腱板は、肩関節にある4つの小さな筋肉の腱です。腱板は肩関節をスムーズに動かす役割を果たしています。
腱板は断裂しやすいことで有名で、交通事故で受傷するケースも多いです。腱板断裂を放置するとどうなるのでしょうか。
本記事は、腱板断裂を放置するとどうなるのかと、後遺障害を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2026/2/10
Table of Contents
腱板断裂(腱板損傷)とは
腱板は4つの小さな筋肉の集合体
腱板は、肩関節にある4つの小さな筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)の腱部分の総称です。

腱板の役割
肩を動かす際に腱板が収縮することで、肩関節の支点を安定化させます。肩関節をスムーズに動かすために、腱板は重要な役割を果たしています。
腱板断裂の受傷機序
腱板断裂の受傷機序として以下が挙げられます。
- 肩関節の前方や外側から直接力が加わって断裂する
- 手や肘をついた際に腱板が骨の間に挟まれて断裂する
交通事故では、バイク事故や自転車事故が多いです。また、車のハンドルを握った状態で衝突した時に、腱板が断裂するケースもあります。
腱板断裂は棘上筋腱が多い
腱板が切れることを腱板断裂(腱板損傷)と言います。腱板のうち、最も断裂しやすいものは棘上筋腱です。

腱板断裂の種類
腱板部分断裂(不全断裂)
腱板断裂は部分断裂と完全断裂に分けられます。部分断裂は、腱板の一部の層だけが切れた状態です。切れている部分によって3つに分けられます。
腱板の関節面断裂
腱板の関節面に近いところだけが断裂します。
腱板の滑液包面断裂
腱板の表面を覆う滑液包に近いところだけが断裂します。
腱板の腱内断裂
腱板の内部が断裂します。
腱板完全断裂
腱板が全層にわたって切れている状態です。手術の際に腱板を上から見ると、内部の肩関節(上腕骨)が見えてしまっている状態です。
腱板断裂を放置するとどうなる?
小さな部分断裂なら痛みが無くなるケースもある
小さな部分断裂は、痛みが自然に無くなることもあります。腱板断裂が自然修復したのではなく、痛みが無くなっただけなので注意が必要です。
いわゆる四十肩や五十肩の中には、かなりの割合で腱板の部分断裂が含まれていると言われています。
つまり、気が付かないうちに腱板断裂を受傷しているケースは、意外なほど多いのです。
大きな断裂は痛みと筋力低下が残る
大きな腱板断裂を放置すると肩関節の変形が生じて、肩の痛みと筋力低下が残ります。自分で腕を挙げられなくなる人も少なくありません。
腱板断裂の後遺障害
機能障害
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 関節が強直したもの。ただし肩関節では、肩甲上腕関節が癒合し骨性強直していることがエックス線写真等で確認できるものを含む
- 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの(他動では可動するが、自動運動では健側の可動域角度の10%以下になったもの)
- 人工骨頭置換術が施行されており、かつ肩関節の可動域が2分の1以下に制限されるもの
8級6号に該当する可能性がある傷病は、上腕骨近位端骨折です。上腕骨近位端骨折では、高い確率で肩関節の可動域制限をきたします。
一方、腱板損傷で8級6号に認定されるケースは、弊社の経験上でもほとんど存在しません。
10級10号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。腱板断裂によって肩関節が拘縮すると可動域制限が残ります。
12級6号: 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。特に高齢者では、肩関節の可動域制限を残しやすいです。
<参考>
肩関節拘縮(拘縮肩)の原因と画像所見|交通事故の後遺障害
神経障害
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
受傷後早期のMRI検査で腱板断裂の存在が明らかな場合には、12級13号に認定される可能性があります。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
自賠責保険の後遺障害認定では、12級13号に認定される画像所見の条件がかなり厳しいです。
一方、後遺障害の認定基準12級13号を満たさなくても、14級9号であれば比較的認定されやすい傾向にあります。
肩腱板断裂の後遺障害認定ポイント【弁護士必見】
受傷後早期のMRI検査が必須
腱板断裂には、痛みの無い無症候性が多いです。そして加齢とともに、無症候性の腱板断裂の有病率が上昇します。
特に、50歳よりも上の中高年層であれば、既往症として高率に腱板断裂が存在すると考えて良いでしょう。
当然、自賠責保険も、中高年層では無症候性腱板断裂が多いことを認識しています。
このため、急性期に実施したMRI検査でなければ、交通事故との因果関係を否定されてしまいます。
<参考>
肩腱板断裂の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定

腱板断裂の受傷機序も問われる
腱板断裂が後遺障害に認定されるためには、受傷機序も重要です。腱板断裂は、加齢による無症候性腱板断裂が多いからです。
バイク、自転車、歩行中の交通事故は、外力が大きいため交通事故との因果関係を認められやすいです。
しかし、自動車乗車中の交通事故に関しては、身体に加わる外力がそれほど大きくないと見做されがちです。
実際には、ハンドルを握っている時に衝突すると、腱板が骨の間に挟まれてしまい腱板断裂を受傷し得ます。
しかし、弁護士による意見書だけでは、自賠責保険を納得させることは一般的に困難でしょう。
<参考>
【日経メディカル】その腱板断裂、ホントに交通事故の後遺症?
【10級10号】腱板損傷の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:55歳
- 初回申請:14級9号
- 異議申立て:10級10号
50歳代で変性のある腱板損傷です。自賠責では3回異議申立てをしても14級9号(局部の神経症状)としか認定されませんでした。
弊社の取り組み
弊社にて精査したところ、事故を契機にして経時的にMRI検査で腱板損傷部位のサイズが拡大していました。
この点について医師意見書で主張したところ、10級9号(上肢の著しい機能障害)の後遺障害が認定されました。
<画像所見>
棘上筋腱の中〜大断裂を認めます。

肩腱板断裂の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残った肩腱板断裂の後遺症が、後遺障害に等級認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的データ量をベースにしています。整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくため、初回事務所様は無料で承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した専門医が作成します。作成前に検討項目を共有して、クライアントと意見書の内容を擦り合わせます。
必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックで、意見書の質を担保しています。
弊社は、数千におよぶ医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例があります。是非、弊社の医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査や資料を精査して、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では、事案の分析から画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
肩腱板断裂の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解のほどお願いいたします。

腱板断裂でよくある質問
腱板が断裂しやすい理由
腱板は切れやすいことで有名です。肩峰と上腕骨の間に挟まれており、常に骨とこすれて摩耗することが原因と考えられています。
腱板断裂の診断は?
レントゲン検査は正常が多い
腱板断裂では、骨折などの外傷を除外するため、まずレントゲン検査を実施します。しかし、腱板断裂では正常なケースが多いです。
一方、受傷から時間が経過した腱板断裂は、レントゲン検査で上腕骨頭の上方化や軟骨の変性が見られます。
MRI検査は形態まで診断できる
MRI検査は、腱板断裂の大きさ、断裂している腱の種類、腱板の質、内視鏡で手術が可能か、なども判断できます。
下の画像では、棘上筋腱が断裂して上腕骨頭の内側に引き込まれていることまで分かります。

腱板断裂の保存療法は?
腱板断裂では、保存療法を実施するケースも多いです。小さな腱板断裂では、除痛目的で定期的に関節内注射を行います。
正常部分の腱板をリハビリテーションで訓練して、肩関節の機能回復を図ります。また、拘縮が出現しないように可動域訓練も行います。
腱板断裂の手術療法は?
注射やリハビリテーションを実施しても、症状が改善しなければ手術するケースもあります。手術では断裂した腱板を引き出して修復します。
腱板の断裂幅が大きいため修復できないケースでは、腱を移行(移植)することもあります。それでも挙上できない場合は人工関節を挿入します。
腱板断裂は後遺障害等級が認定されますか?
腱板断裂によって、肩関節の可動域制限や疼痛が残存すれば、後遺障害の対象になります。
ただし、画像所見だけでなく症状の一貫性、治療経過、事故との因果関係が総合的に評価されます。軽症は非該当となる例も少なくありません。
認定されやすい後遺障害等級は何級ですか?
肩関節の可動域制限が健側の2分の1以下であれば10級10号、4分の3以下であれば12級6号が典型です。
可動域制限がなく痛みのみの場合は14級9号が争点となります。事故との因果関係の証明が重要です。
手術を受けないと後遺障害は認定されませんか?
手術は必須条件ではありませんが、保存療法のみの場合は治療限界や症状固定の妥当性が厳しく評価されます。
特に断裂が大きいのに手術未実施の場合、症状固定の合理性が疑われることがあります。
MRIで腱板断裂が写っていれば必ず認定されますか?
MRI所見は重要ですが、それだけで認定されるわけではありません。事故前からの変性断裂の可能性、症状との整合性、治療経過が重視されます。
事故前の加齢性断裂でも後遺障害は認められますか?
加齢性・変性断裂でも、事故によって発症したのなら後遺障害に認定される可能性があります。この場合、事故による増悪かが争点になります。
しかし実務では、事故前に無症状で事故後に症状が顕在化したケースは非該当が多く、医学的因果関係の立証が重要です。
肩が痛いだけでも後遺障害になりますか?
可動域制限がなくても、医学的に説明可能な神経症状が一貫して存在すれば14級9号が認定される可能性があります。
ただし主観症状のみでは否認されやすく、診療録やMRI検査の画像所見との整合性が重要です。
仕事に支障があれば等級は上がりますか?
等級は認定基準を満たすかで判断されるため、職業への影響は直接反映されません。ただし労働能力喪失率や逸失利益算定には影響します。

まとめ
腱板は断裂しやすいことで有名ですが、腱板断裂を放置するとどうなるのでしょうか。小さな部分断裂なら痛みが無くなるケースもあります。
しかし、大きな腱板断裂を放置すると肩関節の変形が生じて痛みや筋力低下が残ります。自分で腕を挙げられなくなる人も少なくありません。
腱板断裂で後遺症が残ると、自賠責保険では後遺障害の12級や14級に認定される可能性があります。
腱板断裂でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニング®を承ります。
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