交通事故による鎖骨骨折では、治療が終わっても痛みや肩の動かしにくさが残ることがあります。
しかし実際には、後遺症があるにもかかわらず、後遺障害が「非該当」や想定より低い等級にとどまるケースも少なくありません。
鎖骨骨折の等級変更を目指すには、後遺障害が認められなかった理由や、認定基準を正しく理解することが重要です。
そのうえで、医学的証拠の集め方や異議申し立ての進め方を知れば、後遺障害等級が見直される可能性は高まります。
本記事では、鎖骨骨折の等級変更を成功させるための具体的な方法やポイントを分かりやすく解説しています。
最終更新日: 2025/12/30
Table of Contents
- 1 鎖骨骨折を等級変更する方法とポイント
- 2 鎖骨骨折の等級変更を成功させる弊社サービス
- 3 鎖骨骨折の等級変更でよくある質問
- 3.1 鎖骨骨折で非該当とされたが、等級変更(異議申し立て)は可能ですか?
- 3.2 どのような後遺症が残れば、鎖骨骨折は等級認定されますか?
- 3.3 肩の痛みや可動域制限があっても非該当になるのはなぜですか?
- 3.4 後遺障害診断書のどこが不十分だと等級変更が難しくなりますか?
- 3.5 画像検査(X線・CT)を追加すれば等級変更の可能性は高まりますか?
- 3.6 変形治癒や偽関節がある場合、どの等級が認定されやすいですか?
- 3.7 症状固定後に痛みが悪化した場合でも、等級変更は認められますか?
- 3.8 鎖骨骨折の等級変更で、医師意見書や画像鑑定は本当に必要ですか?
- 3.9 レントゲンでは曲がっているのに、なぜ『変形障害』が認められないのですか?
- 3.10 肩が上がりにくくなりました。これは何級になりますか?
- 3.11 鎖骨遠位端骨折は通常と何が違うのですか?
- 3.12 手術で入れたプレート(金属)が入ったままです。これは変形とみなされますか?
- 4 まとめ
- 5 関連ページ
- 6 資料・サンプルを無料ダウンロード
鎖骨骨折を等級変更する方法とポイント
鎖骨骨折が非該当になる4つの原因
鎖骨骨折で後遺障害が認定されない原因は、以下のように大きく分けて4つあります。
(1)痛みの医学的証明が困難
骨がくっついた後の痛みは、画像検査に原因が写りにくいです。後遺障害に認定されるには、「痛くて当然」と説明できる根拠が必要になります。
(2)外見上の変形が確認できない
鎖骨の変形障害(12級5号)は、「裸体になったとき、外部から見て明らかにわかる程度の変形」が必要です。
レントゲンで骨が曲がっていても、服を脱いだ状態でパッと見てわからなければ認定されません。触って分かる程度の出っ張りでは不十分です。
(3)肩の可動域制限と骨折の因果関係が不明確
鎖骨が折れたことで肩が動かなくなっても、「なぜ鎖骨骨折で肩関節が動かないのか」という医学的な説明が不足していると、非該当になります。
鎖骨の真ん中(骨幹部)が骨折して、きれいに治った場合は、特に因果関係を否定されやすいです。
(4)後遺障害診断書の記載が不十分
医師が書く後遺障害診断書に、症状の具体的な記載や検査結果がほとんどない場合、審査機関は「証拠不足」と判断します。
鎖骨骨折が等級認定されない原因を調査する
等級変更を成功させるための第一歩は、「なぜ後遺障害に認定されなかったのか」を医学的に分析することです。
自賠責保険から届く「後遺障害等級認定結果のご連絡」には、非該当や低等級になった理由が簡潔に書かれています。
例えば、「画像所見で著しい変形が確認できない」といった指摘です。どのような理由なのかをチェックします。
このように「何が足りなかったのか」を明確にすることで、次に何をすべきかが見えてきます。

認定基準を満たすための医学的証拠を収集する
非該当の原因がわかったら、次は新たな医学的証拠を集めます。異議申し立てで最も重要なのは、「前回と同じ資料では結果は変わらない」です。
(1)CT検査・3DCT検査を追加する
レントゲンは平面(2次元)の情報しかないため、骨の前後のズレや奥行きの変形が分かりにくいことがあります。
これに対して、CT検査(特に3DCT)は骨の状態を立体的に表すことができ、偽関節や変形の程度を視覚的に証明できます。
実際、レントゲン検査では骨癒合しているように見えたが、CTで偽関節を確認でき、14級から12級に等級が上がったという事例もあります。
(2)裸体写真を複数の角度から撮影する
変形障害(12級5号)を証明するには、変形が「見た目で明らかにわかる」ことを示す写真が必要です。
正面だけでなく、斜めや真上など、変形が最も際立つ角度からも撮影しましょう。健側(怪我をしていない側)との比較写真も有効です。
(3)医師意見書・画像鑑定報告書を取得する
医師意見書とは、専門医が「なぜ痛みや可動域制限が残っているのか」を、画像所見や検査結果に基づいて論理的に説明した文書です。
単なる診断書とは異なり、後遺障害の存在を医学的に裏付ける強力な証拠になります。
画像鑑定報告書は、レントゲンやCTなどの画像を整形外科専門医が詳しく分析して、骨癒合の状態や変形の程度を評価したものです。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
<参考>
自賠責保険に異議申し立てする
新たな医学的証拠が揃ったら、自賠責保険に対して「異議申し立て」を行います。
異議申立書を作成する
異議申立書には、「異議申立の趣旨(=前回の判定に不服があること)」と「理由(=なぜ判定が誤りなのか)」を明記します。
感情的に「納得できない」と書くだけでは効果がありません。「新たな証拠が何を示しているのか」を論理的に説明する必要があります。
必要書類を添付して提出する
異議申立書に加えて、必要に応じて以下のような書類を提出します。
- 新しい画像検査
- 裸体写真(複数角度)
- 医師意見書または画像鑑定報告書
- 追加の診断書
審査期間は2~3ヶ月
異議申し立てをしてから結果が出るまで、通常2~3ヶ月かかります。この間、追加の質問や資料提出を求められることもあります。
期限はないが早めの対応が望ましい
異議申し立てに法律上の期限はありませんが、等級認定の結果が通知されてから半年以内、遅くとも1年以内に行うのが望ましいとされています。
尚、鎖骨骨折が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事で詳しく紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
鎖骨骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
等級変更できなければ裁判を検討する
異議申し立てをしても再度却下された場合や、結果に納得できない場合は、以下の選択肢があります。
(1)自賠責保険・共済紛争処理機構への申請
自賠責保険の判断に不服があれば、「紛争処理機構」に申請できます。ここでは、専門家が審査を行い、改めて判断を下します。
(2)裁判所への提訴
紛争処理機構でも認められなかった場合や、どうしても納得できない場合は、裁判を起こすことができます。
裁判では、裁判官が医師意見書や画像鑑定報告書などの証拠をもとに、公正に判断を下します。
裁判は時間と費用がかかりますが、適切な等級が認定されれば、慰謝料や逸失利益(将来の収入減への補償)が大幅に増える可能性があります。
鎖骨骨折の等級変更を成功させる弊社サービス
弁護士向けのサービス一覧
弊社では、交通事故で受傷した鎖骨骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
被害者向けの弁護士紹介サービス
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。

鎖骨骨折の等級変更でよくある質問
鎖骨骨折で非該当とされたが、等級変更(異議申し立て)は可能ですか?
はい、可能ですが、前回と同じ資料を再提出しても結果は変わりません。新たな医学的証拠を追加することで等級変更される可能性があります。
どのような後遺症が残れば、鎖骨骨折は等級認定されますか?
鎖骨骨折では、主に3つの後遺障害が認定される可能性があります。
(1)変形障害(12級5号)
裸体で見て明らかにわかる変形、または偽関節(骨がつながっていない状態)や遷延治癒(一部しかついていない状態)がある場合です。
(2)機能障害(8級、10級、12級)
肩関節の可動域が健側(怪我をしていない側)の3/4以下に制限されている場合です。特に、鎖骨遠位端骨折では認定されやすい傾向があります。
(3)神経障害(12級13号、14級9号)
骨折部の痛みやしびれが残り、画像検査や医師意見書などで医学的に証明できる場合です。
特に、プレート固定術を受けた場合は、鎖骨上神経が損傷されるため、しびれが残りやすく、14級9号が認定される可能性があります。
肩の痛みや可動域制限があっても非該当になるのはなぜですか?
肩の可動域が制限されていても、「測定値が基準以下」であるだけでは不十分だからです。
審査では、「なぜ動かないのか」という医学的根拠が重視されます。具体的には、以下のような理由が明確でないと認定されません。
- 骨の変形癒合によって肩関節の動きが物理的に妨げられている
- プレート(クラビクルフックプレート)が肩峰を圧迫している
原因がはっきりしなかったり、「痛みでかばっている」と判断されると、可動域の数値は参考程度にとどめられ、非該当となることが多いのです。
後遺障害診断書のどこが不十分だと等級変更が難しくなりますか?
後遺障害診断書で不十分になりやすいポイントは、以下の3つです。
(1)症状が後遺障害の対象ではない
「凝り」「つっぱり感」など症状は後遺障害の対象にならないので非該当になります。後遺障害の対象になる症状は、痛みや可動域制限です。
(2)検査結果の記載が欠けている
可動域測定の数値や画像所見など、客観的なデータが記載されていないと、医学的証明が不十分と判断されます。
(3)障害内容の増悪・緩解の見通し欄の記載内容
障害内容の増悪・緩解の見通し欄に「少しずつ良くなる可能性がある」「軽快する可能性がある」等の記載内容があると非該当になります。
画像検査(X線・CT)を追加すれば等級変更の可能性は高まりますか?
はい、高まります。レントゲン(X線)は2次元の情報しかないため、骨の前後のズレや奥行きのある変形は分かりにくいです。
これに対して、CT検査(特に3DCT)は骨の状態を立体的に表すことができ、以下のような所見を視覚的に証明できます。
- 骨の突出や陥没
- 偽関節(骨がつながっていない状態)
レントゲンでは骨癒合しているように見えたが、追加CTで偽関節を確認でき、14級から12級に等級が上がったという事例は珍しくありません。
変形治癒や偽関節がある場合、どの等級が認定されやすいですか?
変形治癒(骨がずれたままくっついた状態)や偽関節(骨が完全につながっていない状態)がある場合、12級5号が認定されやすいです。
ただし、ここでいう「著しい変形」とは、裸体で見て明らかにわかる程度のものです。
レントゲンで変形が確認できても、服を脱いだ状態でパッと見てわからなければ、認定されません。
また、偽関節がある場合でも、骨折端が硬化して癒合プロセスが完全に止まっていることを画像検査で明確に示す必要があります。
症状固定後に痛みが悪化した場合でも、等級変更は認められますか?
症状固定後に痛みが悪化しても、原則として症状固定日時点での後遺障害の程度で判断されます。
鎖骨骨折の等級変更で、医師意見書や画像鑑定は本当に必要ですか?
前回の審査で後遺障害認定基準を満たさなかった点を補強するために、医師意見書や画像鑑定報告書などの新たな医証が必要なケースが多いです。
異議申し立てで重要なのは、「前回と同じ資料を出しても結果は変わらない」ということです。このため、新たな医証を追加する必要があります。
レントゲンでは曲がっているのに、なぜ『変形障害』が認められないのですか?
変形障害(12級5号)の認定基準は、「レントゲン上の変形」ではなく、「裸体で見てわかる変形」だからです。
自賠責保険の認定実務では、「著しい変形」とは、衣服を脱いだ状態で、他人から見ても明らかに鎖骨が変形していることが分かる状態を指します。
触れて分かる程度の出っ張りや、レントゲン画像だけで確認できる変形では、12級5号の基準を満たさず、非該当となります。
そのため、変形障害を証明するには、裸体で変形が分かる写真(複数の角度から撮影)を提出する必要があります。
肩が上がりにくくなりました。これは何級になりますか?
肩の可動域が制限されていると、制限の程度に応じて12級、10級、8級が認定される可能性があります。具体的な基準は以下の通りです。
- 8級6号:肩関節が強直またはこれに近い状態(健側の10%以下)
- 10級10号:肩関節の可動域が健側の1/2以下
- 12級6号:肩関節の可動域が健側の3/4以下
ただし、鎖骨骨折の場合、「なぜ鎖骨が折れて肩が動かないのか?」という医学的な証明(因果関係)が非常に重要になります。
鎖骨遠位端骨折や、クラビクルフックプレートを使った手術を受けた場合は、肩の可動域制限が認められやすい傾向にあります。
逆に、鎖骨の真ん中(骨幹部)がきれいに治った場合は、肩関節そのものに損傷がないため、因果関係を否定されやすいです。
鎖骨遠位端骨折は通常と何が違うのですか?
鎖骨遠位端骨折(肩に近い端っこの骨折)は、通常の鎖骨骨幹部骨折(真ん中の骨折)と比べて、以下のような後遺症が残りやすいです。
- 肩関節の可動域制限が残りやすい
- 偽関節になりやすい
このように、鎖骨遠位端骨折は、通常の鎖骨骨折よりも後遺症が残るリスクが高いです。
手術で入れたプレート(金属)が入ったままです。これは変形とみなされますか?
手術で入れたプレート(金属)が入っていること自体は、「変形障害」とはみなされません。
ただし、プレートによる皮膚の盛り上がりが「見た目で明らか」な場合は、12級5号に該当することがあります。
まとめ
鎖骨骨折で等級変更を目指すには、なぜ非該当や低等級になったのかを正確に把握することが重要です。
主な原因は、痛みを証明できない、外見上の変形が明らかでない、可動域制限と骨折の因果関係が不十分、後遺障害診断書の記載不足です。
等級変更には、CTや3DCTによる画像検査、裸体写真、医師意見書や画像鑑定報告書など新たな医学的証拠の提出が不可欠です。
十分な資料をそろえて自賠責保険に異議申し立てを行い、それでも認められなければ紛争処理や裁判を検討します。
鎖骨骨折の後遺障害認定でお困りなら、こちらからお問い合わせください。初回の法律事務所様は無料で等級スクリーニングを承ります。
関連ページ
資料・サンプルを無料ダウンロード
以下のフォームに入力完了後、資料ダウンロード用ページに移動します。







