単なる打撲だと思っていても、痛みや腫れが続くことがあります。そのような時にはどうすればよいのでしょうか。
本記事は、現役の整形外科医が、交通事故による打撲による痛みや腫れが続く場合の対処法について説明しています。
最終更新日: 2024/5/13
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打撲とは骨折や靭帯損傷以外の総称
打撲という傷病名は広く使われています。その理由は、打撲とは骨折や靭帯損傷以外の総称だからです。レントゲン検査などで骨折が無く、関節の不安定性も無ければ「打撲」と診断されます。
医学的に言うと、転倒したり、身体を物にぶつけた際の組織の損傷が、骨折や靭帯損傷には至らなかった状態です。
一般的に打撲は軽傷と思われがちです。しかし、単に初診時に骨折や靭帯損傷が発見されなかっただけのケースもあるので注意が必要です。
打撲の痛みや腫れは1ヵ月以上続くこともある
大きな外力が加わると、その部分の皮下組織が傷ついて内部出血します。その結果、痛みや腫れが出現します。打撲による痛みや腫れは、1~2週間で症状が軽快する人が多いですが、1ヵ月以上続くケースもあります。
一方、打撲では皮下出血によって青黒く変色することがあります。皮下出血斑が消えるまでは、2~3週間かかるケースが多いです。
打撲の診断にはレントゲン検査が必要
打撲した部分の状態に応じて、レントゲン検査で骨折の有無を確認します。場合によっては、CT検査やMRI検査を実施することもあります。
打撲(皮下血種)の診断目的でMRI検査を実施することはありませんが、靭帯損傷や骨折が無くても皮下血種を認めることが多いです。
打撲の初期治療はRICE処置
痛みや腫れが強い場合にはRICE処置を行います。RICE処置とは、Rest(安静)、Icing(冷却)、 Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字から名付けられました。
軽度の打撲なら、包帯で打った部位を圧迫固定すると1~2週間で治ります。
打撲の痛みや腫れがひかない時は?
骨折や靭帯損傷の可能性がある
本当に骨折や靭帯損傷が無いのかは、整形外科専門医にしか判断できません。整骨院(接骨院)はもちろんのこと、外科医であっても正確な診断は困難です。
局所の痛みや腫れが軽度であっても、ずれの無い骨折や靭帯損傷が発見されるケースは後を絶ちません。一度は整形外科専門医の診察を受けることを強く推奨します。
CRPSの可能性もある
CRPSとは、複合性局所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome; CRPS)の略称です。当初の外傷の程度よりも高度の疼痛が残存することが特徴です。
原因となる外傷は、骨折や神経損傷後だけではなく、単なる打撲のような軽い外傷後にも発症することが多いです。決して稀な傷病ではないので注意が必要です。
<参考>
打撲でも病院に行くべき3つの理由
特に交通事故で受傷した打撲を放置してはいけない理由には、以下の3つがあります。
- 本当に打撲なのかは検査しなければ分からない
- 事故との因果関係を否定される可能性がある
- 後遺症が残っても後遺障害に認定されない
本当に打撲なのかは検査しなければ分からない
本当に骨折や靭帯損傷が無いのかは、整形外科専門医にしか判断できません。整骨院(接骨院)はもちろんのこと、外科医であっても正確な診断は困難です。
局所の痛みや腫れが軽度であっても、ずれの無い骨折や靭帯損傷が発見されるケースは後を絶ちません。一度は整形外科専門医の診察を受けることを強く推奨します。
事故との因果関係を否定される可能性がある
交通事故に遭ってから2週間ほど病院に行かなかった場合には、仮に骨折や靭帯損傷があっても、保険会社から事故と無関係な治療とみなされる可能性があります。
しかし、交通事故から2週間も病院に行っていない事実は変えようがありません。交通事故に遭ったら、すぐに病院に行きましょう。
後遺症が残っても後遺障害に認定されない
打撲をしっかり治療しても、痛みや腫れなどの後遺症が残る可能性があります。
その場合には、自賠責保険に後遺障害申請しますが、受傷してから3日以内に受診していないと、後遺障害に認定される可能性が著しく低下します。
自賠責保険の後遺障害認定の観点からも、交通事故に遭ったらすぐに医療機関を受診する必要があります。
まとめ
単なる打撲だと思っていても、痛みや腫れが続くことがあります。中には、打撲の痛みや腫れが1ヵ月以上続くこともあります。そのような時には病院を受診しましょう。
打撲の痛みや腫れがひかない時は、骨折や靭帯損傷が存在する可能性があります。また、CRPS(複合性局所疼痛症候群)という高度の疼痛が残存する傷病の可能性もあるので注意が必要です。
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