肋骨骨折は、交通事故で発生しやすい骨折のひとつです。肋骨骨折は呼吸するたびに痛いので、痛みがいつまで続くのかは気になるところでしょう。
本記事は現役の整形外科専門医が、肋骨骨折の痛みピークはいつ頃なのかや、安静期間の目安が分かるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/13
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肋骨骨折とは
肋骨とは胸部を取り囲む骨で、背中側の胸椎からみぞおちの上にある胸骨までを取り囲むようにして、左右それぞれ12本ずつあります。この胸部を取り囲む肋骨の骨折が肋骨骨折です。
肋骨は胸郭の外張りをしており、内部にある肺や心臓を保護しています。下の方の肋骨では、前方が軟骨成分なので単純X線像(レントゲン)では映らないことが多いです。
肋骨骨折の診断
肋骨骨折の診断は、胸部を触診して圧痛のある部位にマーカーを貼り、単純X線像(レントゲン)を施行して骨折の有無を確認します。
交通事故で多発外傷のケースでは、病院に搬送時に全身CTの一環として胸部CTを施行することも多いです。3D-CTに再構成すると、骨折部を診断しやすくなります。
最近では超音波検査で肋骨骨折を診断するケースも多いです。簡便で良い検査ですが、交通事故実務ではやや客観性に乏しいという欠点があります。
肋骨骨折の痛みのピークは?
肋骨骨折の症状
骨折した部位に痛みと圧痛があります。深呼吸したり咳をすると骨折した部位に激痛が走ります。また体を捻ったり肩を動かすだけでも痛みが出るケースが多いです。
肋骨骨折の痛みのピークは受傷から数日間
肋骨骨折に限らず、骨折による痛みのピークは受傷して間もない時期です。肋骨骨折も例に漏れず、痛みを最も感じるのは受傷してから数日間です。
肋骨骨折から2週間は痛みが増すこともある
肋骨骨折はずれやすい骨折です。その理由は、肋骨の横断面の直径が小さいことと、呼吸するため常に骨が動いているからです。
肋骨がずれると、それまであまり痛くなくても痛みが増強します。この現象のために、肋骨骨折の痛みのピークは受傷してから2週間と言う人もいますが、正確には骨がずれたから痛みが増しただけです。
尚、肋骨がずれても、通常は大きな後遺症を残すことはありません。また治療方針が変わることもありません。
肋骨骨折に対する治療
肋骨骨折で手術が行われることは稀で、ほとんどの事案では保存治療が選択されます。バストバンドというコルセットのような固定帯で骨折部を圧迫固定します。
3週間ほどすると肋骨骨折による痛みは軽快するので、それまでの間は鎮痛剤を適宜服用しながら、基本的にはバストバンドで除痛を図ります。
肋骨骨折の安静期間
肋骨骨折ではバストバンドというコルセットのような固定帯で骨折部を圧迫固定します。バストバンドを使用すると胸郭がしっかり固定されるため、骨折部の痛みはましになります。
肋骨骨折では、絶対安静の必要はありません。痛みを我慢できる範囲で、仕事や日常生活を送りましょう。
尚、重たい物を持ち上げたり、過度に骨折部に負荷のかかる動作は良くありません。骨折の程度は人によってさまざまなので、主治医に安静期間を確認しましょう。
肋骨骨折の合併症
肋骨は胸郭の外張りをしている骨なので、肋骨骨折には肺などの内臓損傷を合併するケースが珍しくありません。
肺の損傷には、肺に穴が開いて肺がしぼんでしまう気胸という傷病があります。軽度の気胸は自然に治癒しますが、高度にしぼむと胸郭にチューブを挿入して脱気する必要があります。
肺以外では、左下の側胸部を強打した際に脾臓を損傷するケースがあります。脾臓損傷は比較的見逃されやすいので注意が必要です。
肋骨骨折で考えられる後遺障害
変形障害
12級5号:鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
肋骨骨折で変形障害が認定されるためには、裸になった時に胸郭の変形が明らかである必要があります。
神経障害
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
単純X線像(レントゲン)やCTなどの画像診検査で骨折が明らかな事案では12級13号が認定されるケースもあります。
14級9号:局部に頑固な神経症状を残すもの
1か所程度の骨折では、単純X線像(レントゲン)やCTなどの画像診検査で骨折が認められても、14級9号認定にとどまる事案が多いです。
呼吸器障害
肋骨骨折単独で呼吸器の機能障害を来すケースは稀ですが、肺挫傷などで肺実質に広範な損傷が及んだ場合には、呼吸器の障害に該当する可能性があります。
<参考>
【医師が解説】肺挫傷の後遺症と治るまでの期間|交通事故の後遺障害
【医師が解説】内臓破裂の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
【弁護士必見】肋骨骨折の後遺障害認定ポイント
肋骨骨折では変形障害のハードルは高い
肋骨骨折で変形障害が認定される事案はあまりありません。何故なら、どれほどたくさん肋骨を骨折しても、裸体になった時に胸郭が変形することは珍しいからです。
唯一の例外は肋骨多発骨折の重傷例であるフレイルチェスト(Flail Chest)でしょう。フレイルチェストでは呼吸状態が悪くなるので、人工呼吸管理をせざるを得ないケースが多いです。
ただし、フレイルチェストで長期にわたって人工呼吸管理すると肩関節拘縮を併発するため、8級6号、10級10号、12級6号などの肩関節機能障害が問題になるケースが多いです。
肋骨骨折では神経障害が現実的
肋骨骨折で現実的な後遺障害等級は神経障害の14級9号です。単純X線像(レントゲン)やCTなどの画像検査で骨折が認められても、1か所程度の骨折では12級13号が認定されるケースはあまり見かけません。
その理由は、肋骨が偽関節になっても大きな痛みを残すケースが少ないからです。確かに偽関節部の轢音は気持ち悪いですが、痛みはあまり出ないようです。
後遺障害等級認定のためには、単純X線像(レントゲン)やCTなどの画像検査で骨折を証明する必要があります。技術的には、いかにして骨折の存在をビジュアル的にアピールするかがポイントになります。
弊社では、肋骨骨折、胸骨骨折、胸鎖関節脱臼で異議申立てを行い後遺障害等級が認定された事例が多数ありますが、いずれの事案もビジュアル面を考慮した画像鑑定報告書が鍵となりました。
<参考>
肋骨骨折の後遺障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
肋骨骨折は、交通事故で発生しやすい骨折のひとつです。肋骨骨折の痛みのピークは受傷から数日間です。
肋骨骨折から2週間は痛みが増すこともありますが、その理由は肋骨がずれたからです。骨がずれると、それまであまり痛くなくても痛みが増強します。
しかし、肋骨がずれても大きな後遺症を残さないですし、治療方針が変わることもありません。
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