交通事故によって手首を痛めて、病院でTFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)と診断されたものの、後遺障害の等級が「非該当」または「軽すぎる」とされた方は少なくありません。
手首の痛みや可動域制限が残っていても、それが書類や画像検査で十分に立証できていないと、後遺障害として認定されないことがあるのです。
こうした場合に有効なのが「異議申し立て」ですが、やみくもに行っても結果は変わりません。TFCC損傷の特徴や後遺障害認定のポイントを理解したうえで、適切な医証をそろえて主張する必要があります。
このページでは、TFCC損傷における異議申し立ての成功に向けて、手順・注意点・必要資料などを分かりやすく解説していきます。
最終更新日: 2025/8/3
Table of Contents
TFCC損傷で非該当になる理由
TFCC損傷の後遺障害認定基準
TFCC損傷の後遺障害認定は、主に手関節の可動域制限や慢性痛の程度によって決まります。
1. 神経障害(手首の痛みやしびれ)
等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
手首の神経障害(痛み)では、画像検査などで明確な異常が医学的に証明されると、12級13号に認定される可能性があります。
12級13号が認定されなくても、医学的に痛みの存在が説明可能であれば、14級9号に認定される可能性があります。
2. 機能障害(手首を動かしにくい)
等級 | 認定基準 |
8級6号 | 上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
手首の可動域が通常の4分の3以下なら12級6号、半分以下なら10級10号に認定される可能性があります。
尚、TFCC損傷単独で8級6号(関節の用廃)が認定されることはほとんどありません。
非該当と判断されやすいケース
TFCC損傷で非該当となりやすいのは、MRI検査が受傷後早期に撮像されなかったため、急性期所見が消失してしまったケースが多いです。
また、受傷機序がTFCC損傷に合わなかったり、受傷直後には手関節の痛みが無かったケースでは、交通事故との因果関係を否定されて非該当になりやすいです。
TFCC損傷の異議申し立て手順ガイド
異議申し立ての流れと必要書類
TFCC損傷で異議申し立てを行うには、まず「異議申立書」を作成して、事故日、自賠責証明番号、具体的な異議の理由を明記します。
そして、新たな証拠資料(画像検査、診断書、医師意見書など)を添付することが重要です。書式は自由ですが、保険会社や自賠責会社に各自送付します。
不足分や初回申請時の問題点を補強する新資料を準備することが、審査突破のカギとなります。
異議申し立ての申請先
申請先は初回申請時の方法で異なります。事前認定の場合は加害者側の任意保険会社、被害者請求の場合は加害者側の自賠責保険会社が窓口です。
これらの会社を経由して損害保険料率算出機構に書類が送付されて、後遺障害の審査が行われます。
異議申し立ての費用と時間は?
異議申し立て自体は基本的に無料ですが、再提出する診断書や画像検査の取得には費用が発生して、1~5万円ほどかかる場合があります。
審査期間は2~3ヶ月程度が目安です。迅速な解決を望むなら早めの準備が必要ですが、ケースによってはさらに長期化する可能性もあります。
効果的な異議申し立てのための準備
まず、非該当や予想より低い等級になった理由を丁寧に分析して、それを覆す新証拠や論拠を明確にしましょう。
そして、新しい証拠として、診断書や画像検査、場合によっては医師意見書や画像鑑定報告書などを取り付けます。
TFCC損傷の異議申し立て成功のポイント【弁護士必見】
非該当の原因を分析
TFCC損傷で後遺障害が「非該当」と判定される主な理由には、関節血腫、軟部組織の皮下出血、骨挫傷などの急性期の画像所見が十分でないことが挙げられます。
また、受傷機序がTFCC損傷に合わなかったり、受傷直後には手関節痛が無かったり、症状がTFCC損傷に合わないケースも非該当になりやすいです。
非該当通知書に記載されている記載内容を精査して、非該当になった原因を理解する必要があります。
<参考>
後遺障害の異議申し立て成功のポイント|交通事故の医療鑑定
TFCC損傷の後遺障害認定条件をクリアする
TFCC損傷で後遺障害認定を受けるには、主に「交通事故との因果関係」「MRI検査でTFCC損傷を確認できること」が重要です。
なお「MRI検査でTFCC損傷が確認できること」は重要ですが、事故との因果関係を裏付けるうえでは、急性期所見があることが望ましいとされています。
痛みや可動域制限、TFCC損傷を示唆する身体所見が、後遺障害診断書に明確に記録されれば、後遺障害認定の可能性が高まります。
<参考>
【日経メディカル】TFCC損傷が後遺障害に認定されにくい意外な理由とは
異議申し立てでは新たな医証が必須
異議申し立てを成功させるためには、初回申請時には提出していなかった新しい医証(医師意見書、画像鑑定、新たな画像検査、新たな診断書など)が不可欠です。
非該当になった原因に応じた、再検査による画像や医師の追加診断書、手外科専門医による医師意見書などを新たに用意します。
既存資料のみだと等級変更は難しいため、積極的に新しい証拠を補充して、症状や障害の客観的証明に努めましょう。
<参考>
TFCC損傷の後遺障害認定ポイント
TFCC損傷で後遺障害認定されるには、それぞれの後遺障害の認定基準をクリアする必要があります。
TFCC損傷の後遺症が後遺障害認定されるポイントは、こちらのコラム記事でも紹介しています。是非、参照していただきたいと思います。
<参考>
TFCC損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|交通事故の医療鑑定
TFCC損傷の異議申し立て成功事例【12級13号】
初回審査が非該当という結果であったところ、意見書を付した異議申立てにより12級13号が認定されたTFCC損傷の事例をご紹介いたします。
- 被害者:50代男性
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号
バイク走行中に自動車と衝突して転倒し、手をついて受傷しました。受傷1ヶ月後のMRI検査でTFCC損傷を指摘されました。
リハビリテーションによる約6ヶ月の保存加療を施行したものの、手関節の動作時痛および、手関節の可動域制限が残存しています。
著明な可動域制限を残しているものの、TFCC損傷の存在が否定され、初回認定は非該当でした。
疼痛及び可動域制限の原因となることを主張した意見書を添付して異議申立てしたところ、12級13号が認定されました。
<画像所見>
MRIでは、①disc proper ②橈尺靱帯は連続性を失い、③尺側部断裂も認めます。広範なTFCC 損傷の所見です。
TFCC損傷の後遺障害認定で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、交通事故で残ったTFCC損傷の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
TFCC損傷の後遺障害認定でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
TFCC損傷の異議申し立てでよくある質問
TFCC損傷では、どのような後遺障害等級が認定されますか?
TFCC損傷で認定される後遺障害等級は主に「機能障害」と「神経障害」に分かれます。
可動域制限が強ければ8級6号・10級10号・12級6号のいずれか、疼痛など神経症状が中心なら12級13号・14級9号が認定される可能性があります。
後遺障害等級ごとに認定条件があり、MRI検査などの画像所見や医師による客観的な診断書が重要となります。
手関節の痛みが残っているのに、なぜ非該当と判断されるのですか?
痛みなどの主観的な症状のみでは「非該当」とされやすい理由は、画像診断や医学的な客観所見が不足しがちなためです。
特に、TFCC損傷はレントゲン検査では異常が判別できないため、MRI検査で損傷部位を証明できないと、事故と症状の因果関係が認められません。
また診断書や受診状況に一貫性がない場合も非該当になりやすいです。
異議申し立てでは、どんな資料を追加すれば有利になりますか?
異議申し立てでもっとも有効なのは「新たな医証」の提出です。たとえば、3テスラなどの精密なMRI検査・関節鏡検査結果、症状の連続性を示す診療経過、手外科専門医による医師意見書などが有力です。
前回申請の不足点を総点検のうえ、後遺障害の認定基準を満たすエビデンスを揃えることが、異議申し立て成功への近道です。
医師が後遺障害診断書を詳しく書いてくれません。どうすればいいですか?
医師に詳細な診断書作成を依頼するときは、症状の推移や経過、自覚症状を丁寧に説明して、必要な医学的情報を伝えましょう。
書き方や記載内容の疑問点があれば、交通事故対応に詳しい弁護士とともに相談することも有効です。治療経過の把握や現時点の症状の伝達、既存の診断書の修正依頼も選択肢です。
TFCC損傷の再建手術をしても後遺障害が認められないことはありますか?
再建手術後でも、可動域制限や疼痛などの症状が医学的に明確に証明できなければ、後遺障害が非該当となる場合があります。
画像や診断書で異常所見が認められない、あるいは症状と事故との因果関係が認められない場合も同様です。
再建手術後の異議申し立てでは、MRIなどの追加検査や手外科専門医による医師意見書を提出して、医学的根拠を強化することが大切です。
まとめ
TFCC損傷で後遺障害等級を得るには、可動域制限や神経症状を医学的に証明することが重要です。
痛みだけでは認定されにくく、MRIなどの画像所見や医師の診断書がカギになります。非該当になる主な理由は、受傷直後の検査不足や因果関係の不明確さです。
異議申し立てでは、新たな医証や医師意見書、画像鑑定を提出して、初回の不足点を補うことで等級認定の可能性が高まります。
TFCC損傷の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。尚、初回の法律事務所様は無料で承ります。
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