなか腫れが引きません。その理由は、下肢は心臓よりも低い部位にあるため、血液の戻りが悪くなるためです。
足首骨折が「ずれてくっつく」とどうなる?
足関節脱臼骨折が「ずれてくっつく」と、歩くときの足首の痛みや動かしにくさが残ります。しかも年月の経過とともに、症状がきつくなっていくケースが多いです。
このため、骨のずれ(転位)を整復するために手術療法が必要となります。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の運転はいつから?
骨癒合が完了する受傷後2~3ヵ月がひとつの目安となるでしょう。プレートを用いた手術療法の場合には、もう少し時期が早まるケースが多いです。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の運動はいつから?
骨癒合が完了する受傷後3ヵ月がひとつの目安となるでしょう。ただし、骨が十分な強度を獲得するには、半年から1年かかります。
このため、受傷してから半年から1年間は、骨折部に衝撃が加わるスポーツを避ける必要があります。
骨癒合の時期は、骨折型によってさまざまです。上記で挙げた期間はあくまでも目安に過ぎません。主治医の指示に従いましょう。
足首骨折(足関節脱臼骨折)の診断
レントゲン検査
レントゲン検査は簡便な検査なので、骨折の初期診断や治療経過の判定に広く用いられています。
後遺障害認定で重要なポイントは、健側のレントゲン検査も実施することです。
その理由は、症状固定時に健側と比較することで、患側の外傷による変化を判断するためです。
CT検査
CT検査は、レントゲン検査よりも骨折部を詳細に描出できます。更に、3次元的な評価も可能なので、治療だけではなく後遺障害認定時にも必要な検査です。
足首骨折で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
足首骨折(足関節脱臼骨折)で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
足首骨折(足関節脱臼骨折)で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
足首骨折(足関節脱臼骨折)の後遺障害
足関節脱臼骨折では、機能障害(足関節の可動域制限)と神経障害(足関節の痛み)を残す可能性があります。
機能障害(足関節の可動域制限)
足関節脱臼骨折で変形が残存したり、保存療法で長期間にわたって外固定すると、足関節の可動域制限が残存することがあります。
可動域制限の程度によって、以下のような後遺障害に認定される可能性があります。尚、可動域の評価には、【背屈+底屈の合計他動可動域】の数値が用いられることに注意しましょう。
後遺障害8級7号:足関節が強直したもの
足関節の可動域が、健側の10%程度以下に制限されたものです。開放骨折や感染を併発した症例では、高度の関節可動域制限が残る可能性があります。
<参考>
【医師が解説】開放骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
後遺障害10級11号:足関節の関節可動域が、健側の1/2以下に制限されたもの
3果骨折(外果+内果+後果)や2果骨折(外果+内果、外果+後果)では、可動域が健側の半分以下になるケースもあります。
後遺障害12級7号:足関節の関節可動域が、健側の3/4以下に制限されたもの
足関節は荷重関節にもかかわらず、股関節や膝関節ほど関節の面積が大きくないので、外傷性変形性関節症が進行しやすいです。このため、1果骨折(外果、内果、後果)であっても可動域制限が残るケースもあります。
<参考>
【医師が解説】関節内骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故
神経障害
足関節脱臼骨折の治療後に関節面の変形や段差が残存すると、足首の痛みの原因となることがあります。
後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
レントゲン検査やCT検査で以下のような画像所見を確認できて、足首の痛みの原因を他覚的に証明できれば、12級13号に該当する可能性があります。
- 骨折部の変形
- 関節面の段差
- 関節裂隙の狭小化(関節の異常な摩耗)
後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの
手術の有無、治療経過、通院頻度などの要素を総合的に判断した結果、痛みの原因が医学的に説明可能な場合には、14級9号に該当する可能性があります。
【弁護士必見】足首骨折の後遺障害認定ポイント
レントゲン検査とCT検査が重要
足関節脱臼骨折の後遺障害が認定されるためには、可動域制限や痛みの原因となる画像所見を示す必要があります。
足関節の形態変化がポイントになるので、レントゲン検査とCT検査が後遺障害認定のポイントになります。
検査の施行時期や撮影条件がキモ
単純に、レントゲン検査とCT検査を実施すれば良いというわけではありません。臨床経過を考えて、適切な時期に適切な撮影条件の検査法を実施する必要があります。
例えば、実臨床では健側のレントゲン検査が実施されていない事案を散見します。関節裂隙が狭小化しても、健側と比較しなければ判断できないケースが多いです。
また、足関節は比較的小さな関節なので、手術で本物の足関節内部を観察して、術後フォローを行っている整形外科専門医に優位性があります。
後遺障害認定に耐えうる画像所見を得るためには、個々の事案に応じた検査の施行時期や撮影条件を、綿密に検討することが理想です。
MRI検査はほとんどの事案で不要
MRI検査は多くの事案で必要ありません。臨床的にも、足関節脱臼骨折でMRI検査を実施する症例はほとんどありません。
新鮮な裂離骨折は後遺障害認定の可能性がある
外くるぶし(足関節外果、腓骨遠位端)には、裂離骨折が多いです。そして、その多くは陳旧性骨折です。陳旧性腓骨遠位端骨折は、当然のごとく非該当になります。
しかし、中には新鮮骨折も含まれます。骨折が新鮮例なのか陳旧性なのかを判断するためには、画像所見だけではなく治療経過が重要です。
足関節の裂離骨折で非該当になった事案でも、精査すると新鮮骨折である事案が散見されます。新鮮骨折であれば、後遺障害に認定される可能性があります。
<参考>
【医師が解説】足首靭帯損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故
足首骨折の機能障害では治療経過も重要
免荷期間やリハビリテーションの実施状況によっても、機能障害(足関節の可動域制限)の程度が大きく変化します。つまり、画像所見だけでは片手落ちでなのです。
治療経過、画像所見、リハビリテーションの実施状況等を総合的に判断して、後遺障害認定の突破口を開く必要があるでしょう。
【12級7号】足首骨折の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:60代男性
- 認定等級:12級13号
本件は症状固定前の時点で相談を受けた事例です。
弊社の取り組み
レントゲン検査では変形の残存や関節症性変化を窺わせる所見はあるものの(赤丸部)、明確な他覚所見には至らないと判断しました。この点をクリアするために、CT検査の追加撮像を提案しました。
CT検査では関節面の陥凹と変形が残存していることが確認できたため(黄丸部)、後遺障害認定で非常に有益な所見となりました。
足首骨折の後遺障害認定で弊社ができること
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<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
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<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
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足首骨折後遺症のまとめ
足関節は、腓骨(外果)と脛骨(内果と天蓋)から構成されます。足首骨折(足関節脱臼骨折)では、この構造が破綻して可動域制限や痛みの原因となります。
足首骨折が後遺障害に認定されるためには画像検査が重要ですが、適切な時期に適切な撮影条件の検査法を実施する必要があります。
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