交通事故コラム詳細

fv fv
2022.8.30

骨折・脱臼

手や指の骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定

交通事故で発生する上肢の外傷のひとつに手や手指の骨折があります。手や手指は非常に繊細な構造なので後遺症を残しやすい外傷です。

 

本記事は、手や手指の骨折の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日: 2024/9/8

 

book

 

 

手や指の骨には何があるの

 

手や手指は、たくさんの小さな骨から構成されています。手や手指の主な骨は下記のごとくです。
 

 

  • 末節骨(第1~5末節骨)
  • 中節骨(第2~5中節骨)
  • 基節骨(第1~5基節骨)
  • 中手骨(第1~5中手骨)
  • 手根骨(豆状骨、三角骨、月状骨、舟状骨、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨)

 

hand bone
 
Wikipediaの指骨から転載

 

 

指節骨骨折(指の骨折)

末節骨骨折、中節骨骨折、基節骨骨折

指の骨折は、交通事故で非常によく見かける外傷です。DIP関節、PIP関節、MP関節などに及ぶ関節内骨折の事案では、痛みや可動域制限を残す可能性があります。

 

一方、指節骨の骨幹部で骨折する場合には、隣接関節の可動域制限を併発する可能性が高いです。手指の関節は非常に関節拘縮を残しやすいことで有名です。

 

特にPIP関節とMP関節に関しては、積極的な早期リハビリテーションを実施しない限りは、関節の可動域制限を残す可能性が高いです。

 

 

マレット変形(マレット骨折)

マレット変形とは、指のDIP関節の骨折もしくは伸筋腱損傷で併発します。DIP関節が木槌のように曲がった状態になる変形です。

 

マレット変形は、伸筋腱の末節骨への停止部が剥離した腱性マレットと、末節骨骨折の中でもDIPの関節内骨折で生じる骨性マレットがあります。

 

 

<参考>
【医師が解説】マレットフィンガーの後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

PIP関節脱臼骨折

PIP関節の背側へ脱臼するのが一般的な形態です。PIP関節脱臼骨折の治療は難しく、PIP関節の可動域制限を残しやすい外傷です。

 

治療法として最もお勧めなのは、ゴムを用いた小型の創外固定(1991年に鈴木康医師が考案した牽引型創外固定pins and rubbers traction system)です。

 

オリジナリティのある非常に優れた治療法で、私もこれまでたくさんの症例でこの手術法を施行してきました。しかし、牽引型創外固定をもってしても、ある程度のPIP関節の可動域制限は残存してしまいます。

 

 

book

 

 

中手骨骨折(手の甲の骨折)

中手骨頚部骨折(ボクサー骨折を含む)

中手骨頚部骨折は手をグーにした状態でぶつけると受傷する可能性がある骨折です。MP関節近傍の骨折なので、早期から可動域訓練を実施してもMP関節の可動域制限を残す可能性が高い骨折です。

 

 

中手骨骨幹部骨折

手の甲への直達外力で受傷する可能性があります。中手骨骨幹部骨折はずれる(転位する)可能性があるので、プレート固定や経皮的骨接合術が選択されるケースも多いです。

 

一方、中手骨骨幹部骨折は指の外傷ではないにもかかわらず、中手骨の表面を走行する伸筋腱と癒着する症例が多いため、指の可動域制限を残しやすいです。

 

例えば、第3中手骨骨幹部骨折では中指(第3指)の可動域制限を残す症例が多いですが、隣の示指(第2指)や環指(第4指)の可動域制限を残すこともあります。

 

手の甲の外傷である中手骨骨幹部骨折では、意外にも指の機能障害として後遺障害の等級認定される可能性があるのです。

 

 

ベネット脱臼骨折(母指CM関節脱臼骨折)、ローランド骨折

一般的には、ボクシングでパンチしたときやボールが当たって、母指の先端から軸方向の力が加わって受傷します。 交通事故でも、バイクや自転車で転倒した際にベネット骨折を受傷するケースが多いです。

 

ローランド骨折は、関節面の粉砕がベネット骨折よりも高度なタイプの母指CM関節脱臼骨折です。

 

ベネット脱臼骨折やローランド骨折では、機能障害ではなく母指CM関節の神経障害に該当する可能性があります。

 

 

 

nikkei medical

 

 

手根骨骨折(手首の骨折)

舟状骨骨折

舟状骨は親指側にある手根骨で、手首の関節を構成する8つの手根骨の中でも重要な骨の1つです。舟状骨骨折は転倒して手をついて受傷するケースが多いです。

 

舟状骨骨折は、通常の単純X線像では判断しにくいため、初診時に見逃されることが多い骨折です。

 

そのまま外固定せずに放置すると、高率に偽関節になってしまいます。このため、確定診断のためにMRIを施行するケースも多いです。

 

舟状骨が偽関節に至った症例では偽関節手術を施行しますが、手関節の可動域制限を残すケースが多いため、手関節の神経障害だけではなく機能障害に該当する可能性があります。

 

 

月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼

月状骨周囲脱臼は、激しく手をついて手関節に背屈強制の外力が加わって受傷する比較的稀な外傷です。私自身も実臨床ではこれまで3例しか経験していません。

 

月状骨周囲脱臼は徒手整復困難なので、臨時手術の対象となります。画像所見と比較して軟部組織損傷が高度なので、手関節の機能障害や神経障害を残しやすい外傷といえます。

 

 

有鈎骨骨折(有鉤骨鉤突起骨折)

有鉤骨は手首の関節を構成する8つの手根骨の中でも交通事故で骨折しやすい骨の1つです。有鈎骨には有鉤骨鉤と呼ばれる突起があり、その部分が折れて有鉤骨鉤突起骨折となります。

 

一般的には、野球やゴルフなどのグリップするスポーツで発生する疲労骨折ですが、交通事故で転倒して手をついて受傷することも多いです。

 

有鈎骨骨折の画像診断は難しいです。単純X線像の2方向では診断できないため、手根管撮影が必要です。また、確定診断のためにCTやMRIが必要なケースも多いです。

 

有鉤骨鉤突起骨折は偽関節になりやすいので、12級13号や14級9号の神経障害の対象となりやすいです。また有鉤骨鉤の横を尺骨神経が走行しているので、手指のしびれを併発することもあります。

 

 

手や指の骨折の診断

 

通常のケースでは、単純X線像だけで骨折を診断できます。しかし、舟状骨骨折は単純X線像だけで診断できないことも多く、そのようなケースではMRIが必要となります。

 

有鈎骨骨折は単純X線像の2方向では診断できないため、手根管撮影が必要です。また、確定診断のためにCTやMRIが必要なケースも多いです。

 

指節骨折、PIP関節脱臼骨折、ベネット脱臼骨折(母指CM関節脱臼骨折)などの関節内骨折では、CTによる関節面の評価が必要なケースが多いです。

 

いずれも診断や治療方針決定のために必要な検査ですが、後遺障害認定の際にも有力な医証となります。

 

 

metacarpal fracture

 

 

指節骨骨折や中手骨骨折の後遺障害

 

指節骨骨折(末節骨骨折、中節骨骨折、基節骨骨折)や中手骨骨折では指の機能障害や神経障害に該当する可能性があります。

 

一見すると中手骨骨折は指の機能障害と無関係に思えますが、伸筋腱が癒着しやすいため指の機能障害を残す事案が多いです。

 

 

指の機能障害

MP関節(中手指節間関節)、PIP関節(近位指節間関節)、母指のIP関節(指節間関節)の可動域が健側可動域の1/2以下に制限されると、手指の用を廃したものとして後遺障害に認定されます。

 

 

7級7号

1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
 

8級4号

1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
 

9級13号

1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
 

10級7号

1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
 

12級10号

1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
 

13級6号

1手のこ指の用を廃したもの

 

 

指の神経障害

MP関節(中手指節間関節)、PIP関節(近位指節間関節)、母指のIP関節(指節間関節)の可動域が、健側可動域の1/2以下まで制限されてない事案は、手指の用を廃したものとして後遺障害に認定されません。

 

一方、関節内骨折などで関節面に不整があるケースには、関節の痛みが後遺症として残ることが珍しくありません。このような事案では、指の神経障害に認定される可能性があります。

 

 

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

レントゲン検査などで関節面に明らかな不整があると12級13号に認定される可能性があります。

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

レントゲン検査で関節面の不整がそれほど大きくない場合でも、治療経過から痛みが残ることが推認されるケースでは、14級9号に認定される可能性があります。

 

 

手根骨骨折の後遺障害

 

手根骨骨折では手関節の機能障害や神経障害に該当する可能性があります。

 

 

手関節の機能障害

8級6号

1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 

10級10号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

12級6号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

 

手関節の神経障害

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

 

14級9号

局部に神経症状を残すもの

 

 

book

 

 

【弁護士必見】手や指骨折の後遺障害認定ポイント

 

手や指の後遺障害の等級認定では、骨だけではなく伸筋腱や屈筋腱などの軟部組織損傷の影響も大きく受けます。

 

例えば、中手骨骨幹部骨折は指の外傷ではないにもかかわらず、中手骨の表面を走行する伸筋腱と癒着する症例が多いため、指の可動域制限を残しやすいです。

 

さらに、隣接する指の機能障害が残る可能性もあります。例えば、第3中手骨骨幹部骨折では中指(第3指)の可動域制限を残す症例が多いですが、隣の示指(第2指)や環指(第4指)の可動域制限を残すことがあります。

 

その理由は、中手骨骨折を受傷すると骨折部から出血しますが、この出血が治る過程で隣の伸筋腱まで癒着してしまうからです。

 

実臨床では全く違和感無く受け入れられている概念ですが、残念ながら自賠責保険では後遺障害に等級認定されない事案が多発しています。

 

このような事案では、手外科医師による医師意見書が有効であるケースが多いです。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

手や指の骨折の後遺障害認定で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、交通事故による手や指の骨折の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

fv_appraisal_pc

 

 

医師意見書

 
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

doctor

 

 

画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

inquiry

 

 

交通事故による手や指の骨折の後遺症でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

 

Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

手や手指の骨折は、交通事故でよく受傷するケガの1つです。そして手や手指は非常に繊細な構造なので、後遺症を残しやすいです。

 

しかし、手や手指は解剖が複雑なので、手外科医師を始めとする整形外科専門医でしか正確な評価が難しい外傷と言えます。

 

 

download

 

 

関連ページ

 

 

 

 

 

 

 

 

book

 

 

資料・サンプルを無料ダウンロード

 

以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。

    関連記事

    ランキング